2019年03月08日

●「ファーウェイにハイシリコンあり」(EJ第4963号)

 ここで「ICとは何か」を明らかにしておく必要があります。
IC(アイシー)とは次のようなものです。
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 IC(integrated circuit)とは、トランジスタやダイオード
や抵抗、コンデンサなどの電子部品を集積し、シリコンなどでで
きている半導体チップのことをいう。集積回路とも呼称する。そ
こに使われている素子の数が、1000〜10万個程度のものを
LSI(Large Scale Integration)と称する。
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 米半導体調査会社のICインサイトによると、2017年のI
C市場におけるファブレスメーカーが占める割合は27%で、そ
の市場規模は1014億ドル、10年前の割合は18%であった
ので、10年間で9ポイント上昇したことになります。
 国別でみると、1位はアメリカ、2位は台湾、そして3位は中
国です。中国についてICインサイトは、添付ファイルのグラフ
を示し、次のようにコメントしています。
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 3位となった中国は、近年、徐々に市場での存在感を増しつつ
ある。その結果、市場シェアも2010年の時点で5%に過ぎな
かったものの、2017年には11%へと増加しており、高い成
長を続けていることが窺える。ファブレス半導体企業トップ50
社中、中国のファブレス企業は、2009年の時点でハイシリコ
ンのみであったが、2017年には10社に増加している。
 中でも清華紫光集団(ユニグループ)は中国最大のファブレス
半導体企業であり、世界でも9位のファブレス企業として位置づ
けられるまでに成長している。また、ハイシリコンは、90%以
上の売り上げを親会社であるファーウェイに依存しており、これ
とZTE、デイタング両社の社内消費分を除外すると、ファブレ
ス市場における中国のシェアは約6%に低下するとのことで、中
国のシステムメーカーの勢いが強いことが窺える。
                  https://bit.ly/2H3gDJi
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 世界が「中国恐るべし」と最初に衝撃を受けたのは、2012
年のことです。それまでの中国のスマホは、製品自体は非常に優
れてはいるものの、チップセットに米国のクアルコムや、台湾の
メディアテックの製品を使っているなど、中身はまだ「中国」の
ものではなかったのです。
 しかし、2012年にファーウェイ傘下のハイシリコン(海思
半導体)という半導体メーカーが、突然「K3V2」というチッ
プを発表したのです。これは実に驚くべきものだったのです。
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       K3V2 ・・・ 150Mbps LTE Cat.4
             bps bit per second
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 なぜ、驚くべきかというと、当時このスピードのチップに対応
しているメーカーは世界中に1社もなかったからです。アメリカ
のクアルコムでさえ「100Mbps LTE Cat.3」 であったからです。
「150Mbps」 というのは、1秒間に150メガビットの情報を送
れる速度という意味です。
 その後、クァルコムが「スナップドラゴン/855」という新
製品を出すと、ハイシリコンも「麒麟/Kirin980」 という新
製品をぶつけて、対抗するという激しい競争が繰り広げられるよ
うになったのです。いつの間に、どのようにして、ハイシリコン
はこれほどのハイレベルに達したのでしょうか。そもそもハイシ
リコンという企業はどういう企業なのでしょうか。
 中国のネット上では、ハイシリコンに対して、次のようなメッ
セージが多く発信されています。
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   海思(ハイスー)よ、あなたこそが、中国の芯だ!
                   ──遠藤誉著/PHP
              『「中国製造2025」の衝撃/
            習近平はいま何を目論んでいるのか』
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 ここで「海思」というのはハイシリコンのことです。「海思」
の英語表現が「HiSilicon/ハイシリコン」 ということになりま
す。「海思」には、創業者の熱い思いが込められているのですが
これについては改めて述べるとして、ハイシリコンの営業の最大
の特色について、研究解析調査会社「テカナリエ」の清水洋治氏
は、次のように述べています。
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 ハイシリコン社は外販をしていません。ファーウェイ社のため
のハーウェイ社によるハーフェイ社のためのチップなのです。こ
れほど高性能のチップを、中国の他のスマホメーカーに供給し始
めたら、クァルコム社もメディテック社も、あっという間に市場
を失ってしまう可能性があります。      ──清水洋治氏
                  https://bit.ly/2C9Gzi2
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 遠藤誉氏によると、ハイシリコンの総裁は女性で、1969年
生まれ、まだ50歳であり、とても若い。実に知性的で飾り気が
なく、研究にいそしんでいる印象を与える人だそうです。その名
前は次の通りです。
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        何庭波氏/ハイシリコン総裁
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 もともとファーウェイの社員であり、1996年に入社し、半
導体チップデザイン業務の総工程師を務めていたのです。そして
2004年10月に「海思半導体有限公司」を設立したのですが
あくまでファーウェイの研究開発部門としての位置付けを守って
おり、他のいかなるメーカーにも半導体を売らないのです。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/044]

≪画像および関連情報≫
 ●わずか6年で世界トップに/中国半導体メーカーの実力
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   「中国とどう向き合うか。真剣に考えるべき」。技術者塾
  「半導体チップ分析から見通す未来展望シリーズ」で講師を
  務めるテカナリエの清水洋治氏は、その重要性を指摘する。
  中国の強みといえば、かつては「コスト」や「人口・市場」
  と言われていたが、最近では技術やサービスの競争力が急速
  に高まっている。特にハイテク分野でその傾向が顕著だ。
   例えばフィンテック。スマートフォン(スマホ)を活用し
  た決済サービスの進化は、日本をはるかにしのぐ。また、電
  気自動車(EV)の普及でも世界をリードする存在になりそ
  うだ。こうした中国躍進の波は、技術力の根幹ともいえる半
  導体にも押し寄せる。
   日経BP社は「中国のNVIDIAは誰か?中国企業の技
  術力を探る」と題したセミナーを、上述の未来展望シリーズ
  の第1回として開催する。1年前の2017年2月に開催し
  たセミナー「半導体回路の分析から、中国エレクトロニクス
  企業の技術力を探る」の内容を更新し、中国の最新スマホチ
  ップやスマートスピーカーなどの新しい情報を盛り込む予定
  だ。本稿では、好評を博した17年2月開催のセミナーから
  中国のスマホ用半導体に関する内容の一部を紹介する。
                  https://nkbp.jp/2tVAPE0
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中国のファブレスICサプライヤー.jpg
中国のファブレスICサプライヤー 

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする