のアンドリュー・ロス・ソーキンス記者が、ファーウェイトップ
の任正非CEOへの次の発言を再現することにします。
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ソーキン:私はリスクを減らすことに興味はありません。私が質
問しているのは、ファーウェイのCEOが「ほら、私たちは他
者と情報を共有していません。私たちは中国政府と協力してい
ないのです」と主張しているからです。
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遠藤誉氏は、任正非CEOが、この「私たちは中国政府と協力
していない」という発言を、いつ、どのような場面での発言かに
ついて調査しています。その結果、それは、今年の1月15日に
AP通信やCNBCを含めた英語圏の海外記者による集団インタ
ビューのなかでの発言であることがわかったのです。
そこでは、記者たちから、中国の「国家情報法」との関連での
ファーウェイの対応をとことん聞いているのです。そのときの任
正非CEOの回答を要約して再現します。
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記者団:あなたは、中国政府の要求があっても、絶対に従わない
と言っていますが、しかし、あなたは共産党員ですよね。それ
でも中国政府の要求を拒否できるというのですか?どうやって
中国政府に抵抗できるのですか?どうやって顧客を安心させる
ことができるのですか?
任正非:私の会社はビジネスの会社だ。ビジネス企業の価値観は
顧客が中心だ。私個人の政治的信仰とビジネス行動は必ずしも
一致しない。私は、絶対に中国政府に服従して顧客を裏切るよ
うなことはしない。今日のインタビューが報道された後の将来
20年から30年、もし私がまだ生きていたとしたら、私がい
ま言った言葉を覚えておいてほしい。そして私が行動を以て、
この言葉を証明することを見届けてほしい。
記者団:アップルはアメリカ政府の要求に従わず、政府を訴えて
司法に持ち込んだ。中国にはファーウェイに、このような行動
を可能ならしめる法律制度はあるか?
任正非:私は絶対に中国政府の要求を実行しない。となると中国
政府が私を訴えるのであって、私が政府を訴えることにならな
い。もっとも私は中国政府が私を訴えるか否かは分からない。
https://bit.ly/2Wtht9g
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この記者団と任正非CEOのやり取りを聞いて、ファーウェイ
のCEOのいっていることに納得できるでしょうか。CEOは、
「私としては絶対に政府に屈服しない」と強調するだけで、それ
をもって信用してくれといわれても、素直に受け入れられないと
思います。何しろ、中国は、これまで、共産党の命令に従わない
者に対し、情け容赦ない弾圧をやってきているからです。
これに対して遠藤誉氏は、国家情報法における「情報」とは、
中国には民主化を求めて国家転覆を図ろうとする者がたくさんお
り、そういう個人や組織の所在を知っている者が政府に密告する
ことを合法化したものであるといいます。つまり、「反政府分子
を匿ってはならない」という趣旨の法律であるというのです。
しかし、国家情報法第7条は、「いかなる組織及び国民も、法
に基づき国家情報活動に対する支持、援助及び協力を行い、知り
得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない」と、
いくらでも情報の拡大解釈ができる条文になっており、恣意的運
用が行われる可能性は十分あると思います。
しかし、遠藤氏は、「もし、任正非CEOが国家情報法に基づ
き、知り得た情報を中国政府に提供したら、どうなるか」という
観点で次のようにも述べていますが、こちらは納得できます。
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これが「国家情報法」の基本ではあるが、仮に、海外の感覚で
「国家情報法」を解釈し、ファーウェイが中国政府に屈服したと
しよう。そのとき、何が起きるか――?
まずファーウェイ社員の燃えるような使命感は、その瞬間に消
失する。新しい半導体チップを命を賭けて設計していくぞという
ような意欲は無くなり、普通の国有企業の従業員のように、やる
気が無くなり、真に意欲を持つ者は、ファーウェイから去って、
もっと小さな民間企業に移るだろう。つまり、この時点で中国は
5Gにおいて世界の最先端から脱落し、ハイテク国家戦略「中国
製造2025」の完成も絵に描いた餅になってしまうということ
である。この構図が面白いのだ!
習近平国家主席は、このことに激しく苦悩しているだろう。こ
こにこそ「中国の特色ある社会主義国家」の限界があることに気
が付かなければならない。 ──遠藤誉氏
https://bit.ly/2HFihQa
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遠藤氏は、日本人に対しても怒りをぶつけています。「一部の
日本人は、(私が)少しでもファーウェイと中国政府の関係に関
する真相を書くと、『アイツは中国の工作員だ』と誹謗すること
しかしない」と。そして、日本のメディアの対応に関しても次の
ように疑問を呈しています。
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ファーウェイに関して「証拠を出せ」とアメリカ政府に迫って
いないのは、日本国、一国であることを認識したいものである。
アメリカのメディアでさえ、「証拠を出せ」と迫っていることが
このCNBC報道で分かったはずだ。しかし共同通信は、その部
分は無視して、「嘘つきだ」という部分だけを切り取って日本人
に知らせた。これは、国益に適っているのだろうか?私たちには
「真実を知る権利」がある。 ──遠藤誉氏
https://bit.ly/2Wsemyt
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──[中国経済の真実/014]
≪画像および関連情報≫
●日本もファーウェイ排除の方針。その懸念の真偽と被る影響
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貿易問題や通信分野の覇権争いで対立する米中。米国政府
はファーウェイやZTEを名指しで政府調達から排除した。
さらに、同盟国に中国通信大手の排除を要請した模様だ。そ
して、日本政府は「IT調達に係る国の物品等又は役務の調
達方針及び調達手続に関する申合せ、(以下、IT調達申合
わせ)」を公表した。
そもそも、日本政府はサイバーセキュリティにまったく無
頓着なわけではなく、従来から中国製品を警戒していた。そ
れでも敢えてIT調達申合せを公表したのは、米国政府の要
請に呼応して同調姿勢を明確化する狙いなのだろう。
ただ、日中関係が改善傾向にある中で、日本政府としては
中国政府を過度に刺激したくないはずだ。日本政府はIT調
達申合せについて「防護すべき情報システム、機器、役務な
どの調達に関する方針や手続きを定め、特定の企業や機器の
排除が目的ではない」と説明し、名指しは避けて中国政府に
配慮した格好だ。
IT調達申合せの公表前には複数の報道機関が日本政府に
よる中国通信大手の排除を報じ、それに中国政府は強い表現
で反発した。しかし、IT調達申合せの内容を公表後は不快
感こそ示したが、発言は抑制的な表現にとどめた。名指しで
排除されない限り、中国政府としては強い表現での反発は難
しく、この点は日本政府の狙い通りだ。
https://bit.ly/2ECV6UU
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遠藤誉筑波大学名誉教授/理学博士