2019年12月03日

●「IMF専務理事消費税15%発言」(EJ第5142号)

 2019年11月25日のことです。国際通貨基金(IMF)
のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「2030
年までに15%、50年までに20%へ増税する必要がある」と
の見解を発表しています。10月に10%への消費増税をしたば
かりであり、ネットなどでは「余計なお世話である」「内政干渉
そのもの」「あなたにいわれたくない」など、不満の声が、たく
さん上がっています。
 確かに10年先の話ではあるものの、「次は15%」といわれ
ると、それだけで、人々の消費意欲とか投資意欲が損なわれ、マ
イナスであるとの批判が渦巻いています。
 実は、この発言のバックに日本の財務省がいます。彼らは、早
くも国民に対して「次は15%」という増税の刷り込みをIMF
を利用して行ったのです。これについて、高橋洋一氏は『夕刊フ
ジ』の自身のコラムで、次のように書いています。
─────────────────────────────
 専務理事の来日は、IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国
と毎年定例的に行っている経済に関する審査「4条協議」に合わ
せたもので、協議の終了と対日報告書の発表を受けて記者会見し
た。対日4条協議はIMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・
金融情報を収集するとともに、その国の経済状況および政策につ
いて政府当局者等と協議する。筆者も、現役官僚のときに協議に
参加したこともある。日本側は財務省、内閣府等の課長補佐レベ
ルの実務担当者が中心であるが、IMFの副専務理事、理事や事
務局への出向者も多い財務省が日本側をリードし対応していた。
 対日報告書はIMFのものだが、日本政府、特に財務省の意向
が盛り込まれることもしばしばだ。IMFとしても、日本政府の
意に反することをあえて盛り込むのは政治リスクもあるので、日
本政府の抵抗のないものを採用しがちだ。財務省も、あえて外圧
を使ってでも、消費増税を打ち出すのがいいと考えているフシも
ある。その結果、対日報告書に消費増税が盛り込まれることとな
る。今回の専務理事の発言も、これまでと同じ背景だろう。
       ──【日本の解き方】 https://bit.ly/35XyOZf ─────────────────────────────
 IMF本部は、米ワシントンDCにありますが、そこにはIM
F理事室という部屋があり、日本の財務省から多くの職員が出向
して勤務しています。日本人が多いので、普段は英語ではなく日
本語で話しており、英語に不慣れな日本人駐在記者に重宝されて
います。日本のメディアが「ワシントン発」としてIMFのニュ
ースを流すときは、理事室がソースであることが多いのです。
 したがって、今回の専務理事の発言も財務省のレクを受けてお
り、財務省の意向に反する発言は出ないようになっています。し
かし、この発言を聞く日本人としては、「IMFまで消費税15
%が必要だといっている」として、重く受け止めてしまう傾向が
あります。財務省は、いわゆる「ガイアツ(外圧)」を利用して
増税の必要性をまんまとアッピールしたのです。
 財務省のやっていることは、犯罪的ですらあります。既に述べ
ているように、消費税を導入した頃から、法人税は7兆円減って
います。所得税も8兆円減っており、あわせて15兆円も減って
います。その間に消費税は13兆円増えたので、法人税と所得税
が減った分の83%を消費税がカバーしていることになります。
「大企業と金持ちには減税、庶民には増税」、まるで時代劇の悪
代官がやるような悪政です。
 財務省が、消費税を増税したがる理由は、一つはそれが「安定
財源」であって、経済が不況であろうが、なんであろうが、安定
的に取ることができるという点にあります。もう一つは、自分た
