2019年11月01日

●「日本はなぜ長期デフレに陥ったか」(EJ第5120号)

 現在、米国は、世界最強の「軍事力」を保有しています。しか
し、圧倒的な軍事力は相手側を威圧し、外交などでは有利に働き
ますが、実際にそれを行使することは、大きなデメリットも伴う
ので、簡単にはできません。そこで、米国は「経済力」という武
器を多用しています。現在、トランプ米政権が中国に仕掛けてい
る「関税戦争」がまさにそれです。米国にこれを仕掛けられると
どこの国でも、まず勝ち目はありません。
 「プラザ合意」が結ばれるまで、米国にとって日本は、その経
済力において、脅威的な存在だったといえます。現在の中国と同
じです。何しろ、安いコストで優れた製品を製造し、怒涛のよう
に輸出してくるからです。これに歯止めをかけるため米国は「プ
ラザ合意」による経済戦争を日本に仕掛けてきたのです。まさに
問答無用であり、日本はそれを拒否できなかったのです。
 1985年のプラザ合意によって、「1ドル=240円」だっ
た対ドル為替レートは、2年後の1987年末には、「1ドル=
120円」の超円高になっています。これは、日本から輸出する
製品に対して、一律100%の関税をかけるのと同じ影響を日本
にもたらしたといえます。
 あまり知られていないことですが、終戦後の沖縄で日本はプラ
ザ合意と同じような体験をさせられています。それは、1946
年4月に、米軍が発行する「B円」という軍票が沖縄での公式通
貨になったことです。はじめのうちはB円と日本円は等価の扱い
でしたが、その2年後の1948年7月には日本円の使用が禁止
され、沖縄で使える通貨はB円だけになっています。
 そして突然1950年4月から、「1B円=3円」に切り上げ
が行われたのです。これは、米軍が日本から資材などを輸入する
さいのコストを下げるのが、狙いだったと思われます。
 1958年にB円は廃止され、沖縄ではドルが使われるように
なりましたが、この8年間の「B円高」によって、沖縄の製造業
は国際競争力を失い、壊滅状態になります。現在でも、沖縄の製
造業は、他の地域に比べると、きわめて脆弱であり、産業全体の
GDPに占める製造業の割合は、全国平均の20・8%に対して
沖縄は4・9%程度です。通貨高の影響はとても大きいのです。
 このプラザ合意による超円高により、当然のことながら、日本
の輸出産業は、大きなダメージを受け、日本経済は深刻な景気後
退に突入します。政府と日銀は、この景気後退を食い止めるため
大規模な財政出動を行い、それに大胆な金融緩和を重ねる経済政
策を展開します。しかし、これが後になって、巨大なバブルを発
生させる原因になったといわれます。
 日銀は、そのとき「5・0%」だった公定歩合を1986年中
に4回も連続して下げています。
─────────────────────────────
     1986年 1月 ・・・・・ 4・5%
           3月 ・・・・・ 4・0%
           4月 ・・・・・ 3・5%
          11月 ・・・・・ 3・0%
     1987年 2月 ・・・・・ 2・5%
─────────────────────────────
 しかし、経済アナリストの森永卓郎氏は、バブルを発生させた
真の原因は、日銀の「窓口指導」にあることを指摘して次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 日銀は、それぞれの銀行ごとに貸し出しの伸び率の上限を指示
する窓口指導をずっと行ってきた。バブル期には、窓口指導は表
向き廃止されたことになっていたが、現実には続いていた。銀行
は窓口指導で示された融資の伸び率を何が何でも達成しなければ
ならない。万が一達成できないと、翌年の伸び率を減らされてし
まうからだ。役人が予算を使い切ろうとするのと、同じ構造だ。
ところが、いくら融資を増やしたくても、円高不況で融資を受け
たいという資金ニーズがない。
 そこで、銀行がのめり込んでいったのが、不動産融資だった。
表向き、銀行は、不動産投機のための資金を貸してはならないこ
とになっている。しかし、体裁を整えることは難しいことではな
い。銀行は、不動産投機をビジネスに偽装して、不動産融資を拡
大していったのだ。不動産市場に投機資金が大量流入するのだか
ら、当然、不動産価格は、急上昇していくことになった。しかし
そのことは銀行にとって願ってもない変化だった。地価の上昇に
よって、不動産投機への融資が焦げ付くことがなかったからだ。
            ──森永卓郎著/角川新書K−241
            『なぜ日本だけが成長できないのか』
─────────────────────────────
 森永氏によると、バブルを発生させた犯人は、一応大蔵省と日
銀であるとしていますが、そのバックには“本当の犯人”として
の米国の存在を指摘しています。それは「前川レポート」と呼ば
れる日本としての構造改革レポートによって明らかであるとし、
次のように結論づけています。
─────────────────────────────
 (米国の意図は)プラザ合意によって日本を超円高に追い込み
円高不況に陥った日本に、景気対策としての大規模公共事業を実
施させる。さらに「海外資本による投資環境」という名の日本企
業の売却環境を整えさせる。私は、もうこの時点で、米国は、日
本経済の乗っ取り計画をきちんと整えていたのではないかと考え
ている。            ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 このようにして発生したバブルの崩壊によって、日本経済は深
刻なデフレに陥り、その後「失われた30年」といわれる経済成
長しない長いトンネルに入ってしまうのです。そして日本経済は
まだその長いトンネルから、完全に抜け出せないでいます。経済
政策のどこが間違ったのでしょうか。
            ──[消費税増税を考える/018]

≪画像および関連情報≫
 ●「1・57ショック」を打ち消した「バブル崩壊」
  ───────────────────────────
   エコノミストの立場から平成という時代を考える場合、振
  り返ってみて非常に重要な意味があったのが、平成元年(1
  989年)の日本の合計特殊出生率が、午(ひのえうま)の
  昭和41(1966年)の1・58を下回り、1・57まで
  低下していた「1・57ショック」である。
   平成2年(1990年)6月に人口動態統計から明らかに
  なった。人口減・少子高齢化が進む厳しい時代に突入してい
  く日本の将来像が、この時点で人々の知るところとなったわ
  けで、政府が危機感をテコにしながら人口対策を強力に推進
  していれば、現在の日本の経済および社会の姿は、良い方向
  で大きく違っていたはずである。
   ところが、平成元年の年末(終値3万8915・87円)
  をピークに、日経平均株価は急落した。さらに、不動産価格
  も大きく下落するという巨大バブル崩壊の衝撃によって、日
  本経済は暗くて長いトンネルに入ってしまった。大規模な公
  的資金の投入などによって銀行の不良債権問題への対処が進
  み、金融システムにまつわる不安感がなくなるまでに、相当
  な時間が必要だった。日本経済の「血液循環」を早急に回復
  させることが経済政策の焦点になり続ける間、人口の問題が
  顧みられる機会は大きく減り、長い時間が過ぎ去ってしまっ
  た。観光客誘致・少子化対策・女性や高齢者の活躍推進とい
  うメニューだけでは、人口面からの日本経済の「地盤沈下」
  を食い止めるのは、物理的にもはや困難である。
          ──上野泰也氏 https://bit.ly/32ZFhSf
  ───────────────────────────

森永卓郎氏.jpg
森永卓郎氏



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2019年11月05日

●「1997年からデフレ経済に突入」(EJ第5121号)

 安倍首相がアベノミクスの成果について誇らしげに語るとき、
いつも決まっていう言葉があります。
─────────────────────────────
 アベノミクスによって、日本経済は、もはやデフレとはいえ
 ない状況になっている。          ──安倍首相
─────────────────────────────
 しかし、2017年以降、安倍首相は、この言葉を口にしなく
なっています。それもそのはず、添付ファイルのグラフを見てい
ただくとわかるように、GDPデフレーターが、2017年から
マイナスになっており、デフレに逆戻りしているからです。
 ところで、「GDPデフレーター」とは何でしょうか。
 GDPデフレーターについて知る必要があります。経済学では
GDPデフレーターを次のように定義しています。
─────────────────────────────
 GDPデフレーターとは、ある国(地域)の名目GDPから
 実質GDPを算出するために用いられる物価指数である。
   名目GDP ・・・ 物価変動の影響を排除していない
   実質GDP ・・・ 物価変動の影響を排除済みである
                    ──ウィキペディア
                  https://bit.ly/34kHyHZ
─────────────────────────────
 したがって、GDPデフレーターの増加率が、プラスであれば
インフレーション、マイナスであればデフレーションとみなせる
のです。つまり、日本経済は2017年からデフレに逆戻りして
います。IMFや内閣府は、2年以上の継続的な物価下落をデフ
レと定義しています。
 確かに、2013年から民主党の野田政権から政権を引き継い
だ安倍政権は、アベノミクスによって、2014年から2016
年までは、GDPデフレーターはプラスになっており、デフレか
ら一応脱却したといえますが、2017年から再デフレに突入し
てしまっています。「もはやデフレとはいえない」とは、さすが
にいえない状況です。
 ところで、日本の現在のGDPは、約500兆円ですが、19
80年時点では250兆円しかなかったのです。約40年かかっ
てやっと倍増したことになります。そこで、日本の名目GDPの
推移を確認することにします。グラフにすることができないので
数字であらわすことにします。
 まず、1980年〜1996年までを2年ごとの数字を並べて
みると、次のようになります。
─────────────────────────────
  ◎1980〜1996年名目GDP推移  増加率
   1980年 ・・・ 250兆円
   1982年 ・・・ 282兆円 112・8%
   1984年 ・・・ 313兆円 119・9%
   1986年 ・・・ 350兆円 111・8%
   1988年 ・・・ 393兆円 112・2%
   1990年 ・・・ 453兆円 115・2%
   1992年 ・・・ 495兆円 108・8%
   1994年 ・・・ 501兆円 101・2%
   1996年 ・・・ 525兆円 104・7%
                  https://bit.ly/2Ny7pp3
─────────────────────────────
 これを見ると何のことはない。1980年から14年後に日本
の名目GDPは500兆円に達しています。倍増です。増加率は
すべて100%以上で順調に伸びています。
 しかし、1998年に入ると、状況が一変します。1998年
〜2012年までは、次のようになっています。
─────────────────────────────
  ◎1998〜2012年名目GDP推移  増加率
   1998年 ・・・ 527兆円 100・3%
   2000年 ・・・ 526兆円  99・8%
   2002年 ・・・ 515兆円  97・9%
   2004年 ・・・ 520兆円 100・9%
   2006年 ・・・ 526兆円 101・1%
   2008年 ・・・ 520兆円  98・8%
   2010年 ・・・ 500兆円  96・1%
   2012年 ・・・ 494兆円  98・8%
                  https://bit.ly/2Ny7pp3
─────────────────────────────
 増加率を見るとすぐわかるように、明らかに減速しています。
 藤井聡教授は、この間の名目GDPの伸びについて、次の指摘
をしています。
─────────────────────────────
 1997年以降、名目GDP、つまり、私達の所得の総額が縮
小する局面に入った。それ以後、米国バブルやリーマンショック
震災、そして安倍内閣下のアベノミクスなどの影響を受けて上下
してはいるものの、1997年以降、かつてのような力強い成長
は見られなくなった。そして、この1997年という時こそ、我
が国が3%から5%へと消費税を増税させた年なのだ。(中略)
 我が国は、1997年に「デフレ経済」に突入し、それ以後、
一向にそのデフレ状況から脱却できなくなったのである。
                   ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 1990年から日本経済は低成長期に入ったといわれますが、
1996年まではそれなりに成長してきています。しかし、19
97年以降は、上記の数値でも明らかなように、確かに成長しに
くくなっています。しかし、これだけのデータでは、原因が消費
増税とは断定できないと思います。他のデータも当ってみる必要
があります。      ──[消費税増税を考える/019]

