2019年04月25日

●「iPS細胞がん化の3つのリスク」(EJ第4996号)

 今回のテーマである「米中ロ覇権争いの行方」に突然割り込ん
だ「iPS再生医療の緊急ニュース」については、今日と明日の
EJで一応終了し、5月7日からのEJは、元のテーマに戻りま
す。なお、iPS再生医療については、EJの次のテーマとして
取り上げることを考えています。
 iPS細胞がなぜがん化するのか、そのメカニズムはわかって
います。iPS細胞による臨床研究に携わる関係者は、全員その
ことは承知していることです。しかし、彼らは、がん化について
は、いっさい口を閉ざして語っていないのです。そこで、iPS
細胞がなぜがん化しやすいかについて、基本的なことを簡単に述
べておきます。なお、これは2015年の「STAP細胞事件」
のテーマのときに既に述べていることです。
 iPS再生医療のがん化の危険は、次の3つにまとめることが
できます。
─────────────────────────────
         1.がん化の危険/1
         2.がん化の危険/2
         3.がん化の危険/3
─────────────────────────────
 「がん化の危険/1」について説明します。
 iPS細胞は、マウスの皮膚の細胞に山中ファクターと呼ぶ4
つの遺伝子を入れて培養し、作ります。山中ファクターとは次の
4つです。
─────────────────────────────
           1. Oct4
           2. Sox2
           3. KIf4
           4.c─Myc
─────────────────────────────
 この山中ファクターのなかで、4番目の「c─Myc」は強い
発がん性遺伝子です。実際に実験において、4つの遺伝子を入れ
て作ったiPS細胞によるキメラマウスのうち、半分は正常だっ
たものの、20〜40%ぐらいのマウスには甲状腺などにがんが
できたのです。これは大問題です。
 しかし、この問題は幸運にも解決します。山中研究室の研究員
の一人が「c─Myc」を使わず、3ファクターだけでiPS細
胞の作成に成功したからです。「c─Myc」のファクターを使
わないと、iPS細胞を作る効率は悪くなるものの、作れること
がわかったことは大きな成果であり、「がん化の危険/1」は克
服されたことになります。
 「がん化の危険/2」について説明します。
 問題は、山中ファクターをどのようにして体細胞に送り込むか
ということです。これには運び屋としてウイルスを使うのです。
これを「ウイルスベクタ−」といいます。ごく簡単にいうと、ウ
イルスに遺伝子組み換えをしたいDNAを組み込んで、このウイ
ルスを遺伝子組み換えをしたい目的の細胞に感染させるのです。
 これについて、田中幹人編『iPS細胞/ヒトはどこまで再生
できるか』(日本実業出版社)の著者は、ウイルスによってがん
化が起きる可能性について、次のようにのべています。
─────────────────────────────
 ウィルスを利用して遺伝子を体細胞に組み込むとき、「どこに
入るかわからない」という欠点がある。これは遺伝子組み替えの
宿命ともいえる。遺伝子配列を本に例えるなら、狙った位置では
なく、別のページに因子遺伝子が貼り付けられる場合も起こりう
る。すると、「問題を引き起こすかもしれない。こういった仕組
みによって、ガンを抑制している遺伝子が読み取れなくなり、間
接的にガンを引き起こすケースも確認されているのだ」。
             ──田中幹人編/日本実業出版社刊
        『iPS細胞/ヒトはどこまで再生できるか』
 ──船瀬俊介著『STAP細胞の正体/「再生医療は幻想だ」
             復活!千島・森下学説』/花伝社刊
─────────────────────────────
 「がん化の危険/3」について説明します。
 これについては、iPS細胞研究チームは、一切口を閉ざして
語らないのです。研究チームだけではないのです。医学界も沈黙
し、メディアも触れようとしません。どうしてでしょうか。これ
を明かしたのは次の本です。
─────────────────────────────
 舩瀬俊介著/森下敬一監修
 『STAP細胞の正体/「再生医療は幻想だ」復活!千島・
                   森下学説』/花伝社
─────────────────────────────
 人体は、約60兆個の細胞で構成されています。これらの体細
胞も寿命があります。ある程度まで増殖すると、増殖が止まり、
「終始期」という終末サイクルに入り、細胞は次世代の細胞に引
き継がれるのです。
 これらの細胞が「終始期」に入るとき、増殖を止める2つのブ
レーキがかかります。それは、次の2つのタンパク質です。
─────────────────────────────
            1. RB
            2.P53
─────────────────────────────
 この2つのブレーキ役のタンパク質がちゃんと働かないと、増
殖が止まらず、がん化してしまうことになります。しかし、再生
医療では、iPS細胞を増殖させようとします。そのとき、これ
ら2つのタンパク質が邪魔になります。そこで、iPS細胞を作
るときは、2つの酵素を叩いて、機能をストップさせているので
す。そうすると、何が起きるでしょうか。ブレーキ役が不在です
から、iPS細胞だけでなく、がん細胞も増殖してしまうことに
なります。      ──[米中ロ覇権争いの行方/077]

≪画像および関連情報≫
 ●iPSから対がん免疫細胞を作製 京大などが発表
  ───────────────────────────
   人のiPS細胞から、がんへの攻撃力を高めた、免疫細胞
  「キラーT細胞」を作製したと、京都大などのチームが発表
  した。免疫の力でがんを治療する「がん免疫療法」の新たな
  手法につながる可能性がある。京大iPS細胞研究所が保管
  するiPS細胞を使うことで、短期間で多くのキラーT細胞
  をつくることができる。今後、実際の患者に使う臨床試験の
  準備を進めるという。
   人の体内では、絶えずがんが生まれているが、キラーT細
  胞を含む免疫細胞が攻撃することで、健康を保っている。だ
  が、がんが、免疫のしくみを回避したり、免疫細胞の攻撃力
  が弱まったりするとがんが増殖し、発症すると考えられてい
  る。チームは、第三者の血液由来のiPS細胞にがんを認識
  する遺伝子を組み込んだ。その後、キラーT細胞のもととな
  る細胞の状態に変化させて増殖。ステロイドホルモンなどを
  加えて培養し、がんを攻撃する、高品質のキラーT細胞をつ
  くった。人のがんを再現したマウスに注射したところ、何も
  しない場合に比べ、がんの増殖を3〜4割に抑えられた。が
  ん治療薬「オプジーボ」は、がんが免疫のしくみを回避する
  のを防ぐ。一方、今回の方法は免疫の攻撃力を上げることで
  がんの治療をめざす。チームの金子新・京大iPS細胞研究
  所准教授は「従来の免疫療法が効かない患者への治療法や、
  併用して使う選択肢にしたい」と話している。米科学誌「セ
  ル・ステムセル」に掲載される。(野中良祐)
                  https://bit.ly/2ILZJyI
  ───────────────────────────


ヒトiPS細胞の作り方.jpg
ヒトiPS細胞の作り方
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
RDF Site Summary