2019年03月27日

●中国のある有名な教授の自殺事件(EJ第4975号)

 2018年12月1日のことです。この日、アルゼンチンのブ
ェノスアイレスで、米中首脳会談が開催され、米中貿易戦争の一
時休戦が決まっています。同時にこの日は、ファーウェイの孟晩
舟副会長兼CFOが、カナダで逮捕されています。
 これらのニュースは、世界中に大々的に報道されたので、誰で
も知っています。しかし、その同じ12月1日に、スタンフォー
ド大学の張首晟教授が亡くなっていることについては、一部の人
しか知らないはずです。死因は自殺と見られています。しかも、
これら3つの事件は、無関係ではなく、すべてがつながっている
のです。
 張首晟スタンフォード大学教授とは何者でしょうか。
 張首晟氏は、1963年に中国・上海で生まれ、15歳で上海
の名門・復旦大学に入学し、ドイツ留学後、ニューヨーク州立大
学で物理学博士号を取得しています。33歳で米スタンフォード
大学の教授になり、トポロジカル絶縁体と量子スピンホール効果
で画期的成果を上げ、「将来のノーベル賞候補」といわれるよう
になっていたのです。
 米科学誌「サイエンス」は、張教授率いるチームが2006年
に提唱した量子スピンホール効果について「世界10大成果」の
1つと評価するほど、価値のある素晴らしいものだったのです。
 ところが、12月1日、カルフォルニア州サンフランシスコ市
の大学構内で、飛び降り自殺をしたとされています。まだ55歳
の若さであり、研究者として前途洋々であっただけに、その死を
訝る人が多くなっています。
 2018年4月、グーグルでの張首晟教授の講演(英語)の映
像があります。
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 ◎ITの将来──量子コンピューティング、AI、ブロック
  チェーンについて  ──張首晟スタンフォード大学教授
                 https://bit.ly/2TSpsMT
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 これほどの実績を上げている学者を中国が放っておくはずがあ
りません。張首晟氏はスタンフォード大学教授とともに、習近平
主席の母校である北京・精華大学の客員教授や、江沢民国家主席
の長男が学長を務める上海科技大学の特任教授も務めていたので
す。したがって、当然「千人計画」のメンバーに選ばれていたこ
とは間違いないと思われます。
 それどころか、この張首晟教授こそ「千人計画」の発案者の1
人ともいわれているのです。それに加えて、単なる研究者とは思
えないこともあります。それは、習近平氏が副主席のときに創設
された「国家一等功」賞を次のメンバーとともに受賞しているの
です。この賞を授与されるということは、国家に多大な貢献をし
ていることの証になります。したがって、「千人計画」の対象者
になっていることは明らかです。
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  1.香港「フェニックステレビ」の劉長楽会長兼CEO
  2.「アリババグループ」ジャック・マー(馬雲)会長
  3.中国IT企業「テンセント」のポニー・マーCEO
  4.ファーウェイ(華為技術)の創業者/任正非CEO
  5.張首晟スタンフォード大学教授/精華大学客員教授
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 トランプ政権になってからは、FBIが「千人計画」の対象者
に対する捜索を開始し、「知財泥棒」として逮捕されるケースが
多くなり、海外にいる中国人の間では、「千人計画」ならぬ「入
獄計画」と揶揄されるようになったのです。
 2018年6月には、米国防総省は、下院軍事委員会の公聴会
で、次の警告を行っています。
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 超ハイレベル人材選抜プログラム(「千人計画」)の目的は
 米国の知的財産を獲得することにある。  ──米国防総省
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 一体何が起きたのでしようか。
 これに関連する情報は、ネットに散見されますが、「大紀元」
の情報を引用します。この「大紀元」というメディアは、米国の
華僑によって設立され、新聞のかたちで主に中国人に向けて配信
されますが、中国共産党に対立するスタンスでの、中国国内事情
の暴露報道が特徴的です。
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 サウスカロライナ大学の謝田教授は3つの情報源から得た話と
して、「ヒューストンの研究機関にFBIが訪れた。その直後、
複数の中国人研究者が解雇された」と大紀元に伝えた。在米学者
の間では「FBIは千人計画のリストに基づいて違反者を摘発し
ている」との話が広がっている。
 テキサステック大学は「千人計画に参加するアメリカ人教員を
処罰する」との声明を発表し、同大で客員教授に就任予定の中国
人教授の招へいをキャンセルした。
 そんな中、ネット上の複数の投稿によると、中国教育部は各大
学に対して、「千人計画」が含まれた情報をウェブサイトから削
除するよう通達したという。「友人が通う大学では、千人計画に
リクルートされたある教授に関する情報が全て削除された」「国
内では、(当局が)大規模に『千人計画』の4文字が含まれた投
稿や、リストに入っている研究者の情報を削除している。なぜだ
ろう」。SNS微信(ウィーチャット)の投稿によると、教育部
は、その後、各大学のウェブサイトを点検したという、徹底ぶり
だった。              http://exci.to/2HVy4e6
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 このようなFBIによる捜査のなかで、2018年12月1日
ファーウェイの孟晩舟副会長が逮捕され、FBIの追及に追い詰
められたと思われる張首晟教授が自殺をしているのです。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/056]

≪画像および関連情報≫
 ●「千人計画」のリクルーターになる/財経新聞
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   日本のシリコンバレーと称される筑波で科学技術を学び、
  日本政府から6億円ほどの支援を得てハイテク分野の研究で
  日本と中国で成果を収めてきた中国人の科学技術者がいる。
  中国に帰国した彼は現在、中国共産党政府が、海外のハイレ
  ベルの人材を招聘するプログラム「千人計画」のリクルータ
  ーとなり、人材をスカウトしている。
   中国共産党中央組織部が率いる、海外ハイレベル人材招致
  「千人計画」は2008年にスタートした。当局が公開する
  資料によると、研究職、技術者、大企業での知的財産、技術
  保護の能力など、海外のハイレベルの人材を中国に高待遇で
  招き入れ、そのスキルを中国へ「輸入」する人材計画だ。
   人材の募集要項によると、55歳以下で国籍を問わず、著
  名研究機関の研究者や大手企業で上級管理職を経験した人物
  また中国が求めるハイレベルイノベーション創業人材などを
  対象としている。
   対象者はかなりの厚遇で迎えられる。中央財政からは対象
  人材に一人当たり100万元(約1400万円)の国家奨励
  金とする一括補助が受けられるほか、社会保障制度が適応さ
  れ、配偶者の就業先や子女の就学も希望に応じて手配される
  という。また収入水準も雇用機関と協議できるとしている。
                  https://bit.ly/2U69air
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ショーチェン・ザン博士


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする