態が起きている」と書きました。一体何のことでしょうか。今回
はその説明からはじめることにします。その“政治的事件”を理
解するためには、前提になる中国共産党の意思決定のやり方や運
営の決まりについて知ることが必要になります。
習近平氏が中国共産党第5代中央委員会総書記に就任したのは
2012年11月15日のことです。このポストは、この国、中
華人民共和国の最高位です。国のトップ、国家主席よりも総書記
の方が上のポストです。習近平氏が第7代国家主席になったのは
2013年3月14日のことです。
中国共産党の重要な方針の決定は、党大会、正確には、中国共
産党全国代表大会で行われます。中国の政治は、中国共産党がす
べてを指導することになっているので、党大会は中国共産党の最
高意思決定機関です。党大会は、5年に1回、1週間程度の日程
で開催されることになっています。
しかし、5年に1回では間が空き過ぎるので、5年ごとの党大
会を1つの「期」ととらえ、その期のうちに「中全会(中国共産
党中央委員会全会)」という会議を7回実施することになってい
るのです。
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第一中全会 ・・・ 中央委員の紹介と党執行役員人事決定
第二中全会 ・・・ 国務院(政府)の人事/首相/副首相
第三中全会 ・・・ 新指導部による国家運営の方向性伝達
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第四中全会 ・・・ 方針の微調整や法改正/経済政策変更
第五中全会 ・・・ 方針の微調整や法改正/経済政策変更
第六中全会 ・・・ 方針の微調整や法改正/経済政策変更
第七中全会 ・・・ 方針の微調整や法改正/経済政策変更
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「第一中全会」は、党大会の直後に開催されます。そこでは、
主として新しい中央委員の紹介や、党の執行役員の人事を決める
ことになるので、党大会の直後に開催されることが恒例となって
いるのです。
続いて、「第二中全会」は、国務院──最高国家行政機関で日
本の内閣に該当──の役員人事を決定します。2期目の習近平政
権は2018年1月18日〜19日の2日間行われています。
「第三中全会」は、2期目の習近平政権が、国家をどのように
運営していくのかについて、その基本的な方向を伝達するために
行われます。習近平政権の第三中全会は、2018年2月26日
〜28日に行われています。
ここまではほぼ予定通りに行われたのですが、ちょうど第三中
全会が終了した後、トランプ米大統領が対中貿易戦争を宣言した
のです。ここからがおかしいくなったのです。本来であれば、秋
には第四中全会が開催されなければならないのですが、それが現
在も行われていないのです。
2018年11月14日の日付で、ネット上に掲載されている
福島香織氏のレポートには、四中全会開催のアナウンスがないこ
とについて次のように書かれています。
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11月中旬にもなって、中国共産党の秋の重要な政治会議であ
る四中全会のアナウンスがない。10月20日、安倍晋三首相訪
中直前に開かれるという情報もあったが、習近平は強引に香港マ
カオ珠海大橋開通式出席を含めた南方視察の予定を入れて、これ
を11月頭に延期とした。だが11月初旬、習近平は上海で開催
された輸出博覧会の開幕式出席という予定を入れて、さらに、延
期。では米国の中間選挙の結果をみてから開くのだろうかと思わ
れていたが、中間選挙が終わってからもう一週間だ。14、17
日にはAPEC年度総会などの日程が入っており、11月中旬も
時間がありそうもない。
改革開放以来、秋の中央委員会総会がこんなに遅くなったこと
はない。共産党内部で何か揉めていて総会を開くどころではない
のだ、と噂が立っている。 https://bit.ly/2LWclqn
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四中全会からは、国の運営方針などを変更する場合や法改正を
する場合、その情報を伝える会議になります。したがって、この
ときの四中全会は重要であり、例年よりも開くニーズがあるので
すが、なぜか習政権はいまだに開催していないのです。
本テーマを書くとき、主として参考にさせていただいている2
冊の本──石平/渡邊哲也両氏、宮崎正弘氏の本では、この四中
全会が開催されないことに関して次のように記述されています。
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◎渡邊哲也氏
18年の秋に開かれるはずだった「四中全会」が開かれません
でした。そのため今回は、党の承認がない形での政策公表(全人
代)になっています。これには複数の理由があり、米中貿易戦争
が激化し、バブルの崩壊が危惧されるなか習近平国家主席への辞
任圧力が強まっており、四中全会でクーデターを起こされるのを
恐れたのではないかと言われています。一党独裁であっても、中
全会では、党が政策承認する会議であるため、承認の決を採るわ
けです。 ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき』
◎宮崎正弘氏
トランプ大統領の対中政策の基軸転換に周章狼狽した中国の習
近平国家主席は米中貿易戦争の不手際の責任を回避するため、定
例の四中全会を開催せず、付け刃の対応に追われた。中央委員会
全体会議を開催せずに全人代になだれこむという異常事態となっ
たのだ。 ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機 が始まる』
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──[中国経済の真実/008]
≪画像および関連情報≫
●批判恐れ? 重要会議が開かれない理由/福島香織氏
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では、なぜ四中全会がこんなにも遅れているのか。強引に
憲法を変え、集団指導体制の根本を揺るがし、個人独裁体制
を打ち立てようとしている習近平政権二期目のやり方は、党
内部でもいろいろ物議をかもしている。よほど内部で揉めて
いるようだ。具体的に何を揉めているのだろう。
一説によると、今四中全会を開くと、習近平の大バッシン
グ大会になってしまい、その権力の座が危ない、と習近平自
身が恐れているから開けないのではないか、という。ラジオ
・フリー・アジアの取材に清華大学政治学部元講師の呉強が
こうコメントしていた。
「習近平は南方視察の間、一度も大した演説をしなかった。
改革開放についても何も語らなかった。四中全会の日程も、
いまだアナウンスされていない。その理由について、北京の
権力闘争が膠着状態に陥っているのではないかと思われる」
「わかっているのは習近平にしろ中国共産党にしろ、誰も未
来に対する長期的な改革開放についての明確な計画を持って
いないということ。これに加えて年初以来の憲法改正が引き
起こした権力の真空と密接に関係していると思われる。大衆
にしても、党幹部にしても目下一切の責任は習近平一個人に
すべてあると考えている。党の幹部は現在二つの選択に直面
している。党に忠誠を誓うべきか、あるいは習近平個人に忠
誠を誓うべきか」 https://bit.ly/2HFdsFl
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四中全会での習近平国家主席/2015