に住んでいます。諸外国に住む中国人のことを「華僑」といいま
すが、中国共産党政府による定義では次のようになっています。
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「華僑」とは、中国大陸・台湾・香港・マカオ以外の国家・地
域に移住しながらも、中国の国籍を持つ漢民族である。
https://bit.ly/1Nyl4Y4
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華僑の他に「華人」という言葉もあります。華僑は、中華人民
共和国の国籍を保持したまま外国に居住する者と、現地国籍も有
する二重国籍の者の両方を意味します。この他に、もともとは中
国人であるけれども、現地国籍しか持っていない者がいます。こ
れを「華人」というのです。現在の中国は、国に役立つ技術を持
つ華僑はもちろん、華人も含めて帰国させようとしています。
ケ小平が目標として目指した「4つの近代化」を達成するため
には、優秀で、将来中国の発展に役立つ人材は、どこにいようと
中央政府として把握しておく必要があります。
世界各国には、「中国人博士協会」というものがあります。日
本にも「全日本中国人博士協会」があります。そのサイトには、
協会について次の説明があります。
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全日本中国人博士協会(以下、博士協会と略記)は、1996
年7月に発足し、日本の教育機関・研究機関・民間企業などにお
いて、学術研究・技術開発・企業経営などに従事している中国人
博士ならびに日本から帰国された博士により構成されている団体
です。 https://bit.ly/2Wtdkib
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これら各国の博士協会は、国家人事部(名称は頻繁に変更され
ている)という中央行政省庁が管轄しています。つまり、全世界
の博士協会が「できる華僑・華人」をウォッチングし、上層部に
報告しているのです。
遠藤誉氏の本に、在日中国博士協会による中国人留学人員の現
況報告のメールの概要が掲載されています。これは、遠藤氏の筑
波大学での教え子からの転送メールです。タイトルは「広州科技
交流会の報告」になっています。
このなかで、米国、とくにシリコンバレーに留学している留学
人員の意識の高さに比べて、日本に留学している留学人員の意識
の薄さが指摘されています。その部分を引用します。
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いま、アメリカや世界各地で活躍している留学人員たちが帰国
して中国で創業するのがブームになっています。アメリカのシリ
コンバレーの中国人企業主の同胞たちは、ふつうの白人たちの収
入よりも何倍も多い収入を得ているようです。カリフオルニアの
シリコンバレーには2万社にのぼる企業が林立しているそうです
が、そのうち、中国人とインド人によって起こされた企業の割合
は、現地の白人が起こした企業数を遥かに上回り、白人はもはや
「少数民族」になりつつあると聞いています。そこでは、新しい
技術を持った創業者は、つねに新しい機会に恵まれているようで
す。日本にいる皆さんには、まだまだこのような意識が薄いと思
います。自分は日本人よりも優れていると自認している人は多い
でしょうが、それでも結局は日本人が経営する大企業とよばれる
会社に就職して、日本人と同じ給料がもらえれば、それで万々歳
と思う人が、それ以上に多いことは非常に残念な事実です。
──遠藤誉著/PHP/『「中国製造2025」の衝撃/
習近平はいま何を目論んでいるのか』
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在日の中国博士協会が焦っているのは、日本には高学歴の中国
人留学生の数が少なく、それを反映して在日の博士協会のパワー
も小さくなっているからです。現在、日本には観光レベルでは、
中国人が圧倒的に多いですが、学問や新技術の開発などにおいて
日本は魅力のある国ではなくなっているのです。ちなみに、日本
の筑波大学は、各国留学生にとって「日本のシリコンバレー」と
いわれているそうです。日本人のほとんどはそんなことは知らな
いと思いますが・・・。
2000年頃からは、「SCOBA(スコバ)」という制度も
始まっています。「SCOBA」は次の略号です。
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◎SCOBA/硅谷留美博士企業化協会
Silicon Vally Chinese Overseas Business Association
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遠藤氏の情報が凄いことは、たとえば、この「SCOBA」に
してもウィキペディアには、中国のサイトを含めて、出てこない
ことです。つまり、最新の情報ということになります。
SCOBAとは、「留学人員向けの短期帰国資金援助国家教育
部経費」というタイトルで始められた制度ということですが、制
度の詳細に関しては不明です。ただ、そのときのSCOBAの担
当は、国家教育部になっていて、国家人事部ではないのです。
しかし、1999年に国家人事部が「グローバル・チャイナ・
タレンツ・ネットワーク」を立ち上げると、それ以後は、国家人
事部の担当になったのです。遠藤氏によると、当時国家人事部と
国家教育部の間には、相当根強い縄張り争いがあったのではない
かということです。
そもそも企業のように、国家人事部とか国家教育部という中央
政府行政組織があることが異常であり、国家が人民を国家権力に
よって厳しく管理している実態が読み取れます。中国にとって目
下の「敵」は米国のみです。したがって、米国にマトを絞って手
段を選ばず、人材戦略を展開中です。しかし、これに「待った」
をかけたのはトランプ米政権です。これはトランプ大統領の大成
果であるといえます。これに対しオバマ前大統領は本当に何もし
なかったといえます。 ──[米中ロ覇権争いの行方/058]
≪画像および関連情報≫
●外国人留学生がガッカリする日本の就職事情
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「就職の面接で『いずれは母国に戻る』と回答したら不採
用になると聞きました。せっかく日本で勉強したのだから、
まずは日本で仕事をしてみようというのが素直な気持ちです
が、正直に答えてはいけないのは変だと思います」
「日本で働きたいと思っても、大企業ならともかく、そも
そも名前を知らない中小企業と出会うチャンスはほとんどあ
りません」「大学の留学課は、生活や履修のことには相談に
乗ってくれますが、就職のこととなると、まるで取り合って
くれません。『キャリアセンターに相談してください』と言
われ、キャリアセンターに行ったら、『留学課で相談してく
れ』とたらい回しにあいました」「工場や小売り・サービス
業で働くために日本へ留学に来たワケではないのですが、就
職できそうな企業はそれらばっかりです」
これは海外から日本へ学びに来ている外国人留学生の声で
す。彼ら、彼女らの多くが日本国内で就職をしようと思って
も、さまざまなハードルに阻まれ、うまくいく人は多くあり
ません。日本政府は2008年に、当時14万人だった留学
生を2020年をメドに30万人まで増やす「留学生30万
人計画」を打ち出しました。
首相官邸のウェブサイトによれば、同計画は、日本を世界
により開かれた国とする「グローバル戦略」の一環だとして
います。計画の実施から9年経ったいま、日本学生支援機構
の高等教育機関などの外国人留学生在籍状況調査によれば、
2016年5月1日現在の外国人留学生は、23万9287
人。8年で約10万人増えた計算です。
https://bit.ly/2uvYz25
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遠藤誉氏/日本記者クラブ講演