2019年09月02日

●「なぜ、ファーウェイを排除するか」(EJ第5080号)

 8月29日、米国は、11番目の統合軍として「宇宙軍」を創
設したと発表しました。かねてからトランプ大統領は「作る」と
宣言していたので、その実現と考えている人は多いと思いますが
実は、宇宙軍は既に1985年9月23日に設立されています。
しかし、2002年10月1日に米国戦略軍に整理・統合されて
いたものを統合軍の一つとして独立させたのです。したがって、
昨日今日できたものではなく、相当の積み上げがあります。宇宙
軍事の一部は中国が先行しているものの、全体としては米国の方
が、かなりハイ・レベルにあるといえます。
 ところで、統合軍とは何でしょうか。米軍は、管轄地域別6統
合軍、機能別4統合軍があり、今回宇宙軍が機能別統合軍の一つ
として追加され、11統合軍となったのです。
─────────────────────────────
      ◎管轄地域別統合軍
        1.アメリカ北方軍
        2.アメリカ中央軍
        3.アメリカアフリカ軍
        4.アメリカ欧州軍
        5.アメリカインド太平洋軍
        6.アメリカ南方軍
      ◎機能別統合軍
        7.アメリカ特殊作戦軍
        8.アメリカ戦略軍
        9.アメリカ輸送軍
       10.アメリカサイバー軍
     ⇒ 11.アメリカ宇宙軍
       ──ウィキペディア  https://bit.ly/34fIC0o ─────────────────────────────
 このなかで、日本を含むアジアを担当しているのは、アメリカ
インド太平洋軍です。これを見ると、米国はやはり地球規模の軍
隊を率いています。口では否定しても、やはり米国は、「世界の
警察官」なのです。
 宇宙軍にも関係することですが、現在、米中貿易戦争のカギを
握っているのは、華為技術(ファーウェイ)です。ファーウェイ
は本当にスパイなのでしょうか。これについては、識者によって
意見は二分されています。
 米国において、ファーウェイに関する疑問は、トランプ政権に
なってからではなく、オバマ政権の頃から出ていたのです。20
12年に下院で、ファーウェイ、ZTEなどの中国の通信機器大
手企業が、米国の安全保障を脅かしているという内容の報告書が
提出されたのです。このときの懸念は、ファーウェイの創業者で
ある任正非氏が人民解放軍の出身であり、軍との関係が懸念され
るとして、米国政府機関などで中国製通信機器の使用が禁止され
ています。
 そしてこれは、ファーウェイではありませんが、2016年に
は中国ADUPS製ファームウェアを採用したスマホで、バック
ドアが検出されています。ファームウェアとは、スマホに最初か
ら装備されている機能のことです。これによると、72時間ごと
に中国にあるサーバーに、ユーザーの位置情報や通話履歴、連絡
先、情報入力したメッセージなどが、自動的に送信されるように
なっていたのです。
 2017年3月には、中国ZTEに対し、イランと北朝鮮への
違法な輸出があったとして、米国は11億9000万ドルの罰金
を科しています。しかし、2018年4月に、その申告に虚偽が
あったとして、米国商務省は、米国企業に対し、ZTEへの部品
販売を禁止しています。
 ファーウェイに関してネット上に出ているものとしては、ファ
ーウェイ製ノートPCにバックドアが発見されたとするマイクロ
ソフトの次の報告です。
─────────────────────────────
 報道によれば、技術者らはOSの中核部分である、カーネルに
異常な作動を見つけた。技術者らが異常な作動を追跡した結果、
ファーウェイが開発したデバイス管理ドライバーが原因であると
判明した。マイクロソフトがさらに調査を進め、設計上の誤りを
発見した。技術者はローカル権限の昇格を許すセキュリティキー
上の脆弱性につながっていると指摘する。 ──マイクロソフト
─────────────────────────────
 しかし、明確にバックドアと指摘しておらず、単なるバグであ
る可能性もあります。ファーウェイに関しては、決定的という証
拠は上がっておらず、ZTEやADUPSがやっているので、お
そらくファーウェイもやっているだろうという推測に基づく情報
です。確かにファーウェイのエンジニアが米国企業の機密部品の
写真を撮るなどの不正行為を行っている事例は複数ありますが、
いずれも関係者は処分されており、企業としての組織的なもので
はないとファーウェイ側は主張しています。
 それでも米国は、ファーウェイを米国から締め出そうとしてい
ます。それは、次期通信核心規格「5G」関連技術の特許出願に
おいて、ファーウェイがリードしているからです。
─────────────────────────────
   ファーウェイ(中国) ・・・・・ 15・05%
   ノキア(フィンランド) ・・・・ 13・92%
   サムソン(韓国) ・・・・・・・ 12・74%
   LG(韓国) ・・・・・・・・・ 12・34%
   ZTE(中国) ・・・・・・・・ 11・70%
   クアルコム(米国) ・・・・・・  8・19%
   エリクソン(スウェーデン) ・・  7・93%
   インテル(米国) ・・・・・・・  5・34%
          ──ドイツIPリッテクス社の調査による
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/079]

≪画像および関連情報≫
 ●米中対立の発火はポーランドから/華為技術スパイ事件
  ───────────────────────────
   2019年1月の冷え込みの厳しい朝、ポーランドの国内
  公安機関(ISA)が、ワルシャワのアパートの一室に立ち
  入った。彼らは写真や電子機器を没収、アパートに住む外国
  人ビジネスマンを逮捕した。ポーランド語に堪能な元外交官
  でもあるこのビジネスマンに対する容疑は世間を驚かせた。
  ポーランドの元安全保障当局者と協力し、ある国のためにス
  パイ活動を行った、というものだった。まるで冷戦時代のス
  パイ小説、その21世紀版のようだが、相手はかつて敵だっ
  た米国でも、ソ連時代の盟主ロシアでもなく、中国だった。
   ビジネスマンは中国人で、世界最大の通信機器メーカー、
  華為技術(ファーウェイ)の営業担当者。そして、同じ日に
  逮捕された協力者とされるポーランドの元当局者は、一兵卒
  ではなくサイバーセキュリティを専門とする幹部だった。
   この逮捕によって、中国を相手にした米国の「新冷戦」の
  新たな戦端が開かれた。米国は次世代高速通信規格「5G」
  の導入に当たってファーウェイ機器を使用しないよう同盟国
  に働きかけており、ファーウェイは新冷戦の中心的な存在と
  なっている。トランプ米政権は5月、国内通信網にファーウ
  ェイ機器を使用することを禁じ、米企業が同社に製品を販売
  することを規制した。米政府は、ファーウェイが中国政府の
  支配下にあるとみて、同社の5G技術がスパイ行為や重要イ
  ンフラの妨害などに悪用されかねないと懸念している。ファ
  ーウエイ側は、こうした指摘を否定している。
                  https://bit.ly/346BFyK
  ─────────────────────────

ワルシャワ中心部のファーウェイ.jpg
ワルシャワ中心部のファーウェイ
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2019年09月03日

●「華為技術に大衝撃を与えるARM」(EJ第5081号)

 2019年5月16日、米国商務省は、ファーウェイとその関
連会社68社をEL(エンティティリスト)に追加すると発表し
ましたが、これによって米国企業は、政府の許可なしに、ファー
ウェイに対して、製品や部品などを売買することはできなくなっ
ています。
 重要なのは、この制裁措置は米国だけの問題ではなく、米国の
技術や製品を利用した第三国の企業が、ファーウェイと取り引き
した場合にも、再輸出として制裁が適用されることです。たとえ
ば、米国以外のある企業が、米国の部品を一定割合利用した製品
を開発し、その製品をファーウェイに販売した場合にも、制裁が
及ぶという厳しいものです。
 これに違反すると、今度はDPLに掲載されてしまいます。D
PLは「重大違反者リスト」のことで、次の英語の頭文字をとっ
たものです。
─────────────────────────────
        DPL/Denied Persons List
              重大違反者リスト
─────────────────────────────
 DPLに掲載されると、米国市場から締め出され、かつ米国や
海外からの輸出もストップされます。つまり、DPLはサッカー
でいうと、イエローカードを2枚もらったのと同じです。
 それでも違反を重ねると、最後の手段であるSDNリストに入
れられ、金融制裁を受けることになります。これによって、ドル
送金の禁止や在米資産の凍結が行使され、身動きが取れなくなっ
てしまいます。ファーウェイは、今のところまだSDNリストに
は入っていません。SDNについては、8月13日のEJ第50
66号で説明しています。      https://bit.ly/2ORQzFC
 これに素早く対応したのがグーグルです。5月20日、ファー
ウェイの新しいスマホに対し、ハード、ソフト(アンドロイドを
含む)を供給しないと発表したのです。このグーグルの、発表に
よって、世界的に、ファーウェイとの取引きを中止する動きが広
がったのです。ロイターによると、5月22日の時点で、次のよ
うな企業が、ファーウェイとの取引中止を発表しています。
─────────────────────────────
  1.アルファベット
  2.ルメンタム・ホールディングス(光学製品)
  3.コルボ(半導体)
  4.アナログ・デバイシズ(半導体デバイシズ)
  5.インファイ(半導体)
  6.アーム(半導体設計)
  7.シノプシス(半導体設計支援)
  8.パナソニック
  9.米国半導体メーカー各社
    インテル、クアルコム、ザイリンクス、ブロードコム
    各社           ──渡邊哲也著/徳間書店
       『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
        これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
─────────────────────────────
 こういう動きに対してファーウェイは、表面的には、非常に強
気な対応をしていますが、最も痛手であると思われるのが、半導
体設計の英国の「アーム/ARM」がファーウェイへのライセン
スを停止したことです。アームの正式な名称は、アーム・ホール
ディングス(以下、アーム)といいます。
 ところで、アームとはどういう企業かご存知でしょうか。
 アームについて話す前に、その前提知識を少し知る必要があり
ます。PCのCPUといえばインテルが有名です。「インテル、
入ってる」のあのCMのインテルです。インテルは、マイクロソ
フトと組んで「ウィンテル」時代を作り上げ、CPUといえばイ
ンテル、OSといえばウインドウズといわれるほどになったのは
周知の事実です。
 今でもPCのCPUは、アップルは例外として、インテルか、
その仲間のAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイス)が中心
ですが、スマホやタブレットのCPUは違うのです。スマホやタ
ブレットもPCそのものであり、もちろんCPUが搭載されてい
ますが、そのCPUは、ズバリ、アームといっても過言ではない
のです。そのシェアは実に90%以上に達しています。
 それでは、なぜ「アームのCPU」といわないのでしょうか。
それは、CPUの製造は行わず、CPUの設計を行い、いわばそ
の設計図についてのライセンスを供与するという独自のビジネス
モデルによって急成長した企業です。アームのCPUの最大の特
色は、消費電力が少なくて済む設計になって点です。
 2010年(12月期)時点でのアーム・ホールディングスの
概要を示しておきます。
─────────────────────────────
 ◎英国/アーム・ホールディングスの概要
  売上高  ・・・ 4億660万ポンド(約520億円)
  経常利益 ・・・ 1億6740ポンド(約214億円)
  設立   ・・・ 1990年
  所在地  ・・・ 英国ケンブリッジ
─────────────────────────────
 2010年当時のアームの売上高は、わずか日本円で520億
円に過ぎない。それが、2016年の時点では、米アップル、米
グーグル、韓国サムスン電子、ソニー、任天堂など、世界の名だ
たるIT企業にとってアームは必要不可欠な存在であり、ファー
ウェイもアームに大きく依存する事態になっています。
 ファーウェイは、ハイシリコンという半導体制作企業を有して
いますが、そのハイシリコンがアームの半導体設計に大きく依存
しているのです。したがって、今回、アームが手を引いたことは
ファーウェイにとって、大打撃であると思われます。
              ──[中国経済の真実/080]

≪画像および関連情報≫
 ●追い詰められるファーウェイ/世界読み解くニュースサロン
  ───────────────────────────
   中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の任正
  非・最高経営責任者(CEO)は2019年1月20日、中
  国中央テレビ(CCTV)のインタビューで、ファーウェイ
  排除の動きを強めてる米国に対し、こんな発言をしている。
  「買わないなら向こうが損するだけだ」
   ファーウェイの騒動が18年に大きく動いてから、任正非
  CEOやファーウェイは強気の姿勢を崩していない。ただそ
  の一方で、ファーウェイはこんな「顔」ものぞかせている。
  実は最近、同社はメディアに対する「怪しい」PR活動をし
  ていることが暴露されているのだ。
   米ワシントン・ポスト紙は3月12日、「ファーウェイ、
  “お色気攻勢”も意味ないよ」という記事を掲載。この記事
  の筆者であるコラムニストが、「これまで聞いたこともない
  ようなPR企業から、広東省深セン市にあるファーウェイ本
  社のツアーの招待を受けた」と書いている。さらにコラムニ
  ストは、「この申し出によれば、私が同社を訪問し、幹部ら
  と面会し、『同社が米国で直面しているさまざまな課題につ
  いて、オフレコ(秘密)の議論』をする機会があるという。
  ファーウェイはこの視察旅行で全ての費用を支払うつもりだ
  とし、さらにこの提案を公にはしないよう求めてきた」と書
  く。「そこで私は全てのやりとりと、申し出を却下する旨を
  ツイッターで公開した」これは、米国のジャーナリストの感
  覚では買収工作にも近い。    https://bit.ly/2HF0Cro
  ───────────────────────────

ARMのチップ.jpg

ARMのチップ
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2019年09月04日

●「華為技術に衝撃!ARM取引停止」(EJ第5082号)

 英国の半導体設計支援企業「アーム」の話を続けます。ファー
ウェイが、アームから半導体の設計支援を受けられなくなること
が、ファーウェイにとってどのくらいのダメージになるかを知る
必要があるからです。
 ファーウェイは、表面上は強気を装っていますが、内心は深刻
そのものです。それは、孟晩舟副会長が逮捕されて以来、謎の経
営者といわれるほど滅多に人前に姿を現さないファーウェイの任
正非CEOが、頻繁にメディアの前に出てくるようになったこと
によく表れています。危機感の表れといえます。
 任正非CEOは、社内ですら自分を正面に出さない人であり、
ファーウェイの社員ですら、とくに若い人は、CEOの顔も、話
も直接聞いたことがない人が多いといわれています。ファーウェ
イは、独特の社員持ち株制を実施しており、任正非CEOの持ち
株比率は、わずか1・3%しかなく、通常のCEOのように社内
で振る舞うことを抑えているのかもしれません。
 近藤大介氏の本に興味深い逸話が紹介されています。任正非C
EOの人柄について、ある古参社員の話として、次のように紹介
されています。
─────────────────────────────
 本人はまったく飾らない性格で、深せん市の中心部にある自宅
から、庶民の服装で愛車のBMWを自分で、運転して出勤してく
る。わが社には社用機もないし、「金融業と不動産業は容易に儲
かってしまうので手を出さない」と戒めている。昼には時折、社
員食堂で食べているのを見かけるが、自分の写真や銅像を社内に
掲げることを厳禁しているため、若い社員は気づかない。先日、
エレベーターに同乗した若い社員が「入社して長いんですか?」
と任CEOに声を掛けた。そうしたらCEOは、「だいぶ古株な
んだよ」と答えたそうだ(笑)。       ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 さて、アームについてもうひとつ、あらかじめ知っておくべき
ことがあります。それは、アームが、2016年に日本のソフト
バンクグループに買収されたことです。2016年といえば、英
国において、EUを離脱すべきかどうかを決める国民投票が行わ
れた年です。2016年6月23日に国民投票が実施され、残留
48%、離脱52%の僅差で、離脱派が勝利を収めています。
 この国民投票に注目していたのは、孫正義ソフトバンクCEO
です。かねてから、孫正義氏は、アームという企業に関心があり
M&Aを仕掛けようとしていたのですが、株価が高くてなかなか
実現しなかったといいます。しかし、国民投票で離脱派が勝利す
ると、孫CEOは急遽英国に飛んでいます。英国の将来に不安を
感じた投資家が株を一斉に売却し、株価が下がると読んだからで
す。果せるかな、株は一斉に下がり、それに乗じて、ソフトバン
クは、アームの買収に成功したのです。
 それでもその買収金額は、実に240億ポンド(約3兆300
0億円)であり、日本企業による海外企業のM&Aとしては、過
去最大の金額になったのです。孫正義CEOがなぜアームに目を
つけたかについては、改めて述べますが、アームを日本企業が実
質的に保有していることは、非常に意義があります。
 ファーウェイとアームの関係について、既出の渡邊哲也氏は、
次のように述べています。
─────────────────────────────
 ファーウェイのCPUは、台湾セミコンダクター(TSMC)
で生産されているが、これはアームのコアと設計が基礎になって
いる。このため、CPUの在庫がなくなり次第、生産が停止する
と思われる。これに対して、ファーウェイ側は問題解決可能とし
ているが、アームによれば、設計にアメリカ技術が使われている
ということなので、アメリカが使用許可を与えないかぎり、解決
するのは不可能だろう。      ──渡邊哲也著/徳間書店
       『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
        これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
─────────────────────────────
 ファーウェイとの取引を停止した理由としてアームは、半導体
の設計について米国の技術を多く使っているので、米国の許諾が
ない限り、輸出できないからであるとしています。
 もうひとつファーウェイにとって打撃なのは、アームに続いて
米国に本社を置く企業、シノプシスも、ファーウェイとの取引を
停止したことです。この企業は、集積回路、やや専門的になりま
すが、とくにASIC製造に用いる論理合成ツールのデファクト
スタンダードは、この企業のツールがないと、設計できないので
す。ASICとは「特定用途向け集積回路」のことです。
 OSもCPUも内製化できるとファーウェイは豪語しています
が、アームとシノプシスからの設計支援がストップすると、その
内製化は非常に困難になるはずです。
 アームがどんなに凄い企業かがわかる話があります。2016
年1月のことですが、マイクロソフトは、そのときの次期OSで
ある「ウインドウズ8」を、インテルだけでなく、アーム設計の
CPUでも動作させると発表しています。インテルの強さの源泉
であったウインドウズ対応のCPUの技術独占が、このとき音を
立てて崩れたのです。
 その原因となったのは、アームのCPUを採用したアイフォー
ンやアンドロイド端末が、マイクロソフトの独壇場であったPC
市場を侵食し始めたことにマイクロソフトが危機感を抱いたから
です。つまり、アームのCPUは、必ずPC市場に参入してくる
と考えたのです。そのため、マイクロソフトは、アームとの提携
が不可欠であると判断したといえます。
 既に2016年時点で、アームが設計に関わった半導体は、ス
マホ、タブレット、家電、ゲーム機、自動車など、様々な用途に
使われており、その年間の出荷量は、既にインテルを超えていた
のです。          ──[中国経済の真実/081]

≪画像および関連情報≫
 ●グーグルよりも深刻?英ARMがファーウェイと取引停止
  ───────────────────────────
   5月21日、華為技術(ファーウェイ)任正非CEO(最
  高経営責任者)は中国メディアの取材に応じてこう述べた時
  その翌日に半導体製造の開発・設計の前提がひっくり返ると
  は思っていなかっただろうか。
   BBC(英国放送協会)は22日、英半導体設計大手のA
  RM(アーム)ホールディングスがファーウェイとの取引を
  停止するよう従業員に通知したと報じた。米国がファーウェ
  イを国家安全保障や外交政策上の懸念があるとして、「エン
  ティティー・リスト」と呼ぶ取引禁止対象リストに載せたこ
  とを受けた措置だ。ARMの技術の一部に米国由来のものが
  あり、規制に抵触すると判断した。ARMは「米政府の全て
  の規制に従うがそれ以上のコメントはない」としているとい
  う。米調査会社のIDCによれば、2019年第1四半期の
  ファーウェイのスマートフォンは世界シェアは米アップルを
  抜き、韓国サムスン電子に続く2位。だが、ARMの技術が
  利用できなくなれば、ファーウェイのスマートフォン事業は
  大きな打撃を受ける可能性が高い。グーグルによるOS(基
  本ソフト)「アンドロイド」の輸出禁止に際しても、「ずっ
  と開発してきた独自OSを提供すればよい」と動じなかった
  ファーウェイだが、ARMの技術だけは当面代替が不可能だ
  とみられるからだ。       https://bit.ly/2Mn1Sob
  ───────────────────────────

アームの買収を発表する孫正義氏.jpg
アームの買収を発表する孫正義氏
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2019年09月05日

●「SBはなぜARMを買収したのか」(EJ第5083号)

 ソフトバンクグループの会長兼社長の孫正義氏は、なぜ、アー
ムを買収したのでしょうか。
 なぜ、携帯電話会社のソフトバンクが、半導体製造設計会社を
必要とするのかについて、当時、孫氏は、記者からさんざん質問
されたものの、孫氏は、それらに明確に答えていないのです。し
かし、今ならわかるような気がします。
 たとえば、2016年当時、日本では「IoT」という言葉は
比較的新鮮な言葉でしたが、現在では誰でも耳にする言葉になっ
ています。「自動運転車」も将来可能ということはわかっていて
も、当時はあまり現実的ではありませんでしたが、今ではすぐに
でも実現できるレベルに技術が達しています。
 その他、スマートウォッチに代表されるさまざまなウェアラブ
ル機器も流行しつつあります。そういえば、最近アップルウォッ
チをしている人をよく見かけます。これらの世界は今やすべてと
いってよいほど、アームが支配しつつあります。まさに孫氏は、
先見の明がある経営者であるといえます。
 これについて、ジャーナリストの大河原克行氏は、それを囲碁
に例えて、適切な説明をしています。
─────────────────────────────
 囲碁は、碁石のすぐ隣に打つのは素人のやり方。遠く離れたと
ころに打ち、それが、50手目、100手目になると力を発揮す
る。3年、5年、10年が経過すれば、ソフトバンクグループに
ARMがいる意味が分かる。ソフトバンクグループの中核中の中
核になる企業がARMであるとする。    ──大河原克行氏
                  https://bit.ly/2lYeRje ─────────────────────────────
 孫正義氏は、アーム買収に対して相当の準備をして臨んでいる
ことは確かです。当時のメイ新首相とは、電話で会談して了解を
とっていますし、アーム側のいくつかの条件も飲んでいます。こ
れは推測ですが、英国政府レベルも含めた次の3つの条件を了承
していたことは確かです。
─────────────────────────────
       1.現行経営陣を信頼し維持する
       2.本社は英国から移動させない
       3.現在の雇用を守り、維持する
─────────────────────────────
 2018年7月に東京都内で開催された「ソフトバンク・ワー
ルド/2018」において、孫正義氏は基調講演のなかで、アー
ムについてふれています。そのときのレポートの一部です。
─────────────────────────────
 今回の講演は「AI」づくしだった。孫氏は未来予想図として
今後「AIによってあらゆる産業が再定義される」とし、「AI
のトップランナーである注目企業をグループに迎え入れるAI群
戦略」の方針を打ち出した。
 「パソコン」「インターネット」「モバイルインターネット」
が情報産業として社会を変革してきたが、今後は「AI」が牽引
していくだろうという予測を立てた。その上で、エッジ側とクラ
ウド側の両方でAIの潮流が起こるとした。「エッジ」側で現在
既に普及しているデバイスは「スマートフォン」だが、スマート
フォンに100%組み込まれているチップとして、2016年グ
ループに加えた「ARM」社をあげた。https://bit.ly/2jXiogX
─────────────────────────────
 アームの話をしているので、ついでに述べると、PCのCPU
とスマホやタブレットのCPUは、基本的には違うのです。その
違いを明確にするには、相当紙面が必要になるので、詳しくは述
べませんが、基本的なことだけ次に述べておきます。
 スマホのCPUは、CPUというよりも、「SoC」と呼ぶべ
きなのです。
─────────────────────────────
 ◎SoCとは何か
  System on a Chip  チップ上にあらゆるパーツを搭載し
  たプロセッサである。
─────────────────────────────
 CPUというのは、単独でシステムを動かせません。CPU以
外に、映像を担当するグラフィックボード、記憶領域としてのハ
ードディスク(HDD/SSD)、そしてメインメモリ、これら
のパーツを統合するマザーボードなどが必要です。
 しかしスマホや家電の場合、とにかく端末が小さいので、PC
のように、すべてセットとすることは困難です。そこで、システ
ムを動かすために必要なパーツを、あらかじめまとめて作ってし
まったのです。
 スマホ向けの「SoC」の一つに、クアルコム社製の「スナッ
プドラゴン835」というのがあります。そこには、次の4つが
パーツとして、すべて内蔵されているのです。
─────────────────────────────
     ◎スナップドラゴン835/Snapdragon 835
      CPU
      GPU
      チップセット
      WiFi
─────────────────────────────
 アームは、こういう細密な半導体設計を実に見事にやってのけ
る高度な技術を有しています。したがって、半導体を制作するメ
ーカーとしては、アームの設計に頼らざるを得ないのです。それ
はインテルですら、例外ではないのです。
 もちろん、ファーウェイもアームの半導体設計に大きく依存し
ています。ファーウェイの任正非CEOは、表面上強気を装って
いますが、アームがファーウェイとの取引停止を決めたことには
相当なショックを受けているはずです。
              ──[中国経済の真実/082]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ/ARMライセンス停止で危惧「未来の分断」
  ───────────────────────────
   ARMは、SoCはやCPUそのものを出荷する企業では
  なく、製造に必要なアーキテクチャを供給する企業だ。クア
  ルコムやアップル、そしてファーウェイらは、ARMから、
  ライセンスを受けたアーキテクチャに基づき、オリジナルの
  SoCを作っており、半導体そのものはそれぞれ別。だが、
  アーキテクチャは同じであるためソフトには互換性があり、
  同じように使えている。
   ファーウェイは自社スマホ、特にハイエンド製品では、自
  分達が開発・生産するオリジナルSoC「キリン」シリーズ
  を使っている。生産と設計を担当しているのは、ファーウェ
  イの子会社であるハイシリコン。だから、SoCという製品
  を海外から直接輸入しているわけではないので、今回の制裁
  にも関係はないだろう・・・。初期にはそんな風に考える関
  係者が多かった。筆者も、そう思っていた。だが、ARMが
  ライセンス供与を停止するという報道が流れたことで、この
  前提が崩れるのでは・・・という考え方も生まれた。
   現実問題どうなるのか?
   ARMやファーウェイのコメントからは正確なところが読
  み取りづらいが、一般論としては以下のような流れだろう、
  と想定できる。ARMは多数のアーキテクチャをライセンス
  供与しているが、ファーウェイは、最新の「ARMv8」ア
  ーキテクチャのライセンスを受け、「キリン」などを製造し
  ている。            https://bit.ly/2lvfIaY
  ───────────────────────────

先見の明のある経営者/孫正義氏.jpg
先見の明のある経営者/孫正義氏
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2019年09月06日

●「ソフトバンクを警戒する米国政府」(EJ第5084号)

 こんな話があります。米国政府は、中国の通信機器メーカーに
厳しい措置に踏み切るさい、とくにソフトバンクグループに対し
て厳しい警戒の目を向けたそうです。なぜなら、ソフトバンクは
中国系最大のIT企業アリババの筆頭株主であり、ファーウェイ
とは業務提携して、4Gのときから同社の基地局を採用、設備投
資の約10パーセントがファーウェイとZTEの機器購入に充て
られていたからです。また、ソフトバンク・ホークスは、ファー
ウェイがスポンサーになっており、選手の帽子にはファーウェイ
のロゴマークが入っているほど親ファーウェイ企業だからです。
 2018年12月6日にカナダで孟晩舟副会長が逮捕されたと
いうニュースが入ると、日本政府は、10日、直ちにファーウェ
イを念頭に、次の申し合わせを決定しています。
─────────────────────────────
 IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続
 に関する申し合わせ
  第4項:契約方式
   総合評価落札方式や規格競争等、価格面のみならず総合
   的な評価を行う契約方式を採用する。
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 役所言葉で、わかりにくい表現ですが、要するに「価格が安い
からといって(ファーウェイ製品の)入札を決めてはならない」
という通達であり、「ファーウェイ製品を使うな」という申し合
わせです。これが出ると、NTTドコモ、KDDI、楽天は、直
ちに、ファーウェイの訣別を決め、次々と発表しています。
 しかし、この時点でソフトバンクは、態度を表明していない。
ソフトバンクは、12月19日に株式上場を控えており、実に嫌
なタイミングであったからです。それにもうひとつ、ソフトバン
クにとって気になることもあったのです。それは、不可解な通信
トラブルの発生です。2018年12月6日の午後に、ソフトバ
ンクの通信回線は突然不通になり、日本中で大混乱になったので
すが、その日の午前中に孟晩舟副会長が逮捕されたというニュー
スが入っています。この2つに何らかの関係があるのではないか
という情報がソフトバンクに入ったのです。
 通信トラブルの原因は、表面上はソフトバンクがパケット交換
機に使っているスウェーデンの大手通信機器メーカー、エリクソ
ンのマシンの不具合になっていますが、何らかの方法で、米国が
ソフトバンクの通信を停止させ、ソフトバンクに「ファーウェイ
を使うな」という警告を発したという説が出てきたのです。
 これに対して、既出の近藤大介氏は、その説を肯定はしないも
のの、次のように述べています。
─────────────────────────────
 私がこの時、思い起こしたのは、1991年の湾岸戦争開戦の
日のことだった。アメリカはイラクを攻撃するにあたって、自国
を除く世界中のGPS(全地球測位システム)をストップさせた
のだ。そのため日本のシステムも大混乱に陥った。あの時、アメ
リカはいざとなれば何でもできるし、かつやってしまう国なのだ
と再認識した。同様に、あまりにファーウェイに近づきすぎてい
るソフトバンクに、警告を発したのではないか。ソフトバンクは
直後の12月19日に株式上場を控えていたから、これ以上の抵
抗はできず、白旗を揚げたというわけだ。
                ──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
 まして、ソフトバンクグループは、傘下にアームを子会社とし
て保有しており、ある意味において、ファーウェイの生殺与奪の
権を握っている企業であるので、米国が強権を発動したのではな
いかとも考えられます。
 12月6日、いきなりアイフォーンがネットに接続できなくな
り、どうしても正常化しないので、私は自分のマシンが故障した
のではないかと思ったことをよく覚えています。まさか、米国に
よるソフトバンクへの警告だったとは・・・。
 ところで「金盾」(きんじゅん)という言葉をご存知ですか。
 「金盾」とは、中国で国家が政策として運用しているインター
ネット検閲・規制システムのことです。中国において金盾は、海
外と国民の間に立ちふさがる”電脳版万里の長城”と呼ばれてい
ます。中国では、グーグルでの検索はできないし、Gメールは開
けない。また、ユーチューブで動画を見ることも、フェースブッ
クで友達の日記をながめることも、LINEで連絡を取ることも
できないのです。息苦しくありませんか。すべては、金盾がそう
いう情報をすべて遮断しているからです。
 それでいて、トランプ米大統領が訪中している間は、グーグル
やツイッターは正常に機能したそうです。情報を遮断しているこ
とを米国の大統領に実感して欲しくなかったものと思われます。
 中国は、国家であらゆる情報を管理しています。新聞、雑誌、
テレビはもちろんのこと、携帯電話の通話内容、SMS(ショー
ト・メッセージ・サービス)、メールに至るまで、およそすべて
のメディアは国家によって管理されています。それは、中国人だ
けでなく、中国への観光客や、中国に住む外国人にも適用される
のです。とくに2016年から2017年にかけて、中国が成立
させた次の2つの法律に大きな問題点があります。
─────────────────────────────
        1.サイバーセキュリティ法
             2016年11月
        2.      国家情報法
             2017年 6月
─────────────────────────────
 これら2つの中国の国内法は、他国から見ると、中国人や中国
企業はいつでもスパイやスパイ組織になれるということを示して
います。          ──[中国経済の真実/083]

≪画像および関連情報≫
 ●華為技術、SBホークスの主要スポンサーから外れる
  ───────────────────────────
   中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が今季
  から、ソフトバンクグループが保有する、福岡ソフトバンク
  ホークスの主要スポンサーから外れた。昨年まで3年連続で
  務めていた。ユニホームやキャップ、ヘルメットなどに自社
  のロゴを入れる主要スポンサーは4社あり、ファーウェイ・
  ジャパン端末統括本部の硲夏希広報担当によると、今年はそ
  のいずれにも入らない。2016〜18年シーズンは、ホー
  クスの選手が帽子に「HUAWEI」の赤いロゴを付けて試
  合に出場していた。19年シーズンは29日に開幕する。
   ファーウェイの硲氏は主要スポンサーに入らなかった理由
  について、「ソフトバンクとの協議の中で最良の選択をした
  結果」と述べた。一方、球場内の電光掲示板に広告を出すな
  ど、引き続き球団を支援していくと言う。
   通信子会社のソフトバンクは、ファーウェイの基地局設備
  を採用し、次世代通信システム(5G)で共同開発や実証実
  験も行う関係だが、米中貿易摩擦が過熱する中、ファーウェ
  イ副会長が逮捕され、日本でも同社製品の使用を取りやめる
  動きがある。ソフトバンクGの孫正義社長は2月の決算会見
  で通信設備入れ替えの可能性に言及、5Gの移動通信システ
  ムは安定性やコストの面から総合的に判断すると述べた。
                  https://bit.ly/2JBcb5z
  ───────────────────────────

ソフトバンクホークスの帽子に華為技術のロゴマーク.jpg
ソフトバンクホークスの帽子に華為技術のロゴマーク
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2019年09月09日

●「華為技術は本当に信用できるのか」(EJ第5085号)

 9月3日のことです。ファーウェイは、日本政府に対して、あ
る提案をしています。どういう提案かというと、「5G」関連の
通信機器などに搭載されているソフトウェア(ソースコード)の
内容を開示するので、検証して欲しいというものです。ソースコ
ードとは、プログラムの設計図のようなものです。
 ファーウェイは、すでに英国やオーストラリアなどで、製品の
ソースコードを公開しています。オーストラリアは、ファーウェ
イを5G市場から明確に締め出しましたが、英国をはじめとする
欧州では、その採用の是非について目下検討中です。一般的にい
われているほど、米国によるファーウェイの排除要求に対して同
盟国は一枚岩ではないのです。
 まして、日本は、アームを傘下に持つソフトバンクグループを
有する国であり、これまでファーウェイとは、相互依存の関係に
あります。ファーウェイにとって日本は、一番味方になって欲し
い国です。しかし、日本は、既に2018年12月の時点で政府
調達では、ファーウェイだけでなく、中国の通信機器を排除する
ことを決めています。そのため、今回のファーウェイの提案に対
し、9月5日、菅官房長官は、ファーウェイからソースコードの
提供があったことを認めたうえで、次のように述べています。
─────────────────────────────
 現時点で政府は、特定企業の製品のソースコードを検証してお
らず、同社の提案に何らかの対応を行う予定はない。
                      ──菅官房長官
          2019年9月6日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
 ここで、基本的なことを考える必要があります。ファーウェイ
の製品には、本当に問題があるのか、本当に技術を盗んでいるの
かどうかということです。
 「テカナリエ」と企業があります。日本の企業ですが、会社名
は、次の英語をそのまま読んだものです。
─────────────────────────────
 ◎“Technology analyze for everyone”=テカナリエ
  研究解析調査会社。半導体の設計・開発、解析、マーケッ
  トなど、専門分野の経験豊富なメンバーで構成。代表取締
  役CEOは清水洋治氏。    https://bit.ly/2lGVD1d
─────────────────────────────
 2018年12月17日、このテカナリエは、ファーウェイの
当時の最新スマホ「Mate20 Pro」を分解した結果を次のように公
表しています。「余計なもの」が入っていないか調べたのです。
─────────────────────────────
 全ての半導体チップが存在する領域を細かく、1個1個チェッ
クを行ったが、「余計なもの」は全く存在しなかった。「余計な
もの」という言い方が適切かどうかは分からないが、余計なもの
を具体的に教えて欲しいくらいである。通信部には米国のパワー
アンプが並ぶだけである。センサーはドイツ製、日本製ばかりで
ある。メモリは韓国製。ここに全てのチップを並べて見せたいく
らいである。技術面ではお互いがリスペクトし合い、競争し合い
より良いものを作ることにいそしんでいると思えてならない。こ
うした素晴らしい技術が停滞しないことを望むばかりである。
 「Mate20 Pro」を隅から隅まで観察したが、「余計なもの」は
一切存在しなかった、ということをあらためて強調しておく。む
しろ「Mate20 Pro」は、研ぎ澄まされ、洗練された2018年最
高のスマートフォンの一つであったと結論付けたい。
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 テカナリエのCEOの清水洋治氏については、中国分析の第一
人者である遠藤誉氏も「日本の第1級の専門家」として自著で紹
介していますし、EJでも取り上げています。
 問題は法律です。なかでも、9月6日のEJ第5084号で指
摘した2つの法律(サイバーセキュリティ法/国家情報法)がき
わめて問題なのです。
 サイバーセキュリティ法は、別名「インターネット安全法」と
呼ばれています。何が安全なのかというと、中国から見て、中国
共産党にとって「安全」であるという意味です。
 この法律は、中国では、国内企業、外資企業にかかわらず、イ
ンターネット関連商品およびインターネットサービスを中国の基
準に適合させることが求められます。具体的にいうと、中国国内
でネットワークを運営したり、使う場合、それによって収集され
た個人情報やデータは、中国国内に保存されなければならないと
いうのです。しかも重要データは、原則国外に移転できないし、
「重要」の定義もはっきりしていない。データの海外持ち出しに
は、中国当局の安全審査が必要になります。しかし、年1回は、
中国当局の検査や報告などが義務付けられています。中国支社か
ら本社に送るデータもその対象になります。これでは、企業の機
密情報はすべて中国に吸い上げられることになります。
 もうひとつの国家情報法は、既に説明しているように、中国の
すべての団体や市民に対して、情報当局による調査への支援や協
力を義務付けるものです。ファーウェイは、この法律の存在にも
かかわらず、「絶対に情報は国に漏らさない」と強弁しています
が、国家から情報の提供を求められれば、中国国民として、提供
せざるを得なくなるはずです。
 中国側は、国家情報法への懸念について、国家への情報提供に
ついては、この法律の第8条で「人権を尊重、保障し、個人や組
織の合法的利益を守らなければならない」としていると反論して
いますが、何しろ共産党の指導が憲法の上位にある中国のことで
すから、すべては中国共産党によって恣意的に解釈されてしまう
ので、反論になっていない。中国に「人権尊重」といわれても、
とても信用できるものではないのです。
              ──[中国経済の真実/084]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイのスマホは“危険”なのか/山田敏弘氏
  ───────────────────────────
   米紙「ウォールストリート・ジャーナル」は先日、米国が
  中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の製品を
  使わないよう友好国に要請していると報じた。日本でもこの
  ニュースは大きく取り上げられた。
   実はこの問題、欧米の情報機関関係者やサイバーセキュリ
  ティ関係者の間で、以前から取り沙汰されてきた。筆者もこ
  のニュースについては注視しており、これまでもさまざまな
  媒体で何度も記事を書いてきた経緯がある。
   国内外の知人らと話していると、ファーウェイの商品が、
  「安価でハイスペックな機器である」と評価する人たちも多
  い。先日仕事で訪れた、中国と複雑な関係にある台湾でも、
  IT関係者は「賛否あるが、コストパフォーマンスの良さは
  否定できない」と言っていたのが印象的だった。日本でも、
  最近ファーウェイのタブレットを購入したという日本人のテ
  レビ関係者から、「品質は申し分ない」と聞いていた。事実
  日本の「価格コム」でスマートフォンランキングを見ると、
  ファーウェイのスマホが1位、タブレットでも3位につけて
  いる(11月27日時点)。
   とはいえ、このテレビ関係者はニュースを見ていて不安に
  なるという。仕事柄、いろいろな情報を扱うこの関係者は、
  中国政府系ハッカーなどによるサイバー攻撃でスパイ行為に
  さらされる危険性があるのではないか、と心配していた。こ
  こまでとは言わないでも、同じように気になっている人も少
  なくないだろう。        https://bit.ly/2WWesvo
  ───────────────────────────

テカナリエ/清水洋治CEO.jpg
テカナリエ/清水洋治CEO
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2019年09月10日

●「米中貿易戦争は米中価値観の衝突」(EJ第5086号)

 9月6日、韓国国会では、法相候補のチョ・グク氏の適性審査
が行われましたが、その審査会の開催中にチョ・グク氏の妻であ
るチョン・ギョンシム韓国東洋大教授が、私文書偽造で、突然在
宅起訴されたのです。7日の午前0時に時効が迫っていたからで
す。娘が同大学の総長賞を受けたと申請し、他大学の大学院に無
試験入学している件につき、総長賞はウソで、妻が偽造したもの
であることが判明したのです。この件で、チョ・グク氏自身も、
東洋大学総長と電話で話しており、無関係ではありません。
 疑惑は、他にもたくさんあり、いずれも、良心のかけらもない
ものばかりで、まして法を預かる法務大臣には不適任です。それ
でもチョ・グク氏は、法相候補を下りるつもりはなく、文大統領
も、何があろうと法相に任命する構えです(本稿執筆当時)。こ
れまでもそうしてきているからです。
 6日の世論調査会社「リアルメーター」の調査では、チョ・グ
ク氏の法相任命についての賛否は次の通りです。
─────────────────────────────
       任命賛成 ・・・・ 40・1%
       任命反対 ・・・・ 56・2%
         ──世論調査会社「リアルメーター」の調査
─────────────────────────────
 驚くのは、それでもチョ・グク氏の「任命賛成」が40%もい
ることです。日本ならあり得ないことです。やはり、日本人と韓
国人では価値観が異なるようです。
 ファーウェイは「わが社の通信機器のどこに問題があるのか。
ハードウェアもソースコードもすべて公開するから、問題がある
なら、指摘してくれ」と米国をはじめ、世界に訴えています。実
際に調べてみても、問題は発見されていないことは既に述べてい
る通りです。それなら、なぜ排除するのか。ファーウェイからす
ると、大いに不満であると思います。
 中国事情に詳しいジャーナリストの福島香織氏が、中国と日本
の比較論で、面白いことをいっています。
─────────────────────────────
 中国は、時代の流れが日本の3倍ぐらい速い。つまり、日本が
100年かけて歩んできた道を30年ぐらいで進んできたわけで
す。たとえば、日本ではさらし首のような残酷なことが行われて
いた時代から、すでに100年以上(100年どころではないで
すね)が経っていますが、中国ではつい30年ぐらい前まで公開
処刑があってそのような時代感覚で見ている。中国は文化大革命
や天安門事件で、残酷で野蛮なことをしたと言うと、日本だって
磔獄門やさらし首をやったでしょうと、日本の100年ぐらい前
のことと同じ感覚で見ているのです。──渡邊哲也/福島香織著
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                中華帝国の末路』/徳間書店
─────────────────────────────
 もっとも日本には民主主義という基本があって、普通選挙が行
われるし、報道の自由もあるので、弾圧や虐殺があれば直ちに報
道されて大騒ぎになり、そういうことは行われないのに対して、
中国では、現在でも中国共産党が軍隊もメディアも握っており、
報道の自由もなく、情報が完全に遮断されているので、相当ひど
い人権弾圧をしても、表沙汰にならないのです。これは、価値観
の相違といえます。
 結局米国は、こういう価値観の国である中国をWTOに参加さ
せ、自由社会、自由経済のなかに組み込んでしまったのです。そ
うすればきっと中国は、自由主義国家に体制変換をするだろうと
甘く考えたのです。しかし、中国は、体制変換どころか、それに
よって得た富を体制を強化させることに使い、世界第2位の経済
大国として、経済面でも、軍事面でも、科学技術面でも、米国に
迫る存在になりつつあります。これは、米国にとって誤算であり
大失敗であったといえます。
 つまり、いま米国と中国との間に起きていることは、中国のイ
デオロギー、秩序、華夷思想に対して、西側の既存のスタンダー
ド、それも米国がつくり上げた思想や価値観とのせめぎ合い、ヘ
ゲモニーの争いといえます。まさに価値観の衝突であり、文明の
衝突でもあります。
 米国の考え方は、「ペンス演説」に明確にあらわれています。
これは、トランプ大統領の考え方というよりは、米国議会のそれ
です。米中貿易戦争における中国は、米国にとっていみじくも投
資家、ジョージ・ソロス氏のいう「中国は開かれた自由社会の最
も危険な敵」であり、米国の絶対優位を脅かす国なのです。福島
氏の指摘する「ペンス演説」の本質です。
─────────────────────────────
 ペンス演説では、中国が、製造業高度化戦略として掲げている
「中国製造2025」について、ロボット工学、バイオテクノロ
ジー、AIなどの世界の先端産業の支配を目指すものだとし、軍
事技術を含む米国の技術の大規模な窃盗であると断罪しました。
中国をジョージ・オーウエルの小説「1984」のような監視国
家を作り、宗教を弾圧する自由社会の敵と位置づけました。
 習近平政権が掲げる、経済一体化新シルクロード構想「一帯一
路」戦略はアジア、アフリカ、ヨーロッパからアフリカに至るま
で各国を借金漬けにし、政治にも干渉するようになっていると批
判しました。さらに米国のジャーナリズムやアカデミズム、映画
や企業、官公庁に中国が金を使って操り、プロパガンダを流し、
次の大統領選にも影響を与えようとしている、と、危機感を示し
ました。こうした中国の世界支配の野望から米一国の民主主義を
守るために断固戦う姿勢をペンスは打ち出し、一部メディアから
は、米国の中国に対する宣戦布告″という見出しもつけられま
した。                   ──福島香織著
   『習近平の敗北/紅い中国・中国の危機』/ワニブックス
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/085]

≪画像および関連情報≫
 ●米中貿易摩擦とテック・ウォーが本質的に異なるワケ
  ───────────────────────────
   米中貿易摩擦で米国が問題視しているのは、知的財産権保
  護の不十分さ、国営企業優遇、補助金供与など中国の不公正
  です。対してテック・ウォーは、中国企業による米国企業に
  対する技術移転の強要、米国企業買収時の不適切な技術移転
  など、安全保障上の問題を指摘しています。米国では、中国
  製の通信機器を使うことに安全保障上の問題があるという考
  え方が強まっています。その意味で、テック・ウォーは軍事
  ・ハイテクの安全保障を含む覇権戦争といえます。
   テクノロジーのほとんどの分野で米国が圧倒的に強いのは
  間違いありません。しかしながら、中国が不正・不適切な手
  段でハイレベルな情報技術を集め、米国を抜き去る事態だけ
  は避けたいと思っています。だから、世界の製造大国を目指
  すという政策「中国製造2025」を目の敵にしているので
  す。公正な技術競争であれば仕方ないのですが、そうでなけ
  れば関税や取引禁止などで制御せざるを得ない、といった考
  えが米国のテック・ウォーの背景にあると考えられます。
   中国が5G(第5世代移動通信システム)などで強みを持
  つといわれますが、まだ技術立国とはいえないようです。中
  国を代表する上海/深センCSI300指数の業種構成比を
  みると、300銘柄のうち情報技術関連は34銘柄で、指数
  全体の時価総額比率では10%もありません。
                  https://bit.ly/2k9sZ8O
  ───────────────────────────

マイク・ペンス米副大統領.jpg
マイク・ペンス米副大統領

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2019年09月11日

●「なぜ韓国と上手に付き合えないか」(EJ第5087号)

