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□□□□□□□□ Electronic Journal □□□□□□□□
□□□□□□□□ No.4974 2019/03/26 □□□□□□□□
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■■■■■■■■■ Hirano Office ■■■■■■■■■
■■■■■■■ h_hirano@d1.dion.ne.jp ■■■■■■■
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2016年の米国大統領選挙──習近平政権としては、選挙に
おいて、ヒラリー、トランプ、どちらの候補者が勝っても対応で
きるよう両様の構えをとっていたのです。とくにトランプ大統領
が実現したとき、何が起きるか、中国への影響はどうか、につい
て、慎重に分析し、準備していたのです。
習政権は、トランプ氏が選挙中に次のようにいっていたことを
重視し、あらかじめ対策を立てています。
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中国を為替操作国に指定する
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このため習近平主席は、自身の母校である清華大学経済管理学
院にある「顧問委員会」に、米国の名だたる企業のトップに委員
になってもらうことによって強化し、トランプ大統領が本当に中
国を為替操作国に指定しようとしたときに、力になってもらおう
としていたフシがあります。この顧問委員会について、遠藤誉氏
は自著において、次のように述べています。
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この顧問委員会は、清華大学の出身である朱鎔基元首相(国務
院総理)が2000年に設立させたもので、もともとは90年代
後半に朱鎔基首相が強力に推進していたWTO(世界貿易機関)
に加盟するための経済貿易研究が目的だった。
顧問委員会の名誉主席は今も朱鎔基元首相だが、そこにはアメ
リカの大手企業のCEOが数十名も入っている。たとえば、ゴー
ルドマンサックスの元CEOで、元米財務長官だったヘンリー・
ポールソンやJPモルガン・チエースのCEOであるジュイミー
・ダイモンなどがおり、習近平は2016年になって、さらに新
しくテスラ・モーターズやスペースXのCEOであるイ一口ン・
マスク氏を委員に入れた。ザッカーバーグも新委員だ。
──遠藤誉著/PHP/『「中国製造2025」の衝撃/
習近平はいま何を目論んでいるのか』
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遠藤氏の本には、顧問委員会の最新のリストが掲載されていま
すが、それを見ると、遠藤氏が上げた人たちの他にも、米国の著
名な金融企業、IT企業などのトップが、ズラリと名前を並べて
いるのです。
ティム・クックアップルCEO、マイケル・デル/デルテクノ
ロジー会長兼CEO、インドラ・ヌーイペプシコ会長兼CEO、
ジニ・ロメッティIBM会長兼社長兼CEO、それに、カルロス
・ゴーン氏の名前まであります。
遠藤氏によると、なかでもシュテファン・シュワルツマン/ブ
ラックストーングループ共同創立者およびCEOが委員にいるこ
とは重要であるといっています。ブラックストーングループは投
資ファンドです。シュテファン・シュワルツマン氏は「蘇世民」
という中国名を持つほど、親中国派の人物で、習近平氏とは大の
仲良しであり、トランプ政権が誕生してしばらくの間、「大統領
戦略政策フォーラム」という組織の議長をしていたほどです。
ちなみに、イーロン・マスク氏もこのシュワルツマン氏がフォ
ーラム・メンバーに選んだのですが、イーロン・マスク氏がトラ
ンプ政権の移民政策を批判したことが原因で、フォーラム自体が
撤廃されてしまっています。しかし、2人とも顧問委員会の委員
にはしっかりと残っています。
注目すべきことは、シュワルツマン氏は精華大学のなかに「蘇
世民書院」という名の機関を立ち上げていることです。この機関
は、各界のトップリーダーを目指すグローバル人材を育てること
を目的としています。これについて、遠藤誉氏の本には、次の説
明があります。
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アメリカを中心として、世界トップの経営者を教授として招聘
し、書院を卒業したのちに関連したアメリカの大企業で実習させ
世界トップレベルの経営者に育てていく。顧問委員会の多くの委
員が、アメリカのCEOなどなので、その企業に行くケースが多
い。(中略)
蘇世民書院で教えている教授陣の多くは、アメリカのハーバー
ド大学、マサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学、イェ
ール大学、カルフォルニア大学などの名門大学や、イギリスのオ
ックスフォード大学やウェストミンスター大学あるいは、シンガ
ポールのシンガポール国立大学の教授や名誉教授など、錚々たる
メンバーが30名ほど揃っている。 ──遠藤誉著の前掲書より
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しかし、どうやら、習近平主席の目論見は外れたようです。ト
ランプ大統領は、規格にはまらない大統領であり、ボールは習政
権が予想していない角度から飛んできたのです。それは、米国の
知的財産の保護という視点からの中国批判です。それは、ペンス
副大統領の演説(以下、参照)に明確にあらわれています。
この問題は、小手先の対応策では収めることは不可能です。ト
ランプ政権が続いて、この方向からの攻撃が強まると、上記蘇世
民書院などは確実に槍玉に上がります。
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中国政府は、21世紀の経済の圧倒的なシェアを占めるために
官僚や企業に対し、米国の経済的リーダーシップの基礎である知
的財産を、あらゆる必要な手段を用いて取得するよう指示してき
ました。中国政府は現在、多くの米国企業に対し、中国で事業を
行うための対価として、企業秘密を提出することを要求していま
す。また、米国企業の創造物の所有権を得るために、米国企業の
買収を調整し、出資しています。最悪なことに、中国の安全保障
機関が、最先端の軍事計画を含む米国の技術の大規模な窃盗の黒
幕です。そして、中国共産党は盗んだ技術を使って大規模に民間
技術を軍事技術に転用しています。 https://bit.ly/2OPqMwq
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──[米中ロ覇権争いの行方/055]
≪画像および関連情報≫
●中国ビジネス研究所代表、多摩大学大学院フェロー/沈才彬
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シュワルツマンは、アメリカ人の名前で、ニューヨークに
本社を置く米国最大の投資ファンド会社『ブラックストーン
グループ』のCEOを務めるスティーブン・シュワルツマン
氏のこと。蘇世民は氏の中国語名である。清華大学には20
学院、54学部があるが、人の名前で学院や学部を命名した
のは初めてである。
外国人8割、世界名門校の教授陣による英語授業、全寮制
食事無料、最高額奨学金支給、入学のための国際旅費全額支
給など、清華大学に前例がない事柄が多く、神秘なる学院と
言われる。なぜ米国人の名前で学院を命名したか?シュワル
ツマン学院は一体どんな学院?何のために設立し、どんな特
徴を持つか?筆者は今年7月下旬、多くの疑問を持ちながら
清華大学シュワルツマン学院を訪れた。
広大な清華大学キャンパス。周囲を歩けば、1時間以上か
かる。正門から北方の奥に向かい、約40分歩くと、緑に囲
まれる灰色のレンガ造りの低層ビルが見えてくる。入口付近
の壁には「SCHWARZMAN COLLEGE」と「蘇
世民書院」と書いてある。ここはまさに神秘なるシュワルツ
マン学院だ。学院関係者の紹介によれば、2013年ブラッ
クストーングループCEOを務めるスティーブン・シュワル
ツマン氏は1億ドルの私財を清華大学に寄付し、毎年200
名の外国留学生を支援する奨学金プロジェクトを設立した。
これはこれまで中国の大学が海外から受け入れた最大規模の
寄付金でもある。 https://bit.ly/2FxncSs
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