2019年11月13日

●「将来世代に『経済不況』を残すな」(EJ第5127号)

 EJで「消費税増税」をテーマに取り上げるのは、実は2回目
です。2014年に同じテーマで84回にわたって書いており、
ブログで見ることはできるので、ご紹介しておきます。
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 ◎消費税増税はなぜ必要かについて改めて考える
  2014年1月06日、EJ第3703号
       〜2014年5月09日、EJ第3786号
                  https://bit.ly/2NVmfpL
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 2014年1月6日が第1回ですが、この年の4月から消費税
が5%〜8%に引き上げられることが決まっていたのです。日本
の消費税には多くの疑問があります。このとき、それらの消費税
の疑問について明らかにするつもりで書いたのですが、十分書き
切れていません。そこで今回、その書き切れなかったところに重
点を置いて書いていくつもりです。
 消費増税をするさい、その大義名分として、よくいわれる次の
言葉があります。
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     将来世代に、現世代の「ツケ」を残すな!
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 現在日本の財政学者は、そのほとんどが財務省寄りの御用学者
であり、彼らは、「国の財政は、長期的安定が必要であり、健全
な保守政権というものは、現在だけでなく、将来を見据えて、持
続性のある財政を設計すべきである」と、まことしやかに説き、
上記の言葉を頻繁に口にします。
 これに対して、藤井聡京都大学大学院教授は、次のように猛反
論しています。
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 彼らが根本的に間違っているのは、将来に残してはいけないも
のは「経済不況」そのものなのだ、ということを無視していると
ころにあります。もしも、現世代の経済財政政策のせいで、「経
済不況」が放置され続けてしまえば、将来世代は「貧弱な国家経
済」や「格差社会」や「貧弱な科学技術水準の国家」を生きなけ
ればならなくなる。
 さらには、「防災力」も「国防力」も貧弱なままの国家を生き
なければならなくなる。政府それ自体も税収が得られなくなって
結局、将来世代の政府の「税収」も低くなってしまい、結果的に
は、将来世代の「借金」を増やしてしまうことになる。つまり、
彼らこそ近視眼的な「目先の借金」を削ることに躍起となってし
まった結果、経済、防災、格差、所得、福祉、軍事といったあら
ゆる側面で、「貧弱」な国家を将来世代に「つけ回し」してしま
い、その結果、「将来の財政」をさらに悪化させてしまうことに
なる。彼らこそが、「長期的な視野を持たない、浅薄で近視眼的
な態度」なわけです。            ──藤井聡教授
   『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
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 数ある消費税の本をていねいに読んでみると、多くの国民は、
政府というか財務省に騙されていることがいかに多いかよくわか
ります。しきりに消費増税を仕掛けているのはつねに財務省です
から、以後はその犯人を「財務省」として書くことにします。
 そもそも増税が必要なことは一応認めるとしても、なぜ、大衆
課税である消費税に真っ先に依存するのか、他にやるべきことが
たくさんあるはずです。それは、彼ら、財務省の一部のキャリア
官僚にとって、おいしいことがあるからです。
 そもそも多くの国民は、「日本の消費税は低い」と内心感じて
います。財務省のプロパガンダもありますが、それは「税率」を
見ているからです。確かにスウェーデンの消費税は25%であり
日本の10%はその半分にも達していません。しかし、少し別の
角度から見ると、意外な事実が判明するのです。
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   ◎主要国の国税収入全体に占める消費税の割合
        イギリス ・・・・・ 21・1%
         ドイツ ・・・・・ 35・6%
        イタリア ・・・・・ 28・3%
      スウェーデン ・・・・・ 18・5%
          日本 ・・・・・ 37・O%
   『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
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 これは、国税収入全体に占める消費税の割合について、日本と
欧州各国とを比較したものです。これで見ると、日本の10%の
消費税率は、国税収入に占める消費税の割合では、37%であり
スウェーデンの18・5%を大きく上回り、このなかでは一番高
くなっています。これは、日本の税収が消費税の税収に大きく依
存していることを示しています。大衆課税である消費税を増税し
法人税や高額所得者の所得税を下げているので、こういう結果に
なっているのです。これは、同時に税収全体のなかで日本は、法
人税と所得税がいかに少ないかを示しています。これによって、
次のことがウソではないことが分かります。
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 現自民党政権は、庶民には「増税」、大企業や高額所得者に
 は「減税」をしており、今後さらに消費税を上げることによ
 り、その傾向を強めようとしている。
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 英国は消費税の最高税率は20%ですが、軽減税率の幅が広い
のです。通勤交通費、食料品、新聞、雑誌、書籍、子供服、家庭
用燃料、電力、衣料品は税率ゼロであり、これを見ると、日本の
消費税がいかにお粗末であるか、よく分かると思います。
            ──[消費税増税を考える/025]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税10%になぜ増税となった?
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   日本で初めて消費税が導入されたのは、1989年4月で
  した。当時、3%に設定されていた税率は、数年おきに国会
  でも議論の的になり、1997年に5%、2014年に8%
  と段階的に引き上げられてきました。
   そして2019年10月1日(火)、消費税は、8%から
  10%へ引き上げられ、いよいよ消費税率2桁の時代に突入
  します。
   そもそも消費税はなぜ導入されたのでしょうか?消費税が
  導入される以前、日本政府の税収は所得税が中心でした。し
  かし、社会構造の変化やサービス・消費の多様化など、世の
  中が大きく動いていくうちに、所得に応じて課税する所得税
  は時代遅れの制度面での課題が目立ち、税制の不均衡が、問
  題視されるようになりました。そこで、所得に関係なく、消
  費活動に対して誰にでも等しく課税する消費税が導入されま
  した。消費税は、所得状況とは無関係に課税されますから、
  働き手が少なくなっても税収が安定しています。そして、年
  金や福祉に関する財源とした目的税として消費税が導入され
  人口の高齢化が進行するとともに、その税額が引き上げられ
  ていったのです。消費税は導入されてから3%、5%、8%
  そして今回の10%へと少しずつ税率が引き上げられていま
  す。しかし、消費税率が2桁の10%ともなると、心理的な
  影響も大きく、多くの人が税負担を重く感じてしまいます。
                  https://bit.ly/2p5RyWH
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「経済不況」を残してはいけない/藤井教授.jpg
「経済不況」を残してはいけない/藤井教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする