が、4月23日に開催された英国の国家安全保障会議において、
米国とともにファイブアイズの中心国、英国のメイ首相は、英国
としては、ファーウェイの製品を5Gの中核部分からは外すもの
の、他の部分では残すことを宣言しています。
メイ首相の発表の約1ヶ月前に、英国の監督機関がファーウェ
イのセキュリティを精査して、厳しい内容の報告書を提出したに
もかかわらずです。この報告書では、ファーウェイについて次の
ように論評しています。
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ファーウェイ社のソフトウェアエンジニアリングとサイバーセ
キュリティの能力には、深刻かつ意図的な欠陥がある。しかし、
英国の重要なネットワークへのファーウェイの関与が国のセキュ
リティにもたらす、すべてのリスクは、長期的には十分に軽減で
きる、という限定的な確証しか提供できない。
報告書(英文) → https://tcrn.ch/2YuHIdA ─────────────────────────────
英国の監督機関は、一方で「深刻かつ意図的な欠陥がある」と
いいながらも、他方「それがもたらすリスクは長期的には十分軽
減できる」という曖昧な表現にとどめています。ここにメイ政権
の中国への配慮が感じられるのです。
しかし、このメイ首相の決定には、英国の内務大臣と外務大臣
防衛大臣、通商大臣、国際開発大臣らが懸念を示したことが伝え
られています。メイ首相としては、EU離脱となると、中国は重
要な貿易相手国になるので、そういう観点から、サイバーセキュ
リティの面で甘さが出てしまったのではないかと考えられます。
もともと英国は、米国が「ファーウェイのここが問題である」と
いう証拠を示さないことに不満を持っていたといわれます。
この「なぜファーウェイは問題があるのか」について、米国が
きちんとした証拠を示していないことをEU各国が不安を持って
いることは確かです。これについて、遠藤誉氏は、5月23日の
米CNBCのテレビ記者、アンドリュー・ロス・ソーキン氏によ
るポンペオ国務長官へのインタビューを取り上げ、分析している
ので、以下にご紹介します。
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ソーキン:国務長官、教えていただきたいのですが、ハーウェイ
がハードウェアを利用して、スパイソフトや何かスパイ行為を
行うことを明確に示唆する証拠を今日は提供できますか。
ポンペオ:うーん、そうだね。それは間違った質問だよ、アンド
リュー。もしあなたが自分の情報を、つまり、自分の情報をだ
ね。中国共産党に渡すのは、あなたにとって実際上、凄まじい
リスクを伴う行為になるわけだよ。中国共産党は、今日は利用
しないかもしれない。明日も利用しないかもしれない。
ソーキン:私はリスクを減らすことに興味はありません。私が質
問しているのは、ファーウェイのCEOが「ほら、私たちは他
者と情報を共有していません。私たちは中国政府と協力してい
ないのです」と主張しているからです。だから、何か明確な証
拠を示してください。
ポンペオ:それはまさに嘘だよ。それはまさに嘘だ。中国政府と
協力していないというのは、嘘の声明だ。
https://bit.ly/2K90XVp ─────────────────────────────
ここに示した日本語訳は遠藤誉氏による翻訳です。遠藤氏は、
ポンペオ国務長官の受け応えは明らかにシドロモドロである──
そういうのです。それは英語の原文で読むと、一層明らかである
といっています。
以下の英文は、アンドリュー記者に対するポンペオ国務長官の
返事ですが、明らかに間違っているところがあります。遠藤氏は
それを根拠にシドロモドロといっているのです。
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That's the wrong question, Andrew. If you put your
information, your information, in the hands of the
Chinese Communist Party, it's de facto a real risk
to you.They may not use it today. They may not use
it tomorrow.
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それは最後の部分「They may not use it tomorrow」です。こ
れは「今日」と「明日」が関連を持っています。「(情報を入手
しても)今日は使わないかもしれないが、明日は使うかもしれな
い」という意味の「They may use it tomorrow」ならわかります
が、ポンペオ国務長官は、「They may not use it tomorrow」と
いっています。これだと意味がわからなくなります。「not」 は
不要なのです。米国人、しかも国務長官ともあろう人が、母国語
で、こんな間違えをするはずがないので、遠藤氏はシドロモドロ
になっていたんじゃないかといっているのです。
しかし、仮にファーウェイがスパイをしているという確たる証
拠があったとして、それを国務長官という地位にある人がメディ
アに話せるでしょうか。そんなことはできるはずはないのです。
ポンペオ国務長官は、そういう質問をはぐらかす会話の技術が上
手でないだけだと思います。
しかし、遠藤誉氏は、これほどまでして、なぜ、ファーウェイ
をかばうような発言をするのでしょうか。ファーウェイをあまり
追いつめるとロクなことにならないとまで発言しています。遠藤
氏の本を読むと、ファーウェイの創業者である任正非氏は確かに
人民解放軍に在籍していたものの、それは「軍民転換」といって
そういう人はたくさんおり、だからといって、軍のために何かを
することはないし、ましてスパイなどではないといいます。
しかし、自由主義陣営は、「ファーウェイ排除」でまとまりそ
うな情勢です。とくにグーグルのソフトウェア制限は、ファーウ
ェイにとって深刻です。 ──[中国経済の真実/013]
≪画像および関連情報≫
●ファーウェイ排除の内幕、激化する米中5G戦争
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[キャンベラ/21日/ロイター]2018年初頭、オー
ストラリア首都キャンベラにある低層ビル群の内部では、政
府のハッカーたちが、破壊的なデジタル戦争ゲームを遂行し
ていた。
オーストラリア通信電子局(ASD)のエージェントであ
る彼らに与えられた課題は、あらゆる種類のサイバー攻撃ツ
ールを使って、対象国の次世代通信規格「5G」通信網の内
部機器にアクセスできた場合、どのような損害を与えること
ができるか、というものだ。
このチームが発見した事実は、豪州の安全保障当局者や政
治指導者を青ざめさせた、と現旧政府当局者は明かす。5G
の攻撃ポテンシャルはあまりにも大きく、オーストラリアが
攻撃対象となった場合、非常に無防備な状態になる。5Gが
スパイ行為や重要インフラに対する妨害工作に悪用されるリ
スクについて理解されたことが、豪州にとってすべてを一変
させた、と関係者は話す。
電力から水の供給、下水に至るすべての必須インフラの中枢
にある情報通信にとって5Gは必要不可欠な要素になる──
マイク・バージェスASD長官は3月、5G技術の安全性が
いかに重要かについて、シドニーの研究機関で行ったスピー
チでこのように説明した。「世界的な影響力拡大を目指す中
国政府の支柱の1つとなった創立30年の通信機器大手、華
為技術(ファーウェイ)に対する世界的な締め付けを主導し
たのは、米政府だと広く考えられている。
https://bit.ly/2YSDhIT
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誤魔化し方が上手ではないポンペオ国務長官
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