2019年12月02日

●「デフレなのになぜ緊縮策をとるか」(EJ第5140号)

 このところEJでは「財政ファイナンス」について書いてきて
います。意図的にではなく、アベノミクスによる金融緩和の結果
として、日銀は、2018年末時点で、478兆円の国債を保有
するにいたっており、政府の国債などの債務残高は1111兆円
と過去最高になっています。
 ここまで書いてきたように、財政ファイナンス的に考えると、
政府債務残高から日銀の保有する478兆円は差し引きしてよい
ということになります。しかし、一部の読者からの反応や何人か
に意見を聞いてみると、財政上非常に危険なことを書いていると
いう雰囲気であり、少なくとも本当にできることだとは思ってい
ないようです。財務省によるプロパガンダがここまで浸透してき
ていることを恐ろしく感じます。この問題に関しては、日本人の
頭が凝り固まっており、「そんな意見もあるのか」と、柔軟に考
えられなくなっているように感じます。
 ちなみに「プロパガンダ」といういい方は少しきついので「ポ
ジショントーク」というべきであるという意見もあります。
─────────────────────────────
 ポジショントークとは、自分の立場、立ち位置に由来して発言
を行うことである。転じて、自分の立場を利用して自分に有利な
状況になるように行う発言のことも指すようになっている。
                    ──ウィキペディア
─────────────────────────────
 財政ファイナンスに関する批判は、日銀が国債の買い入れを続
けると、ある日突然、とてつもなく高いインフレが日本経済を襲
い、それ以降はインフレのコントロールが利かなくなってしまう
というリスクが起きるというものです。
 突然、高率のインフレが襲ってくる。これに関して、森永卓郎
氏は、戦後の日本と米国の例を上げて説明しています。
─────────────────────────────
 たとえば、日中戦争から太平洋戦争に投入された戦費は、その
ほとんどが戦時国債によって調達された。当時の国民は、国から
国債を購入するよう強く推奨されたが、国民生活に余裕があるは
ずもなく、その大部分は日銀によって引き受けられた。日本政府
は、このときの国債を支払い不能にせず、戦後も償還を続けたが
戦争中から始まった高率のインフレで、償還金の実質的な価値は
ほとんどなくなってしまった。
 もう一つ、高率のインフレを招いた例として、挙げられること
が多いのが、1970年代のアメリカだ。ただし、このときのイ
ンフレは、1960年代後半からの財政拡張によってもたらされ
たインフレに石油ショックの影響が重なって生じたものだ。しか
も、突然インフレ率が高まったという事実はなく、インフレ率が
1960年代後半から徐々に高まっていった。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 経済の歴史を調べてみると、1990年代以降は先進国では高
率のインフレは生じていないのです。リーマンショック後の英国
は、資金供給を5倍以上に引き上げていますが、インフレは生じ
ていません。そして何よりの証明は日本です。日銀が年間80兆
円以上の国債を買い続けていますが、物価は目標である2%に届
いていません。物価が上がりにくくなっているのです。
 これに関してエコノミストの水野和夫氏は、自著のなかで次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 需要超過経済から供給超過経済への転換と域内経済からグロー
バル経済への転換という大きな構造変化のなかで、そもそも物価
が上がりにくい経済が、生まれているのではないだろうか。特に
近年まで強烈な金融引き締めを続けてきた日本経済は、少々のこ
とでは、物価が上がらなくなっている。    ──水野和夫著
                    『株式会社の終焉』
           ディスカヴァー・トゥエンティンワン刊
─────────────────────────────
 重要なことは、よほどのことがない限り、物価が上がらない経
済になっているということです。つまり、インフレに強い経済が
出来上がっているということを意味します。これは、それだけ財
政を動かせる余裕が増えていることを意味しています。
 添付ファイルをご覧ください。これは、ドル建てで見た「一人
当りGDPの推移」をあらわしています。このグラフで注目すべ
きは、OECD(経済協力開発機構)の平均を超えているかどう
かです。日本は、1990年には、米国、フランスに次いで第3
位で、OECD平均を大きく上回っていたのですが、2002年
頃から、英国、ドイツにも抜かれ、OECD水準を大きく下回る
水準になっています。
 どうして、日本経済は伸びないのでしょうか。
 それは、ここまで述べてきているように、経済政策を誤ってい
るからです。一言でいうと、「デフレから脱却する」という名の
下に、日銀による大規模金融緩和を行いながら、「減税」をやら
なければいけないところで、正反対の「増税」をやっているから
です。つまり、安部政権は一貫して「緊縮政策」をとってきてい
るのです。それは現在もまだ続いています。
 5%だった消費税の税率を2回にわたって10%に倍増させる
一方で大企業については法人税を減税させています。しかしそれ
は従業員には還元されず、その結果、大企業の内部留保は426
兆円という空前の規模に達しています。安部政権の「庶民には増
税/大企業には減税」の悪政です。それでも日本国民は、安倍政
権に対して、多過ぎる支持を与えています。
 それに加えて、さらにマクロ経済スライドで年金を減額させ、
高齢者の医療費の自己負担を引き上げることを決めています。緊
縮、緊縮のオンパレードです。これでは、デフレから、いつまで
経っても脱却できません。──[消費税増税を考える/038]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ「446兆円」も貯め込むのか?
  ───────────────────────────
   日本企業の内部留保が6年連続で過去最高を更新したこと
  が明らかとなった。活況を呈する米国経済の追い風を受け、
  輸出産業を中心に好業績が続いているが、なぜ日本企業は利
  益を貯め込もうとしているのか、ライバル同士であるソニー
  とパナソニックの比較から探った。
   財務省が公表した法人企業統計によると、2017年度に
  おける日本企業(金融・保険業を除く)の内部留保は446
  兆4844億円と過去最高を記録した。昨年より40兆円以
  上も増えており、過去最高を更新するのは6年連続である。
   内部留保は貸借対照表(バランスシート)の利益剰余金の
  ことを指すケースが多いが、あくまでも会計上の概念であり
  実際に同額の現金が存在しているわけではない。しかしなが
  ら、内部留保がすべて資産に変わっているわけではなく、実
  際のところ半額程度の現金が何もしない状況で遊んでいる。
                  https://bit.ly/37SOwXk
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典/森永卓郎著/角川新書K126の前掲書より

1人当りのGDPの推移(ドル建て).jpg
1人当りのGDPの推移(ドル建て)
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2019年12月03日

●「マネタリーベース正しく理解する」(EJ第5141号)

 11月29日のEJで、アデア・ターナー元英国金融サービス
機構長官の話を取り上げましたが、民間銀行の信用創造について
次のように述べています。
─────────────────────────────
 民間金融機関の信用創造を厳しく規制するとともに、政府と中
央銀行については、インフレ目標の厳守を前提に、ヘリコプター
マネーを実施すべきである。
     ──アデア・ターナー元英国金融サービス機構長長官
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 ここで、「民間金融機関の信用創造」とは何かについて、考え
る必要があります。お金を作っているのは、日銀だけではなく、
民間銀行でも作っているのです。それが「民間金融機関の信用創
造」です。
 それでは、銀行はどのようにして、お金を生み出しているので
しょうか。
 銀行というのは、顧客から預かっている預金の範囲内でお金を
貸し出しているのではないのです。預かっているお金よりもはる
かに多い量のお金を貸し出しています。
 誰かがA銀行に100万円預けたとします。A銀行は、法定準
備率分(1%とします)の1万円を中央銀行である日銀に預ける
と、残りの99万円を誰かに貸すことができます。一般に銀行か
らお金を借りるときは、その銀行の口座を開設するので、銀行は
融資のときは自行内の借り手の口座に99万円と書くだけです。
この時点において、最初に預けた100万円はそのままですから
A銀行の預金は199万円に増えたことになります。
 借り手はそのお金を使い、B銀行の誰かの口座に振り込んだと
すると、B銀行はその金額の法定準備率分を日銀に預け、残りを
誰かに貸すことができます。この時点で、最初の100万円の預
金も、B銀行で99万円の振込みを受け取った人の預金も存在し
ていますから、さらに98万100円が生まれ、合計300万円
近くになっています。このようにして借金とお金がグルグルと回
りながら増えて行き、仮に法定準備率が1%だとすると、100
万円の預金から、最大1億円のお金を作り出すことができるので
す。これを「信用創造」といい、それが現代のお金の発行の仕組
みになっています。なぜ、最大1億円であるかについて、次の式
をご覧ください。
─────────────────────────────
        100万円÷0・01=1億円
─────────────────────────────
 歴史を振り返ってみると、日本のバブルは民間銀行がこの信用
創造を膨らませ過ぎたことが原因であり、2008年9月のリー
マンショックが100年に一度の経済危機をもたらしたのも、民
間銀行が金融工学を使って、とんでもない信用創造を行ったから
であるといえます。
 アデア・ターナー元長官が、このような歴史的事実を踏まえて
規制すべきは民間金融機関であって、政府や中央銀行にはもっと
自由度を与えてもよいのではないかといっているのです。
 この「信用創造」に関連して、「マネタリーベース」という言
葉を理解する必要があります。
─────────────────────────────
 マネタリーベースとは、「日本銀行が供給する通貨」のことで
ある。具体的には市中に出回っているお金である「流通現金」の
ことである。流通現金とは、次の合計値である。
   流通現金=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+
        「日銀当座預金」
─────────────────────────────
 「日本銀行券発行高」とは、1万円札などの「お札」のことで
す。毎年どのくらい作られているのかというと、最新の2019
年度については、全部で30億枚、内訳は次の通りです。
─────────────────────────────
       1万円券 ・・・ 10・0億枚
       5千円券 ・・・  2・4億枚
       2千円券 ・・・    0億枚
       1千円券 ・・・ 17・6億枚
─────────────────────────────
 「貨幣流通高」とは10円玉などの貨幣(硬貨)の流通高を合
計したものです。なぜ、「発行高」ではなく、「流通高」になっ
ているのかというと、貨幣については、日銀保有分が除かれてい
るので、「流通高」と表記することになっています。
 「日銀当座預金」とは、都市銀行や地方銀行などの金融機関が
日銀に開設しておかなければならない口座のことです。いわゆる
「マイナス金利」は、この当座預金の一部にのみ、かかっていま
す。日銀当座預金は、詳しい説明は避けますが、次の3層になっ
ており、金利との関係は次の通りです。
─────────────────────────────
       政策金利残高 ・・・ −0・1%
      マクロ加算残高 ・・・  0・0%
         基礎残高 ・・・ +0・1%
─────────────────────────────
 この3層のうちの「政策金利残高」には、「−0・1%」」の
マイナス金利がかかっています。なぜ、マイナス金利をつけるの
かというと、ごく簡単にいうと、多くなり過ぎる日銀当座預金を
抑えるためです。
 マネタリーベースとは、上記の「日本銀行券発行高」と「貨幣
流通高」と「日銀当座預金」の合計をいいます。つまり、日本中
に流通しているお金の合計です。マネタリーベースは、通貨発行
益に深い関係があります。明日のEJで説明します。
            ──[消費税増税を考える/039]

≪画像および関連情報≫
 ●マネーサプライ(貨幣供給量)とは何か
  ───────────────────────────
   貨幣(マネー)は、商品を購入したり、企業が設備投資を
  する場合など、経済活動のすべてにおいて必要なものだ。日
  本経済を大きな旅客機、消費や設備投資などの経済活動をそ
  のエンジンとすると、貨幣は「燃料」に相当する。燃料が十
  分に供給されていれば、エンジンの出力も強くなって機体が
  上昇し、景気が良くなる。反対に燃料の供給が不十分だと、
  エンジンの出力が低下、機体が下降して、景気が悪化する。
   この貨幣の量を示すのが、マネーサプライ(貨幣供給量)
  であり、旅客機のコックピットに取り付けられた「燃料計」
  ということができる。
   貨幣の供給源は、中央銀行である日本銀行(日銀)だ。日
  銀は、銀行を中心とした金融機関に貨幣を供給、銀行はそれ
  を企業や個人に融資する。融資を受けた企業が機械を購入す
  るなどの設備投資を行えば、機械を製造した企業に売却代金
  としての貨幣が流れる。また、個人が銀行から融資を受けて
  自動車を購入した場合には、自動車メーカーに貨幣が渡り、
  従業員の給料や新たな設備投資となって、さらなる流れが発
  生する。日銀が供給した貨幣は、こうした様々なプロセスを
  経て、経済全体に行き渡っていくことになる。日銀が供給す
  る貨幣が、流通している貨幣の源になることから、これをマ
  ネタリーベース、あるいは、ハイパワードマネーと呼んでい
  る。              https://bit.ly/37VfP3h
  ───────────────────────────

銀行の信用創造のメカニズム.jpg
銀行の信用創造のメカニズム

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●「IMF専務理事消費税15%発言」(EJ第5142号)

 2019年11月25日のことです。国際通貨基金(IMF)
のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「2030
年までに15%、50年までに20%へ増税する必要がある」と
の見解を発表しています。10月に10%への消費増税をしたば
かりであり、ネットなどでは「余計なお世話である」「内政干渉
そのもの」「あなたにいわれたくない」など、不満の声が、たく
さん上がっています。
 確かに10年先の話ではあるものの、「次は15%」といわれ
ると、それだけで、人々の消費意欲とか投資意欲が損なわれ、マ
イナスであるとの批判が渦巻いています。
 実は、この発言のバックに日本の財務省がいます。彼らは、早
くも国民に対して「次は15%」という増税の刷り込みをIMF
を利用して行ったのです。これについて、高橋洋一氏は『夕刊フ
ジ』の自身のコラムで、次のように書いています。
─────────────────────────────
 専務理事の来日は、IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国
と毎年定例的に行っている経済に関する審査「4条協議」に合わ
せたもので、協議の終了と対日報告書の発表を受けて記者会見し
た。対日4条協議はIMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・
金融情報を収集するとともに、その国の経済状況および政策につ
いて政府当局者等と協議する。筆者も、現役官僚のときに協議に
参加したこともある。日本側は財務省、内閣府等の課長補佐レベ
ルの実務担当者が中心であるが、IMFの副専務理事、理事や事
務局への出向者も多い財務省が日本側をリードし対応していた。
 対日報告書はIMFのものだが、日本政府、特に財務省の意向
が盛り込まれることもしばしばだ。IMFとしても、日本政府の
意に反することをあえて盛り込むのは政治リスクもあるので、日
本政府の抵抗のないものを採用しがちだ。財務省も、あえて外圧
を使ってでも、消費増税を打ち出すのがいいと考えているフシも
ある。その結果、対日報告書に消費増税が盛り込まれることとな
る。今回の専務理事の発言も、これまでと同じ背景だろう。
       ──【日本の解き方】 https://bit.ly/35XyOZf ─────────────────────────────
 IMF本部は、米ワシントンDCにありますが、そこにはIM
F理事室という部屋があり、日本の財務省から多くの職員が出向
して勤務しています。日本人が多いので、普段は英語ではなく日
本語で話しており、英語に不慣れな日本人駐在記者に重宝されて
います。日本のメディアが「ワシントン発」としてIMFのニュ
ースを流すときは、理事室がソースであることが多いのです。
 したがって、今回の専務理事の発言も財務省のレクを受けてお
り、財務省の意向に反する発言は出ないようになっています。し
かし、この発言を聞く日本人としては、「IMFまで消費税15
%が必要だといっている」として、重く受け止めてしまう傾向が
あります。財務省は、いわゆる「ガイアツ(外圧)」を利用して
増税の必要性をまんまとアッピールしたのです。
 財務省のやっていることは、犯罪的ですらあります。既に述べ
ているように、消費税を導入した頃から、法人税は7兆円減って
います。所得税も8兆円減っており、あわせて15兆円も減って
います。その間に消費税は13兆円増えたので、法人税と所得税
が減った分の83%を消費税がカバーしていることになります。
「大企業と金持ちには減税、庶民には増税」、まるで時代劇の悪
代官がやるような悪政です。
 財務省が、消費税を増税したがる理由は、一つはそれが「安定
財源」であって、経済が不況であろうが、なんであろうが、安定
的に取ることができるという点にあります。もう一つは、自分た
ちの輝かしい老後のために、大企業や金持と組んで、所得税や法
人税を減税するための「補填財源」として消費税を位置づけいて
いるフシがあります。
 藤井聡京都大学大学院教授は、「消費税は人頭税である」とし
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 よく言われる、「人頭税」っていう考え方がありますが、消費
税はそれに近いですよね。病気だろうが死にかけていようが、と
りあえず金を払えっていう話。一方で、累進性のある所得税は、
お金持ちからたくさん取りますし、法人税は「利益」にかかりま
すから、あまり儲かってない会社、例えば多くの中小企業は払わ
ないでいい。法人税や所得税を減税しておいて、消費税を増税す
るのは、格差を拡大することになりますね。(中略)
 消費増税という問題は、「成長」と「公平」という2つの問題
がある。消費増税をすると、成長もできなくなるし、格差も拡大
する。どっちの観点からもおかしいのが、消費税だ、ということ
です。──「別冊クライテリオン」増刊号/2018年12月号
           『消費増税を凍結せよ』/啓文社書房刊
─────────────────────────────
 確かに藤井教授のいわれる通りです。法人税は利益の出ていな
い赤字企業にはかからないし、所得税も所得の多寡に応じてかか
る税であるので、ある意味公平です。
 しかし消費税は、家計の状況が苦しい人や、所得の少ない人か
らも同率の税を徴収するので、情け容赦がない、一番残酷な税と
いえます。食料品に対する軽減税率といっても、主要国では0%
であるのに、日本では8%も徴収するのです。ちっとも「軽減」
税率ではなく、まさしく人頭税そのものです。そのため、萩生田
文科大臣ではありませんが、庶民は「身の丈に合わせて生きて行
くのに必要な食料品を買う」しかないのです。
 ヘリコプターマネーについても、財務省は御用学者を集めて理
論武装し、絶対認めない体制を敷いています。何しろ、ヘリマネ
政策を勧めるノーベル経済学賞受賞のスティグリッツコロンビア
大学教授のことを「スティグリッツ教授の理論は違っている」と
いうのですから、大変な自信です。
            ──[消費税増税を考える/040]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の消費税率さらに段階的に引き上げを」/IMF
  ───────────────────────────
   先月、IMF=国際通貨基金のトップに就任したゲオルギ
  エワ専務理事が来日し、高齢化によって増え続ける社会保障
  費を賄うため、日本では消費税率をさらに段階的に引き上げ
  る必要があるという認識を示しました。ゲオルギエワ専務理
  事は、都内で開いた記者会見で日本の財政について問われた
  のに対し「IMFとしては、日本は消費税により頼れる余地
  があると考えている」と述べました。
   会見に合わせて公表されたIMFの声明では、高齢化によ
  って増え続ける社会保障費の負担を賄うためには、消費税率
  を2030年までに15%に、2050年までに20%に、
  段階的に引き上げる必要があるとしています。
   またゲオルギエワ専務理事は、日本経済の見通しについて
  実質のGDPでことしは0・8%、来年は0・5%の伸びを
  見込んでいるとしたうえで、「日本経済の回復は世界的な景
  気減速と不確実性、それに日本自身の高齢化と人口減少の動
  きによって試されることになる」と述べました。
   そのうえでこれまで政府や日銀が進めてきた金融政策や財
  政政策、それに構造改革を改善する必要があると指摘しまし
  た。具体的には短期的な経済成長を維持するための財政政策
  や働く人たちの生産性を上げる労働市場の改革などの構造改
  革を再び活発に行うことが不可欠だなどとしています。
                  https://bit.ly/34IgN0x
  ───────────────────────────

ゲオルギエワIMF専務理事.jpg
  ゲオルギエワIMF専務理事
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2019年12月04日

●「IMF専務理事消費税15%発言」(EJ第5142号)

 2019年11月25日のことです。国際通貨基金(IMF)
のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「2030
年までに15%、50年までに20%へ増税する必要がある」と
の見解を発表しています。10月に10%への消費増税をしたば
かりであり、ネットなどでは「余計なお世話である」「内政干渉
そのもの」「あなたにいわれたくない」など、不満の声が、たく
さん上がっています。
 確かに10年先の話ではあるものの、「次は15%」といわれ
ると、それだけで、人々の消費意欲とか投資意欲が損なわれ、マ
イナスであるとの批判が渦巻いています。
 実は、この発言のバックに日本の財務省がいます。彼らは、早
くも国民に対して「次は15%」という増税の刷り込みをIMF
を利用して行ったのです。これについて、高橋洋一氏は『夕刊フ
ジ』の自身のコラムで、次のように書いています。
─────────────────────────────
 専務理事の来日は、IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国
と毎年定例的に行っている経済に関する審査「4条協議」に合わ
せたもので、協議の終了と対日報告書の発表を受けて記者会見し
た。対日4条協議はIMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・
金融情報を収集するとともに、その国の経済状況および政策につ
いて政府当局者等と協議する。筆者も、現役官僚のときに協議に
参加したこともある。日本側は財務省、内閣府等の課長補佐レベ
ルの実務担当者が中心であるが、IMFの副専務理事、理事や事
務局への出向者も多い財務省が日本側をリードし対応していた。
 対日報告書はIMFのものだが、日本政府、特に財務省の意向
が盛り込まれることもしばしばだ。IMFとしても、日本政府の
意に反することをあえて盛り込むのは政治リスクもあるので、日
本政府の抵抗のないものを採用しがちだ。財務省も、あえて外圧
を使ってでも、消費増税を打ち出すのがいいと考えているフシも
ある。その結果、対日報告書に消費増税が盛り込まれることとな
る。今回の専務理事の発言も、これまでと同じ背景だろう。
       ──【日本の解き方】 https://bit.ly/35XyOZf
─────────────────────────────
 IMF本部は、米ワシントンDCにありますが、そこにはIM
F理事室という部屋があり、日本の財務省から多くの職員が出向
して勤務しています。日本人が多いので、普段は英語ではなく日
本語で話しており、英語に不慣れな日本人駐在記者に重宝されて
います。日本のメディアが「ワシントン発」としてIMFのニュ
ースを流すときは、理事室がソースであることが多いのです。
 したがって、今回の専務理事の発言も財務省のレクを受けてお
り、財務省の意向に反する発言は出ないようになっています。し
かし、この発言を聞く日本人としては、「IMFまで消費税15
%が必要だといっている」として、重く受け止めてしまう傾向が
あります。財務省は、いわゆる「ガイアツ(外圧)」を利用して
増税の必要性をまんまとアッピールしたのです。
 財務省のやっていることは、犯罪的ですらあります。既に述べ
ているように、消費税を導入した頃から、法人税は7兆円減って
います。所得税も8兆円減っており、あわせて15兆円も減って
います。その間に消費税は13兆円増えたので、法人税と所得税
が減った分の83%を消費税がカバーしていることになります。
「大企業と金持ちには減税、庶民には増税」、まるで時代劇の悪
代官がやるような悪政です。
 財務省が、消費税を増税したがる理由は、一つはそれが「安定
財源」であって、経済が不況であろうが、なんであろうが、安定
的に取ることができるという点にあります。もう一つは、自分た
ちの輝かしい老後のために、大企業や金持と組んで、所得税や法
人税を減税するための「補填財源」として消費税を位置づけいて
いるフシがあります。
 藤井聡京都大学大学院教授は、「消費税は人頭税である」とし
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 よく言われる、「人頭税」っていう考え方がありますが、消費
税はそれに近いですよね。病気だろうが死にかけていようが、と
りあえず金を払えっていう話。一方で、累進性のある所得税は、
お金持ちからたくさん取りますし、法人税は「利益」にかかりま
すから、あまり儲かってない会社、例えば多くの中小企業は払わ
ないでいい。法人税や所得税を減税しておいて、消費税を増税す
るのは、格差を拡大することになりますね。(中略)
 消費増税という問題は、「成長」と「公平」という2つの問題
がある。消費増税をすると、成長もできなくなるし、格差も拡大
する。どっちの観点からもおかしいのが、消費税だ、ということ
です。──「別冊クライテリオン」増刊号/2018年12月号
           『消費増税を凍結せよ』/啓文社書房刊
─────────────────────────────
 確かに藤井教授のいわれる通りです。法人税は利益の出ていな
い赤字企業にはかからないし、所得税も所得の多寡に応じてかか
る税であるので、ある意味公平です。
 しかし消費税は、家計の状況が苦しい人や、所得の少ない人か
らも同率の税を徴収するので、情け容赦がない、一番残酷な税と
いえます。食料品に対する軽減税率といっても、主要国では0%
であるのに、日本では8%も徴収するのです。ちっとも「軽減」
税率ではなく、まさしく人頭税そのものです。そのため、萩生田
文科大臣ではありませんが、庶民は「身の丈に合わせて生きて行
くのに必要な食料品を買う」しかないのです。
 ヘリコプターマネーについても、財務省は御用学者を集めて理
論武装し、絶対認めない体制を敷いています。何しろ、ヘリマネ
政策を勧めるノーベル経済学賞受賞のスティグリッツコロンビア
大学教授のことを「スティグリッツ教授の理論は違っている」と
いうのですから、大変な自信です。
            ──[消費税増税を考える/040]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の消費税率さらに段階的に引き上げを」/IMF
  ───────────────────────────
   先月、IMF=国際通貨基金のトップに就任したゲオルギ
  エワ専務理事が来日し、高齢化によって増え続ける社会保障
  費を賄うため、日本では消費税率をさらに段階的に引き上げ
  る必要があるという認識を示しました。ゲオルギエワ専務理
  事は、都内で開いた記者会見で日本の財政について問われた
  のに対し「IMFとしては、日本は消費税により頼れる余地
  があると考えている」と述べました。
   会見に合わせて公表されたIMFの声明では、高齢化によ
  って増え続ける社会保障費の負担を賄うためには、消費税率
  を2030年までに15%に、2050年までに20%に、
  段階的に引き上げる必要があるとしています。
   またゲオルギエワ専務理事は、日本経済の見通しについて
  実質のGDPでことしは0・8%、来年は0・5%の伸びを
  見込んでいるとしたうえで、「日本経済の回復は世界的な景
  気減速と不確実性、それに日本自身の高齢化と人口減少の動
  きによって試されることになる」と述べました。
   そのうえでこれまで政府や日銀が進めてきた金融政策や財
  政政策、それに構造改革を改善する必要があると指摘しまし
  た。具体的には短期的な経済成長を維持するための財政政策
  や働く人たちの生産性を上げる労働市場の改革などの構造改
  革を再び活発に行うことが不可欠だなどとしています。
                  https://bit.ly/34IgN0x
  ───────────────────────────

