2019年03月04日

●「米国を追い上げる中国の先端技術」(EJ第4959号)

 今週から世界中で話題になっている「ファーウェイ」の問題を
取り上げます。ファーウェイはどのような企業なのでしょうか。
本当に通信機器に仕掛けを施し、情報を盗み取るような企業なの
でしょうか。
 2018年9月のことです。中国通信機器の最大手、華為技術
(ファーウェイ)の創業者の娘、孟晩舟副会長は、故郷である四
川省成都での講演会で、誇らしげに次のように述べています。
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 「十年一剣」を磨く。我々は既に5Gでの技術優位である世
 界標準を獲得している。  ──孟晩舟ファーウェイ副会長
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 けっして過大な表現ではないのです。次世代通信技術「5G」
関連の特許に占める割合でファーウェイは、断然トップであり、
実用化でも先行しています。
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       ◎5G関連特許に占める割合の順位
      1位:ファーウェイ ・・・ 29%
      2位: エリクソン ・・・ 22%
      3位:サムスン電子 ・・・ 20%
          ──2019年2月4日付、日本経済新聞
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 しかし、この講演会から3ヶ月後、孟晩舟氏は、米国からの要
請により、カナダ当局に逮捕されています。「米企業から秘密情
報を盗んだ疑い」などが逮捕容疑です。
 中国は、AI(人工知能)の分野でも、国と企業が一体となっ
て技術力を向上させ、世界レベルの技術を持ちつつあります。中
国には、AIの分野では、米国の「GAFA」に対応する「BA
TIS」という国家プロジェクト「AI発展計画」があり、次の
5つの企業がプラットフォーマーになっています。
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    B ・・ バイドウ        自動運転
    A ・・ アリババ     スマートシティ
    T ・・ テンセント      ヘルスケア
    I ・・ アイフライテック    音声認識
    S ・・ センスタイム       顔認識
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 習近平政権は、これら民営企業5社に対して、補助金や許認可
などの面で手厚い保護を与えています。つまり、国家ぐるみの巨
大プロジェクトなのです。
 米国の「GAFA」4社は、公正なルールに基づいて激しい市
場競争を勝ち抜いて現在の地位にいるのに対し、中国の「BAT
IS」は、国家が指名し、国家が資金を与え、場合によっては、
国家(軍)が、サイバー攻撃などによって入手した情報まで民営
企業に与え、国際的技術競争に勝ち抜こうとします。それはまさ
に「電子戦」そのものです。
 このように書くと、同じようなことを米国もやっているという
かもしれませんが、中国の場合は政治状況が異なるので、そこに
「自由な競争のルール」など、かけらもないのです。それは、ま
さに「戦争」であって、勝つためには手段を選ばないのです。こ
れについて、日本経済新聞は、次のように書いています。
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 米国の手も真っ白とは言いがたい。NSA元職員のエドワード
・スノーデン氏は、14年、NSAが中国の通信機器最大手、華
為技術(ファーウェイ)のシステムに侵入して機密情報を得たと
暴露した。米国法は外国人のデジタル通信を令状なしで監視する
ことを認めており、「中国のハイテク企業幹部はくまなくデータ
を調べられる」(米中外交筋)という。
 それでも西側軍事筋は「米国政府は、入手した情報を民間企業
に提供することはない」と強調。習近平(シー・ジンピン)国家
主席が掲げる「軍民融合」の掛け声の下、盗んだ先端技術を国有
企業に横流しする中国の活動は一線を越えていると主張する。
          ──2019年2月5日付、日本経済新聞
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 このように、科学技術の分野での中国の躍進を支えているのは
豊富な資金力です。次の数字の意味はわかるでしょうか。
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         51兆円 VS 45兆円
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 これは、米国と中国の研究開発投資の額です。米国の51兆円
に対し、中国の41兆円、あと10兆円まで迫っています。20
16年の中国の研究開発投資は、官民合わせて約45兆円、これ
は、2000年の約10倍、2009年に日本、2015年に欧
州連合(EU)を抜き去り、米国の51兆円に肉薄しようとして
いるのです。
 全米科学財団(NSF)の調査によると、研究論文の数におい
ては、2016年時点で既に中国は、次のように米国を上回って
いるので、このままでは、中国の研究開発投資は、米国を抜いて
世界一になる可能性があります。
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    ◎研究論文の数の比較
    米国:40万9千本 VS 中国:42万6千本
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 確かに、数の面では中国の勢いは圧倒的ですが、質になると、
いろいろな問題があります。党主導の計画に合わせたノルマもあ
り、中国系米国人のシュエイン・ハン氏は、次のように分析して
います。
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    トップダウンの研究環境がひずみを生んでいる
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           ──[米中ロ覇権争いの行方/040]

≪画像および関連情報≫
 ●貿易で折れても、覇権争いでは決して折れない米国
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   米国と中国の貿易摩擦、そして、覇権争いがエスカレート
  している。その影響もあって、中国の経済指標の悪化が目立
  つ。中国の2018年自動車販売台数は28年ぶりの対前年
  比マイナスに沈んだ。1月21日に発表された2018年の
  実質GDP成長率は6・6%増と、こちらも28年ぶりの低
  い水準となった。日本に目を向けても、中国向け工作機械受
  注等が減速。1月中旬には、日本電産が中国の需要低下を背
  景に2019年3月期の業績予想を下方修正し、一転減益見
  通しとした。マーケットは、日本企業への影響を懸念してい
  る。海外投資家からは日本株は景気の影響を受けやすいと見
  られていることもあり、売りを浴びやすい地合にある。
   米国は、中国との貿易に関する協議で合意できない場合、
  2000億ドル分の制裁関税を10%から25%に引き上げ
  るとしている。これまで、制裁関税の応酬を繰り広げてきた
  が、実体経済に影響が見られ始め、金融市場にも、懸念が広
  がっていることもあり、米中の景気共倒れリスクを回避する
  方向で双方歩み寄る可能性もあろう。
   しかしながら、知的財産等、ハイテク覇権に関する事項に
  関しては、そう簡単に折り合うことは無さそうだ。米国のペ
  ンス副大統領が2018年10月にハドソン研究所における
  演説で、中国を痛烈に批判したことは記憶に新しい。中国に
  覇権は渡さない、対立も辞さないという強いスタンスは、ト
  ランプ大統領の「ご乱心」では決してない。
                  https://bit.ly/2HaFwBN
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四川省成都での孟晩舟講演会.jpg
四川省成都での孟晩舟講演会
 
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする