2019年01月01日

●「新年のご挨拶/2019.1.1」

 EJ読者の皆様、2019年、明けまして、おめでとうござい
ます。EJをいつもご愛読いただき、心より御礼申し上げます。
本年もよろしくお願いいたします。
 EJは、1998年10月15日を第1号として配信し、以来
営業日の毎日、お送りしておりますが、既に21年が経過し、今
年は22年目に突入します。大きなフシ目である5000号は5
月頃に達成予定です。
 2018年のEJは、1月5日の第4677号から12月27
日の第4919号までの245本を、営業日の毎日、一日も欠か
さず、お届けしました。その間、同じコンテンツをブログにも投
稿しています。2018年に取り上げたテーマは、次の4つにな
ります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.安倍政権のメディア支配 ・・・・・・・・・ 80回
 2.次世代テクノロジー論U ・・・・・・・・・ 74回
 3.日航機123便墜落事件の謎 ・・・・・・・ 78回
 4.フリーテーマ ・・・・・・・・・・・・・・ 13回
   ―――――――――――――――――――――――――
                        245回
―――――――――――――――――――――――――――――
 テーマごとにどのくらいの人が読んでくれているか、ブログの
アクセス数から判断します。UUはそのテーマを読みに来ている
人を示し、PVは他のテーマを読みに来ている人を表していると
考えられます。あくまで、1日当りのアクセス数です。
─────────────────────────────
 ≪安倍政権のメディア支配≫
             UU      PV
    1月 ・・ 1441人   6739回
    2月 ・・ 1257人   5090回
    3月 ・・ 1179人   5017回
    4月 ・・ 1192人   5518回
 ≪次世代テクノロジー論U≫
    5月 ・・ 1041人   5403回
    6月 ・・  958人   4110回
    7月 ・・  914人   4349回
    8月 ・・  898人   4451回
 ≪日航機123便墜落事件の謎≫+≪フリーテーマ≫
    9月 ・・ 1006人   5254回
   10月 ・・ 1129人   5554回
   11月 ・・  938人   4274回
   12月 ・・ 1048人   4901回
─────────────────────────────
 2018年は、1日当りのUUのアクセス数が1000回を切
る月が4回もあり、EJが飽きられているのかなと反省していま
す。それでも、1日当りのページビュー(PV)は5000回を
維持しています。
 ツイッターも続けていますが、昨年の12月時点よりもフォロ
ワーは350人ほど減っています。フォロワーは、2万人もいる
と、200〜300人が動くことは何回もあるので、十分取り戻
せる段階にいると思っています。ツイッターのアナリティクスに
ついては、URLをクリックしてください。
─────────────────────────────
      2018年12月31日/午後8時現在
          ツイート ・・・ 18887
          フォロー ・・・    10
         フォロワー ・・・ 22134
             https://bit.ly/2EmOx6T
─────────────────────────────
 ここで改めてEJの本質を考えてみると、まず、テーマを決め
ます。そのうえで、そのテーマに関して、本や雑誌やネットで発
言している人、コメントしている人、研究している人、本を出し
ている人などの所説をできる限り、ていねいに読んで紹介し、そ
のうえで私の意見を述べるというかたちをとっています。私はこ
のスタイルを「作品型情報」と名付けています。
 したがって、EJを読むことによって、そのテーマに関するさ
まざまな意見を知ることができます。とくにネットでは、そのテ
ーマに関するコメントはもとより、動画で、講演やインタビュー
なども紹介しているので、ていねいに読んでいただくとさまざま
な情報を入手することができます。
 そのためには、とにかく関連本を収集し、丹念に読むことが求
められます。これには、相当のエネルギーを使います。著者が何
をいいたいのか、文章から探るのです。
 そしてネットから関連情報を探し出します。これにはかなりテ
クニックがいります。最近のネット検索は、AIが導入されてい
るので、キーワードを工夫すると、思いがけない重要な情報を把
握することができます。これに関しては、「ワイアード」に「人
工知能はグーグル検索を大きく変えようとしている」と題して、
次の記事が掲載されています。
─────────────────────────────
 グーグル検索では、「ページランク」と呼ばれるアルゴリズム
によって、検索結果の表示順が決められてきた。いま、その中枢
・検索エンジンに「人工知能」が浸透し始め、次の新しい時代へ
と動き出している。         https://bit.ly/2R2nec0
─────────────────────────────
 記事によると、グーグル検索のエンジン部門のトップが、AI
部門の総括責任者に代わったのです。この交代劇は、テック業界
そのものの転換期の象徴と見てとれるのです。実際にグーグルは
「ランクブレイン」という検索キーワードにおけるクエリを解釈
するアルゴリズムを開発しています。このように技術はどんどん
進化しているのです。
 EJは、4日から新しいテーマでお送りします。本年もEJを
よろしくお願いします。

