2019年12月02日

●「デフレなのになぜ緊縮策をとるか」(EJ第5140号)

 このところEJでは「財政ファイナンス」について書いてきて
います。意図的にではなく、アベノミクスによる金融緩和の結果
として、日銀は、2018年末時点で、478兆円の国債を保有
するにいたっており、政府の国債などの債務残高は1111兆円
と過去最高になっています。
 ここまで書いてきたように、財政ファイナンス的に考えると、
政府債務残高から日銀の保有する478兆円は差し引きしてよい
ということになります。しかし、一部の読者からの反応や何人か
に意見を聞いてみると、財政上非常に危険なことを書いていると
いう雰囲気であり、少なくとも本当にできることだとは思ってい
ないようです。財務省によるプロパガンダがここまで浸透してき
ていることを恐ろしく感じます。この問題に関しては、日本人の
頭が凝り固まっており、「そんな意見もあるのか」と、柔軟に考
えられなくなっているように感じます。
 ちなみに「プロパガンダ」といういい方は少しきついので「ポ
ジショントーク」というべきであるという意見もあります。
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 ポジショントークとは、自分の立場、立ち位置に由来して発言
を行うことである。転じて、自分の立場を利用して自分に有利な
状況になるように行う発言のことも指すようになっている。
                    ──ウィキペディア
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 財政ファイナンスに関する批判は、日銀が国債の買い入れを続
けると、ある日突然、とてつもなく高いインフレが日本経済を襲
い、それ以降はインフレのコントロールが利かなくなってしまう
というリスクが起きるというものです。
 突然、高率のインフレが襲ってくる。これに関して、森永卓郎
氏は、戦後の日本と米国の例を上げて説明しています。
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 たとえば、日中戦争から太平洋戦争に投入された戦費は、その
ほとんどが戦時国債によって調達された。当時の国民は、国から
国債を購入するよう強く推奨されたが、国民生活に余裕があるは
ずもなく、その大部分は日銀によって引き受けられた。日本政府
は、このときの国債を支払い不能にせず、戦後も償還を続けたが
戦争中から始まった高率のインフレで、償還金の実質的な価値は
ほとんどなくなってしまった。
 もう一つ、高率のインフレを招いた例として、挙げられること
が多いのが、1970年代のアメリカだ。ただし、このときのイ
ンフレは、1960年代後半からの財政拡張によってもたらされ
たインフレに石油ショックの影響が重なって生じたものだ。しか
も、突然インフレ率が高まったという事実はなく、インフレ率が
1960年代後半から徐々に高まっていった。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
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 経済の歴史を調べてみると、1990年代以降は先進国では高
率のインフレは生じていないのです。リーマンショック後の英国
は、資金供給を5倍以上に引き上げていますが、インフレは生じ
ていません。そして何よりの証明は日本です。日銀が年間80兆
円以上の国債を買い続けていますが、物価は目標である2%に届
いていません。物価が上がりにくくなっているのです。
 これに関してエコノミストの水野和夫氏は、自著のなかで次の
ように述べています。
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 需要超過経済から供給超過経済への転換と域内経済からグロー
バル経済への転換という大きな構造変化のなかで、そもそも物価
が上がりにくい経済が、生まれているのではないだろうか。特に
近年まで強烈な金融引き締めを続けてきた日本経済は、少々のこ
とでは、物価が上がらなくなっている。    ──水野和夫著
                    『株式会社の終焉』
           ディスカヴァー・トゥエンティンワン刊
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 重要なことは、よほどのことがない限り、物価が上がらない経
済になっているということです。つまり、インフレに強い経済が
出来上がっているということを意味します。これは、それだけ財
政を動かせる余裕が増えていることを意味しています。
 添付ファイルをご覧ください。これは、ドル建てで見た「一人
当りGDPの推移」をあらわしています。このグラフで注目すべ
きは、OECD(経済協力開発機構)の平均を超えているかどう
かです。日本は、1990年には、米国、フランスに次いで第3
位で、OECD平均を大きく上回っていたのですが、2002年
頃から、英国、ドイツにも抜かれ、OECD水準を大きく下回る
水準になっています。
 どうして、日本経済は伸びないのでしょうか。
 それは、ここまで述べてきているように、経済政策を誤ってい
るからです。一言でいうと、「デフレから脱却する」という名の
下に、日銀による大規模金融緩和を行いながら、「減税」をやら
なければいけないところで、正反対の「増税」をやっているから
です。つまり、安部政権は一貫して「緊縮政策」をとってきてい
るのです。それは現在もまだ続いています。
 5%だった消費税の税率を2回にわたって10%に倍増させる
一方で大企業については法人税を減税させています。しかしそれ
は従業員には還元されず、その結果、大企業の内部留保は426
兆円という空前の規模に達しています。安部政権の「庶民には増
税/大企業には減税」の悪政です。それでも日本国民は、安倍政
権に対して、多過ぎる支持を与えています。
 それに加えて、さらにマクロ経済スライドで年金を減額させ、
高齢者の医療費の自己負担を引き上げることを決めています。緊
縮、緊縮のオンパレードです。これでは、デフレから、いつまで
経っても脱却できません。──[消費税増税を考える/038]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ「446兆円」も貯め込むのか?
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   日本企業の内部留保が6年連続で過去最高を更新したこと
  が明らかとなった。活況を呈する米国経済の追い風を受け、
  輸出産業を中心に好業績が続いているが、なぜ日本企業は利
  益を貯め込もうとしているのか、ライバル同士であるソニー
  とパナソニックの比較から探った。
   財務省が公表した法人企業統計によると、2017年度に
  おける日本企業(金融・保険業を除く)の内部留保は446
  兆4844億円と過去最高を記録した。昨年より40兆円以
  上も増えており、過去最高を更新するのは6年連続である。
   内部留保は貸借対照表(バランスシート)の利益剰余金の
  ことを指すケースが多いが、あくまでも会計上の概念であり
  実際に同額の現金が存在しているわけではない。しかしなが
  ら、内部留保がすべて資産に変わっているわけではなく、実
  際のところ半額程度の現金が何もしない状況で遊んでいる。
                  https://bit.ly/37SOwXk
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 ●グラフ出典/森永卓郎著/角川新書K126の前掲書より

1人当りのGDPの推移(ドル建て).jpg
1人当りのGDPの推移(ドル建て)
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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