福島香織氏は次のように述べています。
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習近平の宗教政策は、おそらく歴代中国共産党指導者のなかで
最悪であり、その異常性は習近平の数ある政策のなかでも突出し
ていると思います。 ──福島香織氏
──福島香織著/ワニブックス
『習近平の敗北/紅い中国・中国の危機』
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習近平主席の宗教政策は、2018年4月発行の宗教白書「中
国の宗教信仰の自由を保障する政策と実践白書」にあらわれてい
ます。そこで示されるキーワードは「宗教の中国化」です。
「宗教の中国化」とは何でしょうか。
この白書によると、中国には、次の5大宗教があり、その人口
は2億人を超えています。
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1. 仏教
2.キリスト教
3.イスラム教
4. ユダヤ教
5.ヒンドゥ教
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この「2億」という数字は、中国共産党が認める宗教者数のこ
とです。2億まではコントロールできると考えているのです。中
国には、中国共産党が認める宗教と未公認の宗教がありますが、
未公認の宗教は「邪教」とされ、排除・迫害の対象となっていま
す。「法輪功」は、江沢民主席の命令で「邪教」に指定され、迫
害を受けています。宗教人口の実際の数は不詳ですが、実数はこ
の2倍以上いるといわれています。キリスト教だけでも1億人以
上、仏教は3億人以上いるといわれます。
中国は、宗教による結束を危険なものと考えています。これが
一定の数を超えると、なかなか解体させるのが困難になります。
そこで、これらの宗教は「国家宗教事務局」が管理してきました
が、2018年4月からこの事務局は、党中央統一戦線部という
組織の傘下に組み入れられています。これは、党中央が直接、宗
教を指導・管理できるようにしたことを意味します。
これについて、元国家宗教事務局副局長の陳宗栄氏は次のよう
に述べています。
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我が国の宗教の中国化方向を堅持し、統一戦線と宗教資源のパ
ワーを統率して宗教と社会主義社会が相互に適応するように積極
的に指導することを党の宗教基本工作方針として、全面的に貫徹
する。 ──元国家宗教事務局副局長の陳宗栄氏
──福島香織著の前掲書より
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党中央統一戦線部とは、正式には「中国共産党中央統一戦線工
作部」といい、中国共産党中央委員会に直属し、中国共産党と党
外各民主党派(中国共産党に協力する衛星政党)との連携を担当
する機構です。チベットや台湾に対する反党勢力への工作を行い
祖国統一を実現することを目的とする部署です。
この党中央統一戦線部の傘下に国家宗教事務局が入るというこ
とは、祖国統一の工作と、宗教を一体化することを意味していま
す。具体的にいうと、台湾統一問題とカトリック教、チベット問
題とチベット仏教、ウィグル問題とイスラム教をそれぞれ一体で
考えるという発想です。
つまり、宗教へのコントロールを強化して、それぞれの信者た
ちの思想のパワーを祖国統一へのパワーに結びつける。これこそ
が、中国共産党の任務であるというのです。これが「宗教の中国
化」の考え方です。この宗教の中国化について、福島香織氏は次
のように述べています。
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“宗教の中国化≠ニは、”宗教の中国共産党化″あるいは宗教
の社会主義化″といえるかもしれません。ですが、宗教の社会
主義化など、本来ありえません。宗教を否定しているのがマルク
ス・レーニン主義なのだから。中国共産党規約によれば、中国共
産党員は信仰を持ってはいけないはずです。宗教が社会主義化す
るということは、つまり宗教が宗教でなくなる、ということなの
です。そもそもキリスト教の人道主義と、中国の一党独裁体制の
実情は相反しています。 ──福島香織著の前掲書より
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この「宗教の中国化」の政策のもと、習近平政権下で、激しい
宗教弾圧が始まっています。なかでも異常なほど厳しいのが、イ
スラム教を信仰するウイグル人への弾圧です。その弾圧は、他の
宗教に比べても異常なほど厳しく、残酷なものです。それは、習
近平政権になって強化されています。
ウイグル人は、中国北西部の新疆ウイグル自治区に住んでいま
す。中国に5つある自治区の1つです。新疆ウイグル自治区は、
カザフスタンなどと国境を接し、希少金属など鉱物資源が豊富と
されています。もと新疆省であり、古来、シルクロードが通じる
交通の要衝であり、もと新疆省、古来、シルクロードが通じる東
西交通の要路、区都はウルムチ、別名、東トルキスタンとも呼ば
れています。新疆とは「新しい土地」という意味です。
中国は「宗教の中国化」政策の遂行に当って、国際社会からク
レームがこないように、次のメッセージを出しています。
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中国の宗教団体と宗教事務は外国勢力の支配を受けないし、い
かなる方法でも絶対干渉は受けない。中国の宗教は自立し、自主
的原則を堅持するものである。 ──福島香織著の前掲書より
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──[中国経済の真実/032]
≪画像および関連情報≫
●習近平、宗教の「中国化」を標榜/上野景文氏
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欧州ではカトリック教徒数の減少に歯止めがかからない。
かかる悩みを抱えるローマ・バチカンにとり、人口13億人
を抱える中国は、信徒数拡大と言う観点から高い魅力を有す
る。このため、ローマは、中国との関係改善「外交関係復活
教会関連懸案改善」を目し、かねてより、北京との協議を続
けて来ている。特に、フランシスコ法王就任後、熱意と協議
の頻度は高まっている。
ところが、最近、中国で、法王に「冷水」を浴びせるよう
な展開があった。すなわち、昨年10月の第19次共産党大
会における活動報告の中で、習近平総書記は、国政全般にわ
たり統制色を強める中で、宗教についても、「宗教が社会主
義社会に適応するよう導く」、「宗教の『中国化』の方向を
堅持する」と明言――つまり党による宗教への「締めつけ」
を強めると共に、外国の影響を抑えるということ――して、
内外宗教関係者を憂欝にさせた。
以下本稿では、中国カトリック教会に焦点を絞り、同教会
の「中国化」にこだわる北京と、ローマと中国の教会の間を
繋ぐ絲を守りたいローマとの間の「せめぎ合い」が、習政権
下どう展開するか、占う。
先ず、教会の現状につきおさらいしておこう。中国のカト
リック教会には、北京政府系の中国カトリック愛国会(CC
PA)に属し、その管理に服する「公認教会」と、CCPA
に属さず、あくまでローマ法王に従うことを旨とする「非公
認教会(地下教会)」の二つの「異質な教会」が併存する。
https://bit.ly/2Xvrsvi
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新疆ウイグル自治区