≪画像および関連情報≫
 ●グーグルの検索改革
  ───────────────────────────
   皆さんは、『ジョン・ジャナンドレア』という人物を知っ
  ていますか?もし彼の名前を知っている人は、相当なグーグ
  ル通か、もしくはAIや検索システムに関するテクノロジー
  に詳しい方かと思います。
   彼は、グーグルの人工知能(AI)部門の統括責任者でり
  かつ、検索エンジン関連の責任者を兼任している、スーパー
  すごい人とだけ言っておきましょう!
   なぜ、AI部門と検索エンジン部門の責任者が一緒なのか
  は、人工知能を利用したテクノロジーが、グーグルの基盤の
  今、そして未来を支えていることに他なりません。
   2015年にグーグルは、「ランクブレイン」が使ってい
  ると発表しています。これを簡単に言いますと、『検索ユー
  ザーが、何をどういった目的で、探しているのかを、自動的
  に学習&予測し、そして、そのユーザーが求めている最適な
  コンテンツを導きやすくる』新しいAIを利用したアルゴリ
  ズムです。
   具体的な例でいえば、昔の検索エンジンであれば、例えば
  検索窓に「CM車の歌 かっこいい」 と入力して検索しても
  検索ユーザーが考えて探している情報を、的確に検索上位に
  表示できませんでした。しかしながら、本日現在においては
  同じ「CM車の歌 かっこいい」 で検索するとホンダの「サ
  チモスの「STAY TUNE」と、的確 に上位に表示して返してく
  れます!CMのメーカー名や、曲のフレーズ、頭文字なども
  必要ありません。これってすごいですよね!ほとんどのユー
  ザーにとってこれが求めていた検索結果になると思います。
                  https://bit.ly/2EXTrKn
  ───────────────────────────

亥年/2019年.jpg
亥年/2019年
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2019年01月04日

●「キーパーツは半導体の生産と供給」(EJ第4920号)

 このEJは、2019年最初のEJになります。EJを書き始
めて、ちょうど22年目にあたる1月4日ですが、今日は、20
19年の最初のテーマを決める日です。このテーマ設定に関して
少し書くことにします。21年間もEJを書いてきて、EJその
ものについて書くことは、ほとんどなかったからです。正月明け
の1月4日なら、こういう書き方を許していただけるのではない
かと、考えた次第です。
 昨年暮れに13回ですが、「フリーテーマ」でEJを書いてみ
ました。実はEJは、もともと500号ぐらいまではフリーテー
マで(テーマなし)書いていたのです。ところが読者から「資料
として残したいので、テーマを付けて欲しい」という要望があり
それ以降、現在のように、テーマごとの連載になったのです。
 フリーテーマの方が、書く方としては、その方がラクなのです
が、何しろデイリーですから、必ずネタがなくなります。そうし
てできるものは、新聞や週刊誌、とくに夕刊紙と似たような内容
にしかならないのです。それに報道が仕事ではないのですから、
プロに勝てるはずがありません。
 そして、フリーテーマでは、何よりも、それが資料として残し
にくいことです。ところが、最近になって、EJをテーマごとに
製本し、冊子化する読者が出てきたのです。そういう読者が何人
かおられることは、以前から承知しておりましたが、昨年暮れに
「日本航空123便墜落の真相」を冊子化している読者から、そ
の冊子をいただきましたので、添付ファイルにしてあります。こ
れは、私にとって大変光栄であり、ありがたいことです。
 そもそも私が、EJを発刊しようと考えた動機は「日刊もの」
を書いてみたいと考えたからです。私は、書籍を発刊したことも
月刊誌の連載を書いたことも、週刊誌の連載の経験もあります。
現在でも業界紙の週刊連載を書いています。しかし、日刊連載だ
けはやったことがなかったのです。日刊なら、詳しく書くことが
できるという思いからです。
 EJは、ニュース性のあるテーマを選んでいます。ニュースを
追っていると、そのウラにとんでもない事実が隠されていること
がしばしばあります。EJは、それを詳しく掘り下げ、追及して
いるつもりです。
 ひとつ例として最近のニュースを取り上げます。現在、日本と
韓国が、いろいろな問題でモメています。日本の哨戒機が韓国の
駆逐艦から、火器管制レーダーを照射された事件は、お互いの主
張がぶつかり合い、遂に年越しをしてしまいました。事実は明白
であるのに、韓国側が猛烈に反論してきています。
 この事件につき、ツイッターのフォロワーから、「カイカイ反
応通信」というサイトを教えていただきました。これは、韓国の
ネットユーザーの反応を紹介するサイトです。そこには、次の趣
旨のことが書かれているので、要約します。
─────────────────────────────
 照射事件が起きたのは、韓国のEEZと日本のEEZがぶつか
る日韓の中間水域でのことです。ここは「大和堆」と呼ばれる海
域にも近く、北朝鮮の船舶が頻繁に出没するので、海上自衛隊は
北朝鮮による違法積み替えが行われる可能性があるとして、普段
から多くの哨戒機を送り込んでいたのです。
 ここで、韓国の船舶と北朝鮮の船舶との間で違法積み替えが行
われていたというのです。韓国の駆逐艦は、その発覚を防ぐため
数10メートルの距離で警護活動を行っていたと思われます。
 そこに海上自衛隊の哨戒機がやってきたのです。哨戒機はレー
ダーで2隻の船が並んでいるのを探知し、確認のため、接近した
のです。突然出現した海自の哨戒機に慌てた韓国の駆逐艦は、事
実を知られるのを恐れ、哨戒機に火器管制レーダーを照射したの
です。そうすれば、哨戒機が回避行動を取り、現場から離脱する
と考えたからです。その間に積み替えをしていた2隻の船舶は逃
走したのです。           https://bit.ly/2s71Nrm
─────────────────────────────
 要するに、韓国は、軍艦の警護の下に韓国船舶と北朝鮮船舶と
の積み荷交換をしていたことになります。北朝鮮船舶を救助する
ためというのはウソということになります。韓国が、日本の哨戒
機に火器管制レーダーを照射するという危険な行為を行ってまで
隠したかったのは違法積み荷交換の事実です。
 おそらくこのことは日米ともに知っていると思われます。とく
に韓国は、日本だけでなく、米国ともモメでおり、なかでも文在
寅大統領の過度な北朝鮮への肩入れには相当ハラを立てているこ
とは確かです。したがって韓国は日本へ無理な反論をして、この
事件を取り繕っているというのです。
 もちろんこれが真実であるかどうかはわかりませんが、最近は
国際情勢が複雑化して、国内問題でも国外の問題と密接に結びつ
いていることが多いです。とくに日本にとって強い影響のある国
は、アメリカ、中国、ロシアです。そこで、次のテーマでしばら
く書いていくことにします。
─────────────────────────────
  米中ロ、とくに米中の覇権争いは今後どうなっていくか
 ──中国は技術面で米国を追い抜くことはできるか ──
─────────────────────────────
 現在、既に起きていて、激しさを増しつつある米中貿易戦争が
どうなるかは、世界経済にとっては当然のことですが、日本にも
大きく影響します。日本にとっては早期に決着しない方がプラス
かもしれません。いずれにしても、韓国はこれは期限である2月
中にはとても決着できる問題ではないといえます。
 これを左右するのは、キーパーツである半導体の生産供給競争
です。これについては米国はもちろん世界一ですが、かなり中国
に追い込まれているといえます。もし、この分野で米国が敗れる
と、米国は、将来宇宙での覇権を失う恐れがあります。そうはさ
せないとして米国がいま起こしているのが貿易戦争なのです。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/001]