≪画像および関連情報≫
 ●山一や拓銀の破綻から20年を経て想うこと
  ───────────────────────────
   今年(2017年)の秋で、1997年11月に相次いだ
  北海道拓殖銀行(拓銀)や山一証券などの経営破綻から20
  年が過ぎた。その当時、筆者は霞が関から松江財務事務所に
  派遣され単身赴任を始めたばかりであったが、「社員は悪く
  ありません」で記憶に残る山一社長の号泣記者会見の模様な
  ど、当時の状況を今も鮮明に覚えている。言うまでもないが
  拓銀は都市銀行の一角を占め、山一も四大証券の一角を占め
  る超名門企業であるとともに、「ツウ・ビッグ・ツウ・フェ
  イル」が典型的に当てはまる巨大金融機関でもあった。この
  11月は、三洋証券の破綻で始まったが、拓銀や山一までも
  が破綻したと聞いて、金融の世界がメルトダウンして行くよ
  うなうすら寒さを覚えたものである。また、この1997年
  であるが、7月にはタイを起点とする「アジア通貨危機」が
  発生し、日経平均株価もまたまた再暴落して行く中での金融
  危機でもあった。
   それから20年が過ぎた今、筆者が思うことはこの97年
  の金融危機が1980年代後半の資産価格(地価と株価)の
  高騰が紛れもなく「バブル」であったことを人々に自覚させ
  たことである。それと共に、90年代初頭からの資産価格の
  下落がバブルの崩壊であることを思い知らせたのである。
                  https://bit.ly/2oFXUvJ
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典──三橋貴明著「米中覇権戦争/残酷な未来透視
  図/世界を救う最後のトリデは日本だった!」/ビジネス社


日本のGDP成長率とGDPデフレータ(_対前年比).jpg
日本のGDP成長率とGDPデフレータ(_対前年比)
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2019年11月06日

●「経済に関わる数値にはウソが多い」(EJ第5122号)

 安倍政権の問題点は、経済に関わる数値にウソというか、すり
かえというか、ごまかしというものがあることです。このことは
消費税増税にも関係があるので、いくつもありますが、分かりや
すいものを2つご紹介します。
─────────────────────────────
 安倍政権6年間(2012〜18年)で384万人の雇用が
 増加している。これはアベノミクスの成果である。
                      ──安倍首相
─────────────────────────────
 この数字に違いはないのですが、その内訳が問題です。384
万人増の内訳は次のようになっています。
─────────────────────────────
     ◎384万人増の内訳
      65歳以上 ・・・ 266万人増
     25〜64歳 ・・・  28万人増
     15〜24歳 ・・・  90万人増
     ◎ 90万人増の内訳
     高校生・大学生など   74万人増
           その他   16万人増
─────────────────────────────
 安倍政権の間に、雇用が384万人増えたといっても、その約
70%の266万人は65歳以上の高齢者です。老後2000万
円問題などもあり、年金が少ないので、働かざるを得ない高齢者
が多いのです。
 また、90万人増えたといっても、その約80%が高校生・大
学生であり、彼らは高い学費のために働かざるを得ない状況に追
い込まれているのです。15〜64歳の生産年齢人口は約44万
人しか増えていません。内訳を語らず、384万人の就業者増を
アベノミクスの成果と強調するのは問題があります。
 まだあります。安倍政権は、2015年10月に、日本の国民
経済の「生産」「支出」「所得」の金額の合計、名目GDPにお
いて、「2020年までに600兆円を達成する」ことを政権の
目標に掲げています。実はこれにはからくりがあるのです。GD
Pの統計手法を変更したからです。
─────────────────────────────
       平成17年基準/1993SNA
       平成23年基準/2008SNA
            SNA=System of National Accounts
─────────────────────────────
 今までの計算方法は「平成17年基準」ですが、これを「平成
23年基準」に変更すると、「研究開発投資」がGDPに乗って
くるのです。諸外国では、既に2008SNAを使用しているの
で、日本が2008SNAに変更すること自体は、当然のことで
すが、安倍政権はそのことを国民に周知させる必要があります。
 2008SNAに変更すると、GDPは、約30兆円近く増加
します。これがあったからこそ、安倍政権は、名目GDP600
兆達成目標を掲げたものと思われます。安倍政権は必ずともそれ
を隠しているわけではありませんが、そのことを明らかにしたう
えで、名目GDP600兆円を打ち出してはいないのです。多く
の国民はその事実を知らないでしょう。
 これについて、経世論研究所所長の三橋貴明氏は、次のように
安倍政権を批判しています。
─────────────────────────────
 (統計手法を変更するのであれば)当然の話として「名目GD
P600兆円目標」は、「630兆円」にアップデートしなけれ
ばならないはずだ。ところが、安倍政権は統計基準変更によるG
DPの拡大があったにもかかわらず、目標金額は「600兆円」
のままで据え置きした。「統計詐欺」、以外に何と表現するべき
なのか、筆者には言葉が見つからない。
 本書では紙幅の関係で取りあげることはできないが、安倍政権
及び財務省は様々な「統計マジック」を駆使し、あるいは「統計
詐欺」に手を染めているのだ。具体的には、厚生労働省の毎月勤
労統計調査の詐欺的なサンプル変更、公共事業の当初予算に社会
資本特別会計を含めることによる水増し、エンゲル係数を低く見
せるための「修正エンゲル係数」の公表、2014年4月以降の
景気後退を「隠蔽」した上で、「いざなぎ超えの景気拡大」と発
表するなど、枚挙にいとまがない。      ──三橋貴明著
            『米中覇権戦争/残酷な未来透視図/
    世界を救う最後のトリデは日本だった!』/ビジネス社
─────────────────────────────
 さて、ここから政府に騙されることなく、消費増税の影響を見
ていくことにします。添付ファイルは、日本の実質賃金の推移を
示しています。矢印で示してあるように、一貫して右肩下がりで
落ち込んでいます。
 その頂点を探ると、1997年です。いうまでもなく1997
年は、橋本政権によって、3%から5%への消費増税が行われた
年です。このことは、後で述べますが、このときの増税は、時期
も、タイミングも最悪のときに行われています。
 この増税によって、年々実質賃金が下がり、国民はそれに応じ
て消費できなくなるので、当然実質消費が減少します。そうする
と、需要が縮小し、それによって生産性向上が不要になるので、
実質賃金がまた下がるという悪循環で、どんどん実質消費がダウ
ンしているのです。
 安倍政権は、このような最悪の状況下で、2014年には消費
税の税率を5%から8%に引き上げ、実質賃金のさらなる落ち込
みを招いています。安倍政権は、経団連に対して、賃金引き上げ
の呼びかけをしていますが、そんなことをしても実質賃金は上昇
しないのです。そして、2019年10月、安倍政権は消費税率
の8%をさらに10%に引き上げたのです。まさに狂気の振る舞
いといえます。     ──[消費税増税を考える/020]

≪画像および関連情報≫
 ●いずれ議論不可避 消費税の「段階的増税論」とは
  ───────────────────────────
   10月1日、消費税率が、8%から10%へ引き上げられ
  た。10%超への追加増税については、安倍晋三首相が「今
  後10年、必要ない」と述べ“封印”したが、高齢者の増加
  で医療、介護など社会保障費が膨脹しており、「議論はいず
  れ避けられない」との見方が多い。仮に追加増税の議論が始
  まった場合、アイデアの一つとしてささやかれているのが、
  税率を小刻みに引き上げる“段階的増税論”だ。
   「現時点で(消費税率を8%へ引き上げた)平成26年の
  ような大きな駆け込み需要はみられない」。安倍首相は今月
  15日の参院予算委員会で、こう答弁した。政府は10%へ
  の増税にあたり、令和元年度当初予算に盛り込んだ2兆円超
  の「臨時・特別の措置」のほか、住宅ローン減税の拡充、食
  品などの税率を8%へ据え置く軽減税率の導入など、合計6
  兆6000億円分の景気底上げ策を打ち出した。
   足元の消費動向が安倍首相の答弁通りなら、政府の打ち出
  した対策が奏功したことになる。今後、米中貿易摩擦などに
  よる世界経済減速の影響も見極める必要があるが、景気が腰
  折れするような事態にならなければ、今回の消費税増税は、
  “成功”といえる。財務省にとっても、今後、消費税増税を
  続けていく突破口になりそうだ。 https://bit.ly/2N7F5uC
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典──三橋貴明著「米中覇権戦争/残酷な未来透視
  図/世界を救う最後のトリデは日本だった!」/ビジネス社

日本の実質賃金の推移(現金給与総額).jpg
日本の実質賃金の推移(現金給与総額)
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2019年11月07日

●「なぜ1997年が問題になるのか」(EJ第5123号)

 少し固い話になりますが、消費増税がいかにマイナスかを理解
するうえでの前提知識になります。GDP(国内総生産)には、
それを支える3要素があります。次の3つです。
─────────────────────────────
   GDP=「民需」+「政府支出」+「貿易収支」
─────────────────────────────
 このなかの「民需」に注目していただきたいのです。「民需」
とは次の3つの要素の合計です。
─────────────────────────────
  「民需」=「個人消費」+「住宅投資」+「設備投資」
─────────────────────────────
 日本のGDPの構成要素は、個人消費が6割を占めています。
個人消費とは、個人(家計)が、物やサービスの購入に充てた金
額の総計です。しかし、住宅への投資は、別区分として扱われま
す。この個人消費が伸びないと、景気の回復は望めないのです。
─────────────────────────────
      個人消費がアップ ・・・ 景気回復
      個人消費がダウン ・・・ 景気悪化
─────────────────────────────
 最新の個人消費(消費支出)を日本経済新聞の「経済指標ダッ
シュボード」でチェックすると、最新の数字は、2019年8月
現在で「1%」です。これは、「2人以上世帯、実質前年比」で
す。あまりピリッといない数字です。
 個人消費(消費支出)は、平均所得によって左右されます。平
均所得が多くなればなるほど、個人消費は増加し、景気を押し上
げます。こんなことは小学生でもわかる理屈です。
 添付ファイルの上のグラフを見てください。これは、一世帯当
たりの平均所得金額の推移をあらわしています。90年代中盤ま
では所得は増加し続けていたのですが、1997年後は一貫して
右肩下がりで下落し続けています。1993年時点で平均所得は
664万円であったものが、2012年には、529万円まで下
がってしまっています。90年代のピーク時よりも135万円も
下落し、その分日本人は貧乏になっているのです。これについて
藤井聡教授は自著で、次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本のGDPの停滞、衰退は、一軒一軒の世帯の視点から言え
ば、こうした世帯収入の下落を意味しているのである。ちなみに
万一日本経済が衰退せず、世帯の所得がピーク時から(さらに成
長せずとも)下落していなかった場合と実際の所得の推移とを比
較すれば、平均的な世帯は90年代からの約20年間で、約15
00万円もの所得をさらに得ていたという計算となる。
 逆に言うなら、日本がデフレになり、「衰退」しはじめたこと
で、日本の平均的な世帯は、約1500万円ものカネを失ってし
まったのである。それだけのカネがあれば、日本の各世帯は今よ
りも、どれだけ豊かな暮らしが出来たのだろうか。誠に残念な話
であるが、それこそ日本が「衰退途上国」と化してしまったこと
による、それぞれの世帯に対する「リアルな被害」の内実なので
ある。                ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 「消費税は消費に対する罰金である」といわれます。消費をす
るたびに罰金を科せられるのです。タバコ税は、タバコを吸う人
に対する罰金です。実際に、タバコ税を上げると、タバコの消費
が減少します。タバコは健康にとってよくない結果をもたらすの
で、タバコ税はいくら上げてもよいとさえいわれます。
 したがって、消費税を増税すれば当然消費が減少します。GD
P全体の約60%が個人消費ですから、消費税を上げればGDP
も減少します。今回の場合は、実質賃金が大幅にダウンしてきて
いるのに消費税を上げたのですから、当然消費に回るお金が少な
くなり、さらに個人消費を冷え込ませ、景気が悪化します。当た
り前のことが起きているのです。
 消費増税でもうひとつ指摘すべきことがあります。消費税を上
げれば、税収は増えるはずです。しかし、実際には税収は減少し
ています。添付ファイルの、下のグラフを見てください。このグ
ラフは、政府の税収の推移を示しています。増税直前には一時的
に税収は増加しているものの、増税直後の1998年には、直前
の52・1兆円から、49・4兆円まで、2・7兆円もの税収が
減少しています。その後、実際に消費税が入ってきて一時的に税
収は回復しますが、後は一貫して下がっています。どうしてこう
なるのでしょうか。
 税収を増やすために実施したはずの消費増税が、税収を下げて
いるのは、増税によってさらに景気が悪化し、日本経済全体が停
滞してデフレ化し、その結果、法人税や所得税などがすべて縮小
してしまった結果です。そのため、増税からわずか6年で、総税
収は10兆円以上も縮小してしまっています。
 これについて、藤井聡教授は、エコノミストである安達誠司氏
の次の発言を引用しています。
─────────────────────────────
 圧倒的多数の「専門家」は夏場に発生した「アジア通貨危機」
の影響の方がはるかに大きいと結論づけており、アジア通貨危機
がなければ、1997年の消費増税も景気に影響を与えなかった
だろうとと考えている。      ──藤井聡著の前掲書より
─────────────────────────────
 この説は一見正しいように見えます。しかし、アジア通貨危機
は、少なくとも日本にとっては一過性のものです。したがって、
時間の経過によって、やがては回復基調に戻るものです。それに
消費増税が重なったことが問題なのです。つまり、増税するタイ
ミングが最悪だったといえます。これについては、さらに問題を
掘り下げていくことにします。
            ──[消費税増税を考える/021]

