2019年11月08日

●「97年増税がデフレの真因である」(EJ第5124号)

 財務官僚、それも超エリートのキャリアにとって、3%から5
%への消費増税がデフレの真因といわれるのは、きわめて都合の
悪いことです。自分たちの夢の老後の計画がオジャンになってし
まうからです。彼らは、やっと10%になった消費税をここ数年
間のうちに、20%程度まで税率を引き上げることをもくろんで
います。国のためではなく、自分たちのためです。
 私は安倍晋三首相の政策スタンスに必ずしも賛成ではありませ
んが、ひとつだけ評価していたとがあります。それは、財務省の
いいなりにならず、既に法律化していた「社会保障と税の一体改
革」、つまり増税の先延ばしを図ったことです。それどころか首
相は一時は「8%を5%に下げる案」も検討したともいわれてい
ます。しかし安倍首相は、結果として2回の税率の引き上げを行
い、5%から10%に消費税率を倍増させてしまっています。
 経済アナリストの森永卓郎氏によると、なかなか増税しようと
しない安倍首相に対し、財務省は安倍政権の倒閣運動まで考えた
というのです。
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 私は、そもそも森友学園の問題は、財務省が安倍政権を追い
 詰めるためにやった自作自演の大芝居だったと考えている。
            ──森永卓郎著/角川新書K−241
            『なぜ日本だけが成長できないのか』
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 仰天の新説ですが、これについては、真偽のほどはわかりませ
んが、改めて取り上げるつもりです。当時財務省は、なかなか増
税しない安倍政権にいらだちを強めており、倒閣も視野に入れて
いたといわれています。
 さて、昨日のEJの巻末の「関連情報」でご紹介した財政制度
等審議会(財政審)のロイターニュースによるレポートを取り上
げます。この財政審は、民主党の鳩山政権時代の2010年5月
18日に行われています。ロイターニュースの伊藤純夫記者は、
この財政審の分科会において、井堀東大教授のコメントを次のよ
うに紹介しています。
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 18日の財政審・分科会では、井堀利宏東大教授が97年4月
の消費税率引き上げ(3%から5%に)が景気に与えた影響に関
連して、1)経済への影響をネットで見た場合、消費税増税より
も不良債権処理問題やアジア通貨危機の方が大きかった、2)増
税は将来の減税と等価であれば経済に中立、3)増税の使い道も
大きな問題−−などと説明した。
 当時の実質国内総生産(GDP)は消費税率引き上げ後の97
年4〜9月、98年1〜6月にマイナスに落ち込んだが、大串政
務官によると会合では、「消費税率引き上げが主たるマイナス要
因ではなかったとの議論が多かった」とし、不良債権処理問題や
アジア通貨危機による輸出の落ち込みが主因などとの見解が委員
の中から示されたという。      https://bit.ly/2NeRX2g
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 そもそも今回の消費増税の実現は、当時の鳩山政権において、
副総理兼財務・経済財政担当相を務めていた菅直人氏が、財務省
に完全に洗脳され、「お金の使い道を間違わなければ、増税して
も景気は良くなる」というわけのわからない言説を広めるように
なったことが原因にあります。
 そもそも財務省が主管する財政審において、消費増税の影響の
深刻さに言及する意見が出るはずがありません。財務省は何が何
でも消費増税を実現したいからです。そのため、財務省寄りの井
堀利宏東大教授は、増税後の景気の落ち込みの原因について「消
費税増税よりも、不良債権処理問題やアジア通貨危機の方が大き
かった」ことを強調しているのです。
 この考え方について、添付ファイルの上のグラフを見ていただ
きたいのです。このグラフは、藤井聡教授の本に掲載されていた
ものですが、これについて藤井教授は次のように述べています。
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 この図は、日本からの総輸出額の推移を示しているが、アジア
通貨危機が起こった1997年の直後、輸出はほとんど変わらず
「横ばい」となっている。これは、リーマンショック時の激しい
下落に比べれば雲泥の差があることがお分かりいただけよう。こ
の点から考えても、アジア通貨危機がデフレとなった原因である
という結論は引き出しようがないのである。
                   ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
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 もうひとつ専門家の間では、「日本がデフレ不況なのは、人口
減少が原因である」という説が話題になっています。この人口減
少説は、人口が減ると、モノやサービスを買う人が少なくなり、
経済が低迷し、少しずつデフレになっていくという考え方です。
 これについて、藤井聡教授は、日米欧の人口増加率のグラフを
示して、次のように反論しています。添付ファイルの下のグラフ
を見てください。
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 これは「日米欧」の各国の1995年から2017年にかけて
人口増加率を示したものだ。ご覧のように、我が国日本より人口
の減った国が実に15ヶ国もある。人口が最も減少している国は
リトアニアだが、その減少率は実に22%。人口減少がデフレの
原因であるのなら凄ましいデフレになり、GDPは大きく下落し
ている筈だ。しかしリトアニアの名目成長率は何と606%。経
済規模は実に7倍まで拡大しているわけだ。(中略)つまり「人
口が減れば、デフレになって経済が衰退する」という話は、事実
から完全にかけ離れた単なる「デマ」なのだ。
                 ──藤井聡著の前掲書より
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            ──[消費税増税を考える/022]

≪画像および関連情報≫
 ●「デフレの正体」信じる愚劣/高橋洋一氏
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   国債格付けばかりか、経済そのものにも「疎い」菅直人首
  相が2011年1月10日、東京・八重洲の書店で、日本政
  策投資銀行参事役、藻谷浩介氏の『デフレの正体』(角川新
  書)など7冊を購入したというニュースがあった。やはり首
  相の経済ブレーンがしっかりしていないのだなと思わざるを
  えない。
   同書はかなり好評であり、公称50万部突破と、売れてい
  る。「そうだったのか」のわかりやすい解説で定評のある池
  上彰氏も「藻谷さんは、労働力人口が減るということは、活
  発な消費活動をする若い人が激減するのだから、需要不足に
  なり、デフレになるのは当然だ、と指摘します。(中略)目
  からウロコでした」(「文藝春秋」2010年8月号)と絶
  賛した。            https://bit.ly/32fdzjo
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典:──藤井聡著/晶文社/『「10%消費税」が
  日本経済を破壊する

デフレの真因のグラフ.jpg
デフレの真因のグラフ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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