≪画像および関連情報≫
 ●レーダー照射:韓国軍に北の工作の影響はないのか
  ───────────────────────────
   防衛省は12月28日、韓国海軍の火器管制レーダーの照
  射問題でビデオ映像(約13分間の映像)を公開した。この
  映像に北朝鮮漁船と見られる小船がハッキリ写っている。こ
  の小船はいったい何をしていたのか。なぜ、ここにいたのだ
  ろうか。
   映像の場所は能登半島沖の大和堆(やまとたい)と呼ばれ
  る日本のEEZ(排他的経済水域)である。ここに、北朝鮮
  漁船が普段から頻繁にやって来て、イカなどの密漁をしてい
  ることで知られている。韓国が説明するように、仮に、映像
  に映っている北朝鮮漁船と見られる小船がそのような密漁船
  であったとしても、なぜ、韓国の駆逐艦や警備救難艦が物々
  しく、日本のEEZに出動して、遭難救護にあたらなければ
  ならないのか。当日、天候は良好で、波も穏やかである。漁
  船が遭難するような状況ではない。北朝鮮漁船が日本のEE
  Zに入り、遭難したならば、日本に通報し、日本の救援を求
  めるべきである。
   瀬取りをしていたという見方もあるが、わざわざ日本のE
  EZにまで来て、瀬取りをするだろうか。韓国と北朝鮮が上
  海沖まで遠出をして、中国の影響圏で、瀬取りをしているこ
  とは確認されているが、日本のEEZで瀬取りを行うメリッ
  トはないように思う。      https://bit.ly/2QiLy4a
  ───────────────────────────

EJの冊子化.jpg
EJの冊子化

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2019年01月07日

●「中国本には2つの種類が存在する」(EJ第4921号)

 年末から2019年の年始にかけて、米中が台湾をめぐって、
激しくぶつかっています。
 12月31日のことです。トランプ大統領は、アジア諸国との
安全保障や経済面の包括的な協力強化を盛り込んだ「アジア再保
証推進法」に署名し、新法を成立させています。この法律には、
台湾への防衛装備品の売却促進やインド太平洋地域での定期的な
航行の自由作戦が盛り込まれており、明らかに中国を強く牽制す
る内容になっています。
 これに対して、中国の習近平主席は、1月2日、台湾に対して
硬軟を織り交ぜた5つの提案をしています。その3項目目に次の
記述があります。
─────────────────────────────
 B「1つの中国」原則を堅持し、台湾独立には絶対反対。武
  力使用の選択肢も放棄しない。
             ──習近平/台湾への5提案より
─────────────────────────────
 これは、台湾に向けたものであると同時に、米国を牽制してい
ます。中国は、台湾での昨年11月の統一地方選で、独立志向を
持つ民進党が大敗したことを受けて、台湾に対して実利を強調す
る「ソフト路線」を展開することで、「親中」世論を台湾に拡大
させることを狙っています。これに対して、台湾の蔡英文総統は
次のように強く反発しています。
─────────────────────────────
 台湾は一国二制度を絶対に受け入れない。中台交流推進の条件
として、台湾2300万人の人民が、自由と民主主義を堅持して
いることを尊重すべきである。        ──蔡英文総統
            ──2019年1月3日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 EJでは、2回にわたって中国をテーマにして書いています。
2013年と2017年にです。
─────────────────────────────
                 新中国論/76回
    2013年01月04日/EJ第3503号〜
         米中戦争の可能性を探る/123回
      2017年03月11日/EJ第4431
─────────────────────────────
 実はこのとき痛感したことがあります。中国について本を出版
している人はたくさんいますが、次の2種類に大別できます。
─────────────────────────────
    1.米国を中心とする西側から中国を論じる著者
    2.中国を中心に西側、とくに米国を論じる著者
─────────────────────────────
 日本で発刊される中国本は圧倒的に「1」が多いのです。しか
し、この手の本を読むと、中国観を誤る恐れがあります。なぜか
というと、日本人の反中・嫌中意識は80%を超えていて、中国
が米国を超えようとしていることを素直に認めず、結局、最後は
米国が勝つということを内心期待して、「1」の本を読む人が多
いからです。したがって、「1」の本の著者は、どうしても話を
読者の期待する方向に合わせようとする傾向があります。つまり
一定のバイアスがかかるのです。
 一方、中国内部の真の情報は、内部に協力者がいないと、なか
なか入手できないものです。その協力者は、中国共産党の序列で
いうと相当上の人とつながっており、そこから情報を入手してい
る関係上、著者は中国にとって真の不利益になることは発言でき
ないし、書けないのです。これらの人々は「中国ウォッチャー」
といわれる人たちです。
 したがって、どちらの中国本を読むとしても、それぞれのバア
イアスを考慮して読まないと、中国観を誤ってしまいます。最近
発売されている中国に関する新刊書には、まさに上記の「1」と
「2」に該当する次の2つの本があります。
─────────────────────────────
 ◎「1」に属する本
                       日高義樹著
       「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
         徳間書店刊/2018年11月30日発刊
 ◎「2」に属する本
                       遠藤 誉著
              「『中国製造2025』の衝撃
          /習近平はいま何を目論んでいるのか」
           PHP/2019年01月11日発刊
─────────────────────────────
 「1」の著者は、日高義樹氏です。
 1959年にNHKに入局し、NHK外信部、ニューヨーク支
局長、ワシントン支局長、米国総局長を歴任。その後、ハーバー
ド大学客員教授に就任、現在はハドソン研究所主席研究員として
主として日米関係の将来の調査、研究にあたっている人物です。
つまり、米国側から見た中国分析の第1人者です。
 「2」の著者は、遠藤誉氏です。
 遠藤誉氏は、中国吉林省長春生まれです。国共内戦/蒋介石率
いる国民革命軍と、中国共産党率いる中国工農紅軍との間で行わ
れた内戦を経験し、1953年に日本に帰国します。
 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、そして
理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員、教授などを
歴任し、現在では、中国分析の第一人者といわれています。
 まさに真逆です。日高義樹氏は、米国の保守派のシンクタンク
の首席研究員、遠藤誉氏は、中国社会科学院社会学研究所客員研
究員です。中国社会科学院は、中国の哲学及び社会科学研究の最
高学術機構であり、総合的な研究センターです。当然、今後の中
国の覇権の行方についても2つの本で違ってきています。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/002]

≪画像および関連情報≫
 ●米中競争の行方と日本の役割
  ───────────────────────────
   12月1日、ブエノスアイレスG20に合わせて開催され
  た米中首脳会談は決裂を回避し、米中それぞれが外交的な勝
  利を宣言する結末となった。2月末まで90日間行われる交
  渉で合意点を拡大できるかが鍵となるが、米中貿易戦争はつ
  かの間の小休止を得ることになった。アメリカによる対中関
  税の「第4弾」は回避され、「第3弾」に含まれていた追加
  関税(19年1月から)の発動も当面猶予された。
   両国は構造的な対立局面に入っており、アメリカは中国と
  の競争を前面に据えた政策を修正しないとみる向きが強い。
  会談直後のタイミングでのファーウェイ最高幹部の逮捕も、
  そのような見通しに説得力を持たせている。つまり、小休止
  は休戦に過ぎないということだが、その背景にはアメリカの
  中国認識の悪化も大きい。
   中間選挙、アジア歴訪を前にマイク・ペンス副大統領がハ
  ドソン研究所で行った演説(18年10月4日)は、多面に
  わたり中国の行動を批判しており、今年に入り(特に初夏に
  かけて)強硬化の一途をたどったアメリカの対中認識の悪化
  を総括するような内容であった。ペンス氏は、「中国は政府
  を挙げて、政治・経済・軍事的な手段、さらにはプロパガン
  ダまで活用して米国に対する影響力を広げ、利益をかすめ取
  ろうとしています」と述べた上で、中国が投げかける問題は
  貿易赤字だけでは決してなく、アメリカからの技術窃取、安
  全保障、信仰の自由、さらには民主主義や国際秩序のあり方
  への挑戦であると、逐一具体的な例をあげて、40分の演説
  時間の多くを割いて中国を叩き続けたのである。
                  https://bit.ly/2FaZ2gv
  ───────────────────────────

日高義樹氏と遠藤誉氏.jpg
日高義樹氏と遠藤誉氏
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2019年01月08日

●「『2025』は半導体制覇の戦略」(EJ第4922号)

