2020年01月09日

●「なぜ10%消費増税を決断したか」(EJ第5163号)

 安倍首相は、もともと消費増税に賛成ではなかったはずです。
しかし、首相になった時点で、自民党と民主党の増税派の大連合
によって法律として成立した「社会保障と税の一体改革」があり
増税時期まで決まっていたのです。
 安倍首相は内閣発足と同時に、アベノミクスと称して、「3本
の矢」の政策を始動させています。
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     第1の矢:      大胆な金融政策
     第2の矢:     機動的な財政政策
     第3の矢:民間投資を喚起する成長戦略
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 第1の矢による日銀の金融緩和と第2の矢による10兆円規模
の財政出動は非常にうまくいったのです。株価は上昇し、目に見
えて雇用も改善しています。安倍政権の支持率は向上し、しだい
に盤石なものになって行きます。
 しかし、アベノミクスに最初に水を差したのは、2014年4
月の5%から8%への消費増税です。海外も含む多くの経済学者
や識者、財界などから人を集め、意見を聴取したものの、結局法
律の定め通り、増税を実施したのです。しかし、駆け込み需要の
反動減は予想以上で、安倍首相は「影響は限定的」と主張してい
た財務省への強い不信感を強めることになります。
 ノーベル経済学賞受賞の経済学者、ポール・クルーグマン教授
は、安倍政権が消費税を8%に上げた時点で、これを次のように
批判しています。教授は首相に増税中止を進言していたのです。
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 アベノミクスにおける消費税の増税は、たとえば、飛行機が成
層圏に到達する前に逆噴射するに等しく、これによってデフレか
らの脱却は困難になってしまっている。
                ──ポール・クルーグマン氏
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 しかも、安倍首相の身近には、内閣官房参与として、浜田宏一
米イエール大学名誉教授や、藤井聡京都大学大学院教授などの増
税反対派の学者が付いており、少なくとも8%から10%への増
税阻止のため、全力を尽くされていたはずです。しかし、それに
もかかわらず、安倍首相は昨年10月、10%の増税を決断し、
実施に踏み切っています。結局、「社会保障と税の一体改革」の
消費増税は2回にわたって延期されたものの、結局は実現してし
まっています。なぜ、こうなってしまうのでしょうか。
 実際に10%への増税が行われてしまったのですが、それ以前
に、三橋貴明氏と藤井聡氏は、10%への増税が行われると、ど
うなるかについて、次のように議論しています。この予測はけっ
してオーバーなものではないといえます。
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三橋:2014年の消費増税の時は、実質の消費が7・5兆円も
 減った。ちなみに10月の消費増税のインパクトも仮にそれと
 同じくらいに収まったとしても、その上、残業規制で8兆円な
 んていう所得の縮小があったら、合計で15兆円くらいの需要
 縮小になっちゃう。
藤井:しかも外需がそこから冷え込む可能性がある。その冷え込
 みがリーマンショックの仮に3分の1でも、9兆円程度冷え込
 むことになる。そうすると、2020年の経済は、前年に比べ
 て、25兆円前後も冷え込んで、成長率がマイナス5%前後っ
 ていう恐ろしい状況になる。さらに恐ろしいのは、この簡単な
 試算は何も悲観的なものじゃないっていう点。心理学的効果を
 考えるなら、消費縮小は7・5兆円以上になるかもしれないし
 オリンピック特需終焉がさらに数兆円のマイナス効果をもたら
 すかもしれないし、外需がもっと冷え込むかもしれない。
 ──『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
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 藤井聡教授は内閣官房参与を務めていました。内閣官房参与は
安倍首相に直接進言できる立場です。安部首相は藤井教授が増税
に反対している立場の経済学者であることを十分知ったうえで、
内閣官房参与に任命しているはずです。
 したがって、昨年10月の消費増税の決断は、そういう意見を
すべて聞いたうえでのもの、ということになります。なぜ、安倍
首相は、「消費税を凍結させる」という思い切った決断ができな
かったのでしょうか。
 それはやはり「財務省」の存在です。もう少しはっきりいうと
財務省と財界(経団連など)とマスメディア──これらが一体に
なっていることです。このような財務省に対しては、首相といえ
ども反対を押し通すことはできないようです。それでも、安倍首
相はよく頑張った方なのです。財務省は、何回も増税を延期する
安倍首相に業を煮やし、ひそかに、倒閣を仕掛けた疑いすらある
のです。これについては、改めて取り上げます。
 上記、「別冊クライテリオン」増刊号の座談会の司会を務めた
日本文化チャンネル桜代表の水島総氏は、財務省に関して次のよ
うに述べています。
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 日本には謀略機関や工作機関がないといわれているけれども、
唯一、財務省というものがあるのではないか。カネは集まってく
る。情報集めと洗脳もやるし、脅しもやる。それから予算編成権
もあって、また政治家を脅かすこともできると。「お前のところ
には金を配らないぞ」という。こういうかなり強大な「ナンバー
ワン」の財務省という官庁に、カネ集めと情報収集と予算編成と
いうものが集まっている。これは、ある程度分けていかないとい
けないのではないか。    ──前掲『消費増税を凍結せよ』
            /「別冊クライテリオン」増刊号より
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           ──[消費税は廃止できるか/004]

≪画像および関連情報≫
 ●このタイミングで消費増税は「危険な賭け」だ/飯田泰之氏
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   まずお断りしておくと、私は「財政再建は必要であり、社
  会保障改革も必要である」という立場です。が、それゆえに
  こそ、消費増税には慎重であるべきだと考えています。
   第2次安倍内閣が掲げた経済政策アベノミクスの「三本の
  矢」の中に「機動的な財政政策」があったことから、多くの
  人が「安倍政権は財政再建を軽視している」と誤解している
  ようですが、実際はその逆で、財政の健全性を示すプライマ
  リーバランス(PB)の対GDP比は大きく改善しました。
   安倍政権は民主党政権下での決定を受けて、2014年4
  月に消費税の税率を5%から8%へ引き上げました。一般に
  は、これがPB改善の主要因であるという誤解があるようで
  す。実情は異なります。税収増の内訳を見ると、一般会計税
  収が43・9兆円であった12年度と比べ、18年度の税収
  は、59・1兆円と15兆円以上増えていますが、この税収
  増に占める消費税税収の増加分は7・2兆円であり、消費増
  税による税収増よりも、実は景気回復による自然増のほうが
  8兆円超と大きいことがわかります。消費増税による経済の
  腰折れがなければ、税収の自然増はさらに大きくなっていた
  はず。財政再建の主因は、消費増税ではなく、景気回復だっ
  たのです。           https://bit.ly/2ZNGviG
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クルーグマン教授「増税中止」提案
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする