2020年01月24日

●「誰かが借金しないとお金は増えぬ」(EJ第5173号)

 大西つねき氏のいう「お金の発行=借金の発行」という意味を
具体的に考えてみることにします。少しややこしい話になります
が、添付ファイルの図を見ながら、読んでください。この図は、
大西氏の本に出ていたものです。図は、平成29年度予算の執行
と、国債残高、マネーストックの関係をあらわしています。
 図の中央をご覧ください。平成29年度(2017年)の予算
案の数字です。政府の収入は、税収が58兆円、その他の収入は
5兆円、合計は63兆円です。これに対して政府支出が74兆円
ですから、基礎収支は11兆円のマイナスになります。この11
兆円に加えて、国債の利息が9兆円、国債の償還にも23兆円の
公債費がかかるので、合計34兆円の赤字になります。
 ない袖は振れないので、この34兆円は借金、すなわち国債で
賄うことになります。図の右側をご覧ください。国債の残高は、
平成28年度(2016年)末の時点で、845兆円になってい
ます。不足分の34兆円のうち、国債償還には14兆円必要です
が、これは借り換えて支払うので、プラスマイナスゼロで、残高
は変わりません。その結果、国債残高は20兆円増加し、865
兆円、当初の845兆円より20兆円増加します。
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     865兆円 − 845兆円 = 20兆円
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 この20兆円の政府の借金が、お金の発行ということになりま
す。「政府の借金=お金の発行」です。このことを、図の左側を
使って証明します。
 図の左側は、マネーストック、平成30年(2018年)1月
のM2の速報値です。M2というのは、ゆうちょ銀行や農協に預
けた分を除く預貯金と現金の総額です。それが990兆円です。
つまり、民間のお金です。この990兆円は、政府が予算を執行
することによって増減します。ひとつずつ見ていきます。
 税収の58兆円とその他収入の5兆円、計63兆円はM2から
減ることになります。その他収入は、国有地の売却益や賃貸収入
などであり、M2から支払われます。この時点で、M2は、次の
ように927兆円に減ります。
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  990兆円 − 58兆円 − 5兆円 = 927兆円
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 これに対して政府支出の74兆円は、政府が民間に支払う性格
のものです。政府事業の事業費や公務員の給料、それから社会保
障費も民間に還流します。それから9兆円の国債の利息は民間に
属するものであり、差し引きすると、次のように、1010兆円
になります。
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  (990兆円−58兆円−5兆円+74兆円)+9兆円
                    =1010兆円
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 ここで重要なことは、マネーストックは990兆円だったもの
が、1010兆円に20兆円増えていることです。これは、政府
の借金の純増分である20兆円と一致します。
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    1010兆円 − 990兆円 = 20兆円
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 実はこれは「信用創造」と同じです。これについて、大西つね
き氏は、次のようにり述べています。
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 政府が借金をして税収より多くお金を使うことにより、その赤
字分が民間の預金(マネーストック)を増やすということです。
つまり、政府が借金でお金を発行し、それを政府支出を通じて世
の中に回しているから、政府の借金とお金は同時に同額増える。
だから「政府の借金=お金の発行」になるのです。
 実はこれは、銀行が民間に対してやっている信用創造と本質的
に同じです。借り手が民間から政府に変わっただけです。銀行が
誰かにお金を貸しても皆さんの預金が減らないように、銀行が政
府の国債を買っても皆さんの預金は減りません。が、政府はその
分のお金を手にし、それを使って世の中に回せば、その分、民間
の預金が増えることになります。こうして、政府の借金とお金が
同時進行で増えてきた。だから皆さんが貸した覚えがなくても、
国民が政府に900兆円近くも貸したことになっているのです。
国民のお金を貸したのではなく、政府の借金が国民のお金になっ
ているからです。        ──大西つねき著/白順社刊
 『私が総理大臣ならこうする/日本と世界の新世紀ビジョン』
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 「借金」というのはとくに日本では負のイメージがあります。
借金をすることは仕方がないとしても、返済できなくなることを
何よりもの屈辱と感ずる国民性があります。日本銀行券(五千円
券)の肖像にもなった教育者・新渡戸稲造は、著書「武士道」に
おいて、次のように述べています。
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 「恩借の金子(きんす)御返済相怠り候節は衆人の前にてお笑
いなされ候とも不苦候(くるしからず)」   ──新渡戸稲造
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 そういう日本人が、税収の倍の予算を組んだり、「1000兆
円を超える国の借金」という話を聞くと、非常にショックを受け
る人が多いのです。「借金を減らすべきだ」ち考える人が多いの
です。財務省はそういう日本人の特性を利用して、税金を上げる
ことを容認するムードを作ろうとしています。
 しかし、世の中に流通するお金の量を増やすには、誰かが借金
をしないとお金が作れない仕組みになっているのです。もし、多
くの国民が借金の返済を急ぐようになると、お金の量が減って、
世の中の景気は一層景気が悪くなってしまうのです。
           ──[消費税は廃止できるか/014]

≪画像および関連情報≫
 ●麻生太郎氏による「日本の借金」の解説
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   マスコミが世の中へ流し、多くの人が信じている間違った
  話が一つあると思います。それは日本という国が破産するっ
  て話。これは簿記っていうものの基本がわかってない人が、
  しゃべって、わかってない人が書いて、わかってない人が読
  んでいるから、いよいよ話がわからなくなっているんだと思
  います。今からわかりやすく例を説明するから、よーく聞い
  といてくださいね。
   帳簿っていうのを見れば、まず借り方と貸し方と、二つが
  あるでしょ、簡単なこと言えば。今お金を借りているのは、
  みなさんじゃありませんからね。お金を借りているのは、政
  府です。お金を100借りていれば、必ず、100貸してい
  る人がいないとおかしい。帳簿って言うのは左と右が必ず揃
  うことになってますから。
   100借りてる政府がいれば、100貸している誰かがい
  る。誰が貸しているんです?そうです、国民が貸しているん
  だね。ところが新聞を見てごらん、「子どもや孫に至るまで
  一人700万円の借金」・・・違うでしょう。700万円の
  貸付金が起きているんですよ、あれは。貸しているのはみな
  さん。「いや俺、国債なんか買ってないよ」と言われるかも
  しれませんが、みなさんはお金を銀行に預けておられる。銀
  行にとって預金は借金ですから、帳簿の上では借金ですから
  ね。だからその借金を誰かに貸して、その"さや"を稼がない
  と金貸しという商売は成り立ちません。
                  https://bit.ly/2sMAaIe
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図の出典/大西つねき著の前掲書より

政府支出とマネーストック.jpg
 
政府支出とマネーストック
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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