2019年07月03日

●「ケ小平ルールを守った江・胡政権」(EJ第5039号)

 中国は今後どうなるか。それは、中国のトップである習近平中
国共産党総書記/国家主席の手に委ねられていると思います。習
近平というのはどういう人物であるのか、福島香織氏の本を中心
に探っていくことにします。
 ケ小平による中国のトップの「お墨付き」を得たのは、江沢民
氏と胡錦濤氏の2人です。江沢民氏は、上海市長を務めたことも
ある上海市の実力者で、いわゆる上海閥の代表者です。一方、胡
錦濤氏は、胡燿邦が作った共青団(共産主義青年団)出身の政治
家です。共青団というのは、中国共産党に優秀な若手政治家を補
充するための育成機関です。
 胡燿邦に近く、温厚な性格の秀才であり、トップに就任してか
らは、江沢民前総書記(当時)の外交政策の修正を行い、世界の
さまざまな国との関係を強化することに尽力しています。しかし
一般的には、「これといって目立つ特徴がないのが胡錦濤の最大
の特徴」といわれる人物ですが、やめるときは、すべての役職か
ら退いており、さわやかな印象を与えています。
 江沢民派と胡錦濤派としては、次のトップ(中国共産党総書記
・中国国家主席)を誰にするかについて、当然しのぎを削ること
になります。とくに胡錦濤氏は、共青団としては、北京大学出身
の秀才、李克強氏を次のトップにしたかったのです。しかし、こ
の争いでは、八代元老の習仲勲の息子という血統ブランドを持つ
習近平氏に決まったのです。これについて、福島香織氏は、次の
ように述べています。
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 習近平が総書記や国家主席になれたのは、胡綿濤と江沢民の激
しい権力闘争の攻めぎ合いのなかでの双方の妥協の産物でした。
胡錦濤は自分が共産主義青年団という官僚養成組織の出身なので
後輩で極めて優秀な李克強を総書記にしたかったのですが、江沢
民は、それを妨害して自分の派閥(上海閥)の人間を入れたかっ
たのです。ところが激しい権力闘争の結果、上海閥の一番のエー
スは胡錦涛によって失脚させられ、李克強も足を引っ張られて総
書記になれなかった。結果的に、さほど優秀ではないけれど、八
大元老の習仲勲の息子という血統ブランドを持つ、凡庸で小心者
の習近平が生き残ったわけです。
 習近平は江沢民や曾慶紅の長老政治に都合のよい人物として選
ばれ、胡錦濤から見れば、開明派の習仲勲の息子だから、話が通
じるかもしれない、ということでしょう。いずれにしても、双方
が、習近平は政治家としては自分たちより小物であり、どうにで
もコントロールできると思ったのだと思います。──福島香織著
   『習近平の敗北/紅い中国・中国の危機』/ワニブックス
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 江沢民氏にしても胡錦濤氏にしても、さほど優秀ではない習近
平氏であれば、たとえトップになっても、十分院政がひけると、
甘く考えていたことは確かです。
 習近平氏がトップに就任する前の話ですが、彼は、時の総書記
であり、国家主席である胡錦濤氏のことを、次のようにいってい
たといわれています。
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 茶葉売りの息子が中国共産党の最高指導者になるのは、おかし
なことである。革命によって国を作った中国のトップは、革命家
の子孫から出すべきである。          ──習近平氏
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 中国の革命家の子孫は、「紅二代」と呼ばれる、いわば特権階
級です。ちょうど貴族か王族のような存在であり、「太子党(プ
リンス党)」とも呼ばれることもあります。だから、江沢民派と
しては、習近平氏の後見人になるなどして、習近平氏をトップの
座へと押し上げたのです。
 この習近平氏について福島香織氏は、その基本的な性格を次の
ように紹介しています。こういう人物がトップとなって権力を握
ると、それを奪われまいと、独裁者になる可能性が高いのです。
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 習近平は、自信がなく、コンプレックスが強く、凡庸で能力も
低い、いじめられっ子体質です。その一方で親の七光りで出世も
早く、周りにちやほやする人も多かったので、自己評価が妙に高
い自信過剰家で、苦言を呈したり、厳しいアドバイスを言ったり
する人に対しては反発し、倣岸不遜な態度をとりがち。コンプレ
ックスが強いのにプライドが高い、しかもマザコンでシスコン、
妻にも尻にしかれて周りの女たちの意見を政治に持ち込んでしま
すという非常に残念″なキャラクターになります。
                ──福島香織著の前掲書より
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 ケ小平の考え方に立脚する中国の外交政策は、多くの国との関
係を強化する「多極外交」です。それも、あくまで「外国から学
ぶ姿勢」や「国際スタンダードに寄り添う姿勢」が重要であると
いうのです。江沢民元主席、胡錦濤前主席ともにそういう多極外
交を展開してきています。
 しかし、習近平氏がトップになると、一転して「中華思想」を
持ち出してきたのです。「中華思想」とは何でしょうか。ウィキ
ペディアには、次の解説があります。
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 中華思想は、中華の天子が天下(世界)の中心であり、その文
化・思想が神聖なものであると自負する考え方で、漢民族が古く
から持った自民族中心主義の思想。自らを夏、華夏、中国と美称
し、王朝の庇護下とは異なる周辺の辺境の異民族を文化程度の低
い夷狄(蛮族)であるとして卑しむことから華夷思想とも称す。
        ──ウィキペディア https://bit.ly/1LDsSHW ─────────────────────────────
 中国は世界の中心の国──だから、中国というのです。だから
中国の秩序に世界の国は合わせるべきであるというとんでもない
思想なのです。       ──[中国経済の真実/038]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平とは何者なのか(1)/「ニーズウィーク日本語版」
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   「ニューズウィーク日本語版」本誌1月19日号にも書い
  たが、ウィキリークスが年末に公表したアメリカ国務省の外
  交公電に、中国次期トップ習近平の知られざる素顔を暴く証
  言が含まれていた。「無骨な田舎者」「ビジネス感覚に長け
  たリーダー」「外国を敵視する危ない人物」――人となりを
  示す情報やエピソードが少なすぎるせいで、これまで習の素
  顔をめぐっては、チャイナウォッチャーの間でさまざまな憶
  測が飛び交っていたが、この証言は論争に終止符を打つかも
  しれない。それぐらい重要な中身が含まれている。
   公電は駐北京アメリカ大使館から09年11月に発信され
  た。情報源は、アメリカ在住の中国人学者だ。在米中国人の
  情報が北京を経由し、地球を半周して国務省に戻った理由は
  定かでないが、そういった不可解さを差し引いても、この学
  者が語る内容は具体的で生き生きとした習近平のエピソード
  にあふれている。
   公電によれば、学者は習と同じ1953年に生まれた。習
  近平と同じく、父親は新中国の建国に貢献した革命第1世代
  で、毛沢東の出身地である湖南省の別の村で生まれ、初期か
  ら中国革命に参加した。学者の説明によれば、父親は「同時
  に日本と香港でも生活。労働運動のリーダーとして次第に頭
  角を現し、49年に、中国に戻ったあと、初代労働部長(大
  臣)に就任した」のだという。  https://bit.ly/2XjtVtG
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胡錦濤前主席/江沢民元主席.jpg
胡錦濤前主席/江沢民元主席
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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