2019年06月10日

●「孔子学院が次々と閉鎖されている」(EJ第5022号)

 2019年6月8日の朝日新聞は、第1面と第2面で、「孔子
学院」を次のような見出しをつけて取り上げています。
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 ◎第1面/米中争覇
  「孔子学院」米安保の脅威?/中国を警戒次々閉鎖
 ◎第2面/米中争覇
  FBI長官「スパイ活動懸念」
  孔子学院への圧力超党派に/米教授会「閉鎖は非合理的」
          ──2019年6月8日付、朝日新聞朝刊
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 「孔子学院」排除は、新COCOMと関係があります。孔子学
院とは何でしょうか。ウィキペディアによると、孔子学院は次の
ように説明されています。
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 孔子学院(こうしがくいん)とは、中華人民共和国が海外の大
学などの教育機関と提携し、中国語や中国文化の教育及び宣伝、
中国との友好関係醸成を目的に設立した公的機関である。教育部
が管轄する国家漢語国際推進領導小組弁公室が管轄し、北京市に
本部を設置し、国外の学院はその下部機構となる。孔子の名を冠
しているが、あくまでも中国語語学教育機関であって、儒学教育
機関ではない。 ──ウィキペディア https://bit.ly/2Itf31p ─────────────────────────────
 孔子学院といっても儒教を教えるわけではなく、中国語や中国
文化を教える教育機関です。中国が海外の大学などと提携を結び
2004年から国家プロジェクトとして、スタートさせたもので
す。孔子学院が大学にとって魅力的なのは、米国のケースですが
孔子学園開設時に学校に10万ドル〜20万ドルを提供し、教室
の建設や講師の費用は中国が負担するという点です。つまり、中
国丸がかえの教育機関であり、中国語の授業を増やしたいが、資
金難で対応できない大学にとって、まさに渡りに船のおいしい話
なのです。2018年12月末の時点で、147ヶ国・地域に計
548校が開設されています。なかでも米国は、最多の105校
もあり、日本にも15校あります。
 ちなみに、孔子学院と似たような組織は、中国以外にもありま
す。ゲーテ・インスティテュート、ブリティッシュ・カウンシル
なども、それぞれの政府の運営するものです。他に、「フランス
学院」というのもあるといわれています。しかし、中国の孔子学
院は、他国のものといささか異なるのです。
 これらの孔子学院は、中国教育省傘下の国家漢語国際推進領導
グループ弁室(漢弁)の傘下の機関として、位置づけられていま
す。つまり、海外のすべての孔子学院は、中国政府によって、完
全にコントロールされているのです。こういう状況なので、教え
るカリキュラムやテキストなどはすべて中国主導で決められてお
り、大学に対しても一切開示されていないのです。
 中国から派遣される講師は、漢弁との間で「中国の国益を害す
る行為に関与すれば契約を打ち切る」とする誓約書にサインさせ
られているので、台湾独立問題や天安門事件などは、絶対に取り
上げることはないのです。要するに、孔子学院は中国政府による
政治宣伝のプロパガンダ機関なのです。
 中国共産党政治局常務委員の劉雲山氏は、孔子学院について次
のようにいっています。
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 孔子学院は、中国の文化戦争の戦場であり、かならず中国が使
用している教材を使用し、中国的社会主義を世界に拡大する目的
がある。             ──劉雲山政治局常務委員
                  https://bit.ly/2Itf31p ─────────────────────────────
 米中貿易戦争が始まる前にも、各国で孔子学院の閉鎖は起こっ
ています。これについては、2014年7月4日発行の「宮崎正
弘の国際ニュース・早読み」で宮崎氏が、カナダのケースを取り
上げ、次のように述べています。
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 カナダのトロントにある「孔子学院」の前でPTAがプラカー
ドを掲げて、反対運動を展開している。カリキュラムの偏向を問
題視しているのだ。
 そもそも「孔子学院とは孔子に名を借りて中国共産党の宣伝を
している。教育目的を逸脱し、子供らの教育に向上に役に立たな
い」とするカナダ市民、とくに中国系住民の抗議が教育委員会に
集中していた。カナダへ移住した中国人は共産党をきらって国を
捨てた人々が多い。トロント教育委員会は、「孔子学院の9月再
開」を暫定的に中止させる動機を圧倒的多数で可決させた(14
年6月25日、EPOCH TIMES)。決議案は、付帯条件
として「もし再開させるのであれば、教材の公開を義務付ける」
とした。
 トロントの孔子学院は2011年に37名の教職員が中国に招
待され、五星ホテルと豪華レストランで連日もてなされてきた。
そのあげくにカナダに孔子学院が開設された経緯がある。まるで
中国政府の出資による文化戦争の先兵として、利用されていると
批判が渦巻いていたのだ。      https://bit.ly/1qsFuWp
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 孔子学院をスパイ機関として決めつける見方もありますが、そ
うではないと思います。それは諜報機関の仕事であって、孔子学
院の仕事ではないのです。むしろ、中国の「中華思想」を指導す
ることによって、その国のなかに「中国の親派」をつくり、将来
のスパイ要員として育てようとしているのではないかと考えられ
るのです。
 しかし、米中の貿易戦争が起きると、いわゆる「統一戦線」の
一環として孔子学院がとらえられ、各大学での孔子学院の閉鎖が
次々と起きる事態となっているのです。
              ──[中国経済の真実/021]

≪画像および関連情報≫
 ●中国語学習の孔子学院、米で閉鎖続く 対立で排除の動き
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   中国政府が米国内の大学と提携して設置した中国語学習の
  教育機関「孔子学院」の閉鎖が、相次いでいる。2018年
  12月10日には、ミシガン大が来年の閉鎖を表明。今年に
  入り、閉鎖決定は6校目となった。米政界では「中国共産党
  の宣伝機関」「学問の自由が脅かされる」などと、批判が強
  まっており、中国のソフトパワーを排除する動きが広がって
  いる。ミシガン大の担当者は朝日新聞の取材に対し、同大学
  は2019年に期限を迎える孔子学院との契約を更新しない
  ことを明らかにした。すでに中国側には大学の方針を伝えた
  という。
   全米学者協会(NAS)によると、米国内の孔子学院の設
  置は05年3月にメリーランド大を皮切りに始まり、12月
  現在、100の総合・単科大学に設置されている。米メディ
  アによると、孔子学院が米国の大学で増え始めたのは景気後
  退の時期と重なる。中国政府が資金提供をするため、大学側
  にとっては自己負担を抑えて中国語授業を提供できるとして
  重宝されてきた経緯があるという。
   しかし、14年になって風向きが変わり始める。米国大学
  教授協会(AAUP)は同年6月、孔子学院は、中国政府の
  政治的主張と強く結びついているとして問題視し、「孔子学
  院は中国政府の一機関であり、『学問の自由』を無視してい
  る」と批判。孔子学院をめぐって大学側と中国側が交わす契
  約の中で、中国側が「学問の自由」を認め、契約の透明性の
  向上に応じなければ孔子学院の契約を打ち切るよう求めた。
                  https://bit.ly/31gvWoH
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孔子学院の開設.jpg
孔子学院の開設

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする