2019年05月17日

●「習近平批判が中国国内で拡大傾向」(EJ第5006号)

 「私有制を廃止する」──この議論が2019年1月から起き
ています。これは、習近平主席の意思なのでしょうか。これにつ
いて、石平氏は、習主席は明言こそ避けているものの、自らの意
思である可能性は高いとして、次のように述べています。
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 習近平自身も、2018年5月、人民大会堂にて「マルクス生
誕200年記念大会」を盛大に開催して、自らが「重要講話」を
行っています。講和のなかで彼は、中国共産党はマルクス主義で
理論武装した政党であること、マルクス思想の一般原理は、現在
も完全に正しいことを強調しています。この発言が、「私有制消
滅」は習近平政権の意図ではないのかとの疑念を一層深めたのは
言うまでもありません。というのは、「私有制消滅」こそがマル
クス主義の基本理念の一つであり、習近平国家主席が言うように
「マルクス思想の一般原理は現在も完全に正しい」のであれば、
「私有制消滅」も正しいことになるからです。   ──石平氏
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
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 習近平主席は、まっしぐらに毛沢東路線への回帰を進めていま
す。したがって、そこに私有制消滅論が出てきてもおかしくはな
いのです。ところが既出の向松祚氏は、これを批判しています。
したがって、これは習近平政権への政治批判になります。
 それだけではないのです。向松祚氏は、中国のGDP成長率が
政府公表の6%台ではなく、1・6%でしかないことを、多くの
人が集まるフォーラムで話しています。中国の国家統計数字が信
用できないことはよく知られてはいるものの、マクロ経済学者が
きちんと数字を示して政府発表の数字とは違うと述べているので
すから、習政権にとっては、大きなダメージになるはずです。し
たがって、明らかに習政権への批判になります。
 まして、習主席や習政権について批判的な内容を記述した書籍
を出版した書店主でさえ、拘束されてしまう国なのです。しかし
向松祚氏は、今のところ何の咎めも受けていないし、逮捕などの
政治的迫害なども受けていないのです。これはどういうことなの
でしょうか。
 これは、誰でも抱く疑問ですが、石平氏にしても渡邊哲也氏に
しても、それに対する明確な答えは持っていないようです。ただ
渡邊哲也氏は、推測であると断って次のように述べています。
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 おそらく向松祚氏は単なる一個人として上述のような批判を展
開しているわけでないと思う。彼の背後には大きな政治勢力が連
なっているはずです。この政治勢力の正体は不明とはいえ、党と
政府内、そして学界において隠然たる力を備えていることは確実
でしょう。
 もちろん、この勢力は、いまの習近平政権の政治・政策に対し
て大きな不満を持ち、批判的な態度をとっていることは明らかで
す。さらに言えば、中国としては米中貿易協議を行っている最中
に、向氏に手荒な真似はできないでしょう。人権問題で波風を立
てられないという事情がありますから。    ──渡邊哲也氏
             ──石平×渡邊哲也著の前掲書より
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 「向松祚氏のバックには大きな政治勢力が連なっている」──
渡邊哲也氏は、このように述べています。どうやら、これは事実
のようです。実は、中国国内でも、習近平批判は多く出ているの
です。とくに中国共産党大幹部の息子や秘書たちが、国内知識人
の不満を代弁しているのです。
 ネットなどの情報で明らかになっているのは、ケ小平氏の長男
のケ僕方氏(中国身障者連合会主席)は、2018年に年次大会
で演説し、「中国は身のほどを知るべきである」と、暗に習主席
を批判。2018年2月に亡くなった毛沢東の秘書の李鋭氏は、
習近平の能力を「小学校のレベルである」とストレートにこきお
ろしています。
 そして、2019年の1月中旬には、胡燿邦氏の息子の胡徳平
氏が、北京で開催された経済セミナーで次のように習近平体制に
ついて批判しています。
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 このまま政治改革を怠り、民間の経済活動の活性化を促す政策
に転じなければ、中国はいずれソ連がたどった死の道を選ぶこと
になるだろう。         ──2019年1月18日付
          「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」
               ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機 が始まる』
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 習近平体制が確立され、急速に習近平崇拝の動きが強まってい
ますが、その一方で中国内部での習近平批判も目立ってきている
のです。したがって、向松祚氏は、ある強力なバックを後ろ盾と
して、習近平政権の批判ともとれる発言をしていることは、十分
考えられることです。
 このように考えると、磐石に見える習近平体制も決して安泰で
はないことがわかります。昨日の5月15日「BSフジ/プライ
ムニュース」で、出演者の中国に詳しい津上俊哉氏(日本国際問
題研究所客員研究員)は、トランプ大統領は最大でもあと6年し
かないが、習近平主席はもっと長くやれるのではないかとの反町
MCの質問に対して、次のように答えています。
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 そんなことはない。習近平主席は永久政権どころか、案外2
 期での退陣もあり得ると考えている。習近平体制はそんなに
 盤石ではない。             ──津上俊哉氏
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              ──[中国経済の真実/005]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の名門大学で習近平体制批判続発
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   中国・北京の名門大学で、習近平国家主席の母校でもある
  清華大学法学部の教授が習氏を独裁体制だと批判する論文を
  発表したことで、停職処分となり、中国当局の取り調べを受
  けていることが明らかになった。
   また、清華大と並ぶ名門の北京大学の名誉教授が今年1月
  習氏に暗に即時引退を促す論文をネット上で発表した。さら
  には、北京大では昨年、習氏批判の壁新聞が公になるなど、
  中国の学術界を中心に習氏批判が後を絶たないという異常事
  態となっている。米CNNなどが報じた。
   処分を受けたのは清華大の許章潤教授で、同大学の中国共
  産党委員会がこのほど、許氏を停職処分にして、当局の捜査
  が終わるまで全ての教職や研究職から外すことを発表したと
  いう。党委員会は具体的な停職処分の内容については明らか
  にしなかったが、同大関係者は「主に、許氏が2018年7
  月に発表した論文に関係している」と述べている。
   論文は「差し迫った恐怖、目前の希望」というタイトルで
  習近平指導部が昨年3月の全国人民代表大会(全人代=国会
  に相当)で、憲法から削除した国家主席の任期を元通りにす
  るよう要求した。さらに、「突如として、どこからともなく
  制約のない権限をもつ『最高指導者』が現れた」と皮肉るな
  ど、習氏の独裁体制強化の動きに反対していた。
                  https://bit.ly/2w0IySi
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胡徳平氏.jpg
胡徳平氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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