学技術は発達しないのです。今の中国には、このすべてが揃って
います。それに、民主主義国にはある手続きやルールという面倒
なものが社会主義国にはない。トップが決断すれば、ヒト、モノ
カネはすべて揃うのです。
この差が宇宙技術において、よく反映されています。1957
年10月4日のことです。ソ連が人類初の人工衛星「スプートニ
ク1号」の打ち上げに成功したのです。これによる米国をはじめ
とする西側諸国のショックは、計り知れないものがあり、それを
「スプートニクショック」と呼んだのです。
それまで米国は、自国を「宇宙開発のリーダーであり、それゆ
えミサイル開発のリーダーでもある」と信じており、いささかも
疑っていなかったのです。米国も人工衛星計画「ヴァンガード計
画」を進めていましたが、うまくいっていなかっただけに、ソ連
の人工衛星計画の成功は、全米をパニックに陥れたのです。
それ以来、宇宙技術、少なくとも月探査技術に関しては、米国
は、中国、ロシアに続く3位に甘んじています。中国は「宇宙を
制するものは全世界を制す」と考えており、ここ5年ぐらいでこ
の分野の真の覇者が決まると考えられます。
中国が最大の競合相手の米国に対して、絶対的優位に立つもの
があります。それは「ヒト」、つまり人口です。現在、中国の人
口は次に示すように世界一であり、2位のインドとつば迫り合い
をやっています。
─────────────────────────────
中 国 ・・・・・ 13億9008万人
インド ・・・・・ 13億1690万人
米 国 ・・・・・ 3億2589万人
https://bit.ly/2udXprQ
─────────────────────────────
中国と米国の人口の差は10億人以上あります。この差は絶対
的なものであり、米国は対抗不能です。もちろん数ばかりが多く
てもそれは必ずしも優位性にはなりません。「大而不強」という
言葉もあり、人材の質が問われます。そこで、カギを握るのは、
「留学生制度」です。
どこの国も留学は国として奨励していますが、民主主義国の場
合、何を学び、将来留学で得た経験や技術を何に使うかはあくま
で本人の自由です。それらが結果として国のためになればよいと
いう考え方に立っているからです。
しかし、中国のような社会主義国では、彼らが自ら学びとるこ
とに加えて、国が何らかの目的と任務を与え、それらの情報収集
をさせることも不可能ではないと思います。あくまで表向きは、
合法的な情報収集ですが、最初からそういう意識を持って留学す
れば、それは国として物凄い情報収集パワーになります。それも
数が多ければ多いほど効果的です。
それでは、中国では、どのくらいの人が留学しているのかにつ
いて調べてみると、2017年の中国人出国留学人数は、60万
8400人、初めて60万人を突破しています。前年比11・7
%のプラス、留学生資源国トップの座を維持しています。
博士号取得者は22万7400人、14・9%のプラスです。
出国留学の目的国は、欧米の先進国に集中しています。2017
年の特徴は、“一帯一路”沿線国家群への留学が増加しているこ
とです。合計6万6100人、前年比15・7%の伸びです。中
国人出国留学生の留学先トップ10を示すと、次のようになって
います。
─────────────────────────────
1.韓国 6.ロシア
2.タイ 7.日本
3.パキスタン 8.インドネシア
4.米国 9.カザフスタン
5.インド 10.ラオス
https://bit.ly/2TSIMZj
─────────────────────────────
ちなみに、日本人による海外留学数についても触れておくと、
文科省発表のデータによると、数は多くはないものの、増加はし
ています。2017年度は10万5301人であり、対前年度比
で8448人増えています。留学先・留学者数のベスト5は次の
通りです。
─────────────────────────────
1.米国 19527人
2.オーストラリア 9879人
3.カナダ 9440人
4.中国 7144人
5.韓国 7006人
https://bit.ly/2TGJ3iR
─────────────────────────────
国家としてハイレベルの人材を増やすには、基本的には2つの
方法があります。
─────────────────────────────
1.自国の若い人材を優秀な人材に育て上げる
2.諸外国から優秀な人材を積極的に招致する
─────────────────────────────
どこの国でも上記の2つについては、当たり前のようにやって
いることですが、中国はこれらの2つを、かなり緻密な計画を立
てて積極的にやっています。
「1」に関しては、中国は留学生制度を、他国よりも積極的に
活用し、緻密な計画を立てて優秀な人材づくりを行っています。
「2」に関しては、2008年からの「千人計画」、2012
年からの「万人計画」によって、文字通り、国を上げて人を集め
ており、かなりの成果を上げています。何といっても「ヒト」な
のです。 ──[米中ロ覇権争いの行方/052]
≪画像および関連情報≫
●「世界中の留学生の4人に1人」を占める中国人
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飲食店やコンビニなど、日本の至る所でアルバイトに励む
中国人留学生を目にする機会はすこぶる多い。独立行政法人
日本学生支援機構(JASSO)が2016年3月に発表し
た『平成27年度外国人留学生在籍状況調査結果』によれば
2015年(平成27年)に日本に滞在した外国人留学生の
総数が20万8379人であるのに対して、中国人留学生は
9万4111人で、実に全体の45・2%を占め、国別で第
1位となっている。第2位のベトナム人留学生が、3万88
82人で18・2%であるから、中国人留学生の多さは突出
している。
12月12日に“中国社会科学院文献出版社”から出版さ
れた『中国留学発展報告(2016)』によれば、2015
年に中国は海外留学生が最も多い国になったという。同書は
“中国与全球化智庫(中国グローバル化研究センター、略称
:CCG)”が、2015年における中国の海外留学の動向
を研究した結果を取りまとめた報告書である。報告書の要点
は以下の通り。
【1】2015年における中国の海外留学生は126万人で
全世界の海外留学生総数の25%を占めた。これは、世界中
の海外留学生の4人に1人が中国からの留学生であることを
意味する。 https://bit.ly/2CptYrr
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プートニク打ち上げ成功記念切手