2019年05月07日

●「中国への外交政策を間違えた米国」(EJ第4998号)

 4月27日に行われた日米首脳会談でトランプ大統領は、当初
安倍首相に「貿易交渉を5月中に決着させよう」というようなキ
ツイことをいっていましたが、その後一転して、難しい交渉は参
院選後にやることで合意したようです。時事通信社は「タイム誌
によると」と断って、次のように報道しています。
─────────────────────────────
【ワシントン時事】米誌タイムは2日までに、新たな日米貿易協
定交渉について、今年夏の参院選後に本格化する見通しだと報じ
た。トランプ大統領が先週末の首脳会談で、安倍晋三首相に配慮
する姿勢を見せたという。日本政府は、農産物や自動車の市場開
放協議が選挙に及ぼす影響を最小限にとどめたい方針を伝えたと
みられる。
 タイム誌によると、トランプ大統領は交渉責任者であるライト
ハイザー米通商代表部(USTR)代表らの助言を無視し、「本
格的な協議を先送りすることに応じた」という。両国は今月中に
も、個別品目の関税撤廃・引き下げに向けた事務レベルの調整に
着手するとされるが、最終決着は参院選後に持ち越される可能性
が高い。【時事通信社】       https://bit.ly/2ZZiTrh
─────────────────────────────
 お互いに選挙が大事なのでこういう妥協が生まれたものと考え
られますが、こういうざっくばらんな交渉ができるのも、安倍首
相とトランプ大統領の個人的人間関係があるからなのでしょう。
しかし、これによって安倍首相は、農産品を含む重要交渉で大幅
に譲歩せざるを得なくなり、この参院選後への延期のツケは相当
高くつくものと思われます。
 戦後から日本が選んできた道は、あくまで日米同盟を基軸にし
て、アジア大陸の脅威──冷戦時代はソ連、現在は中国と北朝鮮
──に対応するというものです。つまり、米国の軍事力を後ろ盾
にして日本はこれまで国を発展させてきたのです。そういう意味
で日本は米国の保護国であるといえます。
 日本のこの選択は、日本の発展に大きく寄与したことは確かで
す。しかし、それは、米国が世界最大の覇権国であり続けること
が条件になります。覇権国とは、軍事力、政治力、経済力、文化
的影響力など総合国力において圧倒的に優越し、他国との力量の
乖離を前提に国際社会に秩序=国際公共財(たとえば、自由貿易
体制や国際金融の安定性)を供給する国家のことです。
 確かにこれまで米国は、そういう覇権国であったし、現在もそ
の地位を維持しています。しかし、軍事力に関わる中国の技術的
レベルは急速に伸長し、米国に激しく迫っています。なかでも、
これからの主戦場になる宇宙の分野では、中国は米国のレベルを
超えています。なぜ、こういう結果になったのでしょうか。
 それは、米国が中国に対する政策を誤ったからです。米国には
中国への対応に関して次の2つの考え方があります。それは、そ
れぞれ、一派を形成しています。
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        1.中国の強化を奨励する一派
              キッシンジャー派
        2.中国の進出を警戒する一派
              ブレジンスキー派
─────────────────────────────
 今回は、第1の「中国の強化を奨励する一派」について考える
ことにします。
 この一派は、中国を西側国際社会に引き入れ、国力を強化させ
ればやがては民主国家になると甘く考えていたのです。この考え
方に立って政策を進めたのはニクソン政権です。ニクソン政権は
現トランプ政権と同じ強烈な米国第一主義であり、米国の利益の
ためなら、他国はどうなってもいいという考え方です。
 1972年2月、ニクソン大統領は、それまで一貫して中国封
じ込め政策をとってきたにもかかわらず、電撃的に中国を訪問し
たのです。「敵の敵は味方」という考え方です。これによって、
米国の中国封じ込め政策に全面協力をしていた日本の佐藤内閣は
窮地に陥ってしまいます。
 ニクソン大統領は、泥沼化していたベトナム戦争を終わらせる
ため、当時ソ連と対立していた中国を味方につけるため中国を訪
問したのです。このとき、その絵図を描き、自ら中国を訪問し、
ニクソン訪中を実現させたのが、当時大統領補佐官をしていたヘ
ンリー・キッシンジャー氏です。以来、キッシンジャー氏といえ
ば、現在に至るまで、中国派といわれる存在です。
 既出の日高義樹氏は、キッシンジャー氏と大変親しく、かつて
の日高氏のテレビ番組に、キッシンジャー氏はよく出演していた
のです。その日高氏は、最新刊書において、キッシンジャー氏の
ことを次のように述べています。
─────────────────────────────
 「中国の指導者は頭が良い。優れた見識を持っており、あらゆ
る問題の解決策をうまく考え出す」
 私が長く付き合っているアメリカのキッシンジャー元国務長官
が中国について口を開くと、必ずこう言う。キッシンジャー博士
だけでなく、私が付き合っているアメリカの政治家や学者たちは
中国の長い歴史と、そして地理的に占めている大きさに恐れと敬
意を抱いており、中国とはとても戦うことはできないという気持
ちを強く持っているようである。
 こうしたアメリカの指導者たちの考え方が、中国共産党という
非人間的で非合理な政治体制をそのまま国際社会のなかに導き入
れてしまった。キッシンジャー博士やニクソン大統領の対中国政
策の裏には、当時アメリカを悩ませていたベトナム問題や冷戦を
戦っているソビエトをうまく処理するために、中国の力を利用し
たいという思惑も存在していた。  ──日高義樹著/悟空出版
『2020年「習近平」の終焉/アメリカは中国を本気で潰す』
─────────────────────────────
           ──[米中ロ覇権争いの行方/079]

≪画像および関連情報≫
 ●ヘンリー・キッシンジャーの「中国」
  ───────────────────────────
   アメリカでのパンダハガー(親中派)筆頭であり、1969
  年から75年まで特別補佐官・国務長官を務めたヘンリー・
  キッシンジャー。1960年代のアメリカでは、中国をソ連
  以上に、より切迫した脅威とみなす認識が一般的だった。中
  国の文化大革命は狂信的なものであり、べトナム戦争は中国
  の拡張主義の現われとみなされていた。
   朝鮮戦争などもあり、20年以上にわたってアメリカと中
  国はハイレベルでの接触を持たなかったが、1971年7月
  キッシンジャーはパキスタン経由で秘密裏に訪中し、周恩来
  と長時間の会談をした。(それ以来、キッシンジャーは中国
  に50回以上訪れている)
   その時のアメリカ側の動機は、ベトナム戦争の泥沼からの
  撤退、冷戦の一つの戦術的側面(ソ連を封じ込めるため)。
  中国側の動機は、文化大革命の混乱による疲弊からの脱却、
  形の上ではソ連の同盟国だったが、モスクワの脅威に対抗す
  るため。更にキッシンジャーは、ニクソンから、アメリカが
  日本から撤退すると、日本が独自の軍事大国となり、中国に
  とって脅威となることを周恩来に指摘せよ、というメモを渡
  されて訪中している。「本書の主眼は、1949年に中華人
  民共和国が建国されて以来の米中指導者の相互交流を描くこ
  とにある。           https://bit.ly/2UZRkdt
  ───────────────────────────

ニクソン米大統領/中国を電撃訪問







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2019年05月08日

●「中国の野心を抑制する日本核武装」(EJ第4999号)

 昨日のEJで取り上げた米国における中国への対応に対する2
つの考え方を以下に再現します。
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        1.中国の強化を奨励する一派
              キッシンジャー派
     ⇒  2.中国の進出を警戒する一派
              ブレジンスキー派
─────────────────────────────
 第2の「中国の進出を警戒する一派」について考えます。第1
についての検討は、昨日のEJで既に終っています。
 ズビグネフ・ブレジンスキー氏は、その実績から、ヘンリー・
キッシンジャー元国務長官と並ぶ戦略思想家といわれています。
とくにブレジンスキー氏は、地政学的観点を取り入れた考察をす
る優れた政治学者として知られています。リンドン・ジョンソン
大統領の大統領顧問を務め、1977年から1981年までカー
ター政権時の第10代国家安全保障問題担当大統領補佐官を務め
たことでも知られています。
 ブレジンスキー氏は、多くの著作を遺していますが、次の著作
はとくに注目すべきです。
─────────────────────────────
        ズビグネフ・ブレジンスキー著/山岡洋一訳
           『ブレジンスキーの世界はこう動く/
      21世紀の地政戦略ゲーム』/日本経済新聞社刊
─────────────────────────────
 ブレジンスキー氏は、22年前の1997年に上梓したこの著
作のなかで、中国の行動を極度に危険視し、正確に今日の事態を
予測しているのです。
─────────────────────────────
 中国が大国として登場してきたことで、地政戦略上きわめて重
要な課題が生まれている。民主国家になり、自由主義経済になっ
た中国を、アジアの協力の枠組みのなかに取り込むことができれ
ば最高の結果だといえる。しかし、民主主義の道を歩まないまま
経済力と軍事力が増大していけば、どうなるだろう。近隣諸国が
なにを望み、どう考えようとも、「大中華圏」が登場し、それを
防ごうとすれば、中国との対立が激化するだろう。そうなれば、
日米関係も緊張する。日本政府がアジアにおける日本の役割につ
いての考え方を大転換させかねず、最悪の場合には、米国が東ア
ジアから撤退せざるを得なくなる。
       ──ズビグネフ・ブレジンスキー著の前掲書より
─────────────────────────────
 上記のなかで、「日米関係も緊張する」とは、具体的にいうと
「米国が中国の封じ込めを進めたとき、これまでのように、日本
がそれに従うとは限らない」という意味になります。
 つまり、このまま中国が、軍事、経済の両面において、米国と
拮抗し、上回る存在になってきたとき、米国にとって最も従順な
同盟国であるはずの日本が、米国についてくるとは限らないと、
ブレジンスキー氏は警告しているのです。それは、中国が日本の
隣国であるからです。つまり、これは日本人が真剣に考えるべき
日本の問題であり、現在米国と日本が置かれている立場を、正確
に予言しているといえます。
 ウォルター・ラッセル・ミードという、米国の政治学者がいま
す。バード大学教授で、専門はアメリカ外交政策、ハドソン研究
所の上級研究員です。ミード氏は、トランプ政権誕生以来、きわ
めてユニークなトランプ観察を行っていますが、2017年9月
5日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙に「トランプは日
本の核武装を欲しているか」というタイトルのレポートを投稿し
ています。そこには、次のように書かれています。
─────────────────────────────
 注意深い観察者は、かなり前から、北朝鮮の好戦性と核保有に
よって日本は核兵器に目を向けるようになることを知っている。
世界で日本ほど核能力を取得しやすい立場にいる国はない。決定
から核保有までの時間が数ヶ月であることは大方の専門家が知っ
ている。それに伴う混乱の中で韓国と台湾がおそらくそれになら
い、少なくとも台湾は日本からそっと援助を受けるだろう。日本
のエリートの意見は核の選択賛成論にかなり傾いている。
                 ──2017年9月5日付
          ウォール・ストリート・ジャーナル紙より
─────────────────────────────
 「日本の核武装論」──トランプ政権を支えるスタッフは、今
のところ、現状維持を望んでおり、トランプ大統領も選挙前に言
及していた日本の核武装に関する発言は、大統領になってからは
控えています。しかし、米中交渉がこじれ(必ずこじれる)、米
朝関係も進展しない場合は、トランプ大統領は再び日本に核武装
を促してくる可能性は十分あると思います。これについて、ミー
ド氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 大統領もその一人だろうが、彼らは東アジアの核武装化は米外
交の敗北ではなく、勝利と見るだろう。中国の地政学的野心は、
日本、韓国、それにおそらく、台湾の核武装化で封じ込められよ
う。ワシントンは、在韓米軍を引き揚げ、国防費を削減しつつ、
中国を抑える費用を同盟国に負担させることができる。
              ──「選択」/2019年5月号
─────────────────────────────
 地政学的にみて、日本の核武装が、いかに必要不可欠な状態に
なっても、日本の国内事情から考えても、核武装が実現するとは
思えませんが、地政学的には中国の台頭を止めるには、そういう
方法しか考えられないということであると思われます。
 かつて在日米軍は、日本を守るために駐留しているのではなく
日本に核武装化させないための「ビンの蓋」であるといわれてい
たのです。      ──[米中ロ覇権争いの行方/080]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ米国が中国に貿易戦争を仕掛けたか
  ───────────────────────────
   2018年3月に、米国の通商法301条に基づく対中制
  裁措置の発動が発表されたことをきっかけに、米中貿易摩擦
  はエスカレートし、その後に起こった双方の間の関税引き上
  げ合戦に象徴されるように、貿易戦争の域に達している。こ
  れまでの米中関係は、いろいろな問題を抱えながらも、特定
  の分野における摩擦にとどまり、今回のような貿易戦争に発
  展することがなかった。貿易戦争は、相手だけでなく、自国
  にも大きなダメージを与える。米国がなぜ大きな代償を覚悟
  しながら、貿易戦争を仕掛けたのかを巡って「中国異質論」
  を展開する米国側と、米国における「中国脅威論」を批判す
  る中国側の主張が対立しているように見えるが、どちらも一
  面で真実を捉えているように思われる。
   中国が欧米と異なる政治経済体制──いわゆる「中国モデ
  ル」を維持しながら、経済大国として台頭してきたことを背
  景に、米国は対中政策を「関与」から「抑止」に転換した。
  中国に対する自国の優位性を維持するために、中国への市場
  開放圧力を強め、中国を対象とする技術移転への制限を強化
  し、WTOをはじめとする国際貿易体制の再構築を目指して
  いる。中国では、米国が仕掛けた貿易戦争に対してどう対応
  すべきかを巡って、徹底抗戦を主張する「タカ派」と、でき
  るだけ米国の要求を受け入れ、問題の早期解決を望む「ハト
  派」の間で意見が分かれている。 https://bit.ly/2LxWqhs
  ───────────────────────────

ズビグネフ・ブレジンスキー氏.jpg
ズビグネフ・ブレジンスキー氏
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2019年05月09日

●「中国のアキレス腱/経済財政事情」(EJ第5000号)

 本日で、1998年9月15日を第1号として、営業日の毎朝
お届けしてきた日刊メールマガジン「エレクトロニック・ジャー
ナル(EJ)」は、節目となる5000回に到達しました。この
正味20年間を支えていただいた読者の皆様に心より感謝申し上
げるしだいです。ありがとうございました。
 当面、続ける意欲はまだありますので、今まで通り発行してい
きますが、今回のテーマに関しては、少し軌道修正をしたいと考
えております。今年の1月4日から執筆してきている今回のテー
マ「米中の覇権争いは今後どうなっていくか」は、同時期に開始
された米中貿易交渉の進行と合わせて書いてきましたが、ここに
きて重大局面を迎えようとしています。
 2019年5月5日、トランプ米大統領は突如、2000億ド
ル(約22兆円)分の中国製品に課す関税を10%から25%に
引き上げると宣言したのです。5日に宣言して、10日から引き
上げるというのです。その間、5日しかないのです。かなり無茶
苦茶な話であり、いかにもトランプ風です。
 このトランプ大統領の突然の関税引き上げ宣言に関し、米産業
界は猛反発しています。製造業や小売業の業界団体は、たった5
日前の通告で関税を課すことによる悪影響を訴えています。米企
業としては、米中協議の進展による関税撤廃を期待していたので
すが、真逆の結果となり、困惑しているのです。
 しかし、このトランプ大統領のツイッターでの通告に対し、共
和党ならぬ野党・民主党上院トップであるシューマー院内総務は
次のツイートを発信し、関税の引き上げに賛成しています。
─────────────────────────────
 力こそが中国に勝利する唯一の手段である。中国に屈しては
 ならない。後退してはならない。
            ──民主党上院シューマー院内総務
─────────────────────────────
 なぜ、トランプ大統領は、突如関税引き上げを、通告したので
しょうか。
 これについて、ライトハイザー代表とムニューシン財務長官は
次のようにいっています。
─────────────────────────────
 ◎ ライトハイザー代表
  ここ一週間ほどで、中国側のコミットメントに、後退がみら
 れた。米国としてはそれは受け入れられない。
 ◎ムニューシン財務長官
  これまでに交渉した、非常に明確な文言を後戻りさせようと
 していることが、週末にかけて明白になった。そうした後退に
 よって、合意が著しく変わる可能性があった。
           [北京/ワシントン/6日/ロイター]
─────────────────────────────
 このEJの原稿を書いている7日時点の情報では、中国が何を
後退させたのかは、はっきりしていません。いくつかの情報から
総合して考えると、外国企業が中国に進出したさいに、強制的技
術移転を条件とする制度を撤回させる法制化を中国側が約束した
にもかかわらず、それを後退させたのではないかといわれていま
す。もしそうであったとすれば、それは十分「ちゃぶ台返し」と
いうことになります。
 このニュースが流れたとき、ダウ平均は反落しましたが、その
後少し戻しています。それは、劉鶴副首相を含む中国の交渉団が
会談のために米国に向うことが明らかになったからです。その会
談で中国が後戻りを撤回する可能性はあります。しかし、関税引
き上げは、10日の午前0時1分と期日と時間を切っているので
関税引き上げが撤回される限界は、本日、すなわち9日中という
ことになります。したがって、決裂リスクも色濃くあるのです。
 このように、突然関税引き上げを宣言するなど、トランプ大統
領は関税をもて遊んでいると批判する向きも多いですが、日高義
樹氏は、トランプ大統領の中国に対する考え方は一貫していると
して、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国に対するトランプ大統領の基本的な考え方は、「中国は紛
れもなく共産主義国家で、このまま力を持たせておけば世界を共
産化する悪魔の国である」というものだ。トランプ大統領は20
18年初め、得意のツイッターでこう述べている。
 「中国が不法な貿易や先端技術の盗用を続けて強力な国家にな
れば、世界はどうなるか、どれほどひどいことになるか計り知れ
ない」
 このトランプ大統領の考え方は、冷戦時代に「共産主義者は滅
ぼす以外にない」と唱えたハーバード大学のリチャード・パイプ
ス博士やハリー・ロジック博士、さらにはトランプ政権の国家安
全保障担当補佐官ジョン・ボルトン博士ら、アメリカの超保守勢
力に繋がっている。
 トランプ大統領はこの考え方に基づいて、関税などの経済攻勢
によって中国を財政的に追い詰め、結果的に中国の政治体制であ
る共産主義体制を崩壊させようとしている。トランプ大統領はさ
らに、強力な経済力によってアメリカに次ぐ軍事力を保有してい
る中国を軍事的にも追い詰め、アメリカの軍事力を抑止力として
中国の現政権を取り潰してしまおうと考えている。
                 ──日高義樹著/悟空出版
『2020年「習近平」の終焉/アメリカは中国を本気で潰す』
─────────────────────────────
 日高義樹氏の指摘で重要なのは「関税などの経済攻勢によって
中国を財政的に追い詰める」ということです。すなわち、中国の
経済・財政事情はきわめて深刻であり、ここを衝くことが中国の
勢いを封ずることになるという考え方です。経済・財政事情こそ
中国のアキレス腱です。現在トランプ政権は、関税を使い、的を
絞って、この一点を攻撃しているのです。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/081]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国、約束破った」報告受けトランプ氏激怒
  ───────────────────────────
   【ワシントン=塩原永久】トランプ米大統領は5日、中国
  からの輸入品2千億ドル(約22兆円)分に上乗せした10
  %の関税を、10日から25%に引き上げるとツイッターで
  表明した。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表
  は、6日、貿易協議で中国が構造改革の約束を「撤回した」
  と非難し、関税引き上げを8日にも正式発表すると明らかに
  した。貿易摩擦の解消を目指した米中の交渉は、瓦(が)解
  (かい)するか、土壇場で妥結するかの重大局面を迎えた。
   交渉責任者のライトハイザー氏は「協議は続ける」と述べ
  9、10両日に中国の劉鶴副首相が率いる交渉団が訪米する
  との見通しを記者団に語った。一方、中国が先週の閣僚協議
  で、約束していた改革の取り組みを後退させ、報告を受けた
  トランプ氏が、関税強化を決断したとの見方を示した。ロイ
  ター通信が報じた。米ブルームバーグ通信によると、ライト
  ハイザー氏が先週北京で協議した際、中国側が外国企業への
  技術移転強要を是正する法整備の約束を撤回。報告を受けた
  トランプ氏は激怒した。ライトハイザー氏によると、10日
  の午前零時過ぎに、2千億ドル分への関税率を25%に上げ
  る。トランプ氏は6日にも、巨額の対中貿易赤字は「これ以
  上、認められない」とツイッターに投稿した。同氏は5日の
  投稿で「中国との協議は続いているが(進展が)遅すぎる」
  と述べ、不満を表明した。    https://bit.ly/2WzQWEk
  ───────────────────────────

「関税引き上げる」と宣言するトランプ大統領.jpg
「関税引き上げる」と宣言するトランプ大統領


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2019年05月10日

●「中国はミンスキーモーメント状態」(EJ第5001号)

 遠藤誉氏の本を読むと、中国の宇宙技術は既に米国を超えてお
り、このまま推移すると、「中国製造2025」は目標通り実現
し、今後中国は、これまで絶対磐石ともいえる存在の米国の安全
保障上の地位を脅かす存在になることがよくわかります。これは
西側自由諸国にとって脅威であり、とくに東アジアに位置する日
本にとって中国は、最大の脅威になります。
 どうして中国の技術力は向上したのでしょうか。
 千人計画、万人計画などによるに優れた人材の結集、必要な機
材の購入、豊富な研究開発費の投入、ネットを通じての機密情報
の窃取など──いずれも膨大なカネがかかる。しかし、中国は世
界第2位の経済大国であり、しかも社会主義国、トップの判断で
カネはいくらでも投入できるのです。これらを総合すれば、技術
力は向上できて当然といえます。
 しかし、その肝心な経済・財政の事情は、本当のところどうな
のでしょうか。
 これまで、中国を論ずる多くの書籍では、「中国経済は近い将
来破綻する」というトーンのものが多いのですが、当の中国は、
一向に破綻しないでいます。どうなっているのでしょうか。
 2018年の中国の経済事情について、中国事情に詳しい福島
香織氏は、中国国民が切実に感ずるレベルの厳しさであると指摘
して、次のように述べています。
─────────────────────────────
 2018年の中国経済を概観すると、経済鈍化は庶民が肌身で
切実に感じるレベルである。党大会後から始まった債務圧縮政策
は中国の雇用を支えてきた民営中小零細企業を直撃、報道ベース
でざっくり500万件が倒産し200万人が路頭に迷い、740
万人の出稼ぎ者が都市部から農村に戻った。その原因を習近平路
線にあるとする声は党内でも大きい。習近平の政策の一番強烈な
ところは「習近平を核心とする党中央」が一切を指導する独裁路
線であり、株式市場も為替市場も民営企業も債務も、党(習近平
の意向)が完璧にコントロールしてやろう、という点だ。そんな
ものを完璧にコントロールできる天才的指導者などいるか、とい
う話だ。これはケ小平の改革開放路線(資本主義を経済の手段と
して容認し、経済活動については政治的制約を極限まで減らし、
結果的に豊かになった企業家および中間層を党に取り込むことで
共産党の権力を強くする)とは真逆。だから、習近平路線の呼び
名は「逆走路線」あるいは「改毛超ケ」(毛沢東のやり方を改良
してケ小平を超越する)と表現される。    ──福島香織氏
                  https://bit.ly/2H3P4gf
─────────────────────────────
 この福島氏の記述によると、昨今の中国の経済事情は相当深刻
の度を増しています。それに加えて、製造業の高度化を推進する
「中国製造2025」や、国内余剰生産などの矛盾を国外に移転
し、解決しようとする「一帯一路」という戦略が覇権台頭主義と
して警戒され、米国から貿易戦争を仕掛けられます。それによっ
て、外資引き上げが加速し、経済は急減速しています。人民元は
急落し、不動産バブル、地方債務は、まさにはじける寸前の状態
になっています。
 2017年の暮れ頃から、中国の金融官僚たちは「ミンスキー
・モーメント」という言葉を口にするようになったのです。これ
は、何を意味する言葉でしょうか。
 バブル──バブル的な信用(債務)に支えられている経済にお
いて、長く隠れていたリスクが突然顕在化し、これに慌てふため
いた投資家たちによる資産の投げ売りが起きる──まさにその瞬
間のことを「ミンスキー・モーメント(ミンスキーの瞬間)」と
いいます。バブルがはじけるときの瞬間のことです。サブプライ
ムショックでは、これが起きたのです。
 ちなみに、ミンスキーというのは、米国の経済学者ハイマン・
ミンスキーの名前にちなんだもので、サブプライム・ショックは
「ミンスキー・クライシス」と呼ばれることもあります。
 バブルというものは、必ずはじけるものなのです。それが経済
の原則です。2015年7月に中国の株式バブルが崩壊したので
すが、中国政府は「サーキットブレーカー制度」を発動させるな
どして、株式市場をクローズし、はじけるのを抑えたのです。こ
れがよくないのです。
 もし、流れに任せてバブルをはじけさせ、リセッション(景気
後退)に突入すればよかったのですが、人為的にコントロールし
て抑えてしまったのです。しかし、何度もはじけようとするので
中国当局は、そのつど株価維持政策を行ったり、為替介入をした
りして凌いできていますが、そろそろ限界に達するはずです。
 先日、ジュンク堂書店に行ったとき、中国の経済の現況を探る
本が複数出版されており、購入して読んでみると、いずれもリア
リティーがあります。中国が今後どうなっていくのかを探るのに
役に立ちそうです。そこで、このテーマは今回をもって終了し、
来週の13日から、中国の経済の状況を追跡する新しいテーマに
挑戦することにします。
 既に何度も書いているように、中国──中華人民共和国はきわ
めて異常な国家です。建国は1949年ですが、中国人民の国家
ではなく、中国共産党の国家です。トップの習近平は、中華人民
共和国の国家主席ですが、同時に中国共産党の総書記も務めてい
ます。この中国共産党総書記は、中国国家主席の上に立つ存在な
のです。すべてに国家よりも中国共産党が優先するのです。
 中国の軍隊は「中国人民解放軍」といいますが、これは中国と
いう国の軍隊、すなわち国軍ではなく、中国共産党を守る軍隊な
のです。あの天安門事件のとき、中国人民解放軍は、中国人民に
発砲しましたが、これは中国共産党が危なくなったので、それを
守るために共産党の軍隊が発砲したのです。
 このように中国は非常に異常な国であるといえます。いま、こ
の国の経済は大きな危機に瀕しています。
       ──[米中ロ覇権争いの行方/082/最終回]

≪画像および関連情報≫
 ●成長率が鈍化した中国経済、実は「40年前の日本」と同じ
  ───────────────────────────
   中国国家統計局は2019年1月21日、2018年の国
  内総生産(GDP)を発表した。物価の変動を除いた実質成
  長率はプラス6・6%となり、2017年の成長率(6・8
  %)を0・2ポイント下回った。中国の成長率は2000年
  以降、8%を超える成長が続き、一時は10%を突破してい
  たが、このところ成長鈍化が鮮明になっている。
   2018年については、米国と貿易戦争が勃発したことで
  輸出が低迷したほか、政府が進める債務削減策によって公共
  事業が大幅に縮小し、これにともなって全体の成長率も低下
  した。中国のGDP統計は、日本や米国と異なり、生産面か
  らの推計が中心となっている。支出面からの比較が難しく、
  業界ごとの成長率で間接的に状況を把握するしかない。
   製造業による生産は、プラス6・2%となっており、20
  17年を下回った。建設は以前から4%台の成長にとどまっ
  ており、全体より低く推移している。製造業の多くは輸出に
  依存している可能性が高いので、成長減速の主な原因は米中
  貿易戦争である可能性が高い。
   貿易統計もそれを裏付けている。中国の2018年12月
  におけるドルベースの輸出額(ドルベース)は2213億ド
  ル(24兆1200億円)と前年同月比で4・4%のマイナ
  スとなった。米国向け輸出が大きく減ったことで輸出全体が
  低迷した。           https://bit.ly/2V8C8uP
  ───────────────────────────

ハイマン・ミンスキー氏.jpg
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2019年05月13日

●「中国国有企業の負債は108兆元」(EJ第5002号)

 2019年5月10日(日本時間11日午後1時1分)、米ト
ランプ政権は、予告通り対中関税を10%から25%に引き上げ
たのです。5月9日、閣僚級会談に現れた中国の劉鶴副首相は、
穏やかな表情に笑顔を浮かべて、ライトハイザー米通商代表と握
手していました。会議の冒頭、劉鶴副首相は、次のように発言し
たそうです。
─────────────────────────────
 本日、私は習近平国家主席の特使の立場ではなく、本会議に出
席しています。もう私にできることは、何もありません。解決で
きるのは、習主席とトランプ大統領だけです。
                    ──劉鶴中国副首相
─────────────────────────────
 しかし、会談終了後、劉鶴副首相はメディアを集め、厳しい表
情で、次のことを強く訴えています。通商代表がメディアに発言
することは、とても珍しいことです。
─────────────────────────────
 中国は、重大な原則問題では絶対に譲歩できない。とくに米国
が法改正まで求めていることには、いかなる国家にも尊厳という
ものがある。                ──劉鶴副首相
           ──2019年5月12日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 これは明らかに「米国の要求は主権侵害である」ことを批判し
ているのです。その一方において劉鶴副首相は経済について「中
国経済は安定しており、問題ない」と強調していますが、これは
国内向けの発言と思われます。
 しかし、問題ないどころか、中国にとっては大問題です。この
米中貿易戦争の激化で、世界の株式市場は、先週、約2700億
ドル(約250兆円)の時価総額が失われているのです。このダ
メージは米中ともに受けていますが、中国のダメージの方が圧倒
的に大きいのです。
─────────────────────────────
    アメリカ ・・ 2・1%(6800億ドル)
    中  国 ・・ 5・2%(3300億ドル)
         ──2019年5月12日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 トランプ氏はさらに次なる関税を予告しています。これを懸念
して、中国のテクノロジー株が10%以上下げています。
─────────────────────────────
 歌爾声学(ゴーテック)        ・・ 15・3%
 浙江大華技術(ダーフ・テクノロジー) ・・ 11・4%
 広東温氏食品             ・・ 10・5%
 中国国際航空             ・・ 10・1%
 雲南白薬               ・・  9・6%
         ──2019年5月12日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 歌爾声学(ゴーテック)という企業は、アップルのワイヤレス
イヤホン「エアーポッズ」、「耳からうどん」が垂れるように見
えるあのイヤホンのメーカーです。浙江大華技術(ダーフ・テク
ノロジー)は、監視カメラで世界2位の企業です。もちろん、世
界1位の海康威視(ハイクビジョン)も9%程度のダウン、軍や
警察に無線機器を納入している海能達通信(ハイテラ)も9%程
度下げています。
 これらの企業は、「2019年度米国防権限法」で、米政府と
の取引が禁止されています。もちろん米国のインテルも1O・7
%のダウン、半導体のエヌビディア、アップル、ネットフリック
スも7・8%〜6・2%のダウンです。トランプ米大統領が仕掛
ける米中貿易戦争は、米中双方にダメージがあるだけでなく、ア
ジアに拡がるサプライチェーンの混乱を招くことは必至です。そ
れは、世界経済に波及されることになります。
 中国という国は、「経済というものはコントロールできる」と
考えています。確かに「中国は間もなく破綻する」とずい分前か
らいわれていたのに、ちゃんと持ちこたえてきています。しかし
これは本当でしょうか。中国の現況をていねいに観察すると、深
刻な状況が見えてきているのです。
 そこで、本日からのEJのテーマを次のように設定し、事実上
前回テーマの続編としたいと考えています。
─────────────────────────────
    中国経済は持続可能か。本当のところどうなのか
    ─ 多くの情報から、中国経済の真実を探る ─
─────────────────────────────
 中国国内の消費が落ち込んでいます。中国というと日本人には
「爆買い」のイメージがあるだけに信じられない思いですが、事
実です。2018年のスマホの出荷台数は、前年比で10%ダウ
ンしています。車の販売台数は、2018年は前年比でマイナス
2・8%の減少、19年に入ると、1月は前年同月比で15・7
%の減少、2月は13・8%減少です。これは驚きの減少幅であ
り、リーマンショックのとき以上の落ち込みなのです。
 さらにひどいのは配分の問題。アリババなどに代表される民間
企業が中国の成長の6割を支えているのに、銀行融資の8割は国
有企業に向けられています。最も効率の悪い、生産性の低い国有
企業に融資のほとんどが注ぎ込まれている。これでは、民間企業
は切り捨てられる運命にあります。これについては、前回のテー
マで既に指摘しています。
 2018年6月のことです。中国の国有企業の負債は「108
兆元」にのぼると、中央政府が公表しています。108兆元とい
われてもピンときませんが、日本円にすると、約1800兆円。
日本のGDPの3年分以上に相当する借金です。これを中国はど
のように処理しようとしているのでしょうか。しかも、頼みの米
国とは貿易戦争に突入しているのです。
              ──[中国経済の真実/001]

≪画像および関連情報≫
 ●【瀕死の習中国】中国国有企業の「負債はケタ違い」
  ───────────────────────────
   香港を拠点にするアジアタイムズによると、国有企業の負
  債総額は、GDP(国内総生産)の159%に達した(20
  17年末速報)。すでに約2100社の倒産が伝えられた。
   ゾンビ企業の名前の通り、生き残りは難しいが死んでもお
  化けとなる。OECD(経済協力開発機構)報告に従うと、
  中国における国有企業は約5万1000社、29兆2000
  億ドル(約3263兆1000億円)の売り上げを誇り、従
  業員は2000万人以上と見積もられている。
   マッキンゼー報告はもっと衝撃的だった。2007年から
  14年までの間に、中国の国有企業の負債は、3・4兆ドル
  (約379兆9500億円)から12兆5000億ドル(約
  1396兆8750億円)に急膨張していた。
   「中国の負債総額のうちの60%が、国有企業のものであ
  る」(ディニー・マクマホン著『中国負債の万里の長城』/
  本邦未訳、ヒュートン・ミフィリン社、ロンドン)。中国当
  局がいま打ち出している対策と手口は債務を株式化し、貸借
  対照表の帳面上を粉飾することだ。負債を資産に移し替える
  と帳面上、負債が資産になるという手品の一種だ。ただし、
  中央銀行は「この手口をゾンビ企業には適用しない」として
  いる。             https://bit.ly/2VZghKC
  ───────────────────────────

劉鶴中国副首相.jpg
劉鶴中国副首相
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2019年05月14日

●「中国18年度成長率は1・67%」(EJ第5003号)

 2018年12月16日のことです。中国に向松祚(コウ・シ
ョウソ)というマクロ経済学者がいます。人民大学国際通貨研究
所理事兼副所長です。この日、向副所長は、人民大学で行われた
「改革開放40周年経済フォーラム」で演説し、次の衝撃的な発
言を行ったのです。米国の華僑によって設立されたメディアであ
る「大紀元」は、これについて次のように伝えています。「大紀
元」は、中国共産党とは対立するメディアです。
─────────────────────────────
 向氏は、国内総生産(GDP)の成長率6・5%という政府発
表のデータに異議を唱えた。同氏が入手した重要研究機関の内部
研究調査では、「今年の中国GDP成長率はわずか1・67%と
示された。また、別の試算方法では、今年のGDPがマイナス成
長である」ことが分かった。
 向氏は「中国経済は明らかに下振れリスクに見舞われている」
と指摘した。景気の鈍化を招いた最大の要因は「米中通商摩擦」
「中国民営企業の大幅な投資減少」と「民営企業家の悲観的心理
拡大」にあると分析した。      https://bit.ly/2WEjBYy
─────────────────────────────
 中国人評論家の石平氏によると、向松祚氏は、かつては国有銀
行である中国農業銀行の首席経済学者であったので、彼の立場は
中国でいえば、「体制内知識人」であり、政府に近い経済学者で
あるといえます。
 向松祚氏は、中国対内、対外の課題について、体内6つ、対外
3つの課題を指摘しています。
─────────────────────────────
 ◎対内の6つの課題
     1.       経済成長の急激な減速
     2.       システミック金融危機
     3.         貧富の格差の拡大
     4.          政府の債務危機
     5.     企業家や投資家の心理改善
     6.主要ハイテク技術の研究開発での突破
 ◎対外の3つの課題
     1.        米中通商摩擦の解決
     2.             市場開放
     3.国際収支改善・人民元為替相場安定化
                  https://bit.ly/2WEjBYy ─────────────────────────────
 まさに内憂外患そのもの、現在中国は深刻な課題を内外に抱え
込んでいます。中国の不動産に目を向けてみると、地域差はあり
ますが、住宅価格が凄いことになっています。深せんでは年収の
28倍、上海・北京では24〜25倍までバブルが膨れ上がって
います。1980年後半の日本のバブル全盛期の東京が18倍程
度といわれているので、日本の1・5倍から、2倍近くの価格に
なっているのです。
 この状態でバブルが弾けるとどうなるでしょうか。中国に詳し
い作家の渡邊哲也氏によると、「半値八掛二割引」になり、約4
分の1、そこからさらに2割程度は落ち込むので、おそらく買い
値の5分の1ぐらいまでクラッシュしてしまう可能性があるので
す。そうなると、大量の信用不良者が顕在化し、銀行がおかしく
なり、貸し渋り、貸し剥がしが常態化し、実態経済にお金が回ら
なくなります。そうすると、企業倒産が連鎖して起きる。そんな
ことになったら大変だとばかり、中国政府はバブルを崩壊させな
いよう、必死で支えており、、何事もなかったように誤魔化して
体制は継続されているのです。
 現在の中国共産党政権は、つねにこの体制が一番よいのである
ということを国民に示す必要があります。そのキーとなるのが、
経済成長なのです。もし、経済成長が止まると、国内の失業は増
大し、社会不安が高まり、暴動が多発する──中国共産党は常に
これに怯えているのです。
 それではどうするか、これについて評論家の石平氏は、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 それでは常に高い成長率を維持するにはどうすればいいのか。
知ってのとおり、中国経済の決定的な弱点は消費が決定的に不足
していることです。国内消費が冴えないなかで経済を成長させる
ためには、輸出の拡大が必要です。しかし、これまでの輸出拡大
政策が現在の米中貿易戦争を引き起こしてしまった。
 輸出拡大が望めないとなると、今度は投資の拡大で何とか経済
成長を支えるしかありません。投資の柱となるのは公共事業と不
動産です。実はこの四半世紀にわたり中国経済を支えてきたのは
不動産業でした。    ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
─────────────────────────────
 すべての原因は、2008年のリーマンショックのさい、中国
は、約60兆円もの公共投資を行っています。その60%〜70
%が不動産投資に向っています。その不動産が値上がりして、中
国経済が拡大します。それが中国の世界的な権限の拡大に、つな
がっていったのです。世界が中国に注目しはじめたのは、このと
きからです。
 しかし、しだいに経済成長していくなか、不動産価格の伸びと
国内経済の伸びが一致しなくなっていきます。不動産価格だけが
突出して、内需を呼び込むというひずみが生じ、巨大なバブルを
つくり上げてしまったのです。
 その結果、国内の不動産利回りが、借入金利よりも低くなって
しまったのです。例えば、金利7%で融資を受けて不動産投資を
しても、購入した物件の家賃の利回りが5%しかないという現象
つまり、逆ザヤになってしまったのです。
              ──[中国経済の真実/002]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の企業債務と株式市場/向松祚氏講演
  ───────────────────────────
   向松祚氏によると、今年1〜9月までで企業の債務不履行
  (デフォルト)規模は1000億元(約1兆6000億円)
  を超えた。中国当局の試算では、今年1年間の企業のデフォ
  ルトは1200億元(約1兆9200億円)以上になる。
   現在、国有企業や民間企業が相次いで倒産している。米フ
  ォーチュン誌に世界500強企業の1つと評価された中国国
  有天津渤海鋼鉄集団は、すでに経営破綻した。向氏は、同社
  の実際の負債規模は、1920億元(約3兆720億円)で
  はなく、2800億元(4兆4800億円)だと主張した。
   いっぽう、2018年の中国株式市場について、向氏は、
  株価の下落によって株式市場の時価総額、7兆元を失ったと
  発言。「各銘柄を見ると、これまでの最高値と比べて、83
  の銘柄が9割も暴落した。1018の銘柄が8割、2125
  の銘柄が7割、3150銘柄が5割とそれぞれ急落した」、
  「この急落ぶりは1929年のウォール街の大暴落に匹敵す
  る」株式市場の低迷の主因は、中国上場企業の収益の悪さに
  あるという。向松祚氏は、中国の経済減速の根本原因は、以
  前から続いた拡張的経済成長モデルによる「脱実向虚(実体
  経済から脱し、非実体経済に多くの資金が流れ込む)」にあ
  るとの見方を示した。「上場企業の経営者らは本業ではなく
  不動産、金融商品の投資に熱心だった」
                  https://bit.ly/2WEjBYy
  ───────────────────────────

向松祚氏.jpg
向松祚氏
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2019年05月15日

●「中国のGDP数字の明らかなウソ」(EJ第5004号)

 向松祚氏は、2019年1月20日に上海で行われたある経済
フォーラムで演説を行い、次の発言をしています。
─────────────────────────────
  2019年はミンスキー・モーメントの到来に警戒せよ
                     ──向松祚氏
─────────────────────────────
 ミンスキー・モーメント──既に述べているように、中国の金
融官僚はよくこの言葉を使うそうです。ミンスキーモーメントと
は、すべての資産価値が急落する時を意味します。つまり、いつ
バブルが弾けてもおかしくないということでしょうか。
 このときの向松祚氏の講演について、石平氏は、渡邊哲也氏と
の共著で、次のように述べています。
─────────────────────────────
 講演のなかで彼はまず、2018年における中国経済減速の原
因について論じ、3つの国内要因と1つの国外要因を取り上げて
います。3つの国内要因とは、@政府の金融引き締め策による企
業の資金難。A企業負債の膨張。B「私有制消滅」などの国内の
「雑音」である。そして国外の要因はやはり米中貿易戦争である
と示しました。
 向氏はA「企業負債の膨張」について単刀直入に語りました。
これまでの経済成長の過程で、中国国内企業が主に行ってきたの
は、生産性を高めることで利益の増大を図るといった正当な経営
手法ではなかった。もっぱら銀行から借金、あるいは債券を発行
してむやみに規模拡大を図る経営を続けてきた結果、「債務の膨
張」を招いてしまったのだと。
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
─────────────────────────────
 向松祚氏の演説の内容はそれは恐ろしいことを述べています。
ここでは企業の債務の拡張について述べていますが、中国では、
企業だけでなく、政府も個人も膨大な負債を抱えており、中国全
体の負債の総額は、実に「600兆元」に達しているといわれて
います。600兆元は、日本円に直すと、約9900兆円という
膨大な数字になるのです。
 ちなみに2018年度の中国のGDPは90兆元(約1485
兆円)であるので、600兆元はGDPの6倍以上ということに
なります。本当であるとしたら、これは世界経済史上、まさに前
代未聞のことです。日本はその債務総額がGDPの2倍以上であ
ることで「借金大国である」といわれますが、中国のそれは、日
本などまるで比較にはならないほど巨額な債務です。これを渡邊
哲也氏は次の言葉で表現しています。
─────────────────────────────
 中国の経済成長は、「債務膨張」という砂上に立つ楼閣その
 ものである。              ──渡邊哲也氏
            ──石平×渡邊哲也著の前掲書より
─────────────────────────────
 向松祚氏は、この講演で、中国経済の今後の見通しについて、
次の2つの点から、かなり悲観的な見方をしています。
─────────────────────────────
  1.中国の上場企業の大半が多くの利益を上げていない
  2.中国国内の不動産バブルが極まっている状態である
─────────────────────────────
 「1」について・・・
 2019年の株価について、対米貿易戦争の拡大によって、中
国経済全体が低迷し、株価は落ちることはあっても上昇に転ずる
可能性は薄いとしています。上海総合指数が2000ポイントを
切る可能性もあります。この指数は、株価の上昇時には5000
ポイントを超えていたのです。
 「2」について・・・
 不動産バブルが凄いことになっています。中国国内の不動産時
価総額は、既に65兆ドルに達しています。日本円で示すと、約
7310兆円──それは、米国、日本、EUを合わせた不動産時
価総額60兆ドル(約6750兆円)を超えており、まさにバブ
ルは極まっていて、これが弾けると大変なことになると、向松祚
氏は、警告を発しているのです。
 中国のGDPの公表数字が大きく偽装されていることは世界中
が知っている事実ですが、これらの公表数字は国による自発的な
公表である以上、他国がその真偽をうんぬんできないのです。そ
れを向松祚氏はスッパ抜いたのです。なぜ、そんなことができた
のかについては明日のEJで取り上げます。
 中国のGDPデータの誤魔化しについては、中国に詳しい評論
家の宮崎正弘氏も近著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 地方政府のGDP報告は、平均で、30%水増しされていた。
「日本の3倍」と豪語している中国の実態は、GDPはせいぜい
1000兆円程度、日本のGDPの1・8倍前後だろう。「息切
れ」はとうに確認されており、過去数年は数字を大胆に誤魔化し
国有企業の救援策を優先し、税法上の挺子入れをなし、在庫と失
業処理のため「一帯一路」で海外にゴミを輸出してきた。その数
字、データの誤魔化しも限界に達し、実態が透けて見えるように
なった。国有企業の資金繰りができなくなり、大量の失業者が街
に溢れ、物価は上昇し、政府への不満は高まる。そのうえ不動産
が暴落気配、株暴落、人民元安が追い打ちをかける。上海に住む
日本人の情報ではとうとう上海の高級住宅地のマンションが値崩
れを起こし、30%引きでも買い手がない状態だという。
                 宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機が始まる』
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/003]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、成長率を年平均1.7ポイント水増しか
  ───────────────────────────
   香港中文大学と米シカゴ大学の研究者は、中国が2008
  年から16年まで9年間の経済成長率を平均で年1・7ポイ
  ント過大に発表していたとの研究報告をまとめた。
   米ブルッキングス研究所が公表した論文草稿で執筆者らは
  成長と投資の目標を達成すれば高い評価を得られる地方政府
  による報告が成長率の水増しにつながったと分析。中国国家
  統計局はそうした統計操作を認識し、地方からの数値を調整
  しているが、2008年以降はそれほど十分に調整していな
  かったとしている。
   論文は「08年の後、地方の統計は数値をますます不正確
  に伝えるようになったが、国家統計局の調整ではこれに応じ
  た変更がなかった」と説明。その代わりに税収や電力消費、
  鉄道貨物動向、輸出入などごまかしにくい数字を基に中国全
  体の年間国内総生産(GDP)を予測するようになったとい
  う。研究者らは、見直した後の数値は「08年以降の中国成
  長鈍化が公式統計が示唆するよりも深刻だったことを示して
  いる」と指摘している。国家統計局にコメントを求めたが、
  今のところ返答はない。ブルームバーグ・エコノミクスのチ
  ーフエコノミストで中国経済指標に関する著書もあるトム・
  オーリック氏は、この論文の結論について「慎重」な見方を
  している。           https://bit.ly/2Hh96p4
  ───────────────────────────

向松祚氏/2019年1月20日の講演.jpg
向松祚氏/2019年1月20日の講演
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2019年05月16日

●「『私有制廃止』を目指す動きあり」(EJ第5005号)