ちの輝かしい老後のために、大企業や金持と組んで、所得税や法
人税を減税するための「補填財源」として消費税を位置づけいて
いるフシがあります。
 藤井聡京都大学大学院教授は、「消費税は人頭税である」とし
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 よく言われる、「人頭税」っていう考え方がありますが、消費
税はそれに近いですよね。病気だろうが死にかけていようが、と
りあえず金を払えっていう話。一方で、累進性のある所得税は、
お金持ちからたくさん取りますし、法人税は「利益」にかかりま
すから、あまり儲かってない会社、例えば多くの中小企業は払わ
ないでいい。法人税や所得税を減税しておいて、消費税を増税す
るのは、格差を拡大することになりますね。(中略)
 消費増税という問題は、「成長」と「公平」という2つの問題
がある。消費増税をすると、成長もできなくなるし、格差も拡大
する。どっちの観点からもおかしいのが、消費税だ、ということ
です。──「別冊クライテリオン」増刊号/2018年12月号
           『消費増税を凍結せよ』/啓文社書房刊
─────────────────────────────
 確かに藤井教授のいわれる通りです。法人税は利益の出ていな
い赤字企業にはかからないし、所得税も所得の多寡に応じてかか
る税であるので、ある意味公平です。
 しかし消費税は、家計の状況が苦しい人や、所得の少ない人か
らも同率の税を徴収するので、情け容赦がない、一番残酷な税と
いえます。食料品に対する軽減税率といっても、主要国では0%
であるのに、日本では8%も徴収するのです。ちっとも「軽減」
税率ではなく、まさしく人頭税そのものです。そのため、萩生田
文科大臣ではありませんが、庶民は「身の丈に合わせて生きて行
くのに必要な食料品を買う」しかないのです。
 ヘリコプターマネーについても、財務省は御用学者を集めて理
論武装し、絶対認めない体制を敷いています。何しろ、ヘリマネ
政策を勧めるノーベル経済学賞受賞のスティグリッツコロンビア
大学教授のことを「スティグリッツ教授の理論は違っている」と
いうのですから、大変な自信です。
            ──[消費税増税を考える/040]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の消費税率さらに段階的に引き上げを」/IMF
  ───────────────────────────
   先月、IMF=国際通貨基金のトップに就任したゲオルギ
  エワ専務理事が来日し、高齢化によって増え続ける社会保障
  費を賄うため、日本では消費税率をさらに段階的に引き上げ
  る必要があるという認識を示しました。ゲオルギエワ専務理
  事は、都内で開いた記者会見で日本の財政について問われた
  のに対し「IMFとしては、日本は消費税により頼れる余地
  があると考えている」と述べました。
   会見に合わせて公表されたIMFの声明では、高齢化によ
  って増え続ける社会保障費の負担を賄うためには、消費税率
  を2030年までに15%に、2050年までに20%に、
  段階的に引き上げる必要があるとしています。
   またゲオルギエワ専務理事は、日本経済の見通しについて
  実質のGDPでことしは0・8%、来年は0・5%の伸びを
  見込んでいるとしたうえで、「日本経済の回復は世界的な景
  気減速と不確実性、それに日本自身の高齢化と人口減少の動
  きによって試されることになる」と述べました。
   そのうえでこれまで政府や日銀が進めてきた金融政策や財
  政政策、それに構造改革を改善する必要があると指摘しまし
  た。具体的には短期的な経済成長を維持するための財政政策
  や働く人たちの生産性を上げる労働市場の改革などの構造改
  革を再び活発に行うことが不可欠だなどとしています。
                  https://bit.ly/34IgN0x
  ───────────────────────────

