2019年03月01日

●「当局と企業が一体化している中国」(EJ第4958号)

 「米中ひとまず休戦へ」―─26日の新聞の見出しです。貿易
不均衡に関しては、中国は、今後6年で大豆やLNGなど、1兆
ドル規模の輸入拡大を約束してきており、知財問題などでは進展
がなくても、休戦に意義あると米国は考えています。
 中国側としては、3月5日に開幕する全国人民代表大会(全人
代)の直前に追加関税を10%から25%に引き上げられる最悪
の事態だけは避けたいと考えているので、休戦合意が成立したの
ではないかと思います。
 しかし、構造問題に関してはほとんど前進していないのです。
そのため、これについては「長期戦」に持ち込み、トランプ後を
見据える作戦です。とくにファーウェイやZTEなどのハイテク
産業の補助金や国有企業優遇策の撤廃には、中国は国家資本主義
の根幹ともいえる産業政策の撤廃には、まったく応じていないし
今後も応じるつもりはないようです。もともと、ファーウェイの
孟晩舟副会長の逮捕に関しては、北朝鮮とイランへの制裁逃れを
画策した容疑なのです。これについてのケビン・メア氏と冨坂聡
氏とのやりとりです。
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メア:ファーウエイ副会長の拘束は、米中対決とは違う文脈のも
 のではないですか。そもそも、国際法違反という別の理由があ
 るでしょう。彼らは、イランの制裁逃れのために組織的に密輸
 していたのだから、
冨坂:勿論その通りです。昨年4月にアメリカが中国の通信会社
 ZTEに取引禁止の制裁を課したのも北朝鮮とイランへの制裁
 逃れという同じ理由でした。彼らがなぜ制裁違反をするのか。
 私はこれも「田舎者の論理」で説明できると思うんです。「バ
 レなきゃいいでしょ」と考えてずっとやってきたら、「ゲッ、
 バレたか!」というような・・・。中国はこの辺の感覚が国際
 社会とズレているのです。
        ──メア氏/冨坂聡氏『文藝春秋』3月特別号
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 冨坂聡氏は、中国筋から情報を得ているジャーナリストですの
で、若干中国を庇うというか、優しいところがあります。田舎者
だから、国際ルールを守らないという論理です。しかし、田舎者
も都会に慣れてくれば、そのうち守るようになるという含みをも
たせています。
 2013年の中国海軍のフリゲート艦による自衛隊護衛艦に対
する火器管制レーダー照射事件や、その翌年の中国戦闘機の自衛
隊機への異常接近事件も、すべて「田舎者だから」の論理で説明
してしまっています。しかし、これらは、田舎者だからでは済ま
ない話です。
 宮家邦彦氏は、中国の南シナ海における人工島建設を巡る一連
の軍事活動は、満州事変を引き起こしたかつての日本陸軍の過ち
に酷似しているとして、次のように述べています。
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 中国の南シナ海での軍事行動を見ていると、1930年代の日
本の陸軍が犯した過ちを繰り返しているように思えるんです。例
えば、中国は南シナ海に油田開発のために人工島を建設しました
が、あれは言ってみれば、現代の満州事変″でしょう。
 そして南シナ海の資源について、国際仲裁裁判所が中国の主張
する管轄権を否定する裁定を出しましたが、あれは正に現代の
リットン報告書≠ナす。その意味で中国は、すでにレッドライン
は超えている。もしかするとかつての日本と同じように大破局の
道を歩むかもしれません。
           ──宮家邦彦氏『文藝春秋』3月特別号
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 満州事変とは、1931年9月18日、奉天郊外の柳条湖で、
南満州鉄道が爆破されことを受け、日本の関東軍は、それを中国
国民軍に属する張学良軍の犯行であると断定し、鉄道防衛の目的
と称して反撃し、軍事行動を拡大したのです。この柳条湖事件か
ら開始された、宣戦布告なしの日中両軍の軍事衝突が満州事変と
いわれるのです。
 リットン報告書というのは、リットンを委員長とする調査団が
満州事変に関して現地調査してまとめられた報告書のことです。
リットン報告書では、満洲国に対する日本の主張は認められず、
否認され、それをもって日本は、国際連盟を脱退し、戦争への傾
斜を深めていくのです。
 宮家邦彦、呉軍華、ケビン・メア、冨坂聡4氏による米中超大
国の覇権争いの分析の最後のところで、メア氏と宮家氏が次のや
り取りをしています。
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メア:ファーウェイやZTEが製造する通信機器には、「バック
 ドア(裏口)」が仕掛けられており、中国当局が世界中から機
 密情報を吸い上げているというのは、公然の秘密でした。
宮家:バックドアに関しては、2009年にアメリカ国家安全保
 障局(NSA)が「米政府はファーウェイ及びZTEの機材を
 使うな」と警告を出しています。近年になって表面化しただけ
 で、この話は情報のプロの世界では知られていました。
         ──メア氏/宮家氏『文藝春秋』3月特別号
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 ここにきてファーウェイは、米国に対して開き直っています。
「バックドアというなら証拠を示せ」と。ファーウェイの副会長
の郭平副会長は、26日、スペインで開かれている世界最大の携
帯関連見本市「MWC19バルセロナ」において講演で、スノー
デン事件に関連して「米国の法律は、政府機関が国境を越えて、
データにアクセスすることを認めている」と批判しています。
 しかし、米国の場合、政府機関が捜査で入手した情報を民間企
業と共有することなどあり得ないのです。しかし、中国は情報当
局と企業は一体化しており、捜査で抜いた情報を共有しているの
です。        ──[米中ロ覇権争いの行方/039]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ問題の核心/丸山知雄氏
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  <ファーウェイが情報を盗んでいるという決定的な証拠は今
  のところない。世界有数の技術力を持ち、経済性にも優れた
  ファーウェイ製品が使えないのであれば、5Gへの投資をし
  ばらく猶予するというのも一つの選択肢ではないだろうか>
   ファーウェイ(華為技術)はいま中国でもっとも高い技術
  力を持つ企業である。スマホや、スマホでの通信を支える基
  地局、通信ネットワークの機器を作って、世界じゅうに売っ
  ている。
   ファーウェイは10数年前までは日本のNECや富士通の
  後を追いかける存在だったが、今では移動通信の基地局では
  スウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアと並ぶ世
  界三強の一角を占め、直近では世界1位である。スマホでも
  最近アップルを抜いて韓国のサムスンに次いで世界2位であ
  る。こうした競争力は重厚な研究開発力に支えられている。
  従業員18万人のうち8万人が研究開発に従事し、2017
  年には売り上げの15%に相当する1兆5000億円以上を
  研究開発に投入した。
   アメリカは早い段階からファーウェイに対して疑いの目を
  向けてきた。民間企業だと言っているが、本当は政府や軍の
  息がかかっているのではないか、製品のなかに「裏口」が仕
  掛けられていて、中国がそこから、情報を抜き取れるように
  なっているのではないか、といった議論が議会で盛んに行わ
  れていた。           https://bit.ly/2C55F1R
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冨坂聡氏.png
冨坂聡氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする