2019年10月09日

●「消費増税で高額所得者を潤わせる」(EJ第5105号)

 今回のテーマは、いつかは取り上げようと考えていたのですが
情報が徹底的に不足していました。ところが、今年に入って、安
倍内閣が、10月1日から予定通り消費税率の10%引き上げを
決断した思われる状況になって、急に消費税関連の本が多数出版
されるようになったのです。
 著者は、元内閣府官房参与からはじまって、元財務省官僚出身
の作家、元国税庁調査官、経済アナリスト、元国税庁出身で、政
府税制調査会特別委員など、プロばかり。私は、それらの本のほ
とんどを入手し、ていねいに読みこなした結果、そのからくりの
全貌がわかってきました。
 メディアは知っていて沈黙していますが、国民を愚弄するとん
でもないからくりです。多くの人は、そのからくりに気が付いて
いないし、完全に騙されています。
 といっても、安倍内閣は、そのスタート時点(2012年12
月)で、既に「社会保障と税の一体改革」の与野党合意はできて
おり、法律になっていました。つまり、安倍内閣はその実行だけ
を託されたことになります。これは、野田佳彦首相と谷垣禎一自
民党総裁(当時)が組んで、与野党で合意して成立させた法律で
す。2人とも財務大臣の経験者です。したがって、その目的は、
「財政の健全化」であって、「社会保障」ではない。だから「税
と社会保障の一体改革」と、「社会保障」と「税」を逆にして呼
ばれるようになっています。「社会保障と税の一体改革」──こ
れが正しいのです。
 本来であれば、2015年10月に10%に引き上げる予定で
したが、安倍内閣は2度にわたり、先送りしたので、4年遅れて
10%になっています。これについて、既に政界を引退している
谷垣禎一氏は次のように述べています。
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 安倍首相は消費増税には警戒的だったし、14年4月に5%か
ら8%に上げたときに苦労された。私と首相との間には経済の見
方や消費税の果すべき役割に関する考えに若干の違いがあった。
それぞれの持つ経済観や財政観が完全に一致しているわけではな
いのが政治だ。それよりも、ここまできたことを喜ぶということ
だろう。             ──谷垣禎一元自民党総裁
       2019年10月2日付、日本経済新聞朝刊より
─────────────────────────────
 ところで、安倍首相自身は、本当に税制に通じているのでしょ
うか。安倍首相は第1次政権で「消えた年金」で苦労したことも
あり、年金には詳しいですが、税制は詳しいとは思えません。税
制を中心にすべてを仕切っているのは財務省です。もっとも現在
の麻生財務相はわかっているとは思えませんが・・・。この人は
知ったかぶりをするだけの人物です。
 つねづね不思議に思っていることがあります。安倍首相が予定
の増税を延期するたびに、経団連の会長がそれを「財政再建が心
配である」などと批判していることです。一人例外はいましたが
そのことにはあえて言及しないことにします。増税は、大企業に
とってもマイナスであり、延期されれば助かるばずなのに、なぜ
批判するのかと思ったものです。
 しかし、昨日のEJで述べたように、消費税の導入や税率が上
がるときには、法人税の減税が行われていますが、それだけでは
なく、所得税の減税も行われているのです。しかし、減税で潤っ
たのは、高額所得者だけです。したがって、多くの人は、所得税
の減税のことは知りません。経団連などの大企業のトップは高額
所得者ですから、彼らは企業と自分自身に対する二重の減税の恩
典にあずかっているわけです。だから、増税が延期されると、不
満を漏らすのです。これが一つのからくりです。
 所得税の税収は、1991年には26・7兆円以上あったので
す。それが2018年には19兆円になっています。7・7兆円
減少しています。一方、法人税は、消費税が導入された1989
年には19兆円あったのですが、2018年には12兆円に減っ
ています。7兆円の減少です。1991年から2020年までの
約30年の間に所得税と法人税の税収は、14・7兆円も減って
います。つまり、消費税の税収の大半は、所得税と法人税の減税
の穴埋めで使われているのです。
 その減少分は、大企業と、そのトップを含む高額所得者(安倍
首相も麻生財務相も入る)たちをたっぷりと潤していることにな
ります。まだあります。大企業は、法人税減税で潤った分を社員
に分配せず、内部留保として貯め込んでいます。2017年度の
法人企業統計によると、企業の「利益剰余金」、いわゆる「内部
留保」は446兆4844億円と、前年度比9・9%増え、過去
最高になっています。増加は6年連続ですが、9・9%増という
伸び率はこの6年間で最も高いのです。いいですか、500兆円
ですよ!日本のGDPの一年分に匹敵します。これでは、社会保
障などに回せるお金はごくわずかになるのは当然です。
 米国では、景気対策といえば「減税」ですが、高額所得者は別
として、日本政府は絶対に減税はしません。そのとき、減税でき
ない理由として財務省がいうのは「日本は財政が厳しいから」で
す。ほとんどの国民はそう思っていますが、これは財務省の長年
によるメディアを巻き込んだプロパガンダの成果といえます。こ
れについては、改めて詳しく説明しますが、日本の財政は何ら問
題はない。国民は完全に騙されています。信じ難いことに、今回
の消費増税に50%の国民が賛成しています。驚きです。野党は
何をやっているんだといいたいです。一緒になって増税するのを
助けているのか!
 財務省による「消費税=社会保障の財源」の位置付けでは、消
費税の税率はどんどん上昇します。これによって国民はますます
貧しくなり、経済は停滞し、格差社会化が一段と進行します。日
本は消費税の導入によってデフレになり、それが3回にわたって
増税され、20年間デフレは持続し、今後さらに深化します。
            ──[消費税増税を考える/003]

≪画像および関連情報≫
 ●「社会保障のための増税」はまやかしである
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   6月に閣議決定された「骨太の方針2019」は、10月
  の10%への消費税増税を明記。「社会保障に対する安定的
  な財源を確保する」などとしている。しかし「社会保障のた
  めの消費税増税」という議論は、法人税や所得税を減らす分
  を消費税分で置き換えるに過ぎず、まやかしの議論であるこ
  とはこの間の経緯を見ても明らかだ。1989年度から20
  18年度までの消費税収は累計372兆円。一方で、同時期
  の法人税の減収分は累計291兆円となる。消費税収の約8
  割が法人税収の穴埋めに使われたことになる。
   消費税導入時との比較では、現在の税収構造は、減税等に
  より所得税収、法人税収が低下。消費税収が、所得税収に匹
  敵するまでに増えているにもかかわらず、国の税収全体はほ
  とんど増えていない。財務省は2018年度一般会計の決算
  概要を発表。「国の税収はバブル期を超え最高」などと報じ
  られた。しかし、バブル期の1990年度と比べると、基幹
  3税のうち増えたのは消費税だけで、13兆円の増。所得税
  と法人税は、それぞれ6・1兆円減だ。
   第2次安倍内閣発足以来の7年間で、社会保障費は4兆2
  720億円も削減されてきた。さらにこの先も社会保障の給
  付抑制、負担増を実施する計画だ。https://bit.ly/2OvpOVt
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谷垣禎一元自民党幹事長.jpg
谷垣禎一元自民党幹事長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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