 9月6日には、韓国に関連して、いろいろなことが起きていま
す。韓国もこんなことをいつまでもしつこく続けていると、本当
に日韓両国は後戻りできないところにきてしまいます。
─────────────────────────────
【ソウル共同】韓国のソウル市議会は6日、特定の、日本企業を
「戦犯企業」と定義し、市などが今後その企業の製品を購入しな
いよう努力義務を課す条例案を可決した。同日午前にも釜山市議
会で同様の条例が可決されたばかり。菅義偉官房長官は6日の記
者会見で「不適切、不合理な主張に基づき不当に非難し、経済的
不利益を及ぼす内容で、極めて遺憾だ」と強く反発した。
 韓国を代表する2都市で成立したことにより、全国でも相次ぐ
とみられる。今後どのように運用され、日本への影響がどうなる
かは不透明だ。韓国紙、朝鮮日報によると、ソウル市は条例に反
対の立場を示しているとされる。        ──中日新聞
                  https://bit.ly/2kxSS24 ─────────────────────────────
 どうして韓国は、過去のことを何度も蒸し返すのかについては
朝鮮文化の基調をなす「恨」の思想によるものであるという人が
います。単なる恨み、辛みではなく、悲哀、無念さ、痛恨、無常
観、優越者に対する憧憬や嫉妬などの感情をいいます。
 詳しくは、よくわかりませんが、この思想は、儒教にも関係が
あるといわれています。どうしてこのような思想が生まれるのか
というと、それは、韓国という国が、日本を含む多くの国によっ
て支配された歴史があるからです。これは、中国にも通じるもの
があるといえます。中国問題を考えるとき、儒教については考慮
に入れる必要があります。
 その点、日本は島国であって、どこかの国から支配されたこと
がほとんどない国です。終戦後にGHQに占領された7年間ぐら
いのものです。私などは、その時代に生きてきているので、よく
わかりますが、支配されたといっても、支配者である米国にマイ
ナスの感情をもっていないです。そのせいか、日本は、他国の文
化を取り入れるのにあまり抵抗というものがない。こういう日本
人の特性について、渡邊哲也氏と福島香織氏は、共著の対談本で
次のように述べています。
─────────────────────────────
渡邊:基本的に日本というのは多神教社会で、もともと神道とい
 うのは、全てのものに神が宿るという考え方です。ですから、
 日本人ほどいろいろな異文化を取り込みやすい文化はないので
 しょう。たとえば、12月24日にキリスト教を祝って、12
 月31日になるとお寺に行って除夜の鐘を聞いて、元旦は神社
 に行って神様に祈っています。最近では、ハロウィンまで取り
 込んでしまう。
福島:八百万の神というのは、相当奔放で、恋愛もするし喧嘩も
 する。人間臭い神さまたちで、結構、大らかですよね。そこに
 儒教が渡ってきましたが、日本人は全部まるごと受け入れるの
 ではなくて、自分たちの得になるものとならないものを分けて
 取捨選択しました。儒教の良いところというのは、たとえば孝
 とか徳とか、親孝行とか、年長者を敬うとか、礼節を持てとか
 そういう部分は結構入れましたが。──渡邊哲也/福島香織著
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                中華帝国の末路』/徳間書店
─────────────────────────────
 上記の福島氏の言葉に、日本人は「儒教の良いところを取り入
れている」というのがあります。「長幼の序」などは、真っ先に
取り入れています。長幼の序とは、年長者と年少者の間にある秩
序のことです。このことに関連して、電車に設けられている「優
先席」の話があります。
 昔の電車に「優先席」はありませんでしたが、老人や障害者な
どが電車に乗ると、必ずといってよいほど、席を譲る人が現れた
ものであり、「優先席」のようなものは、必要なかったのです。
これは「道徳」であり、単に社会の規準に従うというだけではな
く、これを「自発的に行なう精神」と捉えています。日本には間
違いなく「道徳」があったのです。
 これに対して「モラル」という言葉がありますが、これによっ
て優先席は設置されたといわれます。これは「その社会の規範」
であると同時に、「その社会に対する姿勢」という意味合いが含
まれます。いわば「ルール」のようなものと考えるべきです。
 しかし、優先席が設けられると、優先席以外の席では老人や障
害者が前に立っても、平然として席を譲らない若者が多いのは確
かですが、それでも席を譲る若者もたくさんいます。これは家庭
での教育に関係していると思います。
 それどころか、優先席に若者が座って動かないケースもよくあ
ります。スマホを操作するには、座っていた方が操作しやすいか
らです。彼らは、そこが優先席であるかどうかより、空いている
かどうかで座るのです。かつての道徳は消えているようです。
 私もよく電車に乗って出掛ける老人の一人ですが、席を譲られ
るのが嫌であり、申し訳ないので、座れる電車を選んで乗ること
にしています。急行に乗らず普通に乗るとか、それでも混んだ電
車に乗るときは、なるべく優先席の前には立たないようにするな
ど、席を譲られる状況を避けて乗っています。
 そもそも中華思想では、中国が世界の中心(華のあるところ)
であって、中国を兄とするなら、朝鮮はその弟分の「小中華」、
日本などは「東夷」という蛮族として位置づけられています。そ
のため、朝鮮の人は、中国からの距離によって、日本をひとつ下
に見る傾向があります。儒教の考え方です。日本では、とても受
け入れられない考え方ですが、中国や韓国と付き合うときは、そ
ういう考え方を相手が持っていることも、念頭におく必要があり
ます。日本は、独自の価値観や思想がありながら、西側の価値観
に馴染んでしまっていますが、韓国や北朝鮮は、まだ馴染めてお
らず、小中華のままです。  ──[中国経済の真実/086]

≪画像および関連情報≫
 ●買ってはいけない「儒教本」お粗末な中身/古谷経衛氏
  ───────────────────────────
   そもそもこの「小中華思想」の解釈が間違っている。韓国
  が持つと「される」小中華思想とは中国をナンバー1と捉え
  て、半島がその次、日本がその下という秩序ではない。17
  世紀中葉、漢民族の国・明朝が滅亡して満州族の王朝清が勃
  興すると、東アジアの華夷秩序は崩壊した。華夷秩序は漢民
  族の王朝を頂点とした国家の上下関係を指すので、その中心
  である明(みん)が滅べばこの秩序は機能しない。
   大陸における明朝から清朝への王朝交代――これを「華夷
  変態」と呼ぶ――によって、華夷秩序をけん引する正統なる
  後継者は明朝の属国であった朝鮮に移った。したがって朝鮮
  こそが明朝亡き後の華夷秩序の後継者である。これが「小中
  華思想」の正しい解釈である。
   つまり「小中華思想」とは、朝鮮こそが世界の一等国とい
  う発想なのである。それなのに、「中国1番、半島2番、日
  本3番」というネット上の間違った歴史解釈を、この本は疑
  うことなくそのまま転写している。「小中華思想」に基づく
  韓国一等主義は、現代においては「高句麗論争(朝鮮半島北
  部と満州の一部を支配した高句麗が、朝鮮民族の王朝だとす
  る韓国側歴史学者と、それを否定する中国側学者の論争)」
  などにも顕著に見て取れるが、そういった海外の歴史論争の
  時事についても、著者の疎さが伺える。全般としては、高校
  程度の日本史、東アジア史の把握も正確にできているかどう
  か疑わしい。          https://bit.ly/2lJYdU8
  ───────────────────────────

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日本製品の不買条例/ソウル市議会
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2019年09月12日

●「日本と中国のモノ作りの発想の差」(EJ第5088号)

 過去の歴史において、他国からあまり侵略されたことのない日
本では、中国や朝鮮と違って、卑屈な性格やコンプレックスがな
いので、どのような文化も受容して、自分のものにする力があり
ます。しかも、自国にとってプラスのもののみを受け取れる判断
が日本人はできるのです。
 したがって、儒教が入ってきても、天命思想や華夷思想、易姓
革命、科挙制度といった儒教的な支配の論理・思想は入れず、孝
とか、徳とか、親孝行とか、長幼の序とか、礼節を持てとか、そ
ういう部分はしっかりと取り入れています。こういうところが、
日本の優れている点であるといえます。
 これに対して、中国について、福島香織氏は、次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 中国人は、モンゴル帝国、元のように、「夷秋」と呼んで蔑ん
でいた異民族たちに支配された時代が、もっとも中国が繁栄し、
高度な文明が築かれたものだから、ものすごくコンプレックスを
抱いている。だから、元の後に漢民族の明が成立したときに、漢
民族がいちばん偉いということを強調した。東洋史学者の岡田英
弘氏によると、コンプレックスの裏返しみたいなものが中華思想
や華夷思想なのだそうです。そういうふうに考えると、日本は異
民族に支配されたことがないから、まったくコンプレックスとい
うものがない。          ──渡邊哲也/福島香織著
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                中華帝国の末路』/徳間書店
─────────────────────────────
 日本がどのような文化でも受け入れ、自分のものにできる力の
典型に料理があります。日本は、世界中の料理が食べられる国と
して有名です。カレー、スパゲッティー、中華料理、ドイツ料理
フランス料理、韓国料理、ロシア料理など、何でもあります。し
かも、それらをすべて日本人の口に合うよう、ジャパンナイズド
してしまっています。
 なかでも、典型的なものに「ラーメン」があります。ラーメン
は「拉麺」と中国表記するので、中華料理だと思う人は、多いで
す。確かに、ラーメンは中華麺とスープを主とし、様々な具(チ
ャーシュー、メンマ、味付け玉子、刻み葱、海苔など)を組み合
わせた麺料理であり、かつて「シナソバ」といっていた時期があ
ります。
 しかし、中国人が日本に来て何を食べたいかと聞くと「ラーメ
ン」と答える人が多いことは確かです。ラーメンは、もはやジャ
パンナイズドされた日本料理になっているのです。カレーライス
も完全に日本独特の料理です。料理について、日本の特徴的な点
を福島香織氏は次のように指摘しています。
─────────────────────────────
 料理の話を言うと、日本で特徴的なのが、さまざまなジャンル
の料理を出す店がある一方で、数種類の料理に特化している専門
店も多いことです。鰻屋と言ったら鰻しか出さない、うどん屋と
言ったらうどん、蕎麦屋と言ったら基本的に蕎麦だけ。それでも
一流店がいくつもあって、店が運営できるということが、中国人
にとっては驚きです。
 つまり何か一つのものに対するこだわりがすごい。食べ物だけ
でなく、ほかの分野でもそういうところがあります。その専門性
に対して、リスペクトして究めていくというのも日本人的な部分
でしょう。100年続いている店や企業が中国にいくつあるか。
創業から150年以上の北京ダックで有名な全衆徳は、北京ダッ
クだけじゃ儲からない、ふかひれも鮑も出します。今ものすごく
赤字で、大変なことになっているようですが、いわゆる老舗とか
100年続いている会社とかは、中国にはほとんどありません。
           ──渡邊哲也/福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 日本のラーメンは、中国の麺料理の中華麺とスープという構成
をベースに、そこに何かを加え、日本人の好みに合うよう、麺と
スープそれぞれに独自の工夫を加えて、作り上げたものです。そ
れが「日本ラーメン」として、世界的に人気のある麺料理に成長
しています。それでいて、その原点が中国であることに日本とし
ては何のこだわりを持っていない。だから、中国料理店のメニュ
ーに必ずラーメンはあります。
 しかし、中国は、スクラップ・アンド・ビルドの文化です。他
国から購入した完成品をバラバラにし、それを再構築していく過
程で、それがいかにも中国由来の製品であるかのように見せる力
はとても上手です。しかし、それらの完成品を構成している部品
例えばモーターであるとか、精巧なネジであるとか、金型である
とかなどを作る技術は中国にはないのです。その典型が中国の新
幹線です。根幹部分は、完全に日本の技術の盗用ですが、中国独
自の開発であるとして輸出までしています。
 問題は安全性です。日本は安全には、念には念を入れて作ろう
としますが、中国はきわめて大ざっぱです。作ってみて走らせて
みる。事故を起こして死者や怪我人が出たとしてもかまわない。
トライ・アンド・エラーでだんだん直していけばよいという考え
方です。人の命を非常に軽く考えています。しかも、そういうも
のを作る企業のほとんどは国有企業ですから、事故は公表せず、
隠蔽できるものは、隠してしまうのです。中国は全体主義国家で
すから、それができるのです。
 実は、AIやゲノム、宇宙技術などでは、人の命をあまり気に
せず、開発を進められる中国と、人命を何よりも大切にする米国
をはじめとする西側諸国とは大きく異なり、その点で西側諸国は
中国に猛追されているといえます。
 福音派で、プロテスタントのなかでも最も厳しく敬虔な流派に
属するペンス米副大統領は、その点は絶対に許せないとして、あ
の厳しい演説をしたのです。これが米中貿易戦争の核心です。
              ──[中国経済の真実/087]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の高速鉄道、気づいた各国が相次いでキャンセル
  ───────────────────────────
   日本が競合の末に敗れたインドネシアを始め、世界各国で
  破格の条件を提示し次々と高速鉄道計画の受注に成功した中
  国ですが、アメリカでは工事の中止が決定、その他の国でも
  同じような動きが出始めるなど、ここに来て暗雲が立ち込め
  ています。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴
  史、中国・韓国の真実」』の著者で評論家の黄文雄さんは、
  これについて「世界が中国のインチキぶりにようやく気が付
  き始めた結果」と一刀両断し、習近平政権がますます苦境に
  追い込まれることになるとの厳しい私見を記しています。
   このところ、中国の高速鉄道の輸出計画が次々と挫折して
  います。2016年6月8日には、ラスベガスとロサンゼル
  スを結ぶ高速鉄道の計画で、アメリカのエクスプレスウエス
  ト社が中国鉄道総公司との合弁解消を発表しました。
   この合弁は、昨年9月の習近平主席の訪米前に発表された
  ものです。今年の9月にも着工する見通しでしたが、エクス
  プレスウエスト社は合弁解消の理由として「中国企業がやる
  べきことを時間通りできていない」と計画の遅れが原因だっ
  たとしています。中国側は寝耳に水のことだったようで「無
  責任で契約違反だ」と批判していますが、もともと習近平主
  席の訪米の成果として強調するためにぶち上げたプロジェク
  トであった可能性も高く、むしろアメリカ企業のほうが中国
  企業の実態を見て危機感を持ったのでしょう。
            https://www.mag2.com/p/news/210774
  ───────────────────────────

日本式「ラーメン」.jpg
日本式「ラーメン」
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2019年09月13日

j●「中国の技術が急伸した理由は何か」(EJ第5089号)

 これまで中国は「技術がない国」といわれてきています。ひと
つ例を上げれば、まともなモーターひとつ作れない。この状況は
以前から変わっておらず、現在も同様の状況です。
 そのため、中国の自動車メーカーの多くは、三菱自動車のエン
ジンを使っているといわれます。また、世界一のモーター製造企
業である日本電産から、莫大な量の製品を仕入れています。した
がって、日本電産の中国への輸出量を調べれば、中国の経済の状
況が分かるといわれるほどです。米中貿易戦争が開始された昨年
秋以降、日本電産から中国への輸出量は大幅に減っています。
 その中国が、最近では、AIやゲノム開発、宇宙技術、スマホ
技術、ドローン技術などでは世界をリードしつつあります。とく
に宇宙技術においては、世界ではじめて月の裏側に無人ロボット
を着陸させ、世界を仰天させています。一体、中国で何が起きて
いるのでしょうか。
 これに関して、福島香織氏と渡邊哲也氏は、次のように議論を
展開しています。
─────────────────────────────
福島:中国のテレビでは、初の有人宇宙飛行成功とか、初めて月
 面の裏側に無人ロケットを着陸させたなど、いろいろ言ってい
 ますが、ある中国人技術者から、「あのロケットを一つつくる
 のに、いったい何人が死んでいるか知っていますか?」と聞か
 れたことがあります。「そういう報道はいっさいないけど、結
 構死んでいるのですか?」と尋ねたら、「死んでるに決まって
 いるじゃないですか」みたいなことを言う。
  つまり、ロケット打ち上げ成功の裏で、爆発ミスを何度も繰
 り返し、何人も死んでいるということなのです。しかし、ロケ
 ット発射実験などは砂漠のど真ん中でやっているので、誰も知
 らない。報道もしません。日本でそんな事故を起こしたら、も
 のすごく叩かれるし、下手をしたら、プロジェクト打ち切りと
 かになるでしょう。中国ではそれがない。
渡邊:一つの成功例があればいいんです。中国では失敗しないよ
 うにつくるのではなくて、とりあえずつくってみて、失敗した
 らつくりなおすというのが可能なのです。そのうえ、中国共産
 党がバックにいる。民間企業ではない。
福島:赤字や損失、利益のことなどは考えなくてもいい。
            ──渡邊哲也/福島香織著/徳間書店
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                     中華帝国の末路』
─────────────────────────────
 このように、中国は倫理観、道徳観、人権意識がきわめて低い
国です。あの石原慎太郎氏がテレビの討論番組で、「シナは人口
が13億人もいるので、人が死ぬということを軽く考えている。
少しぐらい減ってもいいと思っている」とよくいっていましたが
人権に問題がある国であることは確かです。
 あまりEJでは取り上げたくない話ですが、「ウイグル人の臓
器強制提供」というおぞましい話があるのです。中国では、臓器
移植手術件数が年間10数万件あるといいますが、このなかには
ウイグル人の割合が高いといわれています。かつて中国は、「死
刑囚=臓器の提供者」という時代があったのですが、さすがに最
近では、国際的批判を気にして、死刑囚に臓器を提供させること
を禁止しています。しかし、2015年くらいまでは、公然と行
われていたことは確かです。その死刑囚で最も多いのが、ウイグ
ル人であるといわれています。次の数字をご覧ください。
─────────────────────────────
    ◎2017年度の統計
     ウイグル人自体の人口は中国全体の1・5%
     新疆公安当局の逮捕者の総数は 約23万人
     これは中国全体の逮捕者の21%であること
─────────────────────────────
 中国で、刑事事件の犯罪者として逮捕される数は、ウイグル人
が圧倒的です。この数字を見ると、明らかにウイグル人に偏って
います。犯罪者が多いということは、死刑囚も多くなり、臓器提
供者もウイグル人に集中しています。多くの検体が提供されれば
医学が進歩するのは当然です。ペンス米副大統領が演説でいって
いるのは、そういう国が覇権国になることだけは、絶対に許せな
いということなのです。
 聞くに堪えない話ですが、中国の監獄内で死刑囚の世話をして
いた人から聞いた話として、福島香織氏は、そのおぞましさを次
のように述べています。
─────────────────────────────
 死刑囚たちは、いつ死刑が執行されるかわかりません。ですが
そろそろ誰かの死刑が執行されるなというサインがあるのです。
それがドナー適合を調べる血液検査です。この検査が行われると
2週間から1ヶ月後くらいに死刑が行われる。つまり、死刑と移
植手術のタイミングを合わせるのです。そのことを死刑囚も知っ
ているため、検査の段階でみんな半狂乱になるそうです。2週間
から1ヶ月、いつ死刑が執行されるかわからない、という恐怖に
さいなまれて自殺してしまうこともある。(中略)
 臓器をとられることは、死刑囚にとっては恐怖なのです。泣き
叫び、死を願う。食事を拒否するので、歯を割って流動食の管を
入れなければならなかったりする。地獄だったそうです。
           ──渡邊哲也/福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 そういう倫理観のない国、道徳心が欠如している国が世界の覇
権国になったら何が起きるでしょうか。しかも、多くの技術がサ
イバー攻撃によって窃取されている。そんなことは、絶対に許さ
ないと、ペンス米副大統領は、米国を代表して厳しく糾弾してい
ます。この価値観の異なる中国という存在は、実にやっかいな存
在であり、これに関して世界はしっかりと、向き合う必要があり
ます。           ──[中国経済の真実/088]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の『臓器移植ビジネス』驚愕の実態と新事実
  ───────────────────────────
   英国のロンドンで開かれている「中国の強制臓器収奪に関
  する民衆法廷」で、中国の驚くべき実態が明らかになった。
  昨年末の第1回公聴会での民衆法廷は「全く疑いの余地なく
  中国では強制臓器収奪が行われてきたことを確信する」との
  中間報告声明を出した。無実の罪で囚われた法輪功信徒たち
  からの強制臓器収奪、ウイグル自治区の強制収容所で中国共
  産党当局が強行する容赦ない民族浄化の実態が明らかにされ
  た。民衆法廷を提起した国際人権団体『クリスチャン・ソリ
  ダリティ・ワールドワイド』も、「中国は残虐な臓器取引で
  非難を浴びているが、その行為の証明は難しい。なぜなら被
  害者の体は廃棄され、行為の目撃者は、医師、警察官、刑務
  官など関係者に限られるからだ。が、そうであっても厳しい
  判断を裏付ける証拠はそろっている。法輪功メンバーやウイ
  グル族だけでなく、チベットの仏教徒、地下教会のキリスト
  教徒など多くの『良心の囚人』に医学的検査を受けさせ、彼
  らから無理やり臓器を摘出している」と述べている。
   そんな中、航空史上最大のミステリーといわれるマレーシ
  ア航空機失踪事件から3月8日で5年目を迎えたが、実は同
  事件は違法な臓器移植を隠蔽するため中国の江沢民元主席が
  実行した大量暗殺事件ではないかという説が浮上している。
                  http://exci.to/2kDvQa2
  ───────────────────────────

作家/渡邊哲也氏.jpg
作家/渡邊哲也氏

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2019年09月17日

●「中国不動産の暴落が始まっている」(EJ第5090号)

 10月1日からトランプ米大統領は、2500億ドル(約27
兆円)分の中国製品に対する制裁関税を、現在の25%から30
%に引き上げると宣言していましたが、9月11日、10月15
日まで延期すると発表しています。中国の劉鶴副首相からの要請
を受け入れたのです。10月1日に中国が建国70周年を迎える
からです。このニュースは、9月12日の日本経済新聞夕刊に次
のタイトルで報道されています。
─────────────────────────────
   ◎対中関税拡大を延期
    トランプ氏「建国70年」配慮/来月15日に
   ──2019年9月12日付、日本経済新聞夕刊
─────────────────────────────
 しかし、単に中国が建国70周年の記念日だからといって、一
度宣言した関税引き上げを延期するような甘いトランプ大統領で
はないはずだと思って調べてみると、中国は11日に一部の米国
製品を報復関税の対象から外すと、米国側に伝達してきていたの
です。それならということで、トランプ大統領は関税引き上げ時
期の延期に応じたのです。「引き延ばしの“利息”は支払います
よ」という、中国の“ディール”です。
 この米中貿易戦争を実務レベルで仕切っているのは、ライトハ
イザーUSTR代表とロス商務長官の2人です。この2人は数々
の通商協議を仕切ってきているプロ中のプロです。日本にとって
きわめて手強い相手です。
 ライトハイザー氏は、レーガン政権で、米国通商代表次席代表
を務め、日米貿易摩擦で日本に鉄鋼の輸出自主規制を受け入れさ
せたスゴ腕の持ち主。交渉の場で、日本の提案書を紙飛行機にし
て投げ返した話は有名です。
 ウィルバー・ロス商務長官は、金融のプロで、投資家であり、
銀行家でもある人です。これまでに特殊な手法を駆使して、数多
くの企業を乗っ取ったり、再建したりしてきています。トランプ
氏も1990年に3番目のカジノリゾートで経営に失敗し、その
とき、破産アドバイザーチームの債権者代表を務めていたロス氏
に助けられています。
 今回の日米貿易協議、いろいろウラがありそうですが、今回の
内閣改造で外相に昇進した茂木経済再生相は、こういう手だれを
向こうに回して協議し、よくまとめたと思います。彼は、英語力
が高く、米国人並みに微妙な喜怒哀楽を表現できるといいます。
 さて、現在の中国は、日本のかつてのバブル崩壊期と同じ状況
にあるとみなすことができると思います。日本との貿易交渉で成
功体験のあるライトハイザーUSTR代表とロス商務長官が次に
中国に仕掛けるのは、金融面での絞め上げです。あまり表には出
ていませんが、現在中国はドル不足で苦しんでいます。それも、
きわめて深刻なドル払底ぶりです。米国は、そこを狙って仕掛け
てくると思われます。中国に詳しい評論家の宮崎正弘氏は、それ
を次のように表現しています。
─────────────────────────────
 国内財政危機は不動産ローン残高が4600兆円、地方債残高
が1500兆円内外もあることに代弁されるように、奇策、詐術
を使ってももはや経済の回復は覚束ないだろう。中国のドル払底
ぶりが露見したのは外銀からドルをかき集め、短期債権で繰り延
べている実態が判明したからだった。凄まじい自転車操業が連日
繰り返されている。      ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機が始まる』
─────────────────────────────
 ドル不足になると、中国は外銀からドルの調達を余儀なくされ
ます。ところがそういう弱みに付け込んで、銀行は通常より高い
金利を要求してくるのです。かつて日本も通常の金利プラス2%
の「リスクプレミアム」を掛けられたことがあります。「ジャパ
ンプレミアム」です。
 そのため、日本は、それまでに買い漁っていた米国の不動産を
叩き売ってドルを調達したのです。ロックフェラーセンター、ロ
スの目抜き通りのウィルシャー・ブルーバードの多くのビル、そ
してハリウッド映画などが次々と処分されたのです。これによっ
て、かつて世界主要銀行ランキング10行中、6行を占めていた
日本の銀行のうち、昔の名前で現在残っているのは「三菱」だけ
という状態になっています。まさに、これと同じことが現在、中
国に起きているのです。
 中国の場合、株式上場が規約の厳格化の問題があって難しいの
で、投資家の多くは、企業株には関心がないのです。中国の不動
産関連企業は、窮余の一策として、ドル建ての社債発行を盛んに
行っています。しかし、欧米の金融界では、中国企業の社債起債
には2%の金利を上乗せていますし、IMF(国際通貨基金)も
中国向け融資の金利を上げると公表しています。「チャイナ・プ
レミアム」です。ADB(アジア開発銀行)も最大の借り手であ
る中国に「チャイナ・プレミアム」を適用するめ方針です。そも
そも超金満国であるはずの中国が、なぜ最大の借り手なのでしょ
うか。どうしてこんなことになるのでしょうか。
 それは、中国の負債総額が一体どのくらいか、誰もわからなく
なっているからです。なぜなら、中国の金融関連データは不透明
ですし、水増しは必ずあるし、おそらく共産党幹部もどのくらい
借金があるか、わからなくなっているはずです。
 中国の不動産関連企業のドル建て社債の直近3ヶ月の利回りは
7・8%、これにはもちろん「チャイナ・プレミアム」が上乗せ
されています。7・8%とは、ロシアの10年物国債の利回りが
7・75%とほぼ同列です。中国の不動産大手の「当代置業」が
今年の1月に発行した社債の金利は実に15・5%です。中国の
エクセレント・カンパニーの一つといわれる「恒大集団」でさえ
8%〜9%。宮崎正弘氏によると、この傾向は、中国の不動産の
暴落が確実に始っていることを物語るといっています。
              ──[中国経済の真実/089]

≪画像および関連情報≫
 ●中国不動産市場に異変/買い手見つからぬ「流動性リスク」
  ───────────────────────────
   不動産バブルが生じていると言われて久しい中国だが、中
  国共産主義青年団(共青団)の機関紙である中国青年報は、
  2019年1月27日、北京市や上海市、深セン市などの、
  「一線都市」において、中古不動産市場の価格が下落し続け
  ており、流動性リスクが顕在化し始めていると伝え、「中国
  の不動産市場は『買えば儲かる』という時代ではなくなりつ
  つある」と伝えている。
   北京市や上海市など、中国国内でも特に重要な都市が一線
  都市に指定されており、これまで不動産市場全体の価格高騰
  を牽引してきたのも一線都市の市場だった。その一線都市の
  不動産市場に異変が生じているとなれば、決して穏やかな話
  ではない。
   記事は、一線都市であっても「高級不動産が投げ売りされ
  ていて、中古不動産も値引き合戦が見られる」と紹介する一
  方、それでも、取引の成約数は低迷していると強調し、20
  18年下半期から現在にかけて、不動産市場の低迷はすでに
  中古市場へと波及していると指摘した。
   さらに、中国ではこれまで「不動産は元本割れがない」、
  「不動産は買った時より高い値で売れる」という「神話」が
  存在したが、この神話はすでに終わったと強調。「借金をし
  て不動産を買っても儲かる」という黄金の時代は過ぎ去った
  と伝え、売ろうとしても買い手が見つからないという「流動
  性の低下」が見られるとし、不動産ディベロッパーをはじめ
  とする業界関係者は誰もが焦りを感じていると伝えた。
                  https://bit.ly/2kIVri1
  ───────────────────────────

米国の2人の策略家.jpg
米国の2人の策略家
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2019年09月18日

●「米香港人権法案は香港を救えるか(EJ第5091号)

 香港のデモに異変が起きています。「逃亡犯条例」改正案が正
式に撤回されたにもかかわらず、デモは以前と同じ規模で継続さ
れ、そのデモの渦のなかに、なぜか星條旗が何本もはためいてい
ます。そして、香港デモ隊は次のスローガンを掲げるようになっ
ています。香港情勢が変わろうとしているようです。
─────────────────────────────
       「香港に自由を!法律の成立を!」
─────────────────────────────
 ここでいう法律とは何かというと、現在、米議会で審議されて
いる「香港人権・民主主義法案」のことです。香港政府と、その
バックにいる中国政府が、今頃になって「逃亡犯条例」改正案を
完全撤回したのは、米議会でこの法案の審議が、急ピッチで進ん
でいることに焦ったからです。したがって、デモ隊は「アメリカ
がんばれ!」といって星條旗を振っているわけです。
 香港政府と中国政府は、この米国の「香港人権法案」は、もと
もと「逃亡犯条例」改正案が成立すると、香港の自由や人権、自
治が侵害され、これによって米国をはじめとして、香港に進出し
ている他国の国民の香港における安全や利益が脅かされるのを何
とか防がないといけないという背景のもとで、審議が進められて
いると、比較的甘く考えていたようです。
 このような法律ができることは、中国にとって好ましいことで
はないので、中国政府は、クサイ芝居をうって、香港の林鄭月娥
行政長官に「香港人権法案」の基盤になる「逃亡犯条例」改正案
の完全撤回を指示したのです。そうすれば、「香港人権法案」は
撤回されると考えたからです。しかし、「逃亡犯条例」改正案の
撤回があまりにも遅すぎといえます。もし、中国政府が、本当に
そう思っていたとしたら、それは、トランプ大統領というよりも
米国議会の本気度を見誤っていたとしかいえないでしょう。
 米国には、香港に関して、次の法律が存在します。この法律は
1992年に米議会を通過し、1997年7月1日、香港が中国
に返還されると同時に効力が発生しています。
─────────────────────────────
     ◎「米国・香港政策法」
      United States-Hong Kong Policy Act
      合衆国合衆国法典第22編第66条22
─────────────────────────────
 香港返還に当っては、中国と英国の間に「中英連合声明」とい
うものが署名されています。1984年12月19日に、中国の
趙紫陽国務院総理と、英国のマーガレット・サッチャー首相が、
北京で署名しています。これは、声明というかたちをとっていま
すが、国際条約と同等の地位を有する重いものです。
 香港政策法は、その「中英連合声明」を担保するものと位置づ
けられます。基本的には、香港は中国に帰属するものの、いわゆ
る一国二制度として、米国は香港に香港政策法の下で、通商や投
資、出入国、海運など、特別待遇を提供するということを約束し
ています。つまり、香港は中国にあって中国にあらざるプレイス
として、米国との貿易交渉において、中国としても便利な地域に
なっていたのです。
 しかし、香港政策法には、いくつか不備があることがわかって
きたのです。そのひとつとして、香港が特別待遇を受けるために
不可欠である「香港への十分な自治」が、本当に与えられている
のかどうかをチェックする基準が明確でないことがわかってきた
のです。今のままでは、米国が香港に付与した特別待遇を中国政
府が悪用しても、それをチェックできないからです。そのきっか
けになったのは、香港の「逃亡犯条例」改正案です。
 それにもう一つ、関税の掛け合いになっている米中貿易摩擦に
おいて、中国が香港を巧妙に利用しているとし、共和党のマルコ
・ルビオ上院議員が、この9月にワシントン・ポスト紙に寄稿し
たレポート「中国は香港で本性露呈/米国は傍観できぬ」があり
ます。以下は、エリス・コンサルティング代表・法学博士/立花
聡氏によるその一節の抄訳です。
─────────────────────────────
 香港の特別な地位に注目して欲しい。それはつまり、独立関税
区域として開放的な国際金融システムや、米ドルペッグ制(連動
制)の香港ドルがあって、北京はこれらの仕組みを利用して、利
益を得ていることだ。だから、米国は行政的に外交的にこれらの
条件を制限しなければならない。さらに、マグニツキー法を生か
す方法もある。人権侵害にかかわる当局者の個人を制裁すること
だ。マグニツキー法は外国の個人や組織を制裁することを認めて
いる。    ──2019年9月3日付、ワシントンポスト紙
                  https://bit.ly/2khdefV ─────────────────────────────
 香港人権法案は、いわば香港政策法の強化版といえます。この
改正案では、米議会は、米国務長官に対し、香港が各種関連法に
基づき、人権や自由ないし自治を保障しているかどうかなどにつ
いて、毎年レポートの提出を求めることができます。これについ
て、立花聡氏は、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 分かりやすくいえば、香港は上場企業のようなもので、経営の
透明性が必要であり、それを検証する監査役を米国が引き受け、
毎年監査報告書を作成し、開示し、そこで国際社会の信頼を得る
ということである。         https://bit.ly/2ma0sQW
─────────────────────────────
 ちなみに、香港人権法案は、共和党だけでなく、民主党のナン
シー・ペロシ下院議長も賛成しており、共和、民主賛成可能な法
案であって、9月中に成立する予定です。つまり、米議会は、香
港市民側に立っており、中国政府としては、絶体絶命な状況に追
い込まれています。この動きに、果して中国政府はどのように対
処するのでしょうか。注目されます。
              ──[中国経済の真実/090]

≪画像および関連情報≫
 ●香港で数万人デモ、米議会に「香港人権法」早期可決求める
  ───────────────────────────
   香港市民は9月8日、香港の高度な自治を守る「香港人権
  ・民主主義法案」の早期成立を求め、米国総領事館までデモ
  行進した。数万人が参加した。終了間際、警察は催涙弾など
  を使ってデモ隊の強制排除に乗り出した。市民数人が拘束さ
  れ、負傷者も出た。香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・
  ラム)行政長官が4日、「逃亡犯条例」改正案の正式撤回を
  表明したが、事態が収束する兆しはなく、連続14週目のデ
  モとなった。
   6月13日、マルコ・ルビオ米上院議員らの上下両院の超
  党派議員が同法案を提出した。法案は、米政府に対して香港
  の高度な自治を検証するよう義務付けるほか「香港の自治と
  民主・自由を圧迫する者や責任者に制裁を科す」と定める。
  米議会で、近く審議が再開される可能性がある。
   香港市民は8日午後1時半〜6時半まで、遮打花園(チャ
  ーター・ガーデン)で法案の可決を求める集会を開いた。ま
  た、一部の市民は午後2時半から、米国旗を掲げてデモ行進
  した。警察が米総領事館の近くでバリケードを設置したため
  デモ参加者らは総領事館に近づけなかった。総領事館は職員
  を近くの幹線道路、下亜厘畢道に派遣し、市民からの請願書
  を受け取った。香港人女優の葉コ嫻氏(71)は、英語で書
  かれた「どうか『香港人権・民主主義法案』を可決させて」
  のプラカードを掲げてデモ行進に参加した。大紀元の取材に
  対して「米政府が香港(市民)を助けてくれることを望む」
  と述べた。           http://exci.to/2mgI9tx
  ───────────────────────────

香港デモで星條旗がはためいている.jpg
香港デモで星條旗がはためいている
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2019年09月19日

●「香港デモの介入への3つのリスク」(EJ第5092号)

 もし、米議会で、「香港人権法案」が成立すると、どうなるの
でしょうか。
 香港人権法案には、米国が香港に付与した特別待遇を悪用して
いないかどうかを監督・監査する権限があることに加えて、香港
の自治権が毀損されていないかどうかについても審査し、毀損が
認められた場合、米国は香港に付与してきた特別待遇を打ち切る
ことができます。
 さらに、香港の人権や民主・自治を侵害した者に対しては、米
国における資産を凍結したり、米国への入国を拒否するなどの制
裁を課すことが可能になります。もし、デモ隊に対して、当局側
が武力を用いて制圧するようなことがあると、それらに関係する
当局者たちが制裁の対象者にされる可能性があります。
 この法案審議に関して、中国は当然のことながら、反発を強め
ています。中国は香港デモのバックには、必ず米国がいると感じ
ているからです。といっても、言葉では、「とんでもない内政干
渉である」と語気を強めていますが、米議会の法案の審議のこと
ですから、中国としては、どうすることもできないのです。トラ
ンプ大統領も中国に、香港デモを貿易交渉に関連させて、次の発
言をし、プレッシャーをかけています。
─────────────────────────────
 第二の天安門事件となれば、対処が非常に難しくなる。中国が
香港で何らかの暴力を行使すれば、中国との貿易交渉で合意する
ことは非常に難しくなる。私は、中国の習主席がこの問題を解決
できると信じており、習主席が抗議に参加している人々と会談す
れば解決するはずだ。         ──トランプ米大統領
                  https://bit.ly/2maVLX4
─────────────────────────────
 実際に中国としても、香港から数10キロの深せんに武装警察
を集結させており、その訓練シーンが報道させるなど、香港に強
いプレッシャーをかけています。もし、ゴーサインが出れば、数
時間のうちに装甲車を含めて香港中心部に突入が可能であるとい
います。しかし、ゴーサインを出すには、香港政府が「香港基本
法第14条」に基づき、中国政府に対して協力を求めるか、中国
政府が「駐軍法第6条」に基づき、独自に判断を下すか、どちら
かになります。
 しかし、どちらにせよ、中国の武装警察が鎮圧に乗り出すとな
ると、天安門事件並みの大混乱になることは確実であり、中国と
しては容易にはできない重い決断になります。なぜなら、この決
断には、次の3つのリスクが伴うからです。
─────────────────────────────
 1.金融・貿易都市としての香港を実質的に失うことに等し
   く、経済的リスクが大きい。・・・・「第1のリスク」
 2.中国の国家統一にかかわる香港・台湾問題において、政
   策の見直しが不可欠になる。・・・・「第2のリスク」
 3.「武力で民衆のデモを鎮圧」とネガティブに報道され、
   マイナスのイメージになる。・・・・「第3のリスク」
─────────────────────────────
 「1」のリスクについて考察します。
 中国にとって香港の存在は、米中貿易摩擦の激化によって、中
国がドルなどの外貨不足に陥ったときの備えとして、きわめて重
要な位置を占めています。
 現状でも、中国への海外からの直接投資は、その半分以上が香
港経由であり、しかも、香港に拠点をおく海外企業は膨大な数で
あり、多くが直接・間接に中国とのビジネスを行っています。も
し、それらの海外企業が一斉に香港から逃げ出せば、香港の経済
価値は一挙に失われることになります。これによって、膨大な資
産価値を蓄えている香港の不動産・証券市場もクラッシュし、そ
の影響は中国経済に波及することは確実です。
 「2」のリスクについて考察します。
 もし、武装警察にせよ、中国が香港に介入すると、それは「一
国二制度」が名実ともに失敗であったと国際社会によって認定さ
れることになります。その代価は、単に香港のみならず、中国が
国家統一の目標に掲げる台湾問題で払うことになります。目下、
経済の失政を問われて支持率が下がっている台湾の蔡英文総統は
香港デモの長期化によって、日々香港問題に同情的になる台湾世
論の後押しを受けて、リードされていた国民党の韓国瑜候補に追
いつきつつあります。これは、中国にとって大問題です。
 「3」のリスクについて考察します。
 これは、真実がそのまま世界中に報道されるリスクです。香港
デモに対して、明確なかたちで中国政府が介入すると、それは確
実にネガティブに報道されることになります。なぜなら、香港は
北京ではないからです。天安門事件のときのように、情報の封鎖
は不可能であり、世界中に詳細な情報が流され、これによって、
大国としての地位を築きつつある中国の国際的な名声は一気に地
に落ちることになります。それは、また、「一帯一路」を国策と
して世界中に展開する中国の大戦略にも深いダメージを及ぼすも
のになることも確実です。
 このように、中国政府にとって香港介入は、切りたくても切れ
ないカードであるといえます。しかし、この見方は、いわゆる西
側の論理に立っての客観的判断です。中国政府の立場に立つと、
上記の「3つのリスク」を冒しても、香港のデモは、中国の手に
よって鎮圧する必要があると考えるはずです。
 もし、香港の解決において、この西側の論理を受け入れると、
それは単に香港や台湾のみならず、国内で押さえ込んでいるウィ
グルやチベットにまで波及し、中国共産党の一党支配そのものが
揺らぐ恐れがあります。そうなると、中国としては、やらざるを
得なくなるものと考えられます。すべては、習近平国家主席の決
断にかかっています。中国が、香港民衆の要求をすべて飲んで、
デモを終息させるとはとても思えない状況です。
              ──[中国経済の真実/091]

≪画像および関連情報≫
 ●「第2の天安門」の懸念が消えない香港デモ
  ───────────────────────────
   8月8日付の英エコノミスト誌は、天安門事件のようなこ
  とにならないようにとの希望、期待を表明し、そういうこと
  になった場合、「中国の安定も繁栄も」悪影響を受けると中
  国に警告している。しかし、中国の共産党指導部がどう考え
  るか、予断を許さない状況である。
   ここで思い出される事件は、1968年のソ連軍のチェコ
  侵攻である。まさかソ連がそこまで乱暴なことはしないであ
  ろうと考えていたが、間違いであった。8月21日、タス通
  信が「ソ連はチェコ人民に友好的援助を提供することにした
  その援助には軍事的手段によるものも含まれる」と報じ、ソ
  連軍は、チェコに軍事侵攻した。実は、この侵攻の前に、赤
  軍とワルシャワ条約機構の軍隊がチェコ周辺で演習をしてい
  たことが、あとから分かった。
   今回も香港に近い深せんで人民解放軍が演習をしている。
  部隊が集結している。それを踏まえて、トランプ大統領は、
  中国に自制を求め、習近平主席に香港のデモの代表者らと対
  話することを訴えているが、習近平がそれに応じる気配は今
  の所ない。人民解放軍は、香港自治政府の要請があれば、い
  つでも出動する用意があるとしており、国務院の香港担当部
  局は、我々の自制を弱さと受け取ってはならないと警告を発
  している。           https://bit.ly/2kj2gXk
  ───────────────────────────

「第2の天安門事件の懸念が消えない香港デモ」.jpg
「第2の天安門事件の懸念が消えない香港デモ」
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2019年09月20日

●「習近平主席の台湾政策『習五条』」(EJ第5093号)

 このテーマの連載は、9月30日まで継続しますが、中国問題
を取り上げている以上、台湾問題に言及する必要があります。い
うまでもなく、台湾問題は日本に直接影響する問題だからです。
 中国の歴代トップは、任期中のどこかの時点で、台湾について
の方針というか、政策というか、メッセージを発表しています。
それは、次のように呼ばれています。
─────────────────────────────
      1.「葉九条」/葉剣英/1981年
      2.「ケ六条」/ケ小平/1983年
      3.「江八点」/江沢民/1995年
      4.「胡六点」/胡錦濤/2008年
      5.「習五条」/習近平/2019年
─────────────────────────────
 あらかじめ知っておくべきことがあります。それは「台湾同胞
に告げる書」の存在です。これは、1979年元旦に全国人民代
表大会常務委員会によって発表された声明です。その内容は、祖
国の平和統一に取り組む政治運営方針を宣言し、軍事対峙状態の
打ち切り、両岸同胞の自由な往来、航路・郵便・商業経路の開通
および経済文化交流の展開などの重要な主張を提唱したものであ
り、両岸関係(中国と台湾)の発展に、新たなチャンスをもたら
した歴史的文書であるといえます。
 その後、葉剣英、ケ小平、江沢民、胡錦濤の歴代4主席が、そ
れぞれ台湾に関する政策を発表していますが、それらが、上記の
「葉九条」以下の政策です。そして、現在の習近平主席は、20
19年1月2日に「台湾同胞に告げる書40周年記念行事」の席
上において、「習五条」と呼ばれる台湾政策を発表しています。
 これらの中国国家主席の台湾政策のなかで、「武力統一を排除
しない」ということを明確に述べているのは、「江八点」と「習
五条」だけです。この2つについて考えていきます。
 最初は「江八点」について考えます。
 江沢民主席による「江八点」は、台湾に対して、統一のために
は武力行使も辞さない強硬姿勢を打ち出しています。これには実
は伏線があります。というのは、1996年には台湾で総統選挙
が行われ、李登輝氏が立候補したのです。そのとき、李登輝候補
は、両岸の政治分離の現実や、民主化促進を含む中国が絶対に容
認できない6つの主張を盛り込んだ「李六点」を発表し、選挙を
戦っていたのです。
 李登輝候補の優勢が伝えられると、江沢民主席は、中国人民解
放軍に命じて、選挙への恫喝として軍事演習を強行し、台湾に近
い基隆沖海域にミサイルを撃ち込むなど、威嚇行為を行ったので
す。しかし、これに対して米国のクリントン政権は、ベトナム戦
争以来の最大級の軍事力を行使して反応したのです。ニミッツを
中心とした二つの航空母艦群や第7航空母艦群、インディペンデ
ンスを中心にした第5航空母艦群が台湾海峡に入ったのです。こ
れには、中国は成す術もなく、海軍を引き上げています。第3次
台湾海峡危機です。江沢民政権の大失敗です。
 江沢民政権の後を継いだ胡錦濤政権は、江沢民政権の対台湾政
策の失敗を見て、あくまで両岸の平和的発展に重点を置き、対話
や融和政策を呼びかける「胡六点」を打ち出しています。そこで
は「台湾統一」というスローガンを封印し、経済に重点を置き、
ウィンウィンの関係を目指したのです。いま考えると、この胡錦
濤政権のこうした台湾政策は比較的うまくいき、親中派の国民党
馬英九政権を誕生させています。経済政策に重点を置き、中国の
巨大市場を開き、両岸のビジネスを大きく発展させています。福
島香織氏は、この胡錦濤政権時代が、台湾人民の心を中国にしっ
かりと引き寄せ、一番中台統一に現実味が出てきた時期であった
といっています。
 しかし、習近平主席は、胡錦濤主席の台湾政策を引き継がず、
胡錦濤政権では封印した「台湾統一」を再び持ち出し、馬英九政
権に貿易のサービス協定の調印や施行を迫るなど、その経済的な
併合を急ぐ姿勢を露骨に見せるようになったのです。
 これに台湾の若者が危機感を覚えるようになり、そして起きた
のが「ひまわり学生運動」です。2014年3月18日、台湾の
学生と市民らが、立法院(日本の国会議事堂にあたる)を占拠し
たのです。3月18日に起きたことから、「318学運」とも呼
ばれています。
 これは、習近平台湾政策の明らかな失敗であり、これが原因で
国民党が敗れ、蔡英文・民進党政権が誕生するのです。2016
年5月20日のことです。
 台湾での蔡英文政権の誕生は、習近平主席を焦らせ、これが、
2019年1月2日の「習五条」の内容に影響しています。その
内容は次の通りです。そこでは「中国人は中国人を攻撃しない。
だが武力行使放棄は約束しない」と恫喝しています。
─────────────────────────────
 @平和統一の実現が目標。台湾同胞はみな正々堂々とした中国
  人で、ともに「中国の夢」を共有できる。台湾問題は民族の
  弱さが生んだもので「民族復興」によって終結する。
 A一国二制度の台湾版を模索。「92年コンセンサス」と台湾
  独立反対という共同の政治基礎の上で、各政党各界の代表者
  と話し合いたい。
 B一つの中国原則を堅持。中国人は中国人を攻撃しない。だが
  武力行使放棄は約束しない。外部勢力の干渉と少数の台湾独
  立派に対しては一切の必要な選択肢を留保する。
 C経済融合を加速させる。両岸共同の市場、インフラ融合を進
  める。特に馬祖・金門島のインフラ一体化を推進。
 D台湾同胞との心の絆を強化。台湾青年が祖国で夢を追い実現
  することを熱烈歓迎。          ──福島香織著
   『習近平の敗北/紅い中国・中国の危機』/ワニブックス
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/092]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平の台湾政策演説に拒否反応を示した台湾
  ───────────────────────────
   2019年1月2日、中国の習近平国家主席は、台湾政策
  について包括的な演説を行い、その中で、台湾統一は「一国
  二制度」によるという方式を打ち出した。「一国二制度」は
  香港が中国に返還された際に中国が50年間の香港統治のた
  めの方式として約束したものである。
   蔡英文総統は、同発言に対し、直ちに「台湾の大多数の民
  意が『一国二制度』を受け入れることは絶対にない」と断言
  した。さらに、野党国民党支持者などで受け入れる人の多い
  「92年コンセンサス」(「一つの中国」の内容は中台それ
  ぞれが解釈する。台湾にとっては「一つの中国」は「中華民
  国」を意味する)に関しては、北京当局によって「一国二制
  度」と実質的に同じものと定義されたため、これまで期待さ
  れていた同床異夢の曖昧さがなくなったとして、もうこれを
  口にするはやめるべきだと訴えた。
   「一国二制度」は、かつてケ小平によって台湾統治の方式
  として検討されたことはあったが、実際には香港統治に利用
  された。今日の民主化した台湾の人たちが受け入れる余地の
  ほとんどない方式であり、今日の状況下でこのような方式を
  打ち出したこと自体、中国がいかに台湾の現状を知らないか
  の証左と見られても不思議ではない。
                  https://bit.ly/2GA4DOj
  ───────────────────────────

「習五条」を発表する習近平主席.jpg
「習五条」を発表する習近平主席
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