かえというか、ごまかしというものがあることです。このことは
消費税増税にも関係があるので、いくつもありますが、分かりや
すいものを2つご紹介します。
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安倍政権6年間(2012〜18年)で384万人の雇用が
増加している。これはアベノミクスの成果である。
──安倍首相
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この数字に違いはないのですが、その内訳が問題です。384
万人増の内訳は次のようになっています。
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◎384万人増の内訳
65歳以上 ・・・ 266万人増
25〜64歳 ・・・ 28万人増
15〜24歳 ・・・ 90万人増
◎ 90万人増の内訳
高校生・大学生など 74万人増
その他 16万人増
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安倍政権の間に、雇用が384万人増えたといっても、その約
70%の266万人は65歳以上の高齢者です。老後2000万
円問題などもあり、年金が少ないので、働かざるを得ない高齢者
が多いのです。
また、90万人増えたといっても、その約80%が高校生・大
学生であり、彼らは高い学費のために働かざるを得ない状況に追
い込まれているのです。15〜64歳の生産年齢人口は約44万
人しか増えていません。内訳を語らず、384万人の就業者増を
アベノミクスの成果と強調するのは問題があります。
まだあります。安倍政権は、2015年10月に、日本の国民
経済の「生産」「支出」「所得」の金額の合計、名目GDPにお
いて、「2020年までに600兆円を達成する」ことを政権の
目標に掲げています。実はこれにはからくりがあるのです。GD
Pの統計手法を変更したからです。
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平成17年基準/1993SNA
平成23年基準/2008SNA
SNA=System of National Accounts
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今までの計算方法は「平成17年基準」ですが、これを「平成
23年基準」に変更すると、「研究開発投資」がGDPに乗って
くるのです。諸外国では、既に2008SNAを使用しているの
で、日本が2008SNAに変更すること自体は、当然のことで
すが、安倍政権はそのことを国民に周知させる必要があります。
2008SNAに変更すると、GDPは、約30兆円近く増加
します。これがあったからこそ、安倍政権は、名目GDP600
兆達成目標を掲げたものと思われます。安倍政権は必ずともそれ
を隠しているわけではありませんが、そのことを明らかにしたう
えで、名目GDP600兆円を打ち出してはいないのです。多く
の国民はその事実を知らないでしょう。
これについて、経世論研究所所長の三橋貴明氏は、次のように
安倍政権を批判しています。
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(統計手法を変更するのであれば)当然の話として「名目GD
P600兆円目標」は、「630兆円」にアップデートしなけれ
ばならないはずだ。ところが、安倍政権は統計基準変更によるG
DPの拡大があったにもかかわらず、目標金額は「600兆円」
のままで据え置きした。「統計詐欺」、以外に何と表現するべき
なのか、筆者には言葉が見つからない。
本書では紙幅の関係で取りあげることはできないが、安倍政権
及び財務省は様々な「統計マジック」を駆使し、あるいは「統計
詐欺」に手を染めているのだ。具体的には、厚生労働省の毎月勤
労統計調査の詐欺的なサンプル変更、公共事業の当初予算に社会
資本特別会計を含めることによる水増し、エンゲル係数を低く見
せるための「修正エンゲル係数」の公表、2014年4月以降の
景気後退を「隠蔽」した上で、「いざなぎ超えの景気拡大」と発
表するなど、枚挙にいとまがない。 ──三橋貴明著
『米中覇権戦争/残酷な未来透視図/
世界を救う最後のトリデは日本だった!』/ビジネス社
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さて、ここから政府に騙されることなく、消費増税の影響を見
ていくことにします。添付ファイルは、日本の実質賃金の推移を
示しています。矢印で示してあるように、一貫して右肩下がりで
落ち込んでいます。
その頂点を探ると、1997年です。いうまでもなく1997
年は、橋本政権によって、3%から5%への消費増税が行われた
年です。このことは、後で述べますが、このときの増税は、時期
も、タイミングも最悪のときに行われています。
この増税によって、年々実質賃金が下がり、国民はそれに応じ
て消費できなくなるので、当然実質消費が減少します。そうする
と、需要が縮小し、それによって生産性向上が不要になるので、
実質賃金がまた下がるという悪循環で、どんどん実質消費がダウ
ンしているのです。
安倍政権は、このような最悪の状況下で、2014年には消費
税の税率を5%から8%に引き上げ、実質賃金のさらなる落ち込
みを招いています。安倍政権は、経団連に対して、賃金引き上げ
の呼びかけをしていますが、そんなことをしても実質賃金は上昇
しないのです。そして、2019年10月、安倍政権は消費税率
の8%をさらに10%に引き上げたのです。まさに狂気の振る舞
いといえます。 ──[消費税増税を考える/020]
≪画像および関連情報≫
●いずれ議論不可避 消費税の「段階的増税論」とは
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10月1日、消費税率が、8%から10%へ引き上げられ
た。10%超への追加増税については、安倍晋三首相が「今
後10年、必要ない」と述べ“封印”したが、高齢者の増加
で医療、介護など社会保障費が膨脹しており、「議論はいず
れ避けられない」との見方が多い。仮に追加増税の議論が始
まった場合、アイデアの一つとしてささやかれているのが、
税率を小刻みに引き上げる“段階的増税論”だ。
「現時点で(消費税率を8%へ引き上げた)平成26年の
ような大きな駆け込み需要はみられない」。安倍首相は今月
15日の参院予算委員会で、こう答弁した。政府は10%へ
の増税にあたり、令和元年度当初予算に盛り込んだ2兆円超
の「臨時・特別の措置」のほか、住宅ローン減税の拡充、食
品などの税率を8%へ据え置く軽減税率の導入など、合計6
兆6000億円分の景気底上げ策を打ち出した。
足元の消費動向が安倍首相の答弁通りなら、政府の打ち出
した対策が奏功したことになる。今後、米中貿易摩擦などに
よる世界経済減速の影響も見極める必要があるが、景気が腰
折れするような事態にならなければ、今回の消費税増税は、
“成功”といえる。財務省にとっても、今後、消費税増税を
続けていく突破口になりそうだ。 https://bit.ly/2N7F5uC
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●グラフ出典──三橋貴明著「米中覇権戦争/残酷な未来透視
図/世界を救う最後のトリデは日本だった!」/ビジネス社
日本の実質賃金の推移(現金給与総額)