対立」を行っています。もちろん直接戦火を交えたわけではあり
ませんが、軍事的に対立をしていることは確かです。
ロシアとは、2014年のソチのオリンピック直後に行われた
クリミア紛争において対立を深め、中国とは、中国が領有権を主
張する南シナ海で、2012年から航行の自由作戦を頻繁に行い
中国と対立しています。これらは、いずれも「軍事対立」であり
安全保障を全てのことに優先させる米国は、今後「冷戦」という
名の「平和」を求めて行くことになります。こうなった以上、米
国が新ココム的措置をとることは必然であるといえます。
この新ココム的措置について、既出の宮崎正弘氏は次のように
述べています。
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米国の新ココム的な措置は、米議会が、2018年に可決した
「2019年度国防権限法/NDAA2019」が基本にある。
規制されるのはAI(人工知能)、バイオ、測位テクノロジー、
マイクロプロセッサー、次世代コンピュータ、データ分析技術、
ロボット、先端的材料など。その多くは日本企業に関連が深く、
ましてIC(集積回路)などは米国の基本特許であるケースやク
ロス・ライセンス契約による技術が目立つため、実際には米国が
国防権限法の運用を強めれば強めるだけ、日本企業の対中輸出も
自動的に縮小する。韓国、台湾も同様な影響を受ける。
──宮崎正弘著/ビジネス社刊
『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融機器が始まる』
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ホワイトハウスのなかには次の組織が誕生しています。共和、
民主を問わず、超党派の議員が要請して誕生したのです。
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枢要技術安全室
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「枢要技術安全室」とは何でしょうか。
これは、共和、民主を問わず、超党派の議員──米上院情報特
別委員会のウォーナー副委員長(民主党)と同委に所属するルビ
オ上院議員(共和党)などが中心になって提出した法案です。別
にトランプ大統領が指示したわけではないのです。枢要技術安全
室は、中国などによる先端技術のスパイ行為や米国から中国への
技術移転など、米国の安全保障を脅かす行為に対抗するための関
係省庁の取り組みを統括する組織です。
日本のメディアでは、一般的にトランプ大統領を、やることが
ハタメチャで、何をするかわからない予測不能な大統領と捉えて
います。中国に対する一連の厳しい姿勢も、そういう性格から出
てきているものと中国も考えています。したがって、次の大統領
選挙で民主党に政権交代したら、中国に対する姿勢も大きく変化
するだろうと甘く考えています。米国との貿易摩擦について中国
が、トランプの次の大統領を念頭に、持久戦に持ち込む戦略をと
ろうとしているのは、そのためです。
しかし、これは間違っています。こと中国に関しては、トラン
プ大統領よりも議会の方がはるかに厳しいのです。その例として
トランプ政権が中国の通信機器メーカーであるZTEの制裁を解
除したことへの議会の強い反発があります。ZTEをめぐるいき
さつについて既出の山田敏弘氏は次のように紹介しています。
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米政府は18年4月、対イラン・対北朝鮮の制裁に関連する合
意にZTEが違反したとして、米国企業にZTEとの取引禁止措
置をとった。これによって、半導体など基幹部品を調達できなく
なったZTEは、スマホなどの生産ができなくなってしまった。
追い詰められたZTEは、習近平国家主席に泣きつき、トランプ
への口利きを要請。結局、ZTEはトランプに屈して、10億ド
ルの罰金を支払った上で、今後10年間、米国の内部監視チーム
を入れることにも合意した。 https://bit.ly/2Wtz4Pp
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トランプ大統領は、ZTEとビジネスをしたのです。しかし、
議会は「それは許さない」と怒っています。トランプ大統領は、
ファーウェイに関しても、ZTEのスタイルでビジネス的な解決
を考えているようですが、米議会ではそれに対し、強く警戒して
いるといわれます。これに関連して、渡邊哲也氏は、小森義久産
経新聞ワシントン駐在客員特派員のレポートを取り上げ、次のよ
うに述べています。
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小森義久氏によると、ワシントンではこのところ中国に関して
「統一戦線」という用語が頻繁に語られているといいます。統一
戦線とは、「統一戦線工作部」という中国共産党内の内部組織を
指しますが、これは共産党が他国を侵略するために、その国のあ
らゆる組織に入り込み党の意図する方針へ誘導することが目的で
す。つまり、米国内における各界から中国による工作が行なわれ
ていることを指摘する声が高まっているわけです。たとえば、半
官半民のシンクタンク「ウィルソン・センター」によると、「米
国の主要大学は長年、中国政府工作員によって中国に関する教育
や研究の自由を侵害され、学問の独立への深刻な脅威を受けてき
た」といいます。(中略)もはや中国の脅威が抜本的に取り除か
れるまでは、この路線は継続されると中長期的に見たほうがいい
でしょう。少なくとも、トランプ大統領だけの問題ではないこと
が明らかにされたのです。 ──渡邊哲也著/ビジネス社刊
『GAFAvs中国/世界支配は「石油」から
「ビッグデータ」に大転換した』
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小森氏がこのレポートで訴えているのは、米国の主要大学にお
いて、中国政府工作員による中国に関する教育や研究の自由が侵
害されていることへの危機感です。それは、極めて深刻な事態に
なっているのです。 ──[中国経済の真実/020]
≪画像および関連情報≫
●海外に魔の手を伸ばす中国の「統一戦線工作」
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「統一戦線を組もう」とは、仲間内の日常会話でも使われ
る表現である。しかし、国際政治の場において、外交戦、情
報・世論戦、謀略戦、懐柔策などを複雑に絡めて展開される
「統一戦線工作」は、奇々怪々として、国家に深刻な問題を
投げかける。というのも中国が習近平政権になって、海外に
おける「統一戦線工作」を一段と強化しているからである。
先日、中国の「『統一戦線工作』が浮き彫りに」という米
国からの記事(「古森義久のあめりかノート」、産経新聞、
平成30年9月23日付)が掲載された。
詳細は、この後に譲るとして、米国では、統一戦線方式と
呼ばれる中国の対米工作に関する調査報告書が発表されたこ
とをきっかけに、習近平政権が「統一戦線工作」によって米
国の対中態度を変えようとしていることが明らかになった。
そして、米国全体の対中姿勢が激変し、官と民、保守とリベ
ラルを問わず、「中国との対決」が、米国のコンセンサスに
なってきたというものである。「統一戦線工作」とは、本来
革命政党である共産党が主敵を倒すために、第3の勢力に意
図や正体を隠しながら接近・浸透し、丸め込んで巧みに操り
その目的を達成しようとする工作である。
https://bit.ly/2HZCWPm
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小森義久氏