ゲオルギエワIMF専務理事.jpg
  ゲオルギエワIMF専務理事
posted by 平野 浩 at 13:39| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

●「マネタリーベース正しく理解する」(EJ第5141号)

 11月29日のEJで、アデア・ターナー元英国金融サービス
機構長官の話を取り上げましたが、民間銀行の信用創造について
次のように述べています。
─────────────────────────────
 民間金融機関の信用創造を厳しく規制するとともに、政府と中
央銀行については、インフレ目標の厳守を前提に、ヘリコプター
マネーを実施すべきである。
     ──アデア・ターナー元英国金融サービス機構長長官
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 ここで、「民間金融機関の信用創造」とは何かについて、考え
る必要があります。お金を作っているのは、日銀だけではなく、
民間銀行でも作っているのです。それが「民間金融機関の信用創
造」です。
 それでは、銀行はどのようにして、お金を生み出しているので
しょうか。
 銀行というのは、顧客から預かっている預金の範囲内でお金を
貸し出しているのではないのです。預かっているお金よりもはる
かに多い量のお金を貸し出しています。
 誰かがA銀行に100万円預けたとします。A銀行は、法定準
備率分(1%とします)の1万円を中央銀行である日銀に預ける
と、残りの99万円を誰かに貸すことができます。一般に銀行か
らお金を借りるときは、その銀行の口座を開設するので、銀行は
融資のときは自行内の借り手の口座に99万円と書くだけです。
この時点において、最初に預けた100万円はそのままですから
A銀行の預金は199万円に増えたことになります。
 借り手はそのお金を使い、B銀行の誰かの口座に振り込んだと
すると、B銀行はその金額の法定準備率分を日銀に預け、残りを
誰かに貸すことができます。この時点で、最初の100万円の預
金も、B銀行で99万円の振込みを受け取った人の預金も存在し
ていますから、さらに98万100円が生まれ、合計300万円
近くになっています。このようにして借金とお金がグルグルと回
りながら増えて行き、仮に法定準備率が1%だとすると、100
万円の預金から、最大1億円のお金を作り出すことができるので
す。これを「信用創造」といい、それが現代のお金の発行の仕組
みになっています。なぜ、最大1億円であるかについて、次の式
をご覧ください。
─────────────────────────────
        100万円÷0・01=1億円
─────────────────────────────
 歴史を振り返ってみると、日本のバブルは民間銀行がこの信用
創造を膨らませ過ぎたことが原因であり、2008年9月のリー
マンショックが100年に一度の経済危機をもたらしたのも、民
間銀行が金融工学を使って、とんでもない信用創造を行ったから
であるといえます。
 アデア・ターナー元長官が、このような歴史的事実を踏まえて
規制すべきは民間金融機関であって、政府や中央銀行にはもっと
自由度を与えてもよいのではないかといっているのです。
 この「信用創造」に関連して、「マネタリーベース」という言
葉を理解する必要があります。
─────────────────────────────
 マネタリーベースとは、「日本銀行が供給する通貨」のことで
ある。具体的には市中に出回っているお金である「流通現金」の
ことである。流通現金とは、次の合計値である。
   流通現金=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+
        「日銀当座預金」
─────────────────────────────
 「日本銀行券発行高」とは、1万円札などの「お札」のことで
す。毎年どのくらい作られているのかというと、最新の2019
年度については、全部で30億枚、内訳は次の通りです。
─────────────────────────────
       1万円券 ・・・ 10・0億枚
       5千円券 ・・・  2・4億枚
       2千円券 ・・・    0億枚
       1千円券 ・・・ 17・6億枚
─────────────────────────────
 「貨幣流通高」とは10円玉などの貨幣(硬貨)の流通高を合
計したものです。なぜ、「発行高」ではなく、「流通高」になっ
ているのかというと、貨幣については、日銀保有分が除かれてい
るので、「流通高」と表記することになっています。
 「日銀当座預金」とは、都市銀行や地方銀行などの金融機関が
日銀に開設しておかなければならない口座のことです。いわゆる
「マイナス金利」は、この当座預金の一部にのみ、かかっていま
す。日銀当座預金は、詳しい説明は避けますが、次の3層になっ
ており、金利との関係は次の通りです。
─────────────────────────────
       政策金利残高 ・・・ −0・1%
      マクロ加算残高 ・・・  0・0%
         基礎残高 ・・・ +0・1%
─────────────────────────────
 この3層のうちの「政策金利残高」には、「−0・1%」」の
マイナス金利がかかっています。なぜ、マイナス金利をつけるの
かというと、ごく簡単にいうと、多くなり過ぎる日銀当座預金を
抑えるためです。
 マネタリーベースとは、上記の「日本銀行券発行高」と「貨幣
流通高」と「日銀当座預金」の合計をいいます。つまり、日本中
に流通しているお金の合計です。マネタリーベースは、通貨発行
益に深い関係があります。明日のEJで説明します。
            ──[消費税増税を考える/039]

≪画像および関連情報≫
 ●マネーサプライ(貨幣供給量)とは何か
  ───────────────────────────
   貨幣(マネー)は、商品を購入したり、企業が設備投資を
  する場合など、経済活動のすべてにおいて必要なものだ。日
  本経済を大きな旅客機、消費や設備投資などの経済活動をそ
  のエンジンとすると、貨幣は「燃料」に相当する。燃料が十
  分に供給されていれば、エンジンの出力も強くなって機体が
  上昇し、景気が良くなる。反対に燃料の供給が不十分だと、
  エンジンの出力が低下、機体が下降して、景気が悪化する。
   この貨幣の量を示すのが、マネーサプライ(貨幣供給量)
  であり、旅客機のコックピットに取り付けられた「燃料計」
  ということができる。
   貨幣の供給源は、中央銀行である日本銀行(日銀)だ。日
  銀は、銀行を中心とした金融機関に貨幣を供給、銀行はそれ
  を企業や個人に融資する。融資を受けた企業が機械を購入す
  るなどの設備投資を行えば、機械を製造した企業に売却代金
  としての貨幣が流れる。また、個人が銀行から融資を受けて
  自動車を購入した場合には、自動車メーカーに貨幣が渡り、
  従業員の給料や新たな設備投資となって、さらなる流れが発
  生する。日銀が供給した貨幣は、こうした様々なプロセスを
  経て、経済全体に行き渡っていくことになる。日銀が供給す
  る貨幣が、流通している貨幣の源になることから、これをマ
  ネタリーベース、あるいは、ハイパワードマネーと呼んでい
  る。              https://bit.ly/37VfP3h
  ───────────────────────────

銀行の信用創造のメカニズム.jpg
銀行の信用創造のメカニズム

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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