2020年02月03日

●「日本がデフレから脱却できぬ理由」(EJ第5179号)

 日本の長期デフレの起点を1998年とすると、今年で22年
になります。「22年デフレ」です。長過ぎます。先進国でそん
な国はありません。しかも、その間、2回にわたって、消費税を
10%まで引き上げています。もっと上げようとしています。こ
れでは、デフレから脱却できるはずがありません。
 日本経済研究センターが、1月15日に発表した1月の民間エ
コノミストによる調査によると、2019年10月〜12月の実
質GDPは、前期比年率で「マイナス3・55%」ということで
成長どころか、マイナス成長です。これは、昨年10月1日の消
費増税10%引き上げの影響であることは明らかです。財界人な
どは「今回の増税の影響は軽微」などと寝言をいっている人がい
ますが、とんでもない間違いです。
 内訳をみると、そのひどさにゾッとします。まず、輸出がマイ
ナス0・12%と前回プラスだったものがマイナスに転じ、輸入
は、マイナス1・27%とマイナス幅を拡大し、企業の設備投資
はマイナス1・12%と下振れしています。個人消費はマイナス
1・73%とボロボロです。完全なデフレそのものです。どうし
て、こうなってしまうのでしょうか。なぜ、デフレのさなかに消
費税の税率を上げるのでしょうか。
 消費税を上げると、GDPの6割を占める個人消費がダメージ
を受けます。これが日本経済の成長にブレーキをかけているので
す。なぜ、過去に学ぼうとしないのでしょうか。いまやるべきこ
とは増税ではなく、減税です。日本人は、大企業は別として「減
税」という方法があることを忘れてしまっています。米国に学べ
といいたい。何しろ自民党は「大企業には減税/庶民には増税」
の政策を長い間ずっと続けてきたからです。
 それをさせているのが、財務省の財政均衡主義という考え方で
あり、それは財政法にも書いてあり、ほとんどイデオロギーに近
いものです。財政とは政府の経済行動のことですが、財政の「入
り」と「出」を均衡させることが「財政の健全化」になると勝手
に決めています。この財務省の考え方を支えているのは、テレビ
によく出演する著名な経済学者たちです。現在日本のメディアは
財務省にコントロールされているので、テレビに常時出られる経
済学者たちは、財務省の息のかかった学者ばかりです。
 これらの経済学者たちについて、既出の青木泰樹氏は、次のよ
うに述べています。
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 この世の中で「現実経済」と「経済学の世界」を混同する経済
学者ほど罪深い存在はない。経済理論は前提条件を離れては成立
しない。現在の主流派経済学である新古典派理論の後継の諸学説
は、国土、国家、国民、歴史、文化等を一切捨象した抽象的な前
提の上に成り立っている。もちろん現実経済はそうした前提と相
容れるものではない。その場合、経済論理に忠実な主流派学者の
言説は国民を惑わすばかりか、国民経済に災厄をもたらす。前世
紀末から続いた「失われた二十年」と称される日本経済の長期停
滞は、まさしく非現実的な経済論理に基づく政策が延々と実施さ
れてきた結果であり、その責はもっぱら経済学者に帰されよう。
    ──青木泰樹教授論文/「増税論に潜む経済学者の嘘/
         『家計と財政の同一視』に騙されるな」より
   『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
─────────────────────────────
 財政均衡主義の財大の問題点は、ある意味において、それがと
ても分かり易いという点にあります。国の財政を個人の家計と同
一視するからです。個人の場合、所得を超える消費を続けていれ
ば、いずれ家計が破綻することは目に見えています。この一般人
の経験則を利用し、国であっても税収を超える歳出を続けていれ
ば、いずれ破綻すると説かれると、そうかなと思ってしまうもの
です。これはレトリックであり、財務省のプロパガンダです。
 この点については、1月17日のEJ第5168号でも述べて
います。財務省は、ウェブサイトで国の財政を個人の家計に例え
て説明する動画をユーチューブで公開しています。
 その点、青木泰樹氏は、上記論文において、この点を取り上げ
鋭く批判しているので、以下にご紹介します。
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 家計と財政は同じではない。個人の寿命はたかだか百年程度で
あるが、政府の存続期間は無限と想定されるからである。新古典
派モデルは形式的に個人の生涯と政府の存続期間を同一と想定し
ているため、両者を同一視する誤りが発生するのである。政府は
永続する存在であるから、政府債務の返済方法も、個人とは異な
る。個人は所得から返済せざるを得ないが、政府は増税、借換え
日銀引き受けという三つの返済方法を適宜使えるのである。実際
政府は三つを併用している。また個人は通貨を発行できないが、
中央銀行を傘下に収める政府は通貨を自由に発行できる。それゆ
え自国通貨建て国債が償還不能になることは理論上あり得ない。
財政破綻の危険を唱える学者は、個人の破産と政府の財政破綻を
同一視するという愚を犯している。   ──青木泰樹教授論文
   『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
─────────────────────────────
 この財政均衡主義と相反するのは、ケインズ主義による財政論
です。ケインズは、国と家計とは異なるという観点に立って、短
期的な財政赤字の必要性を説いています。青木泰樹氏によると、
ケインズ主義に立脚しながらも、長期的な財政論を構築したのは
アバ・ラーナーという経済学者です。ロシア生まれですが、米国
に移住して活躍した経済学者で、生涯を通してケインズ主義経済
学を信奉し、機能的財政論を構築したことで知られています。い
わゆるリフレ派の元祖としても有名です。アバ・ラーナーは今で
いうMMTに近い考え方であるといわれます。
           ──[消費税は廃止できるか/020]

≪画像および関連情報≫
 ●財務省は国の赤字を家計の赤字にたとえるな!
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   財務省は財政の危機的状況を訴えていますが、久留米大学
  商学部の塚崎公義教授は、財政赤字を家計の赤字にたとえる
  ことに反対しています。緊縮財政を急ぎたいと考える財務省
  は、国民に危機感を持たせたいのでしょうが、国の財政を家
  計の赤字にたとえた説明をして、国民をミスリードするのは
  問題です。
   財務省は、「我が国の一般会計を手取り月収30万円の家
  計にたとえると、毎月給料収入を上回る38万円の生活費を
  支出し、過去の借金の利息支払い分を含めて毎月18万円の
  新しい借金をしている状況です。家計の根本的な見直しをし
  なければ、子供に莫大な借金を残し、いつかは破産してしま
  うほど危険な状況です」としています(日本の財政関係資料
  平成29年4月)。
   しかし、家計の赤字と国(日本国という意味ではなく、地
  方公共団体と区別するために中央政府を国と呼んでいる)の
  赤字は全く違うものですから、両者を同一視することはでき
  ません。我が家が家計を改善するため、旅行計画を中止した
  とします。我が家の家計は改善する一方で、旅行会社の利益
  は減り、旅行会社の社員の給料は減るでしょうが、そんな赤
  の他人のことは知ったことではありません。我が家の家計が
  黒字になることが重要なのです。 http://exci.to/3b2Wfn1
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・ジョン・メイナードケインズ.jpg
ジョン・メイナードケインズ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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