2019年04月23日

●「理研はどうしてがん化を隠すのか」(EJ第4994号)

 現在、日本において、iPS細胞を使った主な再生医療の臨床
応用への動きとしては、次の5つがあります。
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 1.加齢黄班変性 (2013年開始) ・・・・・ 理研
 2.パーキンソン病(2018年開始) ・・・・・ 京大
 3.脊髄損傷   (2019年開始) ・・・・・ 慶応
 4.角膜疾患   (2019年開始) ・・・・・ 阪大
 5.心臓病    (2019年開始) ・・・・・ 阪大
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 これを見るとわかるように、理化学研究所による「加齢黄班変
性」の臨床研究が、鳴り物入りでスタートしてから、5年間は新
しい臨床研究は何も走っていないのです。しかし、2018年に
入ってから、京都大学の高橋淳教授らによるパーキンソン病への
臨床研究を皮切りに4つの臨床研究が、ほぼ同時にスタートして
います。一体この5年間に何があったのでしょうか。
 2011年10月、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長
がノーベル・医学・生理学賞を受賞し、その急速な普及に国民の
期待が一挙に高まったのは、記憶に新しいところです。「日本に
は世界に類のない『iPS再生医療』という医療技術がある」と
多くの日本人が誇りと期待を抱いたと思います。
 しかし、理研の高橋政代プロジェクトリーダーたちが開始した
自己細胞を使った「加齢黄班変性」の臨床研究は、事実上の中止
に追い込まれていたのです。しかし、理研はそのことを公表して
いないし、メディアもある程度わかっていても、きちんと伝えて
いないのです。それは、iPS細胞が、がん化する危険を組織ぐ
るみで隠匿しようとする姿勢があることです。これについて『選
択』では、次のように批判しています。
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 (高橋プロジェクトリーダーたちが始めた)研究は、患者の細
胞を採取し、体外でiPS細胞を作り、網膜細胞に育てるという
もの。iPS細胞に限らず、体外で細胞を培養すると、遺伝子変
異が生じやすい。さらに、幼弱なiPS細胞を網膜細胞などに完
全に分化させないまま戻してしまえば腫瘍化してしまう。iPS
細胞の臨床応用に立ちはだかるのは、がん化する危険性だ。実際
それは2例目の症例で問題となった。高橋氏らが投与前にiPS
細胞の遺伝子を解析したところ、発がんに関する複数の遺伝子異
常が見つかった。このまま戻せば移植したiPS細胞から、がん
が生じかねない。      ──「幻想」のiPS再生医療」
              『選択』/2019年4月号より
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 理研の高橋政代氏は、この臨床研究の経過を世界的に権威のあ
る「ニューイングランド医学誌」で発表していますが、この研究
の最大の問題である遺伝子異常の詳細に言及していないばかりか
現在にいたるまでそのことを公表すらしていないのです。
 こういう理研の姿勢に対して、米国在住のある研究者は、次の
ように批判し、懸念を表明しています。
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 現時点で、iPS細胞による再生医療が成功していると考えて
いる人は誰もいない。安全性に関する重大な疑問があるのに、そ
れを公表していない。  ──『選択』/2019年4月号より
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 「ネイチャー・バイオテクノロジー」誌にいたっては、「理研
のiPS治療は失敗した」と酷評すらしているのです。なぜ、そ
こまでいわれて、研究機関が黙っているのかというと、それは安
倍政権がこのiPS再生医療に深く関与しているからです。
 「iPS細胞はがん化する」──これは後からも述べますが、
事実です。しかし、これだけは口が裂けてもいえないというのが
理研の姿勢です。当然この姿勢は世界中の研究者から批判を浴び
ることになります。
 その後、理研は、自己細胞ではなく、他人の細胞を用いる方針
に変更したのです。他人の細胞で問題が解決されるわけではなく
がん化の危険は依然としてあるのですが、他人の細胞を使う方が
コストを下げられるメリットがあるという話法に統一するように
したようです。例えば次のようにです。そのさい、がん化の話は
一切せず、あくまでコストが安くなると訴えるのです。
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 iPS細胞は京都大学(京大)の山中伸弥教授らが発見した。
体の様々な細胞に変化させられる。2年前には世界で初めて、理
化学研究所(理研)などがiPS細胞からつくった目の細胞を目
の難病の患者に移植した。
 そのときは、患者本人の皮膚の細胞から、iPS細胞をつくっ
た。その患者だけが使える専用の細胞を準備し、慎重に安全かを
調べたので、手術の準備に10ヶ月間、約1億円がかかった。
 本人だけでなく、いろんな人に使えるiPS細胞を前もって準
備できれば、もっと早く手術が可能だし、一人あたりの費用も安
くできる。そこで、今回は、あらかじめ健康な人から提供しても
らった血の中の細胞からiPS細胞をつくっておくiPS細胞ス
トックを使う計画だ。理研の高橋政代プロジェクトリーダーは、
「前回の費用で5人分はカバーできると思う」と話している。
                  https://bit.ly/2IuUJzl
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 確かに患者個人の細胞を使うよりも、事前に多くの人の細胞か
らiPS細胞を作り、備蓄しておけば、必要なとき、すぐ使える
ので便利であるし、コストも下がるという理屈は成り立ちますが
それはがん化を防ぐことにはならないのです。
 それにしても安倍政権は、どうして山中教授のiPS再生医療
にかくも肩入れすることになったのでしょうか。それは、第1次
安倍政権のときからの因縁があるのです。そもそも安倍首相と山
中教授をつないだのは、第1次政権で首相補佐官だった世耕弘成
氏なのです。     ──[米中ロ覇権争いの行方/075]

≪画像および関連情報≫
 ●パーキンソン病のiPS治験、1例目実施 京大病院
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   パーキンソン病は、脳内で神経伝達物質のドーパミンを出
  す神経細胞が減り、手足の震えや体のこわばりなどが起こる
  難病。国内に約16万人いるとされるが、根本的な治療法は
  ない。京大によると、1例目の患者には50代男性を選定。
  10月にiPS細胞から作製した約240万個の細胞を左側
  の脳内に移植する手術を実施した。脳出血などは起きていな
  い。今後2年間にわたり術後の経過を観察、評価する。
   治験では、京大が備蓄する、拒絶反応が起こりにくい型の
  他人のiPS細胞からドーパミンを出す神経細胞のもととな
  る細胞を作製。患者の頭蓋骨に直径12ミリの穴を開け、脳
  に注射針のような器具で細胞を注入する。動きにくさなどの
  症状の改善や、進行を抑えたり服用する薬の量を少なくした
  りする効果が期待できるという。
   京大が7月に発表した計画では、50〜69歳の患者7人
  を対象に治験を行い、効果を検証する。薬物治療で十分な効
  き目がなく、5年以上パーキンソン病にかかっていることな
  どが条件となっている。iPS細胞の再生医療では、これま
  で理化学研究所などがiPS細胞から作った網膜の細胞を目
  に重い病気のある患者に移植する世界初の臨床研究を実施。
  大阪大はiPS細胞から作った心筋シートを重症心不全患者
  の心臓に移植しようと計画中。京大は、血液成分「血小板」
  を難病貧血患者に輸血する臨床研究計画も進めている。
                  https://bit.ly/2PlErt4
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iPS細胞による再生医療/パーキンソン病.jpg
iPS細胞による再生医療/パーキンソン病
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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