2019年03月07日

●「半導体市場における中国勢の躍進」(EJ第4962号)

 中国が「中国製造2025」という国家戦略を発布したのは、
2015年5月のことです。少なくともこの時点までは、中国の
製造技術は大したことがなかったのです。ところが2015年以
降、中国の製造技術に大きな変化が起きているのです。
 次の表をごらんください。
 この表は、「ファブレス半導体」の2017年度の売上高トッ
プ10ですが、そこに中国企業が2社入っているのです。これは
本当に驚異的なことです。「ファブレス」とは、「工場を持たな
い」という意味です。製造工場を持たないで製品の企画・設計を
行い、製品はOEM供給を受ける形で調達し、自社ブランドの製
品として販売する企業です。
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 ◎2017年のファブレス半導体トップ10売上ランキング
            企業名     本社 2017年
      1   クアルコム   アメリカ 17078
      2  ブロードコム シンガポール 16065
      3  エヌピディア   アメリカ  9228
      4 メディアテック     台湾  7875
      5    アップル   アメリカ  6660
      6     AMD   アメリカ  5249
   ★  7  ハイシリコン     中国  4715
      8  ザイリンクス   アメリカ  2475
      9    マーベル   アメリカ  2390
   ★ 10    紫光集団     中国  2050
                   単位:100万ドル
        2018年1月4日/米ICインサイト発表
                   ──遠藤誉著/PHP
              『「中国製造2025」の衝撃/
            習近平はいま何を目論んでいるのか』
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 第7位の「ハイシリコン」は、独立企業ではあるものの、現在
話題のファーウェイ(華為技術)にのみ半導体を収めているメー
カーです。ほぼファーウェイへの提供分だけで、売上高において
第7位を占めているのですから凄い実績です。
 第10位の「紫光集団」は、チンホワ・ユニグループといい、
1988年に精華大学の「校営企業/精華大学科技開発総公司」
として誕生しています。校営企業は教育機関に付設されている企
業のことです。校営企業については、遠藤誉氏の本に次の説明が
あります。
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 中国には、実は毛沢東時代から「校営企業」というのがあって
学校(専門学校や大学)に企業が付設されていた。というのは、
毛沢東時代は、まさに社会主義をそのまま地でいっていたので、
教育機関はすべて国営(地方は公営)で無料。学費が無料なだけ
でなく、学校のキャンパスには、必ず無料の宿舎があり、食堂も
完備していて、学生は国家の丸抱えで学園生活を送っていた。そ
の代わりに卒業したら、必ず国家が分配する国営企業に行って働
かなければならない。
 そのため、準備期間として、学生たちはその教育機関に関係す
る国営企業で実習を行っていた。その小型版を教育機関に付設し
これを「校営企業」、中国文字では「校弁企業」と称していた。
                 ──遠藤誉著の前掲書より
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 精華大学はかつては「精華学堂」と呼ばれていたのです。少し
歴史を振り返る必要があります。清朝の末期のことですが、19
00年に「義和団の乱」という排斥運動が起きたのです。これを
利用して、清王朝の女帝の西太后は、中国を侵略していた帝国主
義列強に対して宣戦布告して戦争になったのです。
 しかし、当時の中国が欧米列強に勝てるわけがなく、2ヶ月も
しないうちに壊滅的敗北を喫し、莫大な賠償の支払いを余儀なく
されたのです。そのとき、米国のジョン・ヘイ国務長官は西太后
に同情し、条件付きで賠償を減額する案を提案します。その案と
は、優秀な中国人学生の米国への留学生派遣(1940年まで)
および、そのための教育施設の設置を行うというものです。これ
により、1911年に設立されたのが「精華学堂」です。精華学
堂は、中国の優秀な学生を米国に留学させるためのいわば予備校
としての位置づけです。
 精華大学といえば、1998年3月〜2003年3月までの朱
鎔基国務院総理、それ以後2期の国家主席、胡錦濤国家主席、習
近平国家主席は、いずれも精華大学出身です。これは大変珍しい
ことです。
 さて、1993年2月13日に中共中央・国務院が産学連携を
奨励すると、精華大学科技開発総公司は、「大学」の文字を外し
て「精華紫光(集団)総公司」に改称しています。その後、民間
企業の「北京健坤投資集団有限公司」と合併し、国有企業(ここ
では精華紫光(集団)総公司)との混合所有制になります。その
民間企業のトップを務めていていたのは、趙偉国氏という人物で
あり、その趙氏が、以後紫光総公司の菫事長(法人を代表する責
任者)を務めることになります。
 趙偉国CEOは、「半導体の虎」という異名を持つスゴ腕の持
ち主であり、紫光集団をファプレス半導体の第10位にランキン
グさせたのは、趙偉国CEOの力が大きいといえます。なお、趙
偉国CEOは、2013年には、当時ナスダック市場に上場して
いた「スプレッドトラム」(上海市)を買収しています。
 2011年にスプレッドトラムは、世界のファブレス半導体企
業のトップ17位に入っていたのです。このとき、ハイシリコン
は16位にランクされています。しかし、そのとき、スプレッド
トラムは、成長率(対前年比)で見ると、230%のダントツで
トップなのです。趙偉国CEOはそこを見逃さなかったのです。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/043]

≪画像および関連情報≫
 ●韓国経済に打撃か、中国が半導体を大量生産へ―韓国紙
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   2018年2月27日、韓国紙・亜州経済は、中国企業が
  2018年末から半導体の大量生産を始めようとしており、
  グローバル市場における韓国企業の立場に深刻な影響が生じ
  るのではないかとの懸念が深まっていると伝えた。
   記事によると、半導体にはリード・オンリー・メモリ/R
  OMとランダム・アクセス・メモリ(RAM)があり、RO
  Mは半導体市場の4分の3を占める。ROMの分野に限れば
  中国の技術はすでに韓国を上回っているという。
   半導体市場調査会社・米ICインサイトが25日に発表し
  た統計では、09年の時点ではファブレス半導体企業トップ
  50社のうち中国は1社だけだったが、16年になると11
  社にまで増え、シェアも10%を突破。一方、韓国は1社の
  みでシェアも1%にとどまっている。
   中国のファブレス半導体企業は、近年のモノのインターネ
  ット(IoT)や人工知能(AI)、自動運転車などの急成
  長を背景に業績を大きく伸ばし、韓国のサムスン電子と並ぶ
  総合半導体メーカーに成長。その影響力を拡大させている。
  記事は「中国が『自給自足』するようになって自国のシェア
  を高めれば韓国の半導体輸出にも影響が生じることになる。
  そうした中、中国の半導体企業は年内にも3ヶ所の工場を完
  成させ、大量生産をスタートさせる」と伝えた。
                  https://bit.ly/2HfRTwB
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精華大学(中国).jpg
精華大学(中国)
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする