55・7%です。米国は68・1%、英国は64・9%、ドイツ
は53・9%です。したがって、経済を活性化させようとすれば
個人消費を増加させる政策を取ればきわめて効果的です。減税は
その有力な手段のひとつになります。
しかし、日本では、減税に、政治家が必ずいう言葉は「財源が
ない」。それに加えて、次の言葉を付け加えるのです。
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「お金をばらまいても、消費者はその資金を貯蓄に回すので、
消費は増えない」と主張する経済学者もいる。確かに、手元にお
金が配られても、それが将来、増税となって跳ね返ってくるので
あれば、消費者は貯蓄をするだろう。しかし、ヘリコプターマネ
ーは、返す必要のない借金を財源としているのだから、将来の増
税はない。それでも、全額貯金をする消費者は残るだろうが、大
部分の国民はお金を使うだろう。ただでさえ、生活に余裕がない
からだ。 ──森永卓郎著/角川新書K126
『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
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アベノミクスでは、日銀は年間平均約80兆円の国債を購入し
ています。重要なことは、この分は返さなくてもよいので、それ
が減税の財源になります。ところが、本来であれば、「金融緩和
+減税」すべきところを「金融緩和+消費増税」をしてしまった
のですから、アベノミクスが真の成果を出せないでいるのです。
極端な話ですが、仮にこれらの資金をすべて減税で国民に戻し
たとしたら、国民一人当たり63万円、4人家族の場合は252
万円、これだけのお金が政府からばらまかれたとしたら、かなり
の人がそれを貯蓄に回したとしても、消費は爆発し、物価は上が
り始めるはずです。
ひとつ大きな疑問があります。安部首相は自民党の政治家です
が、少なくとも増税派ではないはずです。財務省とは一定の距離
を置いており、財務省の指示通りに動く政治家ではありません。
増税を2回にわたって延期したのも、安倍首相ならではです。他
の首相なら、たとえ当時の民主党の首相であっても、増税は計画
通りに実施したはずです。
それに安部首相には、浜田宏一元イエール大学教授という学者
が、内閣官房参与として付いています。浜田教授はアベノミクス
の設計者です。それなのに、なぜ、明らかに間違いである「金融
緩和+消費増税」をやってしまったのでしょうか。
それは、消費増税が、「社会保障と税の一体改革」として、法
律化されていたことが原因です。増税の規模と実施時期をあらか
じめ示し、法律化まですることは最大の悪手です。クリストファ
・シムズ教授も「人々は「将来に増税が待っている」と思えば消
費を拡大しない」といっているではありませんか。
増税の時期の明示とその法律化は、財務省の仕組んだワナに政
権がはまったことを意味します。彼らとしては、どの政権になっ
ても、確実に増税が履行されるように法律化を企んだのです。当
時の民主党の野田政権と自民党の谷垣総裁という財務大臣経験者
がまんまとそのワナに嵌ったといえます。安部首相としても、浜
田教授としても、法律化までされている増税を無視はできなかっ
たものと思われます。本来であれば、2%の物価目標を掲げて、
「その達成までは増税しない」と宣言し、「金融緩和+減税」を
実施すべきだったのです。
さて、シムズ理論には、わからないことが残っています。シム
ズ教授と「週刊ダイヤモンド」の記者のインタビューをもう少し
紹介することにします。
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──FTPL自体は1990年代からあったにもかかわらず、昨
夏の米ジャクソンホール会議で急速に注目を集めました。
シムズ教授:日本においては、安倍晋三首相の存在が密接に関係
しているでしょう。政治的な状況、ということです。ただ、私
の論文に対する強い反響がその他の多くの場所であったことに
は驚きました。
──ご自身の考えが政治的に利用されることをどう感じますか。
シムズ教授:政策が実行される際に、私の考えが政治家の目的に
沿って使われるのであって、それぞれの政治家にとって役立つ
かどうかは気にすることではありません。危険は常に、財政に
よる刺激策が政治的なアピールに使われることにあります。私
が主張しているのは、将来的な物価動向の行方がどうなるかを
考えながら政策プランを策定することです。当局者は私が単純
に支出を今すぐ増やせ、と言っているのだと誤解すべきではあ
りません。
──ドナルド・トランプ米大統領は、減税やインフラ投資など財
政拡大を掲げています。
シムズ教授:彼の政策では、何が実際に起きるのか不透明です。
(FTPLにのっとったものではなく)ただ、財政赤字を膨ら
ませる政策のように見えます。しかし、共和党内には、健全財
政派の勢力もあり、トランプ氏の政策が全て実行されることに
はならないでしょう。
──シムズ教授は、財政拡大はインフレターゲットを達成するま
でのものであり、放漫財政を容認しているわけではないと言っ
ているのですね。
シムズ教授:“適度”な財政悪化がインフレを起こすのに必要と
言っているだけで、健全財政を放棄してもいいわけではありま
せん。プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化も重
要だとは思いますが、デフレ脱却にはインフレターゲットを実
現するまでは、財政拡大が有効だと言いたいのです。税収が増
加すれば、プライマリーバランスも改善します。
https://bit.ly/2KQ9dcx ─────────────────────────────
──[消費税増税を考える/036]
≪画像および関連情報≫
●ヘリマネは「政府の債務整理」で将来への不安を減らす
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アベノミクスが行き詰まる中でMMTが注目されている。
これはマクロ経済理論としては新しい話ではないが、ヘリコ
プターマネーを公然と主張している点が論議を呼んでいる。
これはそれほど突飛な話ではなく、不換紙幣は返済しなくて
もいいという政府の特権を利用するものだ。
もちろんヘリコプターからお金をばらまくというのは思考
実験で、現実にはいろいろな実装手段が考えられる。これは
金融政策ではなく政府支出をともなう財政政策なので、ダリ
オの話を整理して、こういう非伝統的な財政政策を4つに分
類してみた。
クーポン配付 政府紙幣
永久国債 国債の日銀引受
このうちわかりやすいのは、今年10月の消費増税のとき
予定されている「ポイント還元」のようなクーポンの配布だ
ろう。これはヘリコプターから無差別にお金をばらまく政策
に近い。今回の増税対策では約2兆円の財源が用意されてい
るが、こういう一度限りのバラマキでは何も起こらない。い
ちばん過激なのは、2003年にスティグリッツの提言した
政府紙幣である。これは日銀券とは別の通貨を政府が発行す
るものだが、国債との違いは通貨は返済の必要がないという
ことだ。 ──池田信夫氏
https://bit.ly/2KOJBMY
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浜田宏一元イエール大学教授