 向松祚氏は、今年の1月20日の講演において、2018年の
中国経済減速の原因を指摘しています。これについては、昨日の
EJでご紹介していますが、再現します。
─────────────────────────────
  ≪1018年中国経済減速の原因≫
   ◎3つの国内要因
    @政府の金融引き締め策による企業の資金難
    A企業負債の膨張
  ⇒ B「私有制消滅」などの国内の「雑音」
   ◎1つの国外要因
    @米中貿易戦争
─────────────────────────────
 このなかで、注目すべきは、3つの国内要因のB、「私有制消
滅」などの国内の「雑音」です。これは、2019年1月16日
に中国共産党理論誌『求是』が掲載した周新城なる人物による次
のタイトルの論文です。向松祚氏はこの論文を「雑音」といって
いるのです。
─────────────────────────────
 共産党人は自分の理論を一言で概括できる:私有制度を消滅
 せよ        ──周新城人民大学マルクス学院教授
─────────────────────────────
 『求是』という雑誌は、普通の雑誌ではなく、中国共産党の機
関誌であり、そこに掲載される論文は、党中央の考え方を代弁し
ています。そういう機関誌に「私有制度消滅」論が掲載されたの
は驚きです。こういう論文を書く周新城とは何者でしょうか。
 周新城氏は、1932年生まれで、旧ソ連東欧問題の権威であ
り、かつては、人民大学研究生院院長、ソ連東欧研究所長、マル
クス主義学院教授を務めたコテコテのマルキストです。
 そういう人物が、今年に入ってすぐ「私有制度消滅」論を『求
是』に掲載したのですから、中国国内では、ちょっとした騒ぎに
なっています。この論文に関して、中国に詳しいジャーナリスト
の福島香織氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 周新城は、中国はただちに私有制度を消滅させよ、それは社会
発展の客観的な必然の趨勢である、と指摘。“私有経済礼賛の新
自由主義”主張を行う経済学者、張五常や呉敬lを「赤裸々に反
党反社会主義を唱える」、「人格卑劣で極めて悪辣」とこきおろ
した。さらに「私有制度を消滅させ公有制を確立させることこそ
共産党人が忘れてはならない初心であり使命である」「私有・公
有がともに発展するのは社会主義初級段階の特殊現象であり、固
定された永遠のものではない」と主張した。
 さすがに、この主張は、世界第2位のGDPを誇る中国国内で
も騒然とした。過去の遺物のような老教授のたわごとと、皆が無
視できなかったのは、習近平政権2期目が明らかに、周新城の主
張する方向に動いているような気がしたからだ。
          ──福島香織氏 https://bit.ly/2Q5X1Wl ─────────────────────────────
 福島香織氏によると、この周新城氏の論文は、習近平政権の意
思を示しており、「いずれ私有制度を消滅させる」というサイン
であり、そのための一種の観測気球──このメッセージに人民が
どういう反応示すかを観察したかったのだと思うのです。そして
こういうメッセージに対して、必ず反論してくるであろう2人の
経済学者、張五常や呉敬l両氏を名指しで批判させたのではない
かと思います。
 福島香織のレポートでは、周新城氏に名指しで批判された張五
常氏の反論の一部が掲載されています。
─────────────────────────────
 周教授の私に関する批判には少なからぬ疑問符がつく。そもそ
も、彼は私の論文を読んだことがあるのか?聞きかじったことを
もとに、暴言を吐かないでほしい。(中略)
 経済学とは経済における定理を求める学問である。・・・その
定理の一つは、物価が下降すれば需要が増える。この場合、限定
条件は価格である。その変化が需要を決め、結果として個人の最
大利益が決まる。私はこれを“利己定理”と呼びたい。この定理
は“利己”という言葉を使わずに需要供給の定理ということもで
きる。だが、限定的条件下で利益の最大化を追求すること自体が
“利己”であるとすれば、これを利己定理と言える。需給定理を
経済学を学んだことのない人に説明するなら、利己定理というの
がわかりやすい。
 少ない資源の下、大勢の人間が存在すれば必ず競争が生まれ、
勝者と敗者が生まれる。その競争のルールを決めるものは市場価
格である。しかし、所有権の定義がなければ市場価格は生まれな
い。市場価格が競争のルールとして勝敗を決定しないのであれば
その他のルール、例えば人間関係や年功序列や武力などがルール
となれば、ある程度の賃貸消失を引き起こさざるをえない。不幸
なことは、この所有権の定義こそ、周教授の反対する私有財産な
のである。     ──福島香織氏 https://bit.ly/2Q5X1Wl
─────────────────────────────
 何のことはない。張五常氏は、周新城氏に対し、まるで中学生
に経済の基礎を説明するように、市場経済と財産所有権がフェア
な経済競争のルールの前提であり、それは共産党体制と両立でき
ると説いているのです。ちなみに、「私有財産権の不可侵」は、
2004年から中国の憲法に明記されています。
 これでわかることは、習近平主席が、私有財産権の不可侵に何
らかの疑問を抱いていることは確かであり、これを撤廃させるこ
とも視野に入れているのではないかと思われます。
 確かに私有財産権の不可侵を突き詰めて行くと、中国共産党体
制は変質せざるを得なくなるのです。ちょうど米中貿易戦争が一
時的休戦になった2019年1月に中国ではこのような理論闘争
が行われているのです。   ──[中国経済の真実/004]

≪画像および関連情報≫
 ●ルソーが提起した私有財産制の大問題/坂本達哉氏
  ───────────────────────────
   今日は「民主主義か資本主義か」という、やや大げさなタ
  イトルですが、私が最も言いたいことは、この問題はすでに
  少なくとも200年以上前から、ヨーロッパにおいてはもう
  散々論じられてきた問題なのだということです。つまり、ス
  ミス、ルソーから、最近、『21世紀の資本』で話題を集め
  たピケティまで、実は繰り返し論じられてきているのです。
   この本に書かれていることというのは、私の見るところ、
  実は、もうスミスやルソーの時代から散々論じられてきてい
  ることだというようにしか、私には読めません。彼はもとも
  と数理経済学者で、数学が天才的にできる人だそうです。こ
  の格差問題や民主主義と資本主義などというテーマが、数理
  経済学の分野では比較的珍しいというか、新しいというよう
  な側面があるようです。私は数理経済学は素人ですが、社会
  思想の歴史をやっている立場からすると、「ピケティさん、
  あなたのやっていることはもう200年前からみんなが論じ
  ていることなんですよ」と言いたいわけです。
   ピケティという人は、例えばマルクスの『資本論』という
  のをほとんどまったく読んだことがないとインタビューに答
  えています。だから私はそれは逆に信頼できると思っている
  んですね。つまりマルクスとは関係ないところで、こういう
  問題を独自に展開しているということですね。しかし、やっ
  ぱり私から見れば、マルクスも含めて、さらにさかのぼって
  250年前、300年前の思想家の知恵を借りない手はない
  だろうと、こういう問題を考えていくときに思っているんで
  す。              https://bit.ly/2EbDG1c
  ───────────────────────────

中国に詳しいジャーナリスト/福島香織氏.jpg
中国に詳しいジャーナリスト/福島香織氏
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2019年05月17日

●「習近平批判が中国国内で拡大傾向」(EJ第5006号)

 「私有制を廃止する」──この議論が2019年1月から起き
ています。これは、習近平主席の意思なのでしょうか。これにつ
いて、石平氏は、習主席は明言こそ避けているものの、自らの意
思である可能性は高いとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 習近平自身も、2018年5月、人民大会堂にて「マルクス生
誕200年記念大会」を盛大に開催して、自らが「重要講話」を
行っています。講和のなかで彼は、中国共産党はマルクス主義で
理論武装した政党であること、マルクス思想の一般原理は、現在
も完全に正しいことを強調しています。この発言が、「私有制消
滅」は習近平政権の意図ではないのかとの疑念を一層深めたのは
言うまでもありません。というのは、「私有制消滅」こそがマル
クス主義の基本理念の一つであり、習近平国家主席が言うように
「マルクス思想の一般原理は現在も完全に正しい」のであれば、
「私有制消滅」も正しいことになるからです。   ──石平氏
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
─────────────────────────────
 習近平主席は、まっしぐらに毛沢東路線への回帰を進めていま
す。したがって、そこに私有制消滅論が出てきてもおかしくはな
いのです。ところが既出の向松祚氏は、これを批判しています。
したがって、これは習近平政権への政治批判になります。
 それだけではないのです。向松祚氏は、中国のGDP成長率が
政府公表の6%台ではなく、1・6%でしかないことを、多くの
人が集まるフォーラムで話しています。中国の国家統計数字が信
用できないことはよく知られてはいるものの、マクロ経済学者が
きちんと数字を示して政府発表の数字とは違うと述べているので
すから、習政権にとっては、大きなダメージになるはずです。し
たがって、明らかに習政権への批判になります。
 まして、習主席や習政権について批判的な内容を記述した書籍
を出版した書店主でさえ、拘束されてしまう国なのです。しかし
向松祚氏は、今のところ何の咎めも受けていないし、逮捕などの
政治的迫害なども受けていないのです。これはどういうことなの
でしょうか。
 これは、誰でも抱く疑問ですが、石平氏にしても渡邊哲也氏に
しても、それに対する明確な答えは持っていないようです。ただ
渡邊哲也氏は、推測であると断って次のように述べています。
─────────────────────────────
 おそらく向松祚氏は単なる一個人として上述のような批判を展
開しているわけでないと思う。彼の背後には大きな政治勢力が連
なっているはずです。この政治勢力の正体は不明とはいえ、党と
政府内、そして学界において隠然たる力を備えていることは確実
でしょう。
 もちろん、この勢力は、いまの習近平政権の政治・政策に対し
て大きな不満を持ち、批判的な態度をとっていることは明らかで
す。さらに言えば、中国としては米中貿易協議を行っている最中
に、向氏に手荒な真似はできないでしょう。人権問題で波風を立
てられないという事情がありますから。    ──渡邊哲也氏
             ──石平×渡邊哲也著の前掲書より
─────────────────────────────
 「向松祚氏のバックには大きな政治勢力が連なっている」──
渡邊哲也氏は、このように述べています。どうやら、これは事実
のようです。実は、中国国内でも、習近平批判は多く出ているの
です。とくに中国共産党大幹部の息子や秘書たちが、国内知識人
の不満を代弁しているのです。
 ネットなどの情報で明らかになっているのは、ケ小平氏の長男
のケ僕方氏(中国身障者連合会主席)は、2018年に年次大会
で演説し、「中国は身のほどを知るべきである」と、暗に習主席
を批判。2018年2月に亡くなった毛沢東の秘書の李鋭氏は、
習近平の能力を「小学校のレベルである」とストレートにこきお
ろしています。
 そして、2019年の1月中旬には、胡燿邦氏の息子の胡徳平
氏が、北京で開催された経済セミナーで次のように習近平体制に
ついて批判しています。
─────────────────────────────
 このまま政治改革を怠り、民間の経済活動の活性化を促す政策
に転じなければ、中国はいずれソ連がたどった死の道を選ぶこと
になるだろう。         ──2019年1月18日付
          「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」
               ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機 が始まる』
─────────────────────────────
 習近平体制が確立され、急速に習近平崇拝の動きが強まってい
ますが、その一方で中国内部での習近平批判も目立ってきている
のです。したがって、向松祚氏は、ある強力なバックを後ろ盾と
して、習近平政権の批判ともとれる発言をしていることは、十分
考えられることです。
 このように考えると、磐石に見える習近平体制も決して安泰で
はないことがわかります。昨日の5月15日「BSフジ/プライ
ムニュース」で、出演者の中国に詳しい津上俊哉氏(日本国際問
題研究所客員研究員)は、トランプ大統領は最大でもあと6年し
かないが、習近平主席はもっと長くやれるのではないかとの反町
MCの質問に対して、次のように答えています。
─────────────────────────────
 そんなことはない。習近平主席は永久政権どころか、案外2
 期での退陣もあり得ると考えている。習近平体制はそんなに
 盤石ではない。             ──津上俊哉氏
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/005]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の名門大学で習近平体制批判続発
  ───────────────────────────
   中国・北京の名門大学で、習近平国家主席の母校でもある
  清華大学法学部の教授が習氏を独裁体制だと批判する論文を
  発表したことで、停職処分となり、中国当局の取り調べを受
  けていることが明らかになった。
   また、清華大と並ぶ名門の北京大学の名誉教授が今年1月
  習氏に暗に即時引退を促す論文をネット上で発表した。さら
  には、北京大では昨年、習氏批判の壁新聞が公になるなど、
  中国の学術界を中心に習氏批判が後を絶たないという異常事
  態となっている。米CNNなどが報じた。
   処分を受けたのは清華大の許章潤教授で、同大学の中国共
  産党委員会がこのほど、許氏を停職処分にして、当局の捜査
  が終わるまで全ての教職や研究職から外すことを発表したと
  いう。党委員会は具体的な停職処分の内容については明らか
  にしなかったが、同大関係者は「主に、許氏が2018年7
  月に発表した論文に関係している」と述べている。
   論文は「差し迫った恐怖、目前の希望」というタイトルで
  習近平指導部が昨年3月の全国人民代表大会(全人代=国会
  に相当)で、憲法から削除した国家主席の任期を元通りにす
  るよう要求した。さらに、「突如として、どこからともなく
  制約のない権限をもつ『最高指導者』が現れた」と皮肉るな
  ど、習氏の独裁体制強化の動きに反対していた。
                  https://bit.ly/2w0IySi
  ──────────────────────────

胡徳平氏.jpg
胡徳平氏
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2019年05月20日

●「民主主義運営限度は3億人である」(EJ第5007号)

 中国の人口は、2017年現在、13億8600万人です。こ
の国がどういう国であるかについて、渡邊哲也氏がわかりやすい
説明をしています。中国の人口は次の3つの人たちによって構成
されているというのです。
─────────────────────────────
     1.  都市戸籍を持つ人 ・・ 3億人
     2.上記1の奴隷/農民工 ・・ 3億人
     3. 昔ながらの貧農の人 ・・ 7億人
─────────────────────────────
 1の3億人は、これまでの中国の経済発展の結果、日本人の生
活水準に近くなった層です。この層の人たちの一部が日本をはじ
め世界中に出掛けて行って、「爆買い」をやっていたわけです。
しかし、中国において、この比較的豊かな3億人が生まれただけ
で、資源の「爆食」が起き、世界中がおかしくなってしまったの
です。まして、残りの10億人を豊かにさせるには、絶対的に資
源が不足します。3の7億人は、毛沢東時代と同じ生活を現在も
営んでいるのです。
 人口が増えるということは、一定のレベルまでは経済にとって
よいことですが、あるレベル以上増えると、経済にとってマイナ
スになります。それを次のように呼んでいます。
─────────────────────────────
          1.人口ボーナス
          2.人口オーナス
─────────────────────────────
 1の「人口ボーナス」とは、人口構成の変化が経済にとってプ
ラスに作用する状態のことをいいます。しかし、これとは逆に人
口構成の変化がマイナスに作用する状態のことを2の「人口オー
ナス」というのです。オーナスとは英語の「onus」のことで「重
荷」とか「負担」という意味です。少子高齢化の進む日本では、
人口に占める働く人の割合が低下しており、経済政策などを考え
ていくうえで、人口オーナスが重要なキーワードになります。
 まして中国は、一人っ子政策を35年間続けてきたので、日本
の3倍の速度で、少子高齢化が進み、人口オーナスに陥っている
のです。中国には、比較的豊かな3億人以外に10億人の人口を
かかえています。もしこれらの人たちを豊かにするには、地球が
3つ必要になるといわれています。
 渡邊哲也氏は、「3億人」という数は、「民主主義の限界であ
る」として、次のように述べています。
─────────────────────────────
 国家が安定して民主主義を運営できるリミットは3億人と言わ
れで久しい。それ以上になると分裂したり、解体されていくわけ
です。EUも例外ではありません。3億人で始めたときはうまく
いったが、3億人を超えるとさまざまな意見が出てきて、どうに
もまとまらなくなってしまった。アメリカもいまリミットの人口
3億人です。だからトランプ大統領は移民を排斥しようと動いて
いるわけです。               ──渡邊哲也氏
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
─────────────────────────────
 学者たちが心配するミンスキーモーメントによる不動産のバブ
ル崩壊が起きると、現在、比較的豊かな生活をしている3億人の
3分の2の人たちは、「社会信用スコア」で低スコアしかとれな
くなり、信用不良者として地方に下放されることになります。そ
の結果、最上位の1の層で生き残れるのは、せいぜい8000万
人から1億人ぐらいになるといいます。この規模は、中国共産党
の幹部と中国共産党員が9000万人ですから、奇しくも一致す
るのです。計算してやっているとしたら、凄いことです。
 毛沢東時代と現在(2017年)の経済規模を比較すると、次
のようになります。毛沢東時代の経済規模は、現在の「250分
の1」といわれます。ちなみに、毛沢東は1976年9月9日に
亡くなっています。
─────────────────────────────
         1978年       2017年
   GDP  3700億元   82兆7000億元
    貿易  200億ドル   4兆1000億ドル
  外貨準備    2億ドル   3兆1400億ドル
  平均年収    170元     2万6000元
             ──石平×渡邊哲也著の前掲書より
─────────────────────────────
 はっきりしていることは、現在の13億人の人口を持つ中国が
このまま人口が増加し、成長発展し、やがて米国を抜き、世界一
の国家として君臨することはあり得ないということです。必ず、
どこかの時点でバブルが崩壊することは確実です。しかし、それ
でも、1億人規模の中国共産党の幹部と党員を残すことは不可能
ではないと、渡邊哲也氏はいいます。
─────────────────────────────
 まずは西側諸国との通信の遮断を完璧に行うわけです。かねて
より中国は通信工作隊を使って、中国政府の悪口を言う人間をす
べてチェックしているので、そう難しいことではない。中国全土
に2億台のAI搭載の顔認識用監視カメラが設置され、中国反政
府デモの参加者は瞬時に特定され、即摘発されるまでになっでい
ます。だから、人権活動家や民主弁護士などはまったく動きがと
れない。もちろん、中国のビッグデータはSNS上のつぶやきも
見逃しません。習主席の悪口を言った市民がたちどころに拘束さ
れたようにね。当局に拘束、逮捕されれば、即信用不良者に認定
され、携帯電話を持てなくなる。そうなれば社会から疎外されて
いく。          ──石平×渡邊哲也著の前掲書より
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/006]

≪画像および関連情報≫
 ●2億台に迫る監視カメラ−中国ハイテク監視社会
  ───────────────────────────
   中国政府の支援を得て天津市で監視カメラメーカーを築き
  上げた戴林氏はビリオネアになった。戴氏が天地偉業技術を
  始めた1994年当時、中国では屋外カメラは珍しかった。
  今は監視カメラだらけだ。人口世界一の中国がプライバシー
  や人権を巡る懸念を招くほどのハイテク監視国家になったこ
  とで戴氏のような起業家が大富豪入りしたわけだが、関連企
  業に資金を投じる世界中の投資家には難しい問題を突き付け
  ている。
   ブルームバーグ・ビリオネア指数によれば、中国政府が主
  要な顧客か投資家となっている監視関連企業で富を得た戴氏
  ら少なくとも4人の資産は総額で120億ドル(約1兆33
  00億円)を突破している。彼らの繁栄が浮き彫りにするの
  は、中国国民14億人の監視を後押しする習近平国家主席に
  よる取り組みの規模だ。IHSマークイットによれば、中国
  では2016年時点で街角や建造物、公共スペースに約1億
  7600万台のビデオ監視カメラが設置されている。米国は
  5000万台と比較にならない。習政権は17年、国内の治
  安関連に推計1840億ドルを投じた。20年までに中国全
  土を網羅するカメラネットワークを導入し、交通違反からビ
  デオゲームの好みに至るあらゆる個人情報を追跡する「社会
  信用システム」も整備する。つまり天津であれ別の都市であ
  れ、中国本土内で監視されずに移動することは難しくなる状
  況が迫っているということだ。  https://bit.ly/2H8F6w3
  ───────────────────────────

2億台の監視カメラで人民を監視.jpg
2億台の監視カメラで人民を監視/span>
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2019年05月21日

●「八方塞がりになっている中国経済」(EJ第5008号)

 米中貿易戦争が本格的に始まったのは、2018年7月からで
すが、トランプ大統領が貿易戦争の宣言をしたのは同年3月のこ
とです。しかし、これだけのことで、中国の内部は大変なことに
なっていたのです。
 米国への中国人留学生、客員学者、交換教授ら約400名が中
国に帰国しているのです。彼らは「海亀派(ハイグイ)」といわ
れ、必ず帰ってくるのですが、それにしても、まとまってドカッ
と帰ってきています。少し帰ってくるのが早いのです。
 海亀派は、中国において、海外での留学・研究や就業を経て中
国に帰国する人々のことです。海亀が、成長して、産卵のため古
巣に帰ってくることからそう呼ばれるのです。
 なぜ、帰って来たのかというと、米国当局は、彼らを米国のハ
イテク技術を盗取するために派遣されてきているとみなし、ビザ
審査などを厳しくしたので、今までなら認められた滞在延長が認
められなかったり、スパイ容疑で取り調べを受けたり、逮捕され
る恐れも出てきたので、早めに帰国したと考えられます。
 トランプ大統領は、単に中国との貿易戦争を宣言するだけでな
く、いろいろな手を同時に打っているのです。もっと深刻なこと
は彼ら海亀派には、当然受け入れる企業や団体はあるはずですが
今回はそれがなく、金の卵といわれた彼らでさえ就職に難儀して
いるのです。中国メディアは一切伝えませんが、現在、中国では
未曾有の就職難に陥っているのです。
 それは、外国企業の中国への投資が激減しているからです。天
津を例にとってみると、外国企業の天津への投資は、2017年
には106億ドルあったものの、2018年にはたったの48億
ドルに激減し、どの工場もレイオフを発表しています。加えて、
あの韓国経済の華といわれるサムスンも、アップルの売り上げ激
減が原因で半導体工場を閉鎖したのです。これでは、深刻な就職
難が起きても不思議はないといえます。
 中国中でこういうことが起きた結果、2019年1月の貿易統
計では、対中輸出、つまり中国の対日輸入が次のように減少オン
パレードになっています。この統計は、日本の財務省をはじめ各
官庁が定期的に発表する信頼できる貿易統計です。
─────────────────────────────
   対中輸出          ・・ 17・4%減
   化学繊維、プラスチック   ・・ 27・5%減
   鉄鋼            ・・ 21・0%減
   非鉄金属          ・・ 21・0%減
   一般機械、機械全般     ・・ 26・6%減
   電算機類、コンピューター  ・・ 33・0%減
   金属加工機器        ・・ 52・0%減
   音響映像装置、記録再生装置 ・・ 49・0%減
   電気回路等の機械      ・・ 38・5%減
   通信機           ・・ 48・2%減
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
─────────────────────────────
 この統計を見るうえで知っておくべきことがあります。既出の
渡邊哲也氏によると、民主党政権当時の円高に苦しめられた経験
から日本のメーカーは、一般消費者向けの製品の生産(BtoC)
から、キーパーツの生産や設備投資のためのマシンの生産(Bto
B)にシフトしているのです。これは、きわめて賢明な判断であ
るといえます。
 その設備投資のマシンの対中輸出が、30〜40%落ち込んで
いるということは、中国国内の新規の設備投資がほとんど起きて
いないことを示しています。もちろんこれは日本だけで起きてい
る現象ではなく、他国でも同じような現象が起きています。
 こういう経済の急速な落ち込みの結果、前述のように、現在、
中国では深刻な就職難が起きているのです。この中国の就職難に
ついて、中国に詳しい評論家の宮崎正弘氏は、近著で次のように
述べています。
─────────────────────────────
 深刻な状況は若人の失業である。大学新卒は834万人(当初
860万人の大学新卒が見込まれていたが、26万人が中退した
ことになる。学生ローン不払いなどが原因だ)。苦労して大学を
卒業しても、まともな就労先がない。薔薇色の人生設計が暗転す
る。そこでまた中国政府は無理矢理なプロジェクトを謳い、巨額
を予算化する。一帯一路プロジュクトが世界各地で挫折、頓挫し
始めたので、国内で大型プロジェクトを拡大しょうとするのだ。
赤字構わず新幹線をさらに延長する工事が、あちこちで開始され
た。それこそ人の行き来より熊の数が多いような過疎地にも。
               ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機 が始まる』
─────────────────────────────
 これと並行するように、中国人民銀行(中央銀行)によると、
中国の民間企業の債券発行が、通常の3倍から4倍に増加してい
るのです。設備投資が起きていないのに債券が大幅に発行される
ということは、実質的には資金調達のための融通手形を発行して
いるのと同じです。
 しかも債券デフォルトラッシュの状況です。2018年の民間
企業の社債デフォルトは、42社、118件、総額1200億元
(約1兆9800億円)にも及んでいます。もともと中国の経済
の状況がよくなかったところに、米中の貿易戦争が起きて、それ
を契機に経済がクラッシュしたと考えられます。
 しかし、当時のメディアが報じる海外の政治の話題は、11月
6日の米中間選挙一色であり、中国の経済の惨状についてまった
く取り上げていないのです。それに関連して中国の政界で極めて
異例の事態が起きていたことを報道する日本のメディアは皆無で
あったのです。       ──[中国経済の真実/007]

≪画像および関連情報≫
 ●40年前の日本とそっくりの中国経済/加谷珪一氏
  ───────────────────────────
   中国国家統計局は2019年1月21日、2018年の国
  内総生産(GDP)を発表した。物価の変動を除いた実質成
  長率はプラス6・6%となり、2017年の成長率(6・8
  %)を0・2%ポイント下回った。中国の成長率は2000
  年以降、8%を超える成長が続き、一時は10%を突破して
  いたが、このところ成長鈍化が鮮明になっている。
   2018年については、米国と貿易戦争が勃発したことで
  輸出が低迷したほか、政府が進める債務削減策によって公共
  事業が大幅に縮小し、これにともなって全体の成長率も低下
  した。
   中国のGDP統計は、日本や米国と異なり、生産面からの
  推計が中心となっている。支出面からの比較が難しく、業界
  ごとの成長率で間接的に状況を把握するしかない。
   製造業による生産は、プラス6・2%となっており、20
  17年を下回った。建設は以前から4%台の成長にとどまっ
  ており、全体より低く推移している。製造業の多くは輸出に
  依存している可能性が高いので、成長減速の主な原因は米中
  貿易戦争である可能性が高い。貿易統計もそれを裏付けてい
  る。中国の2018年12月における、ドルベースの輸出額
  (ドルベース)は2213億ドル(24兆1200億円)と
  前年同月比で4・4%のマイナスとなった。米国向け輸出が
  大きく減ったことで輸出全体が低迷した。月別の動きを見る
  と、輸出の低迷は年後半から顕著となっており、米国が課し
  た高関税が影響したと考えられる。https://bit.ly/2V8C8uP
  ───────────────────────────

宮崎正弘氏/中国評論家.jpg
宮崎正弘氏/中国評論家
 
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2019年05月22日

●「なぜ、四中全会は開催されないか」(EJ第5009号)

 昨日のEJの最後のところで、「中国の政界で極めて異例の事
態が起きている」と書きました。一体何のことでしょうか。今回
はその説明からはじめることにします。その“政治的事件”を理
解するためには、前提になる中国共産党の意思決定のやり方や運
営の決まりについて知ることが必要になります。
 習近平氏が中国共産党第5代中央委員会総書記に就任したのは
2012年11月15日のことです。このポストは、この国、中
華人民共和国の最高位です。国のトップ、国家主席よりも総書記
の方が上のポストです。習近平氏が第7代国家主席になったのは
2013年3月14日のことです。
 中国共産党の重要な方針の決定は、党大会、正確には、中国共
産党全国代表大会で行われます。中国の政治は、中国共産党がす
べてを指導することになっているので、党大会は中国共産党の最
高意思決定機関です。党大会は、5年に1回、1週間程度の日程
で開催されることになっています。
 しかし、5年に1回では間が空き過ぎるので、5年ごとの党大
会を1つの「期」ととらえ、その期のうちに「中全会(中国共産
党中央委員会全会)」という会議を7回実施することになってい
るのです。
─────────────────────────────
 第一中全会 ・・・ 中央委員の紹介と党執行役員人事決定
 第二中全会 ・・・ 国務院(政府)の人事/首相/副首相
 第三中全会 ・・・ 新指導部による国家運営の方向性伝達
 ―――――――――――――――――――――――――――
 第四中全会 ・・・ 方針の微調整や法改正/経済政策変更
 第五中全会 ・・・ 方針の微調整や法改正/経済政策変更
 第六中全会 ・・・ 方針の微調整や法改正/経済政策変更
 第七中全会 ・・・ 方針の微調整や法改正/経済政策変更
─────────────────────────────
 「第一中全会」は、党大会の直後に開催されます。そこでは、
主として新しい中央委員の紹介や、党の執行役員の人事を決める
ことになるので、党大会の直後に開催されることが恒例となって
いるのです。
 続いて、「第二中全会」は、国務院──最高国家行政機関で日
本の内閣に該当──の役員人事を決定します。2期目の習近平政
権は2018年1月18日〜19日の2日間行われています。
 「第三中全会」は、2期目の習近平政権が、国家をどのように
運営していくのかについて、その基本的な方向を伝達するために
行われます。習近平政権の第三中全会は、2018年2月26日
〜28日に行われています。
 ここまではほぼ予定通りに行われたのですが、ちょうど第三中
全会が終了した後、トランプ米大統領が対中貿易戦争を宣言した
のです。ここからがおかしいくなったのです。本来であれば、秋
には第四中全会が開催されなければならないのですが、それが現
在も行われていないのです。
 2018年11月14日の日付で、ネット上に掲載されている
福島香織氏のレポートには、四中全会開催のアナウンスがないこ
とについて次のように書かれています。
─────────────────────────────
 11月中旬にもなって、中国共産党の秋の重要な政治会議であ
る四中全会のアナウンスがない。10月20日、安倍晋三首相訪
中直前に開かれるという情報もあったが、習近平は強引に香港マ
カオ珠海大橋開通式出席を含めた南方視察の予定を入れて、これ
を11月頭に延期とした。だが11月初旬、習近平は上海で開催
された輸出博覧会の開幕式出席という予定を入れて、さらに、延
期。では米国の中間選挙の結果をみてから開くのだろうかと思わ
れていたが、中間選挙が終わってからもう一週間だ。14、17
日にはAPEC年度総会などの日程が入っており、11月中旬も
時間がありそうもない。
 改革開放以来、秋の中央委員会総会がこんなに遅くなったこと
はない。共産党内部で何か揉めていて総会を開くどころではない
のだ、と噂が立っている。      https://bit.ly/2LWclqn
─────────────────────────────
 四中全会からは、国の運営方針などを変更する場合や法改正を
する場合、その情報を伝える会議になります。したがって、この
ときの四中全会は重要であり、例年よりも開くニーズがあるので
すが、なぜか習政権はいまだに開催していないのです。
 本テーマを書くとき、主として参考にさせていただいている2
冊の本──石平/渡邊哲也両氏、宮崎正弘氏の本では、この四中
全会が開催されないことに関して次のように記述されています。
─────────────────────────────
◎渡邊哲也氏
 18年の秋に開かれるはずだった「四中全会」が開かれません
でした。そのため今回は、党の承認がない形での政策公表(全人
代)になっています。これには複数の理由があり、米中貿易戦争
が激化し、バブルの崩壊が危惧されるなか習近平国家主席への辞
任圧力が強まっており、四中全会でクーデターを起こされるのを
恐れたのではないかと言われています。一党独裁であっても、中
全会では、党が政策承認する会議であるため、承認の決を採るわ
けです。        ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき』
◎宮崎正弘氏
 トランプ大統領の対中政策の基軸転換に周章狼狽した中国の習
近平国家主席は米中貿易戦争の不手際の責任を回避するため、定
例の四中全会を開催せず、付け刃の対応に追われた。中央委員会
全体会議を開催せずに全人代になだれこむという異常事態となっ
たのだ。           ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機 が始まる』
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/008]

≪画像および関連情報≫
 ●批判恐れ? 重要会議が開かれない理由/福島香織氏
  ───────────────────────────
   では、なぜ四中全会がこんなにも遅れているのか。強引に
  憲法を変え、集団指導体制の根本を揺るがし、個人独裁体制
  を打ち立てようとしている習近平政権二期目のやり方は、党
  内部でもいろいろ物議をかもしている。よほど内部で揉めて
  いるようだ。具体的に何を揉めているのだろう。
   一説によると、今四中全会を開くと、習近平の大バッシン
  グ大会になってしまい、その権力の座が危ない、と習近平自
  身が恐れているから開けないのではないか、という。ラジオ
  ・フリー・アジアの取材に清華大学政治学部元講師の呉強が
  こうコメントしていた。
  「習近平は南方視察の間、一度も大した演説をしなかった。
  改革開放についても何も語らなかった。四中全会の日程も、
  いまだアナウンスされていない。その理由について、北京の
  権力闘争が膠着状態に陥っているのではないかと思われる」
  「わかっているのは習近平にしろ中国共産党にしろ、誰も未
  来に対する長期的な改革開放についての明確な計画を持って
  いないということ。これに加えて年初以来の憲法改正が引き
  起こした権力の真空と密接に関係していると思われる。大衆
  にしても、党幹部にしても目下一切の責任は習近平一個人に
  すべてあると考えている。党の幹部は現在二つの選択に直面
  している。党に忠誠を誓うべきか、あるいは習近平個人に忠
  誠を誓うべきか」        https://bit.ly/2HFdsFl
  ───────────────────────────

四中全会での習近平国家主席/2015.jpg
四中全会での習近平国家主席/2015
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2019年05月23日

●「外貨準備がギリギリの状況の中国」(EJ第5010号)

 2019年3月5日〜3月15日の10日間、中国は北京で全
人代を開いています。全人代とは「全国人民代表大会」、中国の
一院制議会のことです。しかし、今年の全人代は、秋の「四中全
会」を開催せずに行われたのです。これは、異例中の異例なこと
であり、絶対といわれる習近平総書記の権力基盤が必ずしも盤石
ではないことを物語っています。
 四中全会が開催できなかった原因は、もちろん米国のトランプ
政権による貿易戦争にあります。これによって、中国経済は大ダ
メージを受けており、3月の全人代では、かなり強力な景気対策
を打ち出しています。
─────────────────────────────
   @増値税(付加価値税)引き下げ/16%→13%
   A             中小企業向けの減税
   B   年金など社会保障費の企業負担の引き下げ
   C     家電販売に8%〜25%の補助金支給
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき』
─────────────────────────────
 日本の消費税にあたる増値税を3%引き下げています。国内の
個人消費が冷え込んでいるからです。増値税を3%下げて、家電
販売には8%〜25%の補助金を出すというのですから、家電は
買い得です。かなり大判振る舞いです。おそらく効果はある程度
出ると思います。
 日本では、景気が悪化しているのに、消費税を8%から2%税
率を引き上げようとしていますが、これはとんでもない大間違い
です。引き上げたら、景気はさらに悪化し、安倍政権のレームダ
ック化は一段と促進します。増税ではなく、8%から5%に引き
下げるという手もあるのです。そうすれば、個人消費は間違いな
く急回復します。国民が「減税」という言葉を忘れるほど、日本
では増税ばかりしています。
 「ドーマーの定理」というものがあります。これは、長期的な
財税維持のために必要とされる条件です。この定理のもともとの
概念は次の通りです。
─────────────────────────────
 ドーマーの定理とは──
 経済成長率が、国債金利よりも高いという条件を満たすとき
 財政維持は可能である。
─────────────────────────────
 1940年代にロシア系アメリカ人の経済学者エブセイ・ドー
マーによってこの定理は提唱されたのです。2019年の全人代
では、中国の経済成長率は「+6・0〜6・5%」と発表されて
いますが、これは事実ではないと思われます。
 向松祚教授によると、本当は「1・67%」であるといわれて
いますが、中国の10年物国債の金利は3・2%であるので、経
済成長率1・67%は長期金利を大きく下回っています。つまり
財政破綻状態ということになるのです。
 普通であれば、金利を経済成長率以下に下げればいいのですが
中国の場合はそれができないのです。なぜなら、ここまでバブル
づけになっている経済なので、金利調整で利下げをすると、確実
にハイパーインフレになってしまうからです。本当は、2018
年度から、緩やかに金融を引き締めつつあったのですが、米国に
貿易戦争を起こされて、意に反して経済を再拡大しなければなら
なくなり、中国は危ない橋を渡っているのです。
 現在の中国にとって一番怖いのは通貨危機です。中国国内のこ
とであれば、人民元を刷れば解決しますが、外国との関係になる
と、この手は使えないのです。外貨、とくにドルが必要になりま
す。そのため、どの国でも相応の外貨準備を備蓄しています。そ
うしないと、必要なものを輸入できなくなるし、対外債務(外貨
建ての借金)が払えなくなると、国が破綻してしまいます。
 この中国の外貨準備について、米中貿易戦争によって相当苦し
くなっており、普通の国では考えられない方法で、外貨を獲得し
ていると渡邊哲也氏がいっています。
─────────────────────────────
 たしかにいま中国の外貨準備はギリギリの状況になっている可
能性が高いです。ところが、一党独裁国家の中国は他の国ではあ
り得ない“特殊”な外貨準備があります。このところ中国政府は
中国の企業が海外で買った不動産や事業をすべて売却せよと命じ
ていますよね。その売却金が見えない外貨準備になってくるわけ
です。すでに破綻状態にある海航(集団)、安邦(保険集団)、
エンタテインメント事業の万達(ワンダ)あたりは過去に買収し
た海外企業の株式を売って現金化して、外貨準備に組み込み、通
貨防衛に使っています。あるいは、中国人富裕層が持つ海外資産
を強制的に売却させて現金化し、それを海外への支払いに充てて
います。         ──石平×渡邊哲也著の前掲書より
─────────────────────────────
 要するに、国が外貨準備として持っている外貨が不足している
わけです。しかし、中国共産党の幹部も含めて、中国という国は
本当のところ危ないと感じており、密かに海外資産を持つ中国人
は多くなっているのです。中国政府は、中国の企業や個人が海外
に持つ資産も外貨準備と考えています。
 范冰冰(ファンビンビン)という中国人の美人女優失踪事件と
いうのがありました。彼女は海外に多くの資産を持っており、中
国当局のターゲットになっていたのです。中国では、中国人が海
外に資産を移すことをさまざまな法律で規制しています。
 范冰冰氏は、中国当局に脱税容疑で拘留され、146億円もの
巨額の罰金が科せられたのですが、当局はそういう方法で、中国
人の持つ海外資産を没収し、外貨準備に組み入れているのです。
問題は、中国の企業や個人の持つ海外資産をどのようにして把握
するかですが、これには、ちゃんとした方法があるのです。
              ──[中国経済の真実/009]

≪画像および関連情報≫
 ●女優・范冰冰に脱税疑惑?
  ───────────────────────────
   中国で最も美しいといわれる人気女優・范冰冰(ファン・
  ビンビン)の脱税疑惑が思わぬ方向に広がるかもしれない。
  単なる美人女優のスキャンダルでなく、これも権力闘争、し
  かも軍部がらみとなると気になるではないか。今回は芸能ゴ
  シップを深読みしてみたい。
   范冰冰は山東省出身、1981年生まれで、女優、歌手と
  多方面で活躍している。日本では日中合作映画「墨攻」に出
  演したことで知られ、サントリー・ウーロン茶のCMでも親
  しまれるようになった。最近では主演を務めた映画「わたし
  は潘金蓮じゃない」(馮小剛監督、2016)で、サン・セ
  バスチャン国際映画祭の最優秀女優賞を受賞。カンヌ国際映
  画祭のレッドカーペットの常連でもあり、昨年はコンペティ
  ション部門の審査委員に選ばれて話題になった。
   范の婚約者の李晨は、知名度はかなり劣るが、人気の中国
  人俳優で、昨年の彼女の36回目の誕生日に正式にプロポー
  ズ。このとき、李晨が愛の証に贈った范冰冰そっくりの人形
  が、マリーナ・ビチコバという世界的に有名な人形師に特注
  したものでお値段30万ドル、というのも話題となった。そ
  んな大人気女優の范冰冰だが、黒い噂が一つあった。元国家
  副主席で2017年までは中央規律検査委員会書記として反
  腐敗キャンペーンの陣頭指揮をとっていた王岐山の愛人であ
  ったという噂だ。この噂の出元は、米国に逃亡した巨額汚職
  容疑で国際指名手配中の実業家・郭文貴だ。ただ、郭文貴が
  インターネットを通じて流すこうした情報の多くが共産党指
  導者たちの動揺や疑心暗鬼を狙ったガセ情報という見方も強
  いし、私もあまり信じていない。 https://bit.ly/2wbpfWQ
  ───────────────────────────

范冰冰(ファン・ビンビン).jpg
范冰冰(ファン・ビンビン)

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2019年05月24日

●「人民元の防衛と中国の外貨準備高」(EJ第5011号)

 中国の外貨準備は他国と比べると、とても特殊です。そもそも
外貨準備とは次のようなものをいいます。
─────────────────────────────
 ◎外貨準備とは・・・
 各国の通貨当局(中央銀行/中央政府などの金融当局)の管理
下にある直ちに利用可能な対外資産のことである。通貨当局が急
激な為替相場の変動を抑制するとき(為替介入)や、他国に対す
る外貨建債務の返済が困難になったときなどに用いられる。
                  https://bit.ly/2wcTgFK
─────────────────────────────
 ところが、中国では、上記の外貨準備の他に、国有銀行が有す
る企業の外貨も外貨準備のなかに含めているのです。ここでいう
「企業の外貨」とは、企業のドル決済預かり金や企業のドル預金
も外貨準備として報告しているのです。これは明らかなルール違
反ですが、中国政府はまったく意に介さないのです。
 中国という国は、すべてを自国中心に考えるのです。本来自由
貿易をするからには、国際法はもちろんのこと、国際的な約束事
というか規則、決まりを遵守することが必要ですが、中国は、国
際法でも自国独自の勝手な解釈で運用しようとします。南シナ海
における人工島も勝手な歴史認識で強行し、国際司法裁判所の判
決も、絶対に受け入れません。したがって、中国の経済に関する
公表数字も信頼のおけるものではないのです。
 最近では、国(国有銀行)が保有しているものだけでなく、中
国企業や個人の保有する外貨(国内であれ、海外であれ)も、す
べて含めて外貨準備と考えているのです。「そんなバカな!」と
いうなかれ、中国は大真面目で、そう考えています。
 それに加えて、2017年から、中国にとっては都合のよい制
度ができたのです。その制度は、CRS(共通報告基準)と呼ば
れ、OECDが策定したものです。
─────────────────────────────
 ◎CRSとは/Common Reporting Standard
 外国の金融機関に保有する口座を利用した国際的な租税回避を
防止するために、経済協力開発機構(OECD)が策定した金融
口座情報を自動交換する制度である。報告された情報は、各国の
税務当局間で相互に共有される。
─────────────────────────────
 CRSを簡単にいうと、日本で暮らす外国人と、外国に住む日
本人の税務情報や資産情報を当局同士で交換する制度です。なぜ
この制度が中国にとって都合がよいかというと、中国人が海外に
密かに資産を移したり、入手したりしても、CRSによりすべて
把握できるからです。
 仮にある中国人が米国に資産を持っていたとします。それはド
ル資産になりますが、そのドル資産も中国の外貨準備に含まれて
いるのです。もし、中国の外貨が足りなくなったときは、そのド
ル資産を売却させ、それに見合う人民元と引き換えます。人民元
であれば、いくらでも刷れますが、まさかドルを刷るわけにはい
かないからです。
 そこまで無理をしている中国の外貨準備の現況について、渡邊
哲也氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 2014年には、3・6兆ドルあった中国の外貨準備は、いま
2・8兆ドルに落ち込んだとされています。この2・8兆ドルの
うち米国債は1・1兆ドル程度しかなくて、あとは何を持ってい
るかは非公表という状況です。
 中国の銀行が海外の銀行から借りている金額が1・6兆ドルで
そのうち3ヶ月以内に満期が来る短期債務が1・15兆ドル。つ
まり、保有する米国債の額と短期債務の額がイコールになってし
まっている。かつてJ・Pモルガンが、中国の外貨準備がどの程
度になったら危機的水準かという試算を行った。それが2・6兆
ドルでしたから、危機的水準に非常に近いところまで落ちてきた
ことになります。ちなみに日本は、同じく1・1兆ドルの米国債
を保有していますが、そのほぼすべてを政府が使えます。
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき』
─────────────────────────────
 参考までに、2017年末の外貨準備の額のベスト5をご紹介
することにします。
─────────────────────────────
    1位:     中国  3兆2353億ドル
    2位:     日本  1兆2640億ドル
    3位:    スイス    8108億ドル
    4位:   ユーロ圏    8007億ドル
    5位:サウジアラビア    5008億ドル
                  https://bit.ly/2EPM88h
─────────────────────────────
 これを見ると、中国の3兆2353億ドルは、日本の約3倍で
あり、文句なしに世界一です。中国の外貨準備の定義の違いもあ
るが、それを考慮しても圧倒的です。しかし、金融の専門家であ
る小宮一慶氏の分析によると、3・2兆ドルという数字から中国
の人民銀行の人民元防衛のための「介入」の凄さが見えるという
のです。かつて中国の外貨準備高は4兆ドル近くあり、2017
年の時点で1兆ドルも減っている──これは、中国人民銀行によ
る強烈な「人民元買い支えオペレーション」の結果であると小宮
氏はいいます。
 しかも2017年の3・2兆ドルは、現在では、渡邊哲也氏に
よると、さらに1兆ドル減少し、2・8兆ドルになっています。
J・Pモルガンによる危機的水準が2・6兆ドルであり、現在が
2・8兆ドルですから、まさに中国は、ギリギリのところまで追
い詰められているということがいえます。
              ──[中国経済の真実/010]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、外貨準備に見る手詰まり感/梅澤利文氏
  ───────────────────────────
   中国外貨準備の減少は、人民元が重要な節目である対ドル
  レートで1ドル7人民元に近づく中で、中国当局がこれ以上
  の人民元安を放置できない姿勢が示唆されたと見られます。
  中国景気に減速傾向が見られる中、中国当局は景気刺激策が
  求められる中での為替介入に、政策的なジレンマもうかがえ
  ます。これが日本ならば、通貨安(円安)は極端でない限り
  歓迎されるところでしょう。しかし、中国では事情が異なり
  ます。
   まず、中国は米中貿易戦争の当事国であり、対米貿易黒字
  の拡大は通商交渉を困難にする恐れがあります。米財務省は
  2018年10月17日に半期に一度の外国為替報告書を発
  表しました。今回、米国は中国を為替操作国に認定するのは
  見送りました。しかし、前回(4月)の報告書に比べ、中国
  への姿勢は厳しさを増しています。ムニューシン米財務長官
  は中国の為替の透明性欠如と最近の元安が懸念材料と強い調
  子で指摘しています。
  仮に中国を為替操作国と認定すれば、米国は必要に応じて関
  税を課す可能性もあり、米国に新たな関税という武器を手渡
  すこととなる恐れもあります。
   次に人民元安を放置した場合、資本逃避も懸念されます。
  中国の資本逃避の目安として、国際収支統計の資本勘定で、
  ネットの金融収支を見てみると、足元でマイナスに転じてい
  ます。             https://bit.ly/2VH034u
  ───────────────────────────

中国の外貨準備高.jpg
中国の外貨準備高
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2019年05月27日

●「世界中でファーウェイ離れが加速」(EJ第5012号)

 米中貿易戦争は、日を追って激しさを増す一方です。5月19
日、米ロイターが、「グーグルはファーウェイ向けのソフトウェ
アの出荷を停止し、今後ファーウェイ製品では、グーグルプレイ
やGメールを利用できなくなる見込み」と報道すると、世界中で
ファーウェイ離れが起きて、拡大しつつあります。
 とくに、携帯電話のOSとして広いシェアを持つ「アンドロイ
ド」のサービス──OSの最新版への更新や、Gメールをはじめ
グーグルマップ、ユーチューブなどのいわゆるグーグルアプリが
利用できなくなるとの不安が広がると、携帯大手などに続き、消
費者に身近なネット通販や小売の店頭においても、ファーウェイ
離れは一段と加速したのです。
 アマゾンもファーウェイ販売のページにおいて、次の表示を行
い、ファーウェイ製品の事実上の販売停止を行っています。
─────────────────────────────
 本製品は、OS(オペレーションシステム)などについて懸念
が発生しています。  ──アマゾンのファーウェイ製品ページ
─────────────────────────────
 「アンドロイドOS」を使う機器は世界で25億台以上あり、
グーグルのソフトウェアの利用が制限されている中国国内向けを
のぞき、ファーウェイのスマホも基本的にすべて使っています。
ちなみに、ファーウェイは、2018年にサムスン電子、アップ
ルに次ぐ世界3位の2億600万台のスマホを出荷し、2019
年第1四半期にアップルを抜いて、世界2位に進出しています。
 このアンドロイドが使えなくなるかもしれない事態を受けて、
日本のKDDI(au)とソフトバンク系のワイモバイルなどが
ファーウェイの新規機種「P30」の販売延期を決め、予約を中
止しています。改めてICTの世界におけるグーグルの影響力の
大きさを知る思いがあります。
 ところで、ファーウェイの最新機種「P30」は、なかなか魅
力的な製品なのです。3つのカメラが搭載されており、高画質に
加えて、超広角・望遠機能を備えています。しかし、ハードウェ
アとしての機能がいかに優れていても、世界中で使われているグ
ーグルのソフトウェアが使えなくなる可能性があると知ると、世
界中で買い控えが起きてしまうのです。
 このような事態になっても、ファーウェイの任正非CEOは、
傘下に半導体子会社「ハイシリコン」を有しているとして、半導
体に関しては世界レベルを超えるチップを自前で生産できるし、
OSをはじめとするソフトウェアに関しても、表向きは、独自制
作が可能であると、強気の姿勢を崩していないのです。
 しかし、そのハイシリコンは、英国のARM(アーム)という
半導体設計情報を提供する企業から、多くの設計情報の提供を受
けています。アームは、自社では半導体の製造を行わず、開発や
設計に特化し、半導体メーカーからの技術使用料などを収益源と
する企業です。
 そのアームが英国BBCの報道によると「ファーウェイとの取
引を中止する」と宣言したのです。これはファーウェイにとって
致命的な打撃といえます。高度な技術を持つハイシリコンといえ
ども、アームの協力なくしては、世界に通用する半導体チップの
生産ができないからです。とくにアームは、スマホ向け半導体の
設計では、90%の圧倒的なシェアを持っているからです。実は
このアームを英国のEU離脱騒ぎでポンドが急落したのを受けて
2016年にソフトバンクが買収しているのです。
 アームについて、「日経ビジネス」の広岡延隆上海支局長は、
次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 ARMは、省電力半導体設計に強みを持ち、現在のスマートフ
ォン向け半導体チップの大半は、同社技術を採用している。米ク
アルコムや米アップル、韓国サムスン電子、台湾メディアテック
など、半導体チップメーカーはARMの設計情報のライセンスを
受けずには、事実上ビジネスを継続できない。そしてファーウェ
イの半導体開発を担う中核子会社、海思半導体(ハイシリコン)
もARMの技術に頼っていた一社だった。
 英国はファーウェイにとって、西側諸国における「砦」のよう
な存在だった。ファーウェイは英国政府と比較的緊密な関係を保
ち、技術情報の提供を欠かさなかった。英国が、米国の意向に反
してファーウェイを「5G」から排除しなかったのは、こうした
取り組みがあったからだ。      https://bit.ly/2Mn1Sob
─────────────────────────────
 そうすると、ファーウェイの命運を握っているのは、ソフトバ
ンクの孫正義CEOであるといえます。孫正義氏にとっては、悲
願である傘下の米携帯電話4位のスプリントと3位のTモバイル
との合併計画があり、トランプ政権とトラブルを起こせない立場
にいます。この合併に関しては、オバマ政権では実現できなかっ
たものの、トランプ政権になって米連邦通信委員会(FCC)の
承認を勝ち取っています。しかし、米司法省がまだ反対しており
孫氏としては、トランプ政権との関係は良くしておきたいという
思惑があり、ファーウェイとの取引を停止せざるを得ない状況に
あります。
 トランプ大統領は、5月23日、このファーウェイ問題を米中
通商協議で、取引に使う考えを次のように示しています。
─────────────────────────────
 G20で習近平国家主席と会談するが、そのさい、ファーウェ
イも何らかの形で、取引に含まれる。ただし、安全保障や軍事的
な観点から、ファーウェイのやってきたことは、非常に危険なこ
とである。               ──トランプ大統領
           ──2019年5月25日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 実際問題として、米中貿易戦争は、単なる通商協議ではなく、
安全保障の面における米国の基本戦略になりつつあります。
              ──[中国経済の真実/011]

≪画像および関連情報≫
 ●グーグルよりも深刻? 英ARMがファーウェイと取引停止
  ───────────────────────────
   ソフトバンクグループは2016年、3・3兆円をかけて
  英半導体設計大手のARMを買収した。スマートフォン向け
  CPUなどで豊富な実績を持つARMだが、ソフトバンクグ
  ループはなぜ、それだけ巨額の資金を投じてARMを買収し
  たのか。またARMの買収によって、ソフトバンクグループ
  は、何を目指そうとしているのだろうか。
   これまで、英ボーダフォンの日本法人や米スプリントなど
  大規模な企業買収を繰り返して大きな驚きを与えてきたソフ
  トバンクグループ。だがそうした中でも最も大きな規模の買
  収となったのが、2016年買収した英ARMである。
   ARMは、CPUなどの設計を手掛ける企業で、その設計
  をCPUなどを開発・製造するメーカーにライセンス提供し
  ロイヤリティを得るというビジネスを展開している。それゆ
  え同社の設計を採用する企業にはスマートフォン向けのチッ
  プセット「Snapdragon」シリーズで知られる米クアルコムな
  ど、非常に多くの企業が名を連ねている。
   ARMの設計を採用したチップセットは多種多様な機器に
  搭載されているが、中でもよく知られているのは、やはり、
  スマートフォンやタブレット向けのチップセットであろう。
  今やスマートフォンの9割以上は、ARMの設計を採用した
  チップセットを採用していると言われており、スマートフォ
  ン開発になくてはならない存在となっているのだ。だが、A
  RMの買収と、これまでソフトバンクが巨額で買収した企業
  とを比べると、ある大きな違いが見られる。それは、ARM
  が経営不振に陥っているわけではないということだ。
                  https://bit.ly/2Mn1Sob
  ───────────────────────────

ソフトバンクARMを買収.jpg
 
ソフトバンクARMを買収
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2019年05月28日

●「さらば米国よ、われに欧州ありき」(EJ第5013号)

 世界中でファーウェイ離れが起きているなか、遠藤誉氏が次の
タイトルで夕刊紙にコメントを寄せています。
─────────────────────────────
 ◎ファーウェイは「へこたれない/世界は2極化へ」
 米国は、これ(=中国の通信大手の締め出し)を対中圧力の切
り札にしたいという希望を持っているようだが、切り札にはなら
ない。ファーウェイはへこたれない。「米国市場を引き揚げても
欧州がある」と思っている。
 具体的には。ファーウェイの創業者で、最高経営責任者(CE
O)の任正非氏が中国メディアに語った。
 「米国から撤退する。米国には感謝する。ここまでわが社を有
名にしてくれた。それだけ技術が高いと、世界が知るようになっ
た」と。余裕を感じさせる。
           ──「鈴木棟一の風雲永田町」6064
           2019年5月21日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 いま起きている世界中からのファーウェイ離れにも関わらず、
任正非CEOは米国に対して皮肉をいう余裕があると、遠藤氏は
いっています。それは任正非CEOの「米国市場を引き揚げても
欧州がある」というところにあるといえます。これは重要な発言
です。確かに、欧州(EU)と米国は、現在ギクシャクしていま
すが、本当にEUは米国の警告に従わないつもりでしょうか。
 これに関して遠藤氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 欧州諸国は、米国が「証拠を出さない」ことを理由に「ファー
ウェイを排除しない」方向に動いている。ファーウェイは欧州で
強い。米国のやり方は、1990年代の対日圧力と似ている。
           ──「鈴木棟一の風雲永田町」6064
─────────────────────────────
 ファーウェイが本当に情報を盗んでいたのかということに関し
ては遠藤氏は重要な情報を掴んでいるので、これについては改め
て取り上げることにします。
 EJの掴んだ情報によると、中国は「ファイブアイズ」の分断
を仕掛けており、これによってEU諸国のなかには「ファーウェ
イを排除しない」決断をしている国が出てきています。ところで
「ファイブアイズ」とは何でしょうか。
 ファイブアイズとは、諜報活動に関する「ある協定」を締結し
ている5ヶ国──米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュー
ジーランド──の諜報機関の間の協定のことです。
 ここでいうある協定とは、「UKUSA(ウクサ)」といい、
UKUSAとは英国と米国の協定を意味しています。「UK」は
ユナイテッド・キングダム、英国を意味し、「US」は、ユナイ
テッド・ステート、米国のこと、「A」は「Agreement」、 協定
を意味します。つまり、ファイブアイズは、英国と米国を中心と
して、それに英語圏の3ヶ国を加えた5ヶ国の諜報機関間の協定
のことです。参考までに、これら5ヶ国の諜報機関を次に示して
おきます。
─────────────────────────────
     イギリス → GCHQ      政府通信本部
     アメリカ →  NSA アメリカ国家安全保障局
      カナダ → CSEC    カナダ通信保安局
  オートスラリア →  DSD   参謀本部国防通信局
 ニュージーランド → GCSB     政府通信保安局
                 https://bit.ly/2insxgt
─────────────────────────────
 それでは、「UKUSA協定」では具体的に何を利用できるの
でしょうか。
 もともと秘密協定であり、明確には分からないのですが、加盟
国間で傍受した盗聴内容や情報を共同利用していることは確かで
す。問題はその手段です。それは、通信、電磁波、信号などの主
として傍受を利用した諜報活動のことです。これら5ヶ国は、世
界中に張り巡らした諜報網を使って情報を集め、それらを相互利
用、共同利用しているのです。しかし、互いを盗聴することは禁
じられています。これらの設備というか、システムのことを「シ
ギント」と呼んでいます。
 なお、「UKUSA協定」のネットワークは「エシュロン」と
呼ばれています。この名前を聞いたことがある人は多いと思いま
す。このように、ファイブアイズには、通信ネットワーク機器に
重要な関連があり、それにファーウェイが絡んでいるのは当然と
いえます。
 中国は、ファイブアイズの中心国、英国に的を絞って何年もか
けて、関係構築を築いてきています。その英国は、現在EU離脱
問題で大揺れであり、EUを離脱した場合、それも合意なき離脱
の場合、中国は重要な貿易相手国になります。したがって、米国
の要請にしたがって、ファーウェイ排除に積極的に動けないので
す。このことは、やはり中国が重要な貿易相手国であるニュージ
ーランドも同じ立場です。中国は、ニュージーランドに対して強
いプレッシャーをかけています。EU全体も今後この動きに同調
する可能性もあり、それを見越して、任正非CEOは「欧州があ
る」といったのです。こういう動きも含めて、遠藤誉氏は、コメ
ントの最後に次のように「2つの可能性」を示唆しています。
─────────────────────────────
 2つの可能性がある。1つは世界の資本や企業が中国から引き
揚げて、中国経済が干上がる。2つには、中国が対米貿易を無視
することによって、世界が「米国か、非米国か」の2極に分かれ
る。後者の場合、グローバル経済を中国が回すことになる。この
2つの進路の鍵を握るのは、案外日本かもしれない。
           ──「鈴木棟一の風雲永田町」6064
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/012]

≪画像および関連情報≫
 ●英国はファーウェイを5Gサプライヤーにすることに難色
  ───────────────────────────
   中国の通信機器ベンダーの関与が国のセキュリティにリス
  クをもたらすとの懸念にもかかわらず、イギリスの政府は、
  同国の5Gネットワークの一部の中核的でない部分に関して
  ファーウェイをサプライヤーとして認めることになった。し
  かし政府の記者発表によれば、ネットワークの中核的な部分
  からは除外される。
   米国時間4月23日の国家安全保障会議の会合における英
  国メイ首相の決定を今朝のテレグラフ紙が報じた。同紙によ
  ると、複数の閣僚が彼女のアプローチに懸念を表明した。そ
  れらは、内務大臣と外務大臣、防衛大臣、通商大臣、国際開
  発大臣である。FT(フィナンシャル・タイムズ)は、英国
  5Gネットワークへのファーウェイの関与に厳しい制約を課
  すのは、閣僚たちが提起した懸念のレベルが高いことを反映
  している、と報じている。
   5Gによる次世代ネットワークの構築にファーウェイの部
  分的関与を許すというメイ首相の黄信号的決定の1か月前に
  は、英国監督機関が、この中国企業のセキュリティへのアプ
  ローチを評価して厳しい報告書を提出したばかりだ。ファー
  ウェイ・サイバーセキュリティ評価センター監督委員会の第
  5次年次報告書は、同社のソフトウェアエンジニアリングと
  サイバーセキュリティの能力には「深刻かつ意図的な欠陥が
  ある」と酷評している。     https://tcrn.ch/2HALtrI
  ───────────────────────────

「米国よ、さらば」/任正非CEO.jpg
「米国よ、さらば」/任正非CEO
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2019年05月29日

●「ファーウェイがスパイである証拠」(EJ第5014号)

 昨日のEJの「画像および関連情報」でもお知らせしています
が、4月23日に開催された英国の国家安全保障会議において、
米国とともにファイブアイズの中心国、英国のメイ首相は、英国
としては、ファーウェイの製品を5Gの中核部分からは外すもの
の、他の部分では残すことを宣言しています。
 メイ首相の発表の約1ヶ月前に、英国の監督機関がファーウェ
イのセキュリティを精査して、厳しい内容の報告書を提出したに
もかかわらずです。この報告書では、ファーウェイについて次の
ように論評しています。
─────────────────────────────
 ファーウェイ社のソフトウェアエンジニアリングとサイバーセ
キュリティの能力には、深刻かつ意図的な欠陥がある。しかし、
英国の重要なネットワークへのファーウェイの関与が国のセキュ
リティにもたらす、すべてのリスクは、長期的には十分に軽減で
きる、という限定的な確証しか提供できない。
        報告書(英文) → https://tcrn.ch/2YuHIdA ─────────────────────────────
 英国の監督機関は、一方で「深刻かつ意図的な欠陥がある」と
いいながらも、他方「それがもたらすリスクは長期的には十分軽
減できる」という曖昧な表現にとどめています。ここにメイ政権
の中国への配慮が感じられるのです。
 しかし、このメイ首相の決定には、英国の内務大臣と外務大臣
防衛大臣、通商大臣、国際開発大臣らが懸念を示したことが伝え
られています。メイ首相としては、EU離脱となると、中国は重
要な貿易相手国になるので、そういう観点から、サイバーセキュ
リティの面で甘さが出てしまったのではないかと考えられます。
もともと英国は、米国が「ファーウェイのここが問題である」と
いう証拠を示さないことに不満を持っていたといわれます。
 この「なぜファーウェイは問題があるのか」について、米国が
きちんとした証拠を示していないことをEU各国が不安を持って
いることは確かです。これについて、遠藤誉氏は、5月23日の
米CNBCのテレビ記者、アンドリュー・ロス・ソーキン氏によ
るポンペオ国務長官へのインタビューを取り上げ、分析している
ので、以下にご紹介します。
─────────────────────────────
ソーキン:国務長官、教えていただきたいのですが、ハーウェイ
 がハードウェアを利用して、スパイソフトや何かスパイ行為を
 行うことを明確に示唆する証拠を今日は提供できますか。
ポンペオ:うーん、そうだね。それは間違った質問だよ、アンド
 リュー。もしあなたが自分の情報を、つまり、自分の情報をだ
 ね。中国共産党に渡すのは、あなたにとって実際上、凄まじい
 リスクを伴う行為になるわけだよ。中国共産党は、今日は利用
 しないかもしれない。明日も利用しないかもしれない。
ソーキン:私はリスクを減らすことに興味はありません。私が質
 問しているのは、ファーウェイのCEOが「ほら、私たちは他
 者と情報を共有していません。私たちは中国政府と協力してい
 ないのです」と主張しているからです。だから、何か明確な証
 拠を示してください。
ポンペオ:それはまさに嘘だよ。それはまさに嘘だ。中国政府と
 協力していないというのは、嘘の声明だ。
                  https://bit.ly/2K90XVp ─────────────────────────────
 ここに示した日本語訳は遠藤誉氏による翻訳です。遠藤氏は、
ポンペオ国務長官の受け応えは明らかにシドロモドロである──
そういうのです。それは英語の原文で読むと、一層明らかである
といっています。
 以下の英文は、アンドリュー記者に対するポンペオ国務長官の
返事ですが、明らかに間違っているところがあります。遠藤氏は
それを根拠にシドロモドロといっているのです。
─────────────────────────────
  That's the wrong question, Andrew. If you put your
  information, your information, in the hands of the
  Chinese Communist Party, it's de facto a real risk
  to you.They may not use it today. They may not use
  it tomorrow.
─────────────────────────────
 それは最後の部分「They may not use it tomorrow」です。こ
れは「今日」と「明日」が関連を持っています。「(情報を入手
しても)今日は使わないかもしれないが、明日は使うかもしれな
い」という意味の「They may use it tomorrow」ならわかります
が、ポンペオ国務長官は、「They may not use it tomorrow」と
いっています。これだと意味がわからなくなります。「not」 は
不要なのです。米国人、しかも国務長官ともあろう人が、母国語
で、こんな間違えをするはずがないので、遠藤氏はシドロモドロ
になっていたんじゃないかといっているのです。
 しかし、仮にファーウェイがスパイをしているという確たる証
拠があったとして、それを国務長官という地位にある人がメディ
アに話せるでしょうか。そんなことはできるはずはないのです。
ポンペオ国務長官は、そういう質問をはぐらかす会話の技術が上
手でないだけだと思います。
 しかし、遠藤誉氏は、これほどまでして、なぜ、ファーウェイ
をかばうような発言をするのでしょうか。ファーウェイをあまり
追いつめるとロクなことにならないとまで発言しています。遠藤
氏の本を読むと、ファーウェイの創業者である任正非氏は確かに
人民解放軍に在籍していたものの、それは「軍民転換」といって
そういう人はたくさんおり、だからといって、軍のために何かを
することはないし、ましてスパイなどではないといいます。
 しかし、自由主義陣営は、「ファーウェイ排除」でまとまりそ
うな情勢です。とくにグーグルのソフトウェア制限は、ファーウ
ェイにとって深刻です。   ──[中国経済の真実/013]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ排除の内幕、激化する米中5G戦争
  ───────────────────────────
   [キャンベラ/21日/ロイター]2018年初頭、オー
  ストラリア首都キャンベラにある低層ビル群の内部では、政
  府のハッカーたちが、破壊的なデジタル戦争ゲームを遂行し
  ていた。
   オーストラリア通信電子局(ASD)のエージェントであ
  る彼らに与えられた課題は、あらゆる種類のサイバー攻撃ツ
  ールを使って、対象国の次世代通信規格「5G」通信網の内
  部機器にアクセスできた場合、どのような損害を与えること
  ができるか、というものだ。
   このチームが発見した事実は、豪州の安全保障当局者や政
  治指導者を青ざめさせた、と現旧政府当局者は明かす。5G
  の攻撃ポテンシャルはあまりにも大きく、オーストラリアが
  攻撃対象となった場合、非常に無防備な状態になる。5Gが
  スパイ行為や重要インフラに対する妨害工作に悪用されるリ
  スクについて理解されたことが、豪州にとってすべてを一変
  させた、と関係者は話す。
  電力から水の供給、下水に至るすべての必須インフラの中枢
  にある情報通信にとって5Gは必要不可欠な要素になる──
  マイク・バージェスASD長官は3月、5G技術の安全性が
  いかに重要かについて、シドニーの研究機関で行ったスピー
  チでこのように説明した。「世界的な影響力拡大を目指す中
  国政府の支柱の1つとなった創立30年の通信機器大手、華
  為技術(ファーウェイ)に対する世界的な締め付けを主導し
  たのは、米政府だと広く考えられている。
                  https://bit.ly/2YSDhIT
  ───────────────────────────

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誤魔化し方が上手ではないポンペオ国務長官

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2019年05月30日

●「国家情報法と任正非CEOの反論」(EJ第5015号)

 ポンペオ国務長官にインタビューを仕掛けた米CNBCテレビ
のアンドリュー・ロス・ソーキンス記者が、ファーウェイトップ
の任正非CEOへの次の発言を再現することにします。
─────────────────────────────
ソーキン:私はリスクを減らすことに興味はありません。私が質
 問しているのは、ファーウェイのCEOが「ほら、私たちは他
 者と情報を共有していません。私たちは中国政府と協力してい
 ないのです」と主張しているからです。
─────────────────────────────
 遠藤誉氏は、任正非CEOが、この「私たちは中国政府と協力
していない」という発言を、いつ、どのような場面での発言かに
ついて調査しています。その結果、それは、今年の1月15日に
AP通信やCNBCを含めた英語圏の海外記者による集団インタ
ビューのなかでの発言であることがわかったのです。
 そこでは、記者たちから、中国の「国家情報法」との関連での
ファーウェイの対応をとことん聞いているのです。そのときの任
正非CEOの回答を要約して再現します。
─────────────────────────────
記者団:あなたは、中国政府の要求があっても、絶対に従わない
 と言っていますが、しかし、あなたは共産党員ですよね。それ
 でも中国政府の要求を拒否できるというのですか?どうやって
 中国政府に抵抗できるのですか?どうやって顧客を安心させる
 ことができるのですか?
任正非:私の会社はビジネスの会社だ。ビジネス企業の価値観は
 顧客が中心だ。私個人の政治的信仰とビジネス行動は必ずしも
 一致しない。私は、絶対に中国政府に服従して顧客を裏切るよ
 うなことはしない。今日のインタビューが報道された後の将来
 20年から30年、もし私がまだ生きていたとしたら、私がい
 ま言った言葉を覚えておいてほしい。そして私が行動を以て、
 この言葉を証明することを見届けてほしい。
記者団:アップルはアメリカ政府の要求に従わず、政府を訴えて
 司法に持ち込んだ。中国にはファーウェイに、このような行動
 を可能ならしめる法律制度はあるか?
任正非:私は絶対に中国政府の要求を実行しない。となると中国
 政府が私を訴えるのであって、私が政府を訴えることにならな
 い。もっとも私は中国政府が私を訴えるか否かは分からない。
                  https://bit.ly/2Wtht9g
─────────────────────────────
 この記者団と任正非CEOのやり取りを聞いて、ファーウェイ
のCEOのいっていることに納得できるでしょうか。CEOは、
「私としては絶対に政府に屈服しない」と強調するだけで、それ
をもって信用してくれといわれても、素直に受け入れられないと
思います。何しろ、中国は、これまで、共産党の命令に従わない
者に対し、情け容赦ない弾圧をやってきているからです。
 これに対して遠藤誉氏は、国家情報法における「情報」とは、
中国には民主化を求めて国家転覆を図ろうとする者がたくさんお
り、そういう個人や組織の所在を知っている者が政府に密告する
ことを合法化したものであるといいます。つまり、「反政府分子
を匿ってはならない」という趣旨の法律であるというのです。
 しかし、国家情報法第7条は、「いかなる組織及び国民も、法
に基づき国家情報活動に対する支持、援助及び協力を行い、知り
得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない」と、
いくらでも情報の拡大解釈ができる条文になっており、恣意的運
用が行われる可能性は十分あると思います。
 しかし、遠藤氏は、「もし、任正非CEOが国家情報法に基づ
き、知り得た情報を中国政府に提供したら、どうなるか」という
観点で次のようにも述べていますが、こちらは納得できます。
─────────────────────────────
 これが「国家情報法」の基本ではあるが、仮に、海外の感覚で
「国家情報法」を解釈し、ファーウェイが中国政府に屈服したと
しよう。そのとき、何が起きるか――?
 まずファーウェイ社員の燃えるような使命感は、その瞬間に消
失する。新しい半導体チップを命を賭けて設計していくぞという
ような意欲は無くなり、普通の国有企業の従業員のように、やる
気が無くなり、真に意欲を持つ者は、ファーウェイから去って、
もっと小さな民間企業に移るだろう。つまり、この時点で中国は
5Gにおいて世界の最先端から脱落し、ハイテク国家戦略「中国
製造2025」の完成も絵に描いた餅になってしまうということ
である。この構図が面白いのだ!
 習近平国家主席は、このことに激しく苦悩しているだろう。こ
こにこそ「中国の特色ある社会主義国家」の限界があることに気
が付かなければならない。           ──遠藤誉氏
                  https://bit.ly/2HFihQa
─────────────────────────────
 遠藤氏は、日本人に対しても怒りをぶつけています。「一部の
日本人は、(私が)少しでもファーウェイと中国政府の関係に関
する真相を書くと、『アイツは中国の工作員だ』と誹謗すること
しかしない」と。そして、日本のメディアの対応に関しても次の
ように疑問を呈しています。
─────────────────────────────
 ファーウェイに関して「証拠を出せ」とアメリカ政府に迫って
いないのは、日本国、一国であることを認識したいものである。
アメリカのメディアでさえ、「証拠を出せ」と迫っていることが
このCNBC報道で分かったはずだ。しかし共同通信は、その部
分は無視して、「嘘つきだ」という部分だけを切り取って日本人
に知らせた。これは、国益に適っているのだろうか?私たちには
「真実を知る権利」がある。          ──遠藤誉氏
                  https://bit.ly/2Wsemyt
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/014]

≪画像および関連情報≫
 ●日本もファーウェイ排除の方針。その懸念の真偽と被る影響
  ───────────────────────────
   貿易問題や通信分野の覇権争いで対立する米中。米国政府
  はファーウェイやZTEを名指しで政府調達から排除した。
  さらに、同盟国に中国通信大手の排除を要請した模様だ。そ
  して、日本政府は「IT調達に係る国の物品等又は役務の調
  達方針及び調達手続に関する申合せ、(以下、IT調達申合
  わせ)」を公表した。
   そもそも、日本政府はサイバーセキュリティにまったく無
  頓着なわけではなく、従来から中国製品を警戒していた。そ
  れでも敢えてIT調達申合せを公表したのは、米国政府の要
  請に呼応して同調姿勢を明確化する狙いなのだろう。
   ただ、日中関係が改善傾向にある中で、日本政府としては
  中国政府を過度に刺激したくないはずだ。日本政府はIT調
  達申合せについて「防護すべき情報システム、機器、役務な
  どの調達に関する方針や手続きを定め、特定の企業や機器の
  排除が目的ではない」と説明し、名指しは避けて中国政府に
  配慮した格好だ。
   IT調達申合せの公表前には複数の報道機関が日本政府に
  よる中国通信大手の排除を報じ、それに中国政府は強い表現
  で反発した。しかし、IT調達申合せの内容を公表後は不快
  感こそ示したが、発言は抑制的な表現にとどめた。名指しで
  排除されない限り、中国政府としては強い表現での反発は難
  しく、この点は日本政府の狙い通りだ。
                  https://bit.ly/2ECV6UU
  ───────────────────────────

遠藤誉筑波大学名誉教授/理学博士.jpg
遠藤誉筑波大学名誉教授/理学博士
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2019年05月31日

●「最強の未公開企業/ファーウェイ」(EJ第5016号)

 遠藤誉氏は、ファーウェイという企業が、どのような企業であ
るかについて、レポートの最後に「追記」として書いていますの
で、今回はこれを要約してお伝えします。
 中国共産党の一党独裁国家、中国という国にとって重要なのは
あくまで国有企業であり、民営企業ではないのです。とくに習近
平政権では国有企業優先です。しかし、皮肉なことに、現在の中
国は、民営企業、それも世界中でビジネスを展開するグローバル
企業によって躍進し輝いているといえます。
 ファーウェイも中国政府から潰されかけたことがあるのです。
つねに中国政府から嫌がらせを受けてきたので、イノベーション
を起こして、最先端の半導体チップの製造技術で生き残りを賭け
たのです。そのため、任正非CEOは、政府によって潰されない
ように次の2つの手を打ったのです。
─────────────────────────────
      1.海外に多くの支店を保有すること
      2.従業員持ち株制度を導入したこと
─────────────────────────────
 ひとつは、海外支店網の拡充です。確かに海外に幅広く支店網
を持っていると、潰しにくくなります。そういう思惑もあって、
現在ファーウェイは、海外に170の支店網を有しています。
 もうひとつは、従業員持ち株制度を導入したことです。最先端
技術で生き残るには、従業員のモチベーションを高め、高度な技
術力を保有する必要があります。そのための従業員持ち株制度で
すが、これについて遠藤誉氏は自著で次のように書います。
─────────────────────────────
 2つ目の「従業員持ち株制」というのも、従業員の働く意欲を
強化する意味で、すばらしいアイディアだ。ホァーウェイ総裁の
任正非自身の持ち株は1・3%で、残りの98・7%の株主は、
すべて従業員なのである。だから従業員の働くモチベーションを
高め、優秀で若い人材を惹きつけていく。会社の収益が増えれば
給料以外に株の収益が従業員のポケットに入るのだから、なんと
しても会社全体を成長させ発展させていこうと思うだろう。こう
して働くモチベーションをこの上なく高めてくれる。だから任総
裁はホァーウェイを上場させないのだという。おまけに会長は3
人いて輪番制で、半年に1回ごとに代わる。だから、我欲による
腐敗が起きない。           ──遠藤誉著/PHP
              『「中国製造2025」の衝撃/
            習近平はいま何を目論んでいるのか』
─────────────────────────────
 任正非CEOは、何よりも社員のモチベーション向上が重要と
考えたのです。なぜかというと、半導体の技術レベルを世界最高
レベルの米国クアルコムと同レベルの半導体を作るためです。そ
れには、企業一丸となって、並はずれた努力が必要になります。
その結果、従業員が98・7%の株を握るという特異な未公開企
業が誕生したのです。それがファーウェイという企業なのです。
 そこまで技術レベルを高めておけば、もし中国政府が潰しにか
かってきても、米国企業に売れるからです。ところが現在、ファ
ーウェイは、半導体チップの製作において、クアルコムに肩を並
べるどころか、クアルコムを抜く技術力を蓄えつつあります。任
正非CEOは、そうなると今度は米国が圧力をかけてくるに違い
ないと考えたのです。事実その通りになりつつありますが、任正
非CEOは、そのことを予測して本を書いています。そのタイト
ルは、『次に倒れるのは華為(Huawei)だ』であり、この本を基
にして、邦訳された本が次の本です。
─────────────────────────────
  田濤(著/原著)/呉春波(著/原著)/内村和雄/訳
 『最強の未公開企業ファーウェイ/冬は必ずやってくる』
                   東洋経済新報社刊
─────────────────────────────
 この本は、まだ読んでいませんが、読む必要がありそうです。
というのは、米国によるファーウェイ排除の原因がこの本から読
み取れる可能性が高いからです。アマゾンは、この本を推薦する
一文のなかで、次のように書いています。
─────────────────────────────
 ファーウェイは急成長するにつれて、かつて教えを請い、信頼
を寄せた米企業から訴えられたり、人民解放軍と密接なつながり
を持ち、保護を受け、通信情報を軍に流しているのではないかと
ウワサされ、ロビイストの暗躍する米議会に問題視されて、いわ
ばアメリカそのものを敵に回したこともありました。任の経営哲
学は時に秘密主義とも呼ばれ、株式公開をしないこともあり、実
態がなかなかうかがい知れず、厚いベールに包まれてきたことも
そうした憶測を助長しました。    https://amzn.to/2Wc7o13
─────────────────────────────
 こうした米国の疑心暗鬼が、現在のファーウェイ排除の原因に
なっているのではないかと考えます。何か確たる証拠があるので
はない。何となく怪しいというレベルではないかと遠藤氏はいう
のです。しかし、遠藤氏にいわせると、それは任正非CEO自身
が事前に予測していたことだといいます。ファーウェイの技術レ
ベルが上がってくると、どうしてもそういう疑心暗鬼が生まれて
くる──遠藤氏はそう考えているようです。
 このレポートの結びのところで、遠藤誉氏は次のようにいって
います。この文章を読んで少しホッとした感じです。
─────────────────────────────
 「中国政府の支援がない状態で、ここまで巨大化できるはずが
ないだろう」と疑うのは中国政治の真相を知らない者の邪推だ。
筆者は、「言論弾圧をする国に世界を制覇させてはならない」と
いう警鐘を鳴らすために執筆活動を続けている。この信念は揺る
がない。       ──遠藤誉氏 https://bit.ly/2Wsemyt
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/015]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイのスマホは“危険”なのか
  ───────────────────────────
   米紙ウォールストリート・ジャーナルは先日、米国が中国
  の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の製品を使わ
  ないよう友好国に要請していると報じた。日本でもこのニュ
  ースは大きく取り上げられた。
   実はこの問題、欧米の情報機関関係者やサイバーセキュリ
  ティ関係者の間で、以前から取り沙汰されてきた。筆者もこ
  のニュースについては注視しており、これまでもさまざまな
  媒体で何度も記事を書いてきた経緯がある。
   国内外の知人らと話していると、ファーウェイの商品が、
  「安価でハイスペックな機器である」と評価する人たちも多
  い。先日仕事で訪れた、中国と複雑な関係にある台湾でも、
  IT関係者は「賛否あるが、コストパフォーマンスの良さは
  否定できない」と言っていたのが印象的だった。日本でも、
  最近ファーウェイのタブレットを購入したという日本人のテ
  レビ関係者から、「品質は申し分ない」と聞いていた。事実
  日本の「価格.com(カカクドットコム)」でスマートフォン
  ランキングを見ると、ファーウェイのスマホが1位、タブレ
  ットでも3位につけている(11月27日時点)。
   とはいえ、このテレビ関係者はニュースを見ていて不安に
  なるという。仕事柄、いろいろな情報を扱うこの関係者は、
  中国政府系ハッカーなどによるサイバー攻撃でスパイ行為に
  さらされる危険性があるのではないか、と心配していた。こ
  こまでとは言わないでも、同じように気になっている人も少
  なくないだろう。        https://bit.ly/2WWesvo
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先端技術の米中の対決.jpg
先端技術の米中の対決
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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