ゲオルギエワIMF専務理事.jpg
ゲオルギエワIMF専務理事
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2019年12月05日

●「日本の政府債務は危機的ではない」(EJ第5143号)

 ヘリコプターマネー政策に伴う「通貨発行益」に関する経済学
論争の難しい話は来週に回して、もう少し財務省について書くこ
とにします。
 財務省は、「日本の財政が破綻状態にある」と主張し続けてい
ます。財務省はそれを国民に伝えるために次のタイトルのパンフ
レットを作成しています。
─────────────────────────────
     「これからの日本のために財政を考える」
          https://www.mof.go.jp/zaisei/
─────────────────────────────
 このパンフレットに関しては、質問も受け付けてくれ、10人
以上のグループであれば、財務省の官僚がわざわざ説明に来てく
れるほどの力の入れようです。
 かなり量があるので、森永卓郎氏のまとめを引用して、考えて
いくことにします。
─────────────────────────────
 1.日本は高齢化に伴って社会保障費が急増しており、それを
  賄うための十分な課税をしてこなかったため、財政赤字が膨
  れ上がって主要先進国と比較し、最悪の状況になっている。
 2.今後、高齢化はさらに進展し、それに伴って医療や介護の
  費用が急増することから、持続可能な社会保障制度の確立が
  急務となっている。
 3.日本の国民負担率は諸外国と比べて低いから、社会保障の
  充実・安定化と財政健全化を同時に達成するために、安定財
  源である消費税率を引き上げていかざるを得ない。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 「1」について検証します。
─────────────────────────────
 図表1
 ◎財務書類の概要(資産及び負債の状況)/2016年1月
          資産・負債差額  資産額  負債額
  国の財務書類   ▲492.0 679.8 1171.8
  (一般会計・特別会計)           単位=兆円
─────────────────────────────
「図表1」は、財務省が公表している「国の財務書類」の一部
です。これによると、日本政府(一般会計+特別会計)が抱える
負債は1172兆円になっています。GDPの2倍以上であり、
国民がよく知る数字です。
 しかし、その左の「資産額」を見ると、日本政府は680兆円
の資産を有しています。負債から資産は差し引いてもいいので、
「資産・負債差額」は492兆円ということになります。これを
「純債務」といいます。これが日本の財政の本当の数字です。こ
れによると、GDPの2倍以上といわれる借金は、GDPと同じ
程度しかないからです。この程度の借金であれば、別にどうとい
うことはないのです。
─────────────────────────────
 図表2
 ◎連結貸借対照表/2016年3月
 (資産・負債差額の部) 前会計年度   本会計年度
    資産・負債差額   451017615   439402904
                       単位=百万円
─────────────────────────────
 「図表2」は、2016年3月に財務省が発表した「連結財務
書類」です。「連結」というのは、日本政府(一般会計+特別会
計)に加えて、各省庁から監督を受けるとともに、財政支援を受
けている特殊法人、認可法人、独立行政法人、国立大学法人など
を含めた、より広い意味の政府全体の財務諸表であり、森永卓郎
氏は、日本の財政はこれで見るのが正しいといっています。
 これによると、2014年末の純債務は439兆円、その前年
の2013年度末の純債務は、451兆円だったので、1年間で
12兆円も減少していることがわかります。日本の借金は、毎年
増えているどころか、毎年改善を続けていることがわかります。
 このように、財務省が公表している財務書類の数字を見る限り
日本政府の借金は、資産を差し引きしない債務であり、資産を引
けば、借金は半減することがわかります。これに関して、財務省
がいう政府の負債に関して一家言を持つ高橋洋一嘉悦大学教授は
自身のコラムにおいて次のように述べています。
─────────────────────────────
 IMF(国際通貨基金)などの国際機関では、国の負債の大き
さを見る時に、資産を引いたネット債務でみるのが普通だ。資産
を無視して負債だけを見るのは適切でない。
 しかも、日本の場合、資産の中身が問題だ。現預金18兆円、
有価証券98兆円、貸付金143兆円、運用寄託金111兆円、
出資金59兆円の計428兆円が金融資産だ。運用寄託金は年金
資産だからまだいいとしても、有価証券は外為資産、貸付金と出
資金はいわゆる特殊法人等への資金提供だ。変動相場制の国では
これほど大きな外為資金を持たない。また、いわゆる特殊法人等
は官僚の天下り先として問題になっており、先進国でこれほど広
範な政府の子会社を持っている国もない。
                  https://bit.ly/34F6jz8
─────────────────────────────
 高橋洋一氏によると、各国政府の債務を比較するには、純債務
でやることになっているそうです。しかし、日本の財務省は債務
から資産を引いていないのです。これでは、日本の債務が突出し
てしまうのは当然です。普通の国では、財政危機であれば、売れ
る資産処分を先にするのが常識ですが、この資産処分を回避して
増税をやろうとしています。これは、どう考えてもおかしいなこ
とです。        ──[消費税増税を考える/041]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の借金1108兆円」NHKの報道が国民を惑わす
  ───────────────────────────
   たまたまNHKを見ていて非常に懸念を抱いたニュースが
  あった。「来年度予算案1100兆円の借金財政の先行き一
  段と不透明に」という記事で、インターネットでも読める。
   簡単に要旨を書くと、政府予算案の規模が大きく、歳出が
  増加する一方で歳入では国債の発行額が3分の1を占めるの
  が問題と指摘する。そして、来年度末には国と地方を合わせ
  た「借金」が1108兆円に上り、「先進国中最悪」になる
  ことに警鐘を鳴らすものである。報道は、このような財政状
  況が若い世代に将来不安をもたらしていると結んでいる。筆
  者から見れば、このようなNHKの報道こそが、財政状況へ
  のゆがんだ認識を広めることで、若い世代に不安を与えてい
  ると思う。
   まず、どこが、ゆがんでいるのだろうか。それは、政府の
  「1108兆円の借金」という見方である。単純に、日本の
  財政は借金=負債だけが存在するのではなく、資産も存在し
  ている。政府の持つ資産と負債を比較して、その上で事実上
  の「借金」を特定すべきである。負債の方が資産を上回って
  いれば、それを「純債務」と名付けよう。ただし、この純債
  務の大小だけがわかっても財政状況はまだ判断できない。だ
  が、ここまでの議論を、「政府のバランスシート問題」と名
  付けておく。          https://bit.ly/2LhhqXi
  ───────────────────────────


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財務省のウソを暴く森永卓郎氏
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2019年12月06日

●「平然と理屈をこね嘘をつく財務省」(EJ第5144号)

 企業が財政危機状態に陥ったとき、まずやるべきことは、企業
の持つ資産を売却し、少しでも負債を軽くすることです。これは
政府の場合も同じであり、政府の資産を売却することが先決です
が、日本政府は一向にそうしていません。11月15日のEJ掲
載の「各国政府の資産と負債のバランスシート」をもう一度見て
いただくとわかるように、日本はグラフからはみ出すほど、負債
と資産は多いのに、他国政府のように資産を売って負債を減らそ
うとしないのです。         https://bit.ly/33P1Ng5
 これについて財務省に説明を求めると、財務省は、堂々と、次
のように反論しています。
─────────────────────────────
 日本の政府は借金が多い一方で、資産もあり、資産を売れば借
金の返済は容易だという説もありますが、これについてどのよう
に考えていますか?
 ご質問にお答えいたします。
 国においては、企業会計の考え方を活用して貸借対照表(バラ
ンスシート)を作成しており、平成21年度末時点では1019
兆円の負債に対し、647兆円の資産が存在しています。
 しかしながらこれらの資産の大半は、性質上、売却して赤字国
債・建設国債の返済に充てられるものでなく、政府が保有する資
産を売却すれば借金の返済は容易であるというのは誤りです。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 財務省は、上記に加えて、これに該当する資産として次の3つ
を上げています。
─────────────────────────────
 1.年金積立金の運用委託金(121兆円)
 2.道路・堤防などの公共用財産
   ・国道63兆円/堤防67兆円
 3.外貨証券(82兆円)財政融資資金貸付金(139兆円)
 4.出資金(58兆円)
─────────────────────────────
 財務省の回答は、国民を素人と下に見て、上から目線で対応し
てします。「素人だから、わかりっこない」と考えて、バカにし
ているのです。役人の答弁といえば、「桜を見る会」の野党の追
及でたびたびテレビに登場する内閣府の総務課長なる人物の、の
らりくらりと絶対に相手に尻尾を掴ませない答弁がさいたるもの
です。これを「霞が関文学」ともいうそうです。
 しかし、「1」の年金積立金の運用委託金の121兆円。これ
誰でも取り崩せないと一瞬思いますね。しかし、取り崩せるので
す。財務省の言い分はこうです。
─────────────────────────────
 年金積立金の運用寄託金(121兆円)は、将来の年金給付の
ために積み立てられているので、赤字国債・建設国債の返済のた
めに取り崩すことは困難です。  ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 この財務省の回答は正しくありません。国民には、そこまで頭
が回るまいとたかをくくっているのでしょう。日本の公的年金制
度は現在「賦課方式」です。しかし、もともとは「積立金方式」
だったのを2004年の年金制度改正で、賦課方式に変更したの
です。賦課方式というのは、国民全体が納めた保険料をその時点
の高齢者で山分けする方式です。したがって、基本的には積立金
は発生しません。つまり、この121兆円の積立金は、2004
年からは無用の存在になっているのです。
 この賦課方式──出生率の低下により、保険料を支払う現役世
代は減少し、逆に年金を受け取る高齢者は増えて行きます。当然
年金給付水準は必然的に落ちて行くことになります。そのため年
金給付水準を切り下げるために「マクロ経済スライド」という仕
組みが導入されたのです。自公政権の年金制度改悪です。
 したがって、121兆円の年金積立金の運用委託金というのは
積立金方式のときに積み立てたものであり、無用の存在ですが、
全額取り崩すにはリスクがあります。年金財政がある時期に赤字
になることもあるからです。しかし、121兆円もの資金を用意
しておく必要はなく、せいぜいその10の1も有していれば十分
です。だから、法律さえ変えれば、すぐにでも100兆円使える
ではありませんか。それでは、この121兆円は政府のバランス
シートでは、どう会計処理されているのでしょうか。森永卓郎氏
は、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 ちなみに、連結の貸借対照表には、公的年金の寄託金という資
産項目は計上されていない。資産としてはカウントされているが
その他の有価証券や現預金と混ざって表示されているのだ。
 一方、公的年金の寄託金という項目がない代わりに、負債の部
に「公的年金預り金」が計上されている。なぜ預り金が「負債」
なのかと思われる方も多いだろう。政府は、この公的年金預り金
について、次のように説明している。「将来の年金給付財源に充
てるために保有していると認められる資産から未払金相当額を控
除した金額を『公的年金預り金』の科目で負債計上する」。
 つまりこういうことだ。いま公的年金が抱えている100兆円
を超える積立金の資産は、そのまま政府の連結貸借対照表の資産
として計上されている。年金積立金は、政府のものという扱いに
なっているのだ。しかし、そのままだと、国のバランスシートが
よくなりすぎてしまうと財務省は考えた。そこで、公的年金が抱
えている資産額から、未払い金を差し引いた額を「公的年金預り
金」として、負債の部に計上することによって、政府の純資産か
ら年金の積立金を事実上外しているのだ。
                ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/042]

≪画像および関連情報≫
 ●年金が食い潰されたのは?/江田けんじ氏
  ───────────────────────────
  「百年安心の年金」。
   この言葉は元々、04年当時、自公政権が言い出したこと
  です。そして、今回の「2000万円不足問題」が起こって
  国会の場で安倍首相がそれを追認しました。ただ、日経新聞
  が当時「百年先まで約束すると言えば、世界中の鬼という鬼
  が笑い狂って悶絶死することだろう」と痛罵したとおり、多
  くの国民は「百年安心」とは思っていません。
   そう、「百年安心の年金」も、3年前の「年金カット法強
  行」も、年金という「制度」は守るが、老後の「生活」は守
  れないということです。特に、16年暮れに強行採決された
  「年金カット法」は、物価が上がっても現役世代の賃金が下
  がれば、年金の支給額を減額。このルールに過去10年間の
  データを当てはめると、国民年金で年間4万円(月3300
  円)、厚生年金で年間14万円(月11800円)が減額と
  なります。これでは老後は苦しくなるばかりでしょう。
   かと言って、このお年寄りの減額(カット)で年金制度が
  将来安定するかと言うと、この法律で強化された「マクロ経
  済スライド」で、現役(若者)世代の基礎年金も、将来3割
  カットされる。国民の間に、お年寄りであれ若者であれ、老
  後をどう暮らしていったら良いか心配だという声が多いのも
  当然なのです。         https://bit.ly/386ioQ8
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疑問に答える財務省.jpg
疑問に答える財務省
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