2020年01月15日

●「日本の対外純資産/経常黒字原因」(EJ第5166号)

 日本の対外純資産──2019年度末で約342兆円、これは
日本が長年にわたって経常収支の黒字を積み重ねてきたから、ス
トックされたものと昨日のEJで述べましたが、「経常収支」と
は何でしょうか。これには、深い意味があるので、少しその本質
を探ってみることにします。難しい説明はしません。
 「経常収支」とは、国の国際収支を評価する基準のひとつで、
次の4つから構成されます。
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          1.  貿易収支
          2.サービス収支
          3.  所得収支
          4.経常移転収支
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 第1は「貿易収支」と「サービス収支」です。
 「貿易収支」と「サービス収支」は、「貿易・サービス収支」
と呼ばれます。貿易収支とは、財の輸出から輸入を引いたもので
す。同様に、サービス収支とは、サービスの輸出から輸入を引い
たものです。財の輸出入はわかると思いますが、サービスの輸出
入はちょっとピンとこないと思います。
 日本人が海外旅行に行って、外国人のシェフの作った料理を食
べて代金を支払ったとします。これは「サービスの輸入」です。
これと逆に、外国人観光客が日本に来て、日本料理を外国人が楽
しみ、その対価を受け取った場合、それは「サービスの輸出」と
いうことになります。
 サービスの輸出は、サラリーマンの給料と似たところがありま
す。サラリーマンは、他人のために働いて、給料という対価を受
け取るので、サービスの輸出と同じです。一方、家計での消費は
他人が働いて作ったものを使わせてもらうことになるので、サー
ビスの輸入と同じです。
 輸出が輸入を上回る状況を貿易黒字といい、輸入が輸出を上回
れば貿易赤字です。この場合、一般的には貿易黒字は「貿易収支
が好調」、貿易赤字は「収支バランスが悪い」とされています。
 しかし、貿易黒字が増えると、その分相手の国から受け取る外
貨が増え、それを日本円に交換するため、外貨を売って円を買う
ことになるので、円高へとつながります。
 第2は「所得収支」です。
 所得収支は、日本人が海外から受け取った利子や配当です。こ
の場合、海外に支払った利子や配当は差し引きます。その結果が
プラスであれば黒字、マイナスになると赤字です。企業が海外の
工場建設などや海外証券投資で得た収益から、日本国内で外国企
業などが得た利益や報酬などを引いたものが所得収支です。所得
収支は、対外金融債権・債務から生じる利子配当金などの収支状
況であり、これが黒字であることは良い傾向であるといえます。
 第3は「経常移転収支」です。
 これは、政府による開発途上国への経済援助や国際機関への拠
出金などの収支です。所得収支を「第1次所得収支」と「第2次
所得収支」に分け、前者はここでいう「所得収支」、後者を「経
常移転収支」とする分類法もあります。つまり、所得収支は、日
本企業が海外で稼いだお金の配当金です。
 2019年度末で約342兆円の対外純資産がある──こんな
ことをいわれてもピンとくる日本人はいないと思います。この数
字は、日本が世界一の金持ちの国であることちを示していますが
「日本は世界一の借金大国である」とさんざんいわれてきている
だけに、にわかに信じられるものではありません。
 これについて既出の大西つねき氏は、次のように疑問を解いて
くれています。
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 実は、これには明確な理由があります。それは、皆さんがその
お金をほとんど使えていないからです。まず、世界一の対外資産
がいかにして積み上がったかと言うと、毎年経常収支が黒字だっ
たからです。(一部略)
 しかし、ここに大きな問題があります。黒字は外貨で貯まるの
です。なぜなら、国際決済は基本的に外貨、主にドルで行われて
きたからです。輸入の代金をドルで払い、輸出の代金をドルで受
け取れば、黒字も差し引きドルです。だから、財務省の資料には
確かに349兆円とありますが、実際は約3兆ドルの外貨です。
つまりどういうことか?ドルは日本では使えません。投資する場
所もない。だから海外に投資せざるを得ないのです。
              ──大西つねき著/白順社刊
 『私が総理大臣ならこうする/日本と世界の新世紀ビジョン』
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 大西つねき氏は、これを家庭に例えて、「どの家よりも稼いで
いる家庭なのに、そのお金は全く使わずに誰かに貸しっぱなし」
の状態といっています。まさに「貧乏ひまなし」です。これがま
さに現在の日本の状況です。世界一の金持ちの国なのに、日本の
貧乏化が急速に進んでいます。
 世界で何かコトが起きると、円が買われて円高になります。米
国がイランのソレイマニ司令官を殺害し、米国とイランの間で一
触即発の戦争危機になったとき、円が買われています。それは、
世界中の投資家が日本が世界一の債権国家であることを熟知して
いるからです。知らないのは日本人だけです。
 海外にそんなカネがあるなら、その外貨を売って円に替え、日
本に持ち込めば、いいじゃないか──これは、多くの日本人の本
音であると思います。しかし、3兆ドルを円に替えるのは、ほと
んど不可能な話です。それだけの円を一体誰が、持っているので
しょうか。当たり前の話ですが、円は日本でしか発行されないか
らです。日本人しか持っていないのです。
 方法はないわけではありません。しかし、これは国家でしかで
きないことです。日本政府は何かを大きく間違えています。
           ──[消費税は廃止できるか/007]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ日本円は「安全資産」と言われるのか/中国メディア
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   日本円は「安全資産」と呼ばれることが多く、世界で金融
  不安が台頭すると円が買われ、円高となる傾向が強い。日本
  円は確かに世界で使える通貨の1つだが、なぜ日本円は安全
  資産と呼ばれるのだろうか。中国メディアの今日頭条はこの
  ほど、日本円が安全資産としての地位を確立できた理由につ
  いて考察する記事を掲載した。
   毎年5月末に財務省が発表する「本邦対外資産負債残高の
  状況」によると、日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産
  から負債を差し引いた「対外純資産残高」は2018年末時
  点で341兆5560億円になった。
   記事は「日本円が安全資産である理由は、この対外純資産
  残高と関係がある」と強調し、日本企業が中国や米国への投
  資を活発に行ったことで、日本の18年末における対外純資
  産残高は前年比3.7%増となったことを紹介し、28年連
  続で日本が世界最大の債権国になったと論じた。
   続けて、日本は、第2次世界大戦後に急速に復興し、19
  70年代には欧米の先進国に経済力で追いついたと指摘し、
  世界第3位の経済大国である日本円の世界における地位はこ
  の時に築かれたと指摘。日本はその後、バブルが崩壊し、経
  済成長が低迷し続けているが、「日本には世界中に多くの資
  産を保有しており、しかも外貨準備高も潤沢であることから
  日本が信用不安に陥るリスクは小さい」と強調。また、日本
  円を空売りして売り崩すのも難しいため、日本円は金融不安
  時の逃避先として最適なのだと論じた。
                  https://bit.ly/2TmFdKa
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経常黒字は4年連続で増加.jpg
経常黒字は4年連続で増加
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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