2019年04月11日

●「量子暗号通信米国も負けていない」(EJ第4986号)

 ナチス・ドイツの暗号マシン「エニグマ」は、ポーランドのレ
イフェスキがヒントを提供し、英国の天才的暗号解読者、アラン
・チューリングが解読に成功したといわれています。実際にアラ
ン・チューリングがどのようにして「エニグマ」を解読したかに
ついては映画になっています。
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 『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』
             監督:モルティン・ティルドゥム
         出演:ベネディクト・カンバーバッチほか
                2015年3月13日公開
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 アラン・チューリングとは何者でしょうか。
 チューリングは、想像の世界で現代のコンピュータの前駆的マ
シンを作った人物です。そのマシンは「チューリング・マシン」
と呼ばれ、大変有名です。科学ライターの竹内薫氏の独特の筆致
で、チューリングマシンの基本的仕組みをご紹介します。
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 凄い機械なのだ(想像の産物やけど)。だが、構造はシンプル
だ。なんせ、チューリング・マシンには、たった3つの部品しか
ない。テープとヘッドと本体だ。まず1つ目は、書き換え可能な
テープ。このテープは「均等なマス目が1列に並んでいるような
もの」である。テープの長さは無限だ(想像の機械やからね)。
テープには、入力/出力データが書き込まれる。2つ目はテープ
に接するヘッド。ヘッドはテープの1マス分の大きさで、「マス
に書かれた情報を読み取ること」と「マスに情報を書き込むこと
/消去すること」ができる。さらにヘッドはテープの1を左右に
1マスずつ動くことができる。3つ目は、ヘッドと情報をやりと
りする本体。本体には、プログラムを格納でき、プログラムが実
行されている状況を一時的に記憶できる。ここでのプログラムは
状態遷移関数を並べたものだ。  ──竹内薫著/丸山篤史構成
 『量子コンピュータが本当にすごい/ Google、NASA で実用が
        始まった“夢の計算機”』/PHP新書987
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 竹内薫氏がいうように、チューリング・マシンは「想像上のマ
シン」であり、チューリングは、実際に機械を作ろうとしたわけ
ではないのです。チューリングは、『計算可能な数について』と
いう数学の論文のなかで、人間の論理思考を「機械」に喩えよう
としたのです。これは、現在のコンピューターの基本的なアーキ
テクチャーを決める、生物学でいうところのDNAの構造を確定
するような理論だったのです。
 前記の映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者
の秘密』では、「エニグマ」を解読するために、電気と歯車で動
く機械を組み立てて、その日のエニグマの設定を見つけ出そうと
悪戦苦闘する姿が描かれています。私は、現時点でこの映画を見
ておりませんが、時間のある時に観てみたいと考えています。
 ついでに述べておくと、英国軍が暗号解読にやっきになってい
たころ、アメリカでは大砲の弾道計算表をつくるために高速計算
機「ENIAC」が開発されたのです。これは世界初のコンピュ
ータといわれていますが、これは現在のコンピュータのように2
進数ではなく、10進数で作られていたのです。
 アラン・チューリングは、こういう天才にありがちな精神的な
葛藤から、青酸カリを飲んで自殺してしまうのです。1954年
のことです。遠藤誉氏も、このチューリングについて、次のよう
に述べています。
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 このナチスの暗号を解読した功労者の一人に、イギリスのアラ
ン・マシスン・チューリング(1912年6月23日〜54年6
月7日)という暗号解読者がいる。彼がいなかったら、果たして
ドイツを敗北に追いやることができたか否かも怪しいほど、彼の
功績は大きい。(中略)
 もし、チューリングが生きていれば、量子暗号に関して中国と
オーストリアが協力体制に入ることもなかっただろうし、戦後の
国際社会の中で、かつてのあの大英帝国の威光を失ってイギリス
が没落していくことも、もしかしたら、なかったかもしれない。
アメリカ一国が強国となって、世界のトップに立つこともなく、
暗号を牛耳った者が世界を制するという原則に従って、中国をこ
のように「のさばらせなかった」かもしれないのである。
   ──遠藤誉著/PHP/『「中国製造2025」の衝撃/
            習近平はいま何を目論んでいるのか』
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 欧米や日本は、早い段階から、中国を遥かに上回る高度なレベ
ルの通信技術を持っていたのに、なぜここにきて中国に抜かれて
しまったのでしょうか。
 これについてはこのあと検証しますが、2018年10月26
日、注目すべきニュースが入ってきています。
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 アメリカ東海岸に設置された全長800キロに及ぶ未使用の光
ケーブル(ダーク・ファイバー)が本格的な商用量子暗号ネット
ワークとして活用される。計画では今年中に最初の顧客を受け入
れるという。これにより量子暗号化によって暗号鍵を交換する商
用サービスがアメリカで初めて運用されることになる。(中略)
 量子暗号化を利用したネットワークというのは新しいコンセプ
トではない。しかしテクノロジーの発達と現行の暗号システムに
対する攻撃が繰り返され、安全性に懸念が生じていることの双方
の理由から最近急速に注目を集めるようになっている。これは量
子力学の理論と光子を利用して暗号鍵を交換する通信だ。理想的
な状態では傍受により量子状態が変化するため、中間での盗聴が
不可能となる。           https://tcrn.ch/2Iu2CEp
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           ──[米中ロ覇権争いの行方/067]

≪画像および関連情報≫
 ●AIではなく、量子コンピュータが我々の将来を決める
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   「量子(quantum)」 という言葉は、20世紀後半になっ
  て他の一般的な形容詞では表せない、何かとても重要なもの
  を識別するための表現手段となった。例えば「Quantum Leap
  (量子の跳躍)」は劇的な進歩のことを意味する(スコット
  主演の、90年代初頭のテレビシリーズのタイトルでもある
  が)。もっとも、それは面白いとしても不正確な定義だ。し
  かし、「量子」を「コンピューティング」について使うとき
  我々がまさに劇的な進歩の時代に入ったことを表す。
   量子コンピューティングは、原子と亜原子レベルで、エネ
  ルギーと物質の性質を説明する量子論の原理に基づいた技術
  だ。重ね合わせや量子もつれといった理解するのが難しい量
  子力学的な現象の存在によって成立する。
   アーウィン・シュレディンガーの有名な1930年代の思
  考実験は、同時に死んでいて、かつ生きているという一匹の
  猫を題材にしたもので、それによって、「重ね合わせ」とい
  うものの明らかな不条理を浮き彫りにすることを意図してい
  た。重ね合わせとは、量子系は、観察、あるいは計測される
  まで、同時に複数の異なる状態で存在できるという原理だ。
  今日の量子コンピュータは数十キュービット(量子ビット)
  を備えていて、まさに、その原理を利用している。各キュー
  ビットは、計測されるまでは0と1の間の重ね合わせの中に
  存在している(つまり、0または1になる可能性がいずれも
  ゼロではない)。キュービットの開発は、膨大な量のデータ
  を処理し、以前には不可能だったレベルの計算効率を達成す
  ることを意味している。それこそが、量子コンピューティン
  グに渇望されている潜在能力なのだ。
                  https://bit.ly/2U5qL65
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映画「イミテーション・ゲーム」.jpg
映画「イミテーション・ゲーム」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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