2019年03月12日

●「任正非華為CEOは何を語ったか」(EJ第4965号)

 2018年8月13日のことです。トランプ大統領は、「20
19年度国防権限法」に署名しています。この法律で、中国のZ
TEとファーウェイに関して、向こう7年間の取引停止を命じて
います。この法律では、政府職員や政府とビジネスを行う可能性
のある企業は、両社の製品を使ってはならないとしています。
 その後、トランプ政権は、日本、英国、カナダ、ドイツといっ
た米国の同盟国に対しても、これを強制するようになり、ファー
ウェイ包囲網は、世界的な広がりを見せつつあります。そして、
2018年暮れには、ファーウェイの創業者である任正非氏の娘
である孟晩舟副会長が、イランとの不正取引容疑でカナダで逮捕
されてしまうのです。
 これに対して、2019年1月18日、ファーウェイのCEO
である任正非氏は記者会見を開き、「ファーウェイは各国の法令
を順守している」と強調してみせたのです。任正非CEOは、大
の記者会見嫌いで知られていますが、さすがに世界的な包囲網に
危機感を感じたと思われます。基本的な記者とのやり取りを再現
しておきます。
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記 者:中国政府や共産党から機密情報の提供を求められた場合
 反対できますか。
任正非:過去30年間、様々な顧客と向き合うなかで、安全上の
 問題が起きたことはない。顧客企業の不利益になる形でデータ
 を提出するように求められたとしても拒絶する。
記 者:娘である孟晩舟副会長が、イランとの不正取引に関わっ
 た疑いでカナダで逮捕されました。
任正非:大変な驚きだ。司法手続きに入っているので、コメント
 は控えたい。
記 者:米国の制裁で同業の中興通訊(ZTE)は、部品は調達
 できず、経営危機に陥りました。
任正非:当社はZTEのようにはならない。仮に、米国の制裁が
 あったら、自ら代替品を生産するが、そうなると米国にとって
 も不利になるのではないか。制裁があっても影響は大きくない
 だろう。
記 者:欧米や日本でもファーウェイ製品排除の動きが広がって
 います。
任正非:全体としてあまり影響を受けていない。今年も当社は大
 きく成長を続ける予定だ。ただ成長率は、2018年の20%
 を下回る可能性がある。個人としては、日本政府から排除され
 る動きがあるとは感じておらず、日本社会には今後も受け入れ
 てもらえると思う。
         ──2019年1月19日付、日本経済新聞
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 冒頭の記者の質問「中国政府や共産党から機密情報の提供を求
められた場合、反対できますか」は、2017年6月から施行さ
れた「国家情報法」を念頭に置いての質問です。任正非CEOは
「顧客企業の不利益になる形でデータを提出するように求められ
たとしても拒絶する」と答えていますが、これは国家情報法違反
の犯罪になってしまう恐れがあります。国家情報法第7条には、
次のように規定されているからです。
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 国家情報法第7条
 いかなる組織及び個人も、国家の情報活動に協力する義務を
 有する。
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 「国家情報法」に関する記者と任正非CEOのやり取りは、他
にもあります。記者は、かなり突っ込んで聞いており、任正非C
EOも詳しくそれに答えていますが、任正非CEOの答えは、希
望観測的なところがあります。そのあたりが限界なのでしょう。
そのやり取りを以下に示します。
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記 者:なぜ中国には、クアルコムのような知的財産を扱うこと
 によって発展していく企業が生まれないのか。
任正非:知的財産が、もしも物権法の一部に組み込まれていたな
 ら、オリジナルを発明した側にもっと有利だったろう。それで
 も西側諸国に言い訳するわけではないが、知的財産の保護は、
 国の長期的な発展にとって有利だ。中国もニセ札やニセ物を支
 持しなければ、ますます競争力がつく企業が現れるだろう。
記者:現在の世界は再び、人々に共産主義の帽子を被せて叩くと
 いう「マッカーシー(赤狩り)時代」に舞い戻っているのでは
 ないか。中国でも「国家情報法」、とりわけ第7条が施行され
 て、華為が国際展開する上で、何か障害が起こっているか。
任正非:まず、私は、そのような法解釈はしていない。外交部が
 はっきり述べているように、中国はどんな法律も、企業にすべ
 てを要求するようなことはしない。中国政府はまた、国連、ア
 メリカ、EUの輸出や制裁に関する法律も含めて、進出する企
 業はその国々の法律法規を遵守しなければならないと強調して
 いる。              https://bit.ly/2ENlE58
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 口では比較的のんきなことをいっている任正非CEOですが、
実は会見を開いてここまで語るのは、焦慮感に駆られている証拠
といえます。なぜかというと、ファーウェイは、1987年の創
業以来、非上場を貫いており、任正非CEOはめったに人前に出
ない厚いヴェールに包まれた「謎の経営者」といわれてきた人だ
からです。そのCEOが会見を開き、記者の質問にていねいに答
える──相当追い詰められているといえます。
 ファーウェイのバックには人民解放軍がいるといわれています
が、それは本当のことでしょうか。現在、中国では、アイフォー
ンから、ファーウェイに乗り換える人が増えており、アップルの
順位は5位にまでダウンしています。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/046]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイCEOが米国に「証拠を見せろ」と反論
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   ここしばらくの中国のファーウェイに関するニュースを見
  ると、メディアの種類によって報じ方が大きく異なることが
  わかる。テック系のメディアは、同社が2018年にリリー
  スしたスマートフォンやラップトップが高い評価を得ている
  ことや業績が予想を上回る見込みであることを報じている。
   一方で政治・経済系のメディアは、同社と米政府とのトラ
  ブルを盛んに報じている。ファーウェイのスマートフォンは
  この1年で販売数量だけでなく、評価の面でも大きな躍進を
  遂げた。かつては、中国製スマートフォンを見下していた欧
  米系メディアは、今やファーウェイ製品の革新性や性能の高
  さをアップルやサムスンと同等に評価している。
   筆者が住む香港の人々は、中国製品を敬遠する傾向がある
  が、最近では、ファーウェイ製品をよく見かけるようになっ
  た。ファーウェイのCEO、胡厚崑(同社のCEOは3人の
  交代制)は先日、同社の東莞市の施設で記者会見を開いた。
  胡によると、クリスマスまでにスマートフォンの出荷台数が
  同社史上最高の2億台を突破し、売上高は、1000億ドル
  (約11兆円)に達する見込みだという。
   欧米系メディアは、今回の記者会見を直前になって知らさ
  れた。会見では、12月1日に逮捕された同社の孟晩舟CF
  Oのことや、米政府が同盟国に対してファーウェイ製品の使
  用中止を求めていることについては全く語られなかった。
                  https://bit.ly/2TEQPc7
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ファーウェイ任正非CEO.jpg
ファーウェイ任正非CEO

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする