2019年12月10日

●「政府系金融機関を全て民営化する」(EJ第5146号)

 昨日のEJの「関連情報」でお知らせした重要情報を再確認し
ます。2019年8月15日現在、日本は約2年ぶりに中国を抜
いて、米国債の最大の保有国に返り咲いています。
 しかし、これは、日本が最大にしたというよりも、中国が外貨
準備を大幅に減らしたことが原因です。以下は2018年8月と
2019年8月の日本と中国の外貨準備高の比較です。中国は、
2018年から大幅に米国債を減らしています。これは、米中貿
易戦争と無関係ではないはずです。
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 ◎日本と中国の外貨準備高比較(USドル)
       2018年8月      2019年8月
  日本 1兆2593億ドル    1兆1228億ドル
  中国 3兆1097億ドル    1兆1125億ドル
                https://bit.ly/2qw9Jp4
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 日本は、こういう外貨準備などの金融資産をたくさん保有して
いますが、それはいずれも政府の借金の返済に使えないとする財
務省の主張を再現します。
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 外貨証券(82兆円)や財政融資資金貸付金(139兆円)は
FBや財投債という別の借金によって調達した資金を財源とした
資産であり、これらの借金の返済に充てられるものであるため、
赤字国債・建設国債の返済に充てることはできません。
(2009年当時)    ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
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 難しい言葉がたくさん出てきました。外貨証券や財政融資資金
貸付金などの金融資産は、「別の借金によって調達した資金を財
源としている」といっていますが、これは何を意味しているので
しょうか。
 既に述べているように、日本政府が保有している「外貨証券」
のほとんどは、「円売りドル買いの為替介入をした残骸」であり
米国債のかたちで残されています。
 この円売り・ドル買い介入の場合には、政府短期証券(為券)
の発行により円資金を調達し、外国為替市場における為替介入に
よりこの円資金を売却し、ドルを購入します。「別の借金によっ
て調達した資金を財源としている」というのは、このことをいっ
ているのです。
 政府短期証券は、連結財務書類の負債の部に載っています。つ
まり、国の広義の借金に含まれているので、保有している米国債
を売れば、政府の債務は減少することになり、借金を減らすため
に使えます。したがって、外貨証券(米国債)を売れないとする
財務省の主張は誤りです。
 日本政府が米国債を売れないとするのは、過去の“ある事件”
の心理的圧力があるからです。その“ある事件”とは、橋本龍太
郎元総理の米コロンビア大学の講演での発言にあるのです。
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 1997年6月23日、当時の橋本龍太郎首相が米コロンビア
大学での講演のあとの質疑応答で、「米国債を売りたい衝動に駆
られることがある」とジョーク交じりにコメントした。NYダウ
は192ドル下落、1987年のブラックマンデー以来の大幅な
下げとなった。1985年のプラザ合意以降の急激な円高ドル安
(260円から85円へ)が進むなかでの発言だったが、「もし
売るようなことがあれば、(米国への)宣戦布告とみなすと脅さ
れた」とささやかれた。米国が拡大する日本の対米貿易黒字に苛
立ちを強め、円高誘導カードをちらつかせていたことなどが背景
だった。              https://bit.ly/2Yt4DGz
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 この事件がきっかけになって、日本政府は、米国債を売れなく
なってしまったのです。しかし、米国債は世界で一番流動性の高
い有価証券であり、もっとも売りやすい。冒頭の「外貨準備高比
較」で明らかなように、中国などは、遠慮なく売っています。さ
すがに日中がまとめて売れば、確実に世界経済は大混乱になりま
すが、少しずつ売る分には、まったく問題がないのです。
 続いて、「財政融資資金貸付金」とは何でしょうか。
 財政融資資金貸付金とは、政府が日本政策投資銀行などの政府
系金融機関に貸し付けている資金です。この資金は、政府系金融
機関を通じて、中小企業や国民に貸し付けられています。政府が
資金を調達する理由は、その方が資金の調達コストが安くて済む
からです。政府の方が信用力が高いからです。もし、政府系金融
機関がやろうとすると、信用力の差で、高い金利を払う必要があ
ります。そのため、政府が代りに債券を発行すると、安い金利で
資金を調達できます。これが「財投債」です。
 財政融資資金貸付金は、2009年の時点で「139兆円」も
あります。財務省のいう別の借金によって調達した資金とは「財
投債」のことです。財務省は、この財政融資資金貸付金を政府の
借金の返済に使えないといっていますが、森永卓郎氏は、これに
対して次のように反論しています。
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 政府は、財投債で調達した資金をそのまま政府系金融機関に貸
し付けている。国の連結財務書類(国の貸借対照表)のなかでは
財投債の発行額は、負債の部に計上されているが、資産の部には
政府が政府系金融機関に貸し付けたお金が「貸付金」という形で
加えられている。だから、政府系金融機関を完全に民営に移し、
国が資金調達を肩代わりするのを止めて、政府系金融機関が自ら
資金調達をするように変更すれば、財投債発行分が資産からも負
債からも消えてしまうことになる。つまり、グロスの借金は瞬時
に減少するのだ。        ──森永卓郎著の前掲書より
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            ──[消費税増税を考える/044]

≪画像および関連情報≫
 ●国の債務とはみなされない国債の不思議
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   国債であって、国の債務ではない国債が存在する。しかも
  その残高は、総国債残高の1割強に当たる99兆円にも達し
  ている。近々に公表される見込みの2015年6月末残高は
  100兆円を超えるであろう。その国債とは、財政投融資特
  別会計から発行される国債、いわゆる財投債のことである。
   国債管理を担う財務省が「国の債務ではない」と言ってい
  る訳ではないが、例えば、国際標準の概念区分に従う国民経
  済計算統計(GDP統計)上においては、財投債は国の債務
  とはみなされていない。政府債務残高やコクサイ(国債)残
  高のコクサイ(国際)比較で用いられる数値においても、こ
  の財投債は除かれている。財政投融資特別会計自体が、政府
  ではなく、擬制的に「公的金融機関」に分類されているから
  である。しかし、意外なほどに、これらの事実に対する注目
  度は低い。では、なぜ、このような分類が適用されるのだろ
  うか?
   財政投融資とは、「国の信用や制度に基づいて調達した有
  償の公的資金を用いて、公庫、独立行政法人・特殊法人、国
  の特別会計や地方公共団体に対して行う長期・低利の資金供
  給」のことであり、その原資の中心を担っているのが財投債
  である。──ニッセイ基礎研究所 https://bit.ly/38kxr8Y
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橋本龍太郎元総理.jpg
橋本龍太郎元総理
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする