2019年04月10日

「エニグマはどうして解読されたか」●(EJ第4985号)

 戦争に暗号は不可欠なものです。日本の暗号「パープル暗号」
は、太平洋戦争が始まる前から、米国に解読されていたというお
粗末さでしたが、日本とともに連合軍と戦ったナチスドイツの暗
号「エニグマ」は、当時世界で最も強力な暗号であり、連合軍側
はなかなか解けず、悩み抜いたといわれます。
 この「エニグマ」によって、ドイツの潜水艦「Uボート」は、
連合軍側の商船を次々と沈め、数万人の生命を奪い、北米からの
物質や兵員を運ぶ重要な補給ルートを遮断したのです。
 「エニグマ」の仕組みについて、ここで詳しく説明するつもり
はありませんが、「エニグマ」の強みは、当日しか使えない「日
鍵」を使うことにあります。オペレータは「日鍵」のコードブッ
クに基づき、毎日機械の設定を調整し、暗号の配列や規則性を変
更していたのです。「エニグマ」は、添付ファイルの写真を見て
いただくとして、どのように操作するか、そのイメージは「エニ
グマ」について書かれた次の文章を読んでください。
─────────────────────────────
 キーボードで「P」のキーを叩くと、対応する電気信号が生じ
それぞれ26本のワイヤーが仕込まれている3枚のローターを経
由してランプボードまで流れる。
 この時ランプボード側で点灯するのは「J」という文字かもし
れない。そしてもう一度「P」のキーを叩くと、一番目のロータ
ーが回転して、配線が組み替わり、電気の流れる経路が変わるた
め、今度は同じ「P」のキーを叩いても、ランプボードで点灯す
るのは「F」のような別の文字になる。
 それぞれ回転するローターが3つあるため、例えばユーザーが
繰り返し「P」のキーを叩いた場合、エニグマが生成するランダ
ムな文字列は、1万9500キーストローク以上にならないと繰
り返さないものになる。そして1941年にドイツ海軍がUボー
ト用のエニグマに4つめのローターを加えたことで、ランダムな
文字列の長さは約45万7000キーストロークに増加した。
 そして、オペレーターから見て、キーボードの手前にあるのが
プラグボードだ。このプラグボードのおかげでエニグマのランダ
ムさがさらに増しているが、これは元々ドイツ軍の兵站に関わる
問題に対処するために考えられたものだった。
                  https://bit.ly/2YW4pHQ
─────────────────────────────
 しかし、「エニグマ」は、相当難航したものの、連合軍側は解
読に成功しているのです。ただし、解読したことは極秘にされた
ので、ドイツは最後まで「エニグマ」を使い続けたのです。それ
は、日本でも同じです。
 それでは、一体どのようにして、「エニグマ」を解読したので
しょうか。「エニグマ」の解読には、次の2つの説があります。
─────────────────────────────
    1.ポーランドのレイフェスキによる解読成功
    2.Uポートの捕獲成功による仕組み解読成功
─────────────────────────────
 「1」について説明します。
 1つの説は、この解読困難な暗号を解読したのが、ポーランド
の暗号解読班「ビュロ・シフロフ」に所属する、若き天才暗号解
読者・レイフェスキであるというものです。
 レイフェスキは、大量の暗号文を元に文字と文字のつながりの
法則を見つけ出し、1京通りある暗号パターンを105456通
りにまで削減することに成功したのです。この105456通り
の暗号文をパターン化して一覧表を作成し、その一覧表をデータ
ベースにして、スクランブラーの設定17576通りを総当たり
にチェックする装置を制作したのです。これにより、毎日変化す
るプラグボードの設定さえわかれば、当日の暗号は全て解読でき
るようになったのです。
 しかし、ナチスドイツはさらに「エニグマ」を複雑にしてきた
のです。こうなると、レイフェスキの作った解読装置では、処理
が困難になります。そこで、ポーランドは、同じ連合国である英
国やフランスの暗号解読機関にこれまでの成果を提供して協力を
求めたのです。
 英国では、やはり「エニグマ」を解読しようと大量の数学者、
科学者を集めていたのです。そのなかには、全英チェスチャンピ
オン、古典学者、美術オタク、焼き物の名人、クロスワードパズ
ルのマニア、トランプの名人など多彩な人物がいたのです。
 そのなかに、後にコンピュータの原型ともいえる「チューリン
グマシン」を開発したアラン・チューリングもいたのです。そし
て「エニグマ」は、彼らの手によってすべて解読され、その後、
間もなくドイツは降伏することになります。
 「2」について説明します。
 アメリカ軍のダニエル・ギャラリー大佐は、何とかドイツの潜
水艦Uボートを丸ごと捕獲しようと試みたのです。Uボートには
「エニグマ」マシンが搭載されているからです。しかし、これは
実に困難な作戦です。戦争に使われる船舶に関しては、その秘密
保持のため、どこの国でも自爆して何も残さないからです。その
ための自爆ボタンも取り付けられているのです。
 しかし、1944年、はじめて奇跡的にUボート「U505」
の捕獲に成功したのです。これについては、次のサイトに詳しい
説明があります。
─────────────────────────────
   ◎エニグマ暗号をすべて手に入れたアメリカ軍作戦
               https://bit.ly/2I5ZoaL
─────────────────────────────
 これによって、米軍は「エニグマ」の全貌を手に入れることが
できたのです。しかし、それはひた隠しに隠されたのです。この
とき捕獲された「U505」は、現在、シカゴ科学産業博物館に
展示されており、誰でも見ることができます。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/066]

≪画像および関連情報≫
 ●「ヒトラーの心を読んだコンピューター」
  ───────────────────────────
   世界は、あるイギリスのハッカー集団に感謝しなければな
  らない。1938年、イギリスで最高の数学者と科学者たち
  が、『エニグマ』の暗号を解読する方法を編み出すよう依頼
  された。
   エニグマとは、ドイツ軍が戦争中に情報をやり取りするの
  に使った暗号機械だ。その結果生まれたのが『コロッサス』
  という世界初の電子的なデジタル・コンピューターだった。
  後継機種である『コロッサス2』は1944年6月1日に稼
  動を開始し、すぐさま、ある暗号メッセージの解読に成功し
  た。そのメッセージはアドルフ・ヒトラーとドイツ軍の最高
  指令部が、連合国の策略――以前から予想されていたイギリ
  ス海峡を越えての進攻が、ノルマンディーの海岸ではなくカ
  レーを目指しているように見せかける計画――に引っかかっ
  ていることを裏付けるものだった。
   ドワイト・D・アイゼンハワー連合軍最高司令官は、この
  情報を武器に、『オーバーロード作戦』の計画を遂行した。
  そして6月6日、ヨーロッパ連合軍はノルマンディーに上陸
  し、史上最大の海越えの侵略を果たした。イギリスのチェル
  トナムにある政府通信本部では先週、コロッサス・プロジェ
  クトに関する文書を正式に機密扱いから外し、2冊からなる
  報告書を、イギリス全体の公文書類を保管する公文書館に移
  した。             https://bit.ly/2U55mtT
  ───────────────────────────

「エニグマ」暗号マシン.jpg
「エニグマ」暗号マシン
.
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
RDF Site Summary