≪画像および関連情報≫
 ●97年の消費税上げ、景気のマイナス要因ではない=財政審
  ───────────────────────────
  [東京 18日 ロイター] 財政制度等審議会(財務相の
  諮問機関、会長:吉川洋東大教授)の財政制度分科会は20
  10年5月18日、97年4月の消費税率引き上げが景気に
  与えた影響について議論を行った。会合後に会見した大串博
  志政務官によると、当時の消費税率引き上げは景気に対して
  主たるマイナス要因ではなかったとする意見が大勢を占め、
  成長率の低下について不良債権処理問題やアジア通貨危機の
  影響を指摘する声が多かったという。菅直人副総理兼財務・
  経済財政担当相は「お金の使い道を間違わなければ増税して
  も景気は良くなる」と指摘しており、財政審の見解はこうし
  た菅財務相の考えを追認した格好だ。
                  https://bit.ly/2JLmORW
  ───────────────────────────

1997年を境に起きた変化.jpg
1997年を境に起きた変化


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2019年11月08日

●「97年増税がデフレの真因である」(EJ第5124号)

 財務官僚、それも超エリートのキャリアにとって、3%から5
%への消費増税がデフレの真因といわれるのは、きわめて都合の
悪いことです。自分たちの夢の老後の計画がオジャンになってし
まうからです。彼らは、やっと10%になった消費税をここ数年
間のうちに、20%程度まで税率を引き上げることをもくろんで
います。国のためではなく、自分たちのためです。
 私は安倍晋三首相の政策スタンスに必ずしも賛成ではありませ
んが、ひとつだけ評価していたとがあります。それは、財務省の
いいなりにならず、既に法律化していた「社会保障と税の一体改
革」、つまり増税の先延ばしを図ったことです。それどころか首
相は一時は「8%を5%に下げる案」も検討したともいわれてい
ます。しかし安倍首相は、結果として2回の税率の引き上げを行
い、5%から10%に消費税率を倍増させてしまっています。
 経済アナリストの森永卓郎氏によると、なかなか増税しようと
しない安倍首相に対し、財務省は安倍政権の倒閣運動まで考えた
というのです。
─────────────────────────────
 私は、そもそも森友学園の問題は、財務省が安倍政権を追い
 詰めるためにやった自作自演の大芝居だったと考えている。
            ──森永卓郎著/角川新書K−241
            『なぜ日本だけが成長できないのか』
─────────────────────────────
 仰天の新説ですが、これについては、真偽のほどはわかりませ
んが、改めて取り上げるつもりです。当時財務省は、なかなか増
税しない安倍政権にいらだちを強めており、倒閣も視野に入れて
いたといわれています。
 さて、昨日のEJの巻末の「関連情報」でご紹介した財政制度
等審議会(財政審)のロイターニュースによるレポートを取り上
げます。この財政審は、民主党の鳩山政権時代の2010年5月
18日に行われています。ロイターニュースの伊藤純夫記者は、
この財政審の分科会において、井堀東大教授のコメントを次のよ
うに紹介しています。
─────────────────────────────
 18日の財政審・分科会では、井堀利宏東大教授が97年4月
の消費税率引き上げ(3%から5%に)が景気に与えた影響に関
連して、1)経済への影響をネットで見た場合、消費税増税より
も不良債権処理問題やアジア通貨危機の方が大きかった、2)増
税は将来の減税と等価であれば経済に中立、3)増税の使い道も
大きな問題−−などと説明した。
 当時の実質国内総生産(GDP)は消費税率引き上げ後の97
年4〜9月、98年1〜6月にマイナスに落ち込んだが、大串政
務官によると会合では、「消費税率引き上げが主たるマイナス要
因ではなかったとの議論が多かった」とし、不良債権処理問題や
アジア通貨危機による輸出の落ち込みが主因などとの見解が委員
の中から示されたという。      https://bit.ly/2NeRX2g
─────────────────────────────
 そもそも今回の消費増税の実現は、当時の鳩山政権において、
副総理兼財務・経済財政担当相を務めていた菅直人氏が、財務省
に完全に洗脳され、「お金の使い道を間違わなければ、増税して
も景気は良くなる」というわけのわからない言説を広めるように
なったことが原因にあります。
 そもそも財務省が主管する財政審において、消費増税の影響の
深刻さに言及する意見が出るはずがありません。財務省は何が何
でも消費増税を実現したいからです。そのため、財務省寄りの井
堀利宏東大教授は、増税後の景気の落ち込みの原因について「消
費税増税よりも、不良債権処理問題やアジア通貨危機の方が大き
かった」ことを強調しているのです。
 この考え方について、添付ファイルの上のグラフを見ていただ
きたいのです。このグラフは、藤井聡教授の本に掲載されていた
ものですが、これについて藤井教授は次のように述べています。
─────────────────────────────
 この図は、日本からの総輸出額の推移を示しているが、アジア
通貨危機が起こった1997年の直後、輸出はほとんど変わらず
「横ばい」となっている。これは、リーマンショック時の激しい
下落に比べれば雲泥の差があることがお分かりいただけよう。こ
の点から考えても、アジア通貨危機がデフレとなった原因である
という結論は引き出しようがないのである。
                   ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 もうひとつ専門家の間では、「日本がデフレ不況なのは、人口
減少が原因である」という説が話題になっています。この人口減
少説は、人口が減ると、モノやサービスを買う人が少なくなり、
経済が低迷し、少しずつデフレになっていくという考え方です。
 これについて、藤井聡教授は、日米欧の人口増加率のグラフを
示して、次のように反論しています。添付ファイルの下のグラフ
を見てください。
─────────────────────────────
 これは「日米欧」の各国の1995年から2017年にかけて
人口増加率を示したものだ。ご覧のように、我が国日本より人口
の減った国が実に15ヶ国もある。人口が最も減少している国は
リトアニアだが、その減少率は実に22%。人口減少がデフレの
原因であるのなら凄ましいデフレになり、GDPは大きく下落し
ている筈だ。しかしリトアニアの名目成長率は何と606%。経
済規模は実に7倍まで拡大しているわけだ。(中略)つまり「人
口が減れば、デフレになって経済が衰退する」という話は、事実
から完全にかけ離れた単なる「デマ」なのだ。
                 ──藤井聡著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/022]

≪画像および関連情報≫
 ●「デフレの正体」信じる愚劣/高橋洋一氏
  ───────────────────────────
   国債格付けばかりか、経済そのものにも「疎い」菅直人首
  相が2011年1月10日、東京・八重洲の書店で、日本政
  策投資銀行参事役、藻谷浩介氏の『デフレの正体』(角川新
  書)など7冊を購入したというニュースがあった。やはり首
  相の経済ブレーンがしっかりしていないのだなと思わざるを
  えない。
   同書はかなり好評であり、公称50万部突破と、売れてい
  る。「そうだったのか」のわかりやすい解説で定評のある池
  上彰氏も「藻谷さんは、労働力人口が減るということは、活
  発な消費活動をする若い人が激減するのだから、需要不足に
  なり、デフレになるのは当然だ、と指摘します。(中略)目
  からウロコでした」(「文藝春秋」2010年8月号)と絶
  賛した。            https://bit.ly/32fdzjo
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典:──藤井聡著/晶文社/『「10%消費税」が
  日本経済を破壊する

デフレの真因のグラフ.jpg
デフレの真因のグラフ
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2019年11月11日

●「消費増税は国民の生命に直結する」(EJ第5125号)

 先週のEJ第5123号の続きです。消費税の税率を上げれば
税収は増えるはずです。しかし、実際はそうなっていない。19
97年4月の橋本内閣による消費税3%から5%の増税の場合、
その前後1年の1996年と1998年の国の総税収を比較する
と、次のようになっています。
─────────────────────────────
      1996年 ・・・・ 52・1兆円
      1998年 ・・・・ 49・4兆円
─────────────────────────────
 増税後、2・7兆円も税収が減少しています。なぜ、こんなこ
とになったのでしょうか。
 1980年代の後半から起こったバブル景気は、1991年か
ら1993年にかけて、高騰していた株価や地価が急落し、その
後、日本経済に負の影響が拡大していったのです。日本の経済成
長は停滞し、後に「失われた20年」といわれるようになる長い
トンネルに入ってしまったのです。
 そんなときに、橋本政権は、1997年に、前村山政権時代に
決まっていた3%から5%への消費増税を断行します。それだけ
でも経済にとって大ダメージであるのに、1998年に法人税を
37・5%〜34・5%に下げています。
 橋本政権がこの消費税の引き上げによる経済悪化が原因で退陣
すると、次の小渕内閣でも、1999年に34・5%に下げた法
人税をさらに30%まで下げています。つまり、消費税の増税直
後に7・5%も法人税を下げたことになります。国民との約束は
無視して増税するのに、財界との約束はきちんと果すのです。こ
れでは増税をしても税収が増えるはずがない。ちなみに2012
年のさらに4・5%の法人税の減税は、財務省に洗脳された民主
党の野田佳彦首相の下で行われています。
─────────────────────────────
 ◎1997年/消費税3%から5%に増税
  1998年/法人税37・5%から34・5%に引き下げ
  1999年/法人税34・5%から30・0%に引き下げ
  2012年/法人税30・0%から25・5%に引き下げ
─────────────────────────────
 この税収の減収がいかに大きかったかは、1997年を境とす
る赤字国債の増加によくあらわれています。添付ファイルを見て
ください。これは「赤字国債発行額の推移」を示しています。こ
れについての藤井聡教授の解説です。
─────────────────────────────
 1997年までは、増減しながらも「政府の借金」の金額は低
い水準に抑えられていた。1997年までの10年間の平均は、
3・1兆円というオーダーだった。ところが、1997年を境に
「政府の借金」はうなぎ登りに上昇。瞬く間に20兆円〜30兆
円の間をうろつく程の高い水準になってしまった。
 そして、その後の10年間の平均で、実に22・9兆円という
それまでよりも、約20兆円も高い水準になってしまったのであ
る。これは要するに、1997年を境に、日本経済が「デフレ不
況」に陥り、経済が「衰退」し、税収が大きく減ったことが原因
だ。                 ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 要するに藤井教授によると、今やGDPの2倍を超える政府の
借金の原因が、1997年4月に実施された3%から5%への消
費税の増税にあったというのです。バブルが崩壊して、デフレに
向かいつつあった時期において、それまでの勢いこそ失ったもの
の、そこそこ成長できていた日本経済に、壊滅的なダメージを与
えて、脱出困難なデフレに追い込んだのは、1997年の消費増
税だったのです。
 デフレは、経済政策において、よほどのミスを積み重ねない限
り、めったに陥ることはない経済現象です。その証拠に、先進国
はもちろんのこと、他の国においても、デフレに苦しんでいるの
は日本だけです。それよりもっと深刻なことは、デフレに陥った
真の原因が消費増税にあることが、為政者がまるでわかっていな
いことです。
 藤井教授は、デフレがどれほど悲惨なことかについて、次の説
明をしています。それは、自殺者数の推移との関連です。
─────────────────────────────
 消費増税直前の自殺者数が約2万2000人であったところ、
消費増税でそれが一気に3万3000人に拡大。自殺者数が実に
1万人以上も増大したのであり、その増大がまさに、消費増税に
よってデフレ化した1997年の直後に生じているのである。
 この1997年の異様な自殺者数の激増は、この年に何か決定
的な出来事が我が国で起こつたことを雄弁に物語っている。それ
こそ、日本の「デフレ不況への突入」なのであり、そしてそれを
導いた「消費増税」だったのである。
 ◎1997年前後の自殺者数の推移
  1997年以前10年平均自殺者数 ・・ 22418人
  1997年以後10年平均自殺者数 ・・ 32560人
                 ──藤井聡著の前掲書より
─────────────────────────────
 数字で見る限り、1997年を境に自殺者が平均で1万人以上
増えています。つまり、藤井教授がいいたいことは「10年間で
10万人以上もの人々が、消費税の増税によって自殺に追い込ま
れている」という深刻な事実です。
 このように、国の経済政策というものは、10万人単位の国民
の生命に直結するきわめて重大な影響をもたらすものであり、間
違えたでは済まないのです。藤井教授が前掲書を書こうと考えた
のは、このことが根本的な動機であると激白しています。政府は
今後も消費税を20%ぐらいまで上げようとしています。狂気の
沙汰です。       ──[消費税増税を考える/023]

≪画像および関連情報≫
 ●『「10%消費税」が日本経済を破壊する』書評
  ───────────────────────────
   2017年にメディアが報じた「戦後2番目に長い経済成
  長(いざなぎ景気)超えの好景気」には違和感を覚えた人も
  多いだろう。庶民には生活が良くなったとの実感がまったく
  ないからだ。
   17年末に、朝日新聞が報じた世論調査でも、景気回復を
  「実感していない」が82%に上っている。その庶民感覚が
  間違っていないことを著者の藤井聡教授がマクロデータを基
  に明らかにする。
   日本経済が、いまだデフレ経済下にあること、国内企業の
  99%を占める中小企業の景気は年々悪化し続けていること
  サラリーマンの給与が下がったままであること、その元凶が
  消費税増税にあったこと。
   1997年に消費税が3%から5%に上がった。消費増税
  後にデフレ不況に突入し、それまで22000人程度だった
  年間の自殺者が33000人に増え、10年以上も高止まり
  し続けたことが、著者が本書を出版することを企図した根本
  的な動機だという。デフレ化の原因が同年の「アジア通貨危
  機」ではないことも検証されている。17年の総選挙の時に
  「10%への消費増税」を公約に掲げる自由民主党が圧倒的
  多数を獲得したことで、消費増税を「国民世論が支持した」
  ことになってしまい、19年の秋に消費増税をすることが当
  たり前の空気ができてしまった。 https://bit.ly/2K5YA53
  ───────────────────────────

「赤字国債発行額」.jpg
「赤字国債発行額」
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2019年11月12日

●「消費増税は必然的にデフレを導く」(EJ第5126号)

 藤井聡京都大学大学院教授の話を聞いていると、何でもかんで
も原因を消費増税に結びつけている──このように感ずる人がい
るかもしれません。「他の多くの国でも消費税を導入しているで
はないか。それらの国はデフレにはならず、日本だけがなるのは
おかしい」という理屈です。
 当然の理屈です。最初は私も感じた疑問です。こういう疑問に
対して、藤井教授は、次のように反論しています。
─────────────────────────────
 (消費税を導入している)これらの国々がデフレではないのだ
から、消費税率をたかだか5%にあげたぐらいで日本だけがデフ
レになるなんてあり得ないじゃないか──しばしば消費税論者は
こうして消費税のさらなる増税を主張する。
 しかし、問題なのは「税率」そのものではない。
 彼らが「いつ」消費税をあげたのか、という点こそが問題なの
だ。そもそも1997年と言えば、世界の経済史の中でも特筆さ
れるほどの大事件であった1990年〜1991年にかけて生じ
た「バブル崩壊」の直後だった。文字通り「バブル景気」で沸い
ていた日本の株価が一気に下落し、多くの資産家が、資産を失っ
た。当時日本から消えてなくなってしまった資産額は、1500
兆円(!)とも言われている。     ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 空前のバブル景気が一気に崩れたのです。まさに未曾有の事態
です。こういうとき、政府は何をすればよいでしょうか。政府は
経済が失速することを何よりも恐れて、大規模な経済政策を始め
たのです。ここまでは正解でした。そのおかげで我が国は、19
96年までは、未曾有のバブル崩壊にもかかわらず、経済は失速
させないできています。したがって、そのまま続ければ、よかっ
たのです。しかし、政府の借金を異常なほど気にする財務省と、
その進言を受け入れた橋本龍太郎首相は1997年4月に3%〜
5%への消費増税を断行しています。この橋本龍太郎首相は、も
ちろん財務大臣、当時の蔵相を次のように務めています。橋本首
相は、大蔵大臣のほか、厚生大臣、運輸大臣、通産大臣も務めて
いる大臣のベテランです。
─────────────────────────────
  ◎第93代〜第94代大蔵大臣
   1989年 8月10日〜1991年10月14日
  ◎第103代大蔵大臣(兼務)
   1998年 1月28日〜1998年 1月30日
─────────────────────────────
 デフレがどのようにして発生するかについては、いくつかの説
があります。そこで、藤井聡教授による「消費増税をする時期を
誤ると、なぜデフレが発生するか」について、以下に説明するこ
とにします。添付ファイルを見てください。
 消費税の税率を上げると、当然のことながら、消費が縮小しま
す。消費が縮小すると、物価は下落し、それに伴い企業業績は悪
化します。そのとき企業はどうするでしょうか。
 企業としては、企業業績悪化に伴い、コスト削減を図らざるを
得なくなり、当然従業員の給与もカットされます。これによって
国民はさらなる貧困化、困窮化し、消費はさらに落ち込むことに
なります。このようにデフレスパイラルが起きます。
 企業は、「投資」を控えるようになり、「攻め」ではなく「守
り」の姿勢が強くなります。企業が投資を控えるようになると、
投資を生業とする企業の業績が悪化し、それによって企業の投資
意欲はさらに悪化し、ここでもデフレスパイラルが発生します。
このようにして、「世帯」と「企業」の両方でデフレスパイラル
が起きるのです。そうすると、倒産する企業も出現し、その結果
労働者の失業も増えていきます。
 以上のまとめとして、藤井教授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 こうして、消費、物価、企業業績と投資、所得の全てが、互い
に循環的に影響を及ぼしあいながら同時に下落していくというの
が「デフレ不況」という経済現象なのである。
 そしてこのデフレ・スパイラルが進行していくプロセスの中で
政府においては財政を悪化させ、国民においては自殺者数が10
万人以上もの規模で「激増」したのである。そしてGDPは伸び
悩み、「衰退途上国」と化し、世界経済におけるGDPシェアが
転落していったのである。
 なお、以上の「デフレのメカニズム」の一つひとつのプロセス
はいずれも、単なる「理屈」や「イメージ」を並べ立てたものな
のでは決してない。いずれも、実証的なデータの裏付けのあるも
のばかりである。しかも、それらの「全て」が「1997年の消
費増税」こそが、デフレを導いた真犯人であることを雄弁に物語
っているのである。        ──藤井聡著の前掲書より
─────────────────────────────
 資本主義とは、企業の負債と投資拡大なしには、成長できない
経済モデルであるといえます。日本の場合、それが1990年の
バブルの崩壊によって行き詰まり、1996年までは、政府支出
を拡大し、国内の需要不足を補ったのです。ここまでは経済学の
セオリー通りであり、そのまま大胆に継続していけば、少なくと
もデフレにはなっていなかったはずです。
 しかし、日本は、そのとき米国から構造改革、すなわち、グロ
ーバリズムを迫られたのです。グローバリズムの目的は、「小さ
な政府」を目指すことであり、これは必然的に政府の規制や予算
を縮小することに繋がります。「緊縮財政」「規制緩和」「自由
貿易」の3つの政策を同時に推進するのがグローバリズムです。
 蔵相の経験の長い橋本首相は、政府支出をそのまま拡大する路
線がとれなかったのです。そして一貫して緊縮財政にのめり込み
1997年には最悪の消費増税を断行して、日本経済をデフレ化
させてしまったのです。 ──[消費税増税を考える/024]

≪画像および関連情報≫
 ●橋本龍太郎元首相の「悪」評価
  ───────────────────────────
   橋本龍太郎元首相が7月1日午後2時、多臓器不全のため
  入院先の東京・新宿の国立国際医療センターで、亡くなりま
  した。68歳でした。「50、60ははなたれ小僧、70、
  80は働き盛り、90になって迎えが来たら100まで待て
  と追い返せ」という言葉がある政治の世界では早すぎる死、
  ということになるでしょう。
   橋本氏といえば、ニックネームのハシリュウで知られ、自
  民党総裁時代には党本部に「龍ちゃんプリクラ」が設置され
  るなどの人気を博した人物。しかし、投資家の評価は決して
  芳しいものではありませんでした。それは、株価が如実に物
  語っています。
   日経平均株価はバブル景気の絶頂期1989年12月29
  日に、38915円87銭と史上最高値をつけました。しか
  しその後一転し、1991年2月から急落。1998年10
  月9日には、最高値から、実に67%の下落の12879円
  97銭となりました。この株価下落をよく見てみると、キッ
  カケに橋本氏が絡んでいるのです。
   橋本氏は80年代後半のバブル期には、大蔵大臣として不
  動産関連融資の総量規制を実施し、バブル崩壊の原因となり
  ました。総量規制とは、大蔵省(現財務省)が1990年4
  月から1991年末にかけて実施した、不動産向け貸出を抑
  制する規制のこと。不動産向け貸出額は激減し、それに伴っ
  て地価が大きく下落し始めたのです。長く続くバブル崩壊の
  始まりでした。         https://bit.ly/33wks0Y
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典/──藤井聡著の前掲書より

消費増税がデフレを導くメカニズム.jpg
消費増税がデフレを導くメカニズム
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