2020年01月06日

●「日本は成長の大切さを忘れている」(EJ第5160号)

このEJは、令和2年最初のEJです。本年もEJをよろしくお
願いします。
 日本が長年にわたってデフレから脱却できず、まるで経済成長
できない理由は、消費税の導入と、3回にわたる税率引き上げが
基本的な原因である──これが10月7日から12月27日まで
の57回のレポートの一応の結論です。
 しかし、消費税を導入しているのは日本だけでなく、2017
年4月現在、世界152ヶ国で導入されています。しかし、どの
国も不況に陥っているわけでなく、デフレになって抜け出せない
でいるのは日本だけです。
 しかも、日本よりも税率の高い国が多い。世界一消費税率が高
い国はハンガリーで27%、以下、スウェーデン、ノルウェー、
デンマークは25%、イタリアが22%、ベルギー、オランダが
21%、イギリス、フランスが20%というように、税率に関し
ては、日本の10%よりはるかに高い国が多いのです。だから、
財務省系の増税主義者は、10%に上げたとたん、次は15%だ
20%だといい出しています。
 既に指摘していることですが、大事な事実があります。日本の
消費税の税率は他国に比して、本当に低いのかということです。
国税収入に占める消費税の割合を見ると、日本は消費税率が5%
の段階で24・4%、10%になると、国税収入全体に占める比
率は37%になり、これを他国と比較すると、日本はダントツの
世界一です。ちなみにこの資料は財務省の資料です。
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       ◎国税収入に占める消費税の割合
         イギリス ・・ 21.1%
          ドイツ ・・ 35.6%
         イタリア ・・ 28.3%
       スウェーデン ・・ 18.5%
           日本 ・・ 37.0%
             ──財務省・財務総合政策研究所編
          「財政金融統計月報」/2010年4月他
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 これは、日本の財政収入は、世界で最も消費税に依存している
割合が高いことを意味しています。消費税率が25%のスウェー
デンすら18・5%に過ぎないからです。
 なぜ、こんなことになっているのかについて、菊地英博日本金
融財政研究所所長は、次のように述べています。
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 なぜこうなっているのかというと、消費税が法人税の減税の原
資になっているからだ。消費税が最初導入された1989年から
2014年までの消費税収入は累計で282兆円になる。一方で
この間、法人税が255兆円減税されました。つまり、消費増税
で増えた282兆円の税収のうち、9割が「法人税減税の原資」
になったのです。これほど不公平税制はない。このままでは格差
はどんどん拡大していきます。
 ──『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
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 最近の日本は、韓国の問題をはじめとして、外国から軽視され
ることが多いように感じます。今年の新年の最大のニュースとい
えば、カルロス・ゴーン被告の国外脱走です。ゴーン被告の自宅
には監視カメラが設置されているため、ゴーン被告は、夕食会の
音楽演奏に訪れた楽団の楽器の箱に隠れて自宅を脱出し、警備の
うすい地方空港から国外に出国し、トルコを経由してプライベー
トジェットを利用してレバノンに入国しています。
 レバノン政府は「カルロス・ゴーン氏はフランスのパスポート
で合法的に入国した」と発表していますが、ゴーン被告のフラン
スのパスポートは弘中弁護士事務所が管理しており、それは使わ
れていない。合法的というが、明らかにどこかで不正が行われて
います。しかもゴーン本人は「有罪が予想される日本の偏った司
法制度の下でのとらわれの身ではなくなった」と勝利宣言までし
ています。さらに欧米のメディアはゴーン氏に同情的です。私は
日本は完全にバカにされているように感じます。
 なぜ、バカにされるのか。それは長い間にわたり、日本はまる
で「経済成長していない」からです。これについて、京都大学大
学院教授の藤井聡氏は、悲憤慷慨しています。
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 日本は成長というものが、どれだけ大事なのかということにつ
いて分からな過ぎる。過去20年の間に、諸外国の経済は、もう
2・4倍に成長しているのに、日本だけは80%まで縮小してい
る。このままで行けば、世界経済のなかの日本のシェアはおおよ
そ「1割程度」まで凋落する。もしそうなったら諸外国はもう日
本なんか相手にしようとしないし、貧困と格差がもっと拡がって
日本の科学技術力も防災力も国防力も皆、ダメになる。挙句に財
政だって悪くなる。      ──藤井聡京都大学大学院教授
 ──『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
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 本当に日本は、もはや成長できないのでしょうか。深刻な少子
高齢化の問題もありますが、政治家は有効な手を打てずに諦めて
いるように感じます。しかし少子高齢化はこれからどこの国でも
起きる問題であり、解決できないはずはありません。それを乗り
越えてきた国もあります。何よりも早く、諸悪の根源である消費
税を廃止することです。そのために政治が動くべきです。そこで
明日からEJのテーマを次のように設定して考えていきます。
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    どうしたら日本経済を成長させることができるか
    ── 消費税を廃止することは可能である ──
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           ──[消費税は廃止できるか/001]

≪画像および関連情報≫
 ●日本はなぜ成長しないのか?
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   シンガポールが1人あたりGDPで日本を抜き日本がアジ
  アナンバー1の座から落ちたことは私にとっては衝撃だった
  のですが、大前研一さんの『アジアで最も豊かな国から転落
  した日本』というコラムによると、日本ではあまりニュース
  にならなかったそうで、コラムにはこう書かれてました。
   本当ならシンガポールに抜かれたことで、日本全体にショ
  ックを受けてほしいところだ。しかし「あれ、抜かれちゃっ
  てた」という感じで、ケロっとしている。これでは日本の未
  来が危ういというものではないか」
   私がシンガポールに来て以来、聞かれて一番答えに悩む質
  問というのが「日本はなぜ成長しないのか?」という質問。
  この質問が仕事のミーティングの合間に場をつなぐために気
  軽に発せられた質問ならば(相手も鋭い分析など求めていな
  い)、適当に答えようもあるのですが、これが真剣に内部者
  の見解を聞きたいと思っている親しい友達からの質問だった
  りすると、答えに困る。自分にも解がないから。なので、い
  つものごとく本を読みあさっています。
   まず最初に読んだのが勝間さんが薦めていた『人間を幸福
  にしない日本というシステム』。私は基本的に母国は好きな
  ので、『ひ弱な男の国とフワフワした女の国日本』のような
  センセーショナルに煽っただけのようなタイトルの本は読ま
  ないのですが、この本は私が知らなかったことも多く(官僚
  主義の根深さ、など)、納得できる箇所も多かった。でも、
  具体的な解決策まで示せていないと思います。
                  https://bit.ly/2MKrhpq
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菊池英博氏.jpg
菊池英博氏

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする