2019年09月18日

●「米香港人権法案は香港を救えるか(EJ第5091号)

 香港のデモに異変が起きています。「逃亡犯条例」改正案が正
式に撤回されたにもかかわらず、デモは以前と同じ規模で継続さ
れ、そのデモの渦のなかに、なぜか星條旗が何本もはためいてい
ます。そして、香港デモ隊は次のスローガンを掲げるようになっ
ています。香港情勢が変わろうとしているようです。
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       「香港に自由を!法律の成立を!」
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 ここでいう法律とは何かというと、現在、米議会で審議されて
いる「香港人権・民主主義法案」のことです。香港政府と、その
バックにいる中国政府が、今頃になって「逃亡犯条例」改正案を
完全撤回したのは、米議会でこの法案の審議が、急ピッチで進ん
でいることに焦ったからです。したがって、デモ隊は「アメリカ
がんばれ!」といって星條旗を振っているわけです。
 香港政府と中国政府は、この米国の「香港人権法案」は、もと
もと「逃亡犯条例」改正案が成立すると、香港の自由や人権、自
治が侵害され、これによって米国をはじめとして、香港に進出し
ている他国の国民の香港における安全や利益が脅かされるのを何
とか防がないといけないという背景のもとで、審議が進められて
いると、比較的甘く考えていたようです。
 このような法律ができることは、中国にとって好ましいことで
はないので、中国政府は、クサイ芝居をうって、香港の林鄭月娥
行政長官に「香港人権法案」の基盤になる「逃亡犯条例」改正案
の完全撤回を指示したのです。そうすれば、「香港人権法案」は
撤回されると考えたからです。しかし、「逃亡犯条例」改正案の
撤回があまりにも遅すぎといえます。もし、中国政府が、本当に
そう思っていたとしたら、それは、トランプ大統領というよりも
米国議会の本気度を見誤っていたとしかいえないでしょう。
 米国には、香港に関して、次の法律が存在します。この法律は
1992年に米議会を通過し、1997年7月1日、香港が中国
に返還されると同時に効力が発生しています。
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     ◎「米国・香港政策法」
      United States-Hong Kong Policy Act
      合衆国合衆国法典第22編第66条22
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 香港返還に当っては、中国と英国の間に「中英連合声明」とい
うものが署名されています。1984年12月19日に、中国の
趙紫陽国務院総理と、英国のマーガレット・サッチャー首相が、
北京で署名しています。これは、声明というかたちをとっていま
すが、国際条約と同等の地位を有する重いものです。
 香港政策法は、その「中英連合声明」を担保するものと位置づ
けられます。基本的には、香港は中国に帰属するものの、いわゆ
る一国二制度として、米国は香港に香港政策法の下で、通商や投
資、出入国、海運など、特別待遇を提供するということを約束し
ています。つまり、香港は中国にあって中国にあらざるプレイス
として、米国との貿易交渉において、中国としても便利な地域に
なっていたのです。
 しかし、香港政策法には、いくつか不備があることがわかって
きたのです。そのひとつとして、香港が特別待遇を受けるために
不可欠である「香港への十分な自治」が、本当に与えられている
のかどうかをチェックする基準が明確でないことがわかってきた
のです。今のままでは、米国が香港に付与した特別待遇を中国政
府が悪用しても、それをチェックできないからです。そのきっか
けになったのは、香港の「逃亡犯条例」改正案です。
 それにもう一つ、関税の掛け合いになっている米中貿易摩擦に
おいて、中国が香港を巧妙に利用しているとし、共和党のマルコ
・ルビオ上院議員が、この9月にワシントン・ポスト紙に寄稿し
たレポート「中国は香港で本性露呈/米国は傍観できぬ」があり
ます。以下は、エリス・コンサルティング代表・法学博士/立花
聡氏によるその一節の抄訳です。
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 香港の特別な地位に注目して欲しい。それはつまり、独立関税
区域として開放的な国際金融システムや、米ドルペッグ制(連動
制)の香港ドルがあって、北京はこれらの仕組みを利用して、利
益を得ていることだ。だから、米国は行政的に外交的にこれらの
条件を制限しなければならない。さらに、マグニツキー法を生か
す方法もある。人権侵害にかかわる当局者の個人を制裁すること
だ。マグニツキー法は外国の個人や組織を制裁することを認めて
いる。    ──2019年9月3日付、ワシントンポスト紙
                  https://bit.ly/2khdefV ─────────────────────────────
 香港人権法案は、いわば香港政策法の強化版といえます。この
改正案では、米議会は、米国務長官に対し、香港が各種関連法に
基づき、人権や自由ないし自治を保障しているかどうかなどにつ
いて、毎年レポートの提出を求めることができます。これについ
て、立花聡氏は、次のように説明しています。
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 分かりやすくいえば、香港は上場企業のようなもので、経営の
透明性が必要であり、それを検証する監査役を米国が引き受け、
毎年監査報告書を作成し、開示し、そこで国際社会の信頼を得る
ということである。         https://bit.ly/2ma0sQW
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 ちなみに、香港人権法案は、共和党だけでなく、民主党のナン
シー・ペロシ下院議長も賛成しており、共和、民主賛成可能な法
案であって、9月中に成立する予定です。つまり、米議会は、香
港市民側に立っており、中国政府としては、絶体絶命な状況に追
い込まれています。この動きに、果して中国政府はどのように対
処するのでしょうか。注目されます。
              ──[中国経済の真実/090]

≪画像および関連情報≫
 ●香港で数万人デモ、米議会に「香港人権法」早期可決求める
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   香港市民は9月8日、香港の高度な自治を守る「香港人権
  ・民主主義法案」の早期成立を求め、米国総領事館までデモ
  行進した。数万人が参加した。終了間際、警察は催涙弾など
  を使ってデモ隊の強制排除に乗り出した。市民数人が拘束さ
  れ、負傷者も出た。香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・
  ラム)行政長官が4日、「逃亡犯条例」改正案の正式撤回を
  表明したが、事態が収束する兆しはなく、連続14週目のデ
  モとなった。
   6月13日、マルコ・ルビオ米上院議員らの上下両院の超
  党派議員が同法案を提出した。法案は、米政府に対して香港
  の高度な自治を検証するよう義務付けるほか「香港の自治と
  民主・自由を圧迫する者や責任者に制裁を科す」と定める。
  米議会で、近く審議が再開される可能性がある。
   香港市民は8日午後1時半〜6時半まで、遮打花園(チャ
  ーター・ガーデン)で法案の可決を求める集会を開いた。ま
  た、一部の市民は午後2時半から、米国旗を掲げてデモ行進
  した。警察が米総領事館の近くでバリケードを設置したため
  デモ参加者らは総領事館に近づけなかった。総領事館は職員
  を近くの幹線道路、下亜厘畢道に派遣し、市民からの請願書
  を受け取った。香港人女優の葉コ嫻氏(71)は、英語で書
  かれた「どうか『香港人権・民主主義法案』を可決させて」
  のプラカードを掲げてデモ行進に参加した。大紀元の取材に
  対して「米政府が香港(市民)を助けてくれることを望む」
  と述べた。           http://exci.to/2mgI9tx
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香港デモで星條旗がはためいている.jpg
香港デモで星條旗がはためいている
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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