 米中関係で現在問題になっているものに、中国が2015年に
打ち出した「中国製造2025」があります。これについて、日
高義樹氏と遠藤誉氏のコメントを両氏の書籍から、抜き出してみ
ると、かなり違うのです。
 はじめに、日高義樹氏のコメントから検証します。
─────────────────────────────
 中国は数の上ではいまや、アメリカやロシアに匹敵する兵器を
保有している。それにもかかわらず、なぜ依然としてして戦いの
技術の面で遅れているのか。その最大の理由はすでに述べたよう
に、中国が自ら技術を開発するのではなく、常に外国から盗んで
いるからである。
 中国は手短かに先進諸国に追いつこうと、兵器類を外国から買
い集めたり、技術を盗んで製造したりしてきた。莫大な貿易黒字
で豊富な資金があり、共産主義による専制国家なので、そうした
安易な行動を取ることが容易だった。かくして中国は戦いに勝つ
ための技術を自ら開発する努力を怠った。その段階で、その兵器
をいかに使うかという努力も、なおざりにされてしまったのであ
る。したがって、アメリカやロシアに匹敵する軍事力を保有して
いても、その内容が空虚なのである。(一部略)
 習近平が「チャイナ・メイド2025」という名の計画のもと
で、人工頭脳の開発に全力をあげているのは、中国の軍事大国と
しての能力を高めるためであり、アメリカに勝つためである。こ
れに対して当然のことながらトランプ大統領は全力をあげて、習
近平の計画を阻止しようとしている。     ──日高義樹著
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
                        徳間書店刊
─────────────────────────────
 中国が「中国製造2025」を打ち出したときは、オバマ政権
でしたが、これに対して何の手も打っていないのです。歯牙にも
かけなかったというべきかもしれません。オバマ大統領の出身母
体である民主党は、どちらかというと中国に甘いというか寛容で
あり、クリントン政権にいたっては、中国に対して米国の門戸を
大きく開き、WTOに加盟させたのです。しかし、これが現在の
中国を作り上げてしまったといえます。
 中国は少しでも早く米国に追いつこうと、まず、圧倒的な数の
国民を持つ経済的優位性を生かして経済を飛躍的に伸長させ、日
本を抜いて米国に次ぐ世界第2位の経済大国になります。そして
それから得られる潤沢な資金を使って、カネで兵器を買い漁り、
多数の留学生を米国をはじめとする先進国に送り込んで技術を習
得させたのです。さらにカネで買えない技術に関しては、ハイテ
ク手段を縦横に駆使して技術を盗んだりして、現在、米国やロシ
アに匹敵する数の軍備を持つにいたっています。
 しかし、日高義樹氏は、いかに数を揃えていても、自ら開発し
たものではないだけに、それを使いこなせるレベルには到底達し
ていないといいます。確かにそれはその通りです。したがって、
「中国製造2025」にしても、同様に当初米国は、それを何ら
脅威には感じていなかったのです。AI(人工知能)にしても、
現時点では、米国のレベルの方が圧倒的に高く、そう簡単に追い
つけるものではない──これが、日高氏の論調です。日高氏は本
のなかで、「失敗したチャイナ・メイド2025」というタイト
ルをつけてこのように論じています。
 これに対して、遠藤誉氏は「中国製造2025」は、ハイテク
製品のキーパーツにおいて米国を抜く計画であることを明確にし
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国は、2015年5月に「中国製造(メイド・イン・チャイ
ナ)2025」という国家戦略を発布し、2025年までに、ハ
イテク製品のキー・パーツ(コアとなる構成部品/主として半導
体)の70%を「メイド・イン・チャイナ」にして自給自足する
と宣言した。同時に有人宇宙飛行や月面探査プロジェクトなどを
推進し、完成に近づけることも盛り込まれている。
 アメリカや日本を中心として、運営されている国際宇宙ステー
ションは、2024年あたりに使用期限切れとなることを見込ん
で、中国が中国独自の宇宙ステーションを2022年までには正
常稼動できるようにする国家戦略が「2025」に潜んでいるの
である。(一部略)
 中国は今、トランプが仕掛けてきた米中貿易戦争は、「202
5」を破壊させるためであり、中国の特色ある社会主義国家を崩
壊へと導くためであると解釈するに至っている。だから一歩も引
かない。「2025」はトランプの攻撃より、今や社会主義体制
が維持できるか否かのデットライン化してしまったのだ。
   ──遠藤 誉著/PHP/「『中国製造2025』の衝撃
           /習近平はいま何を目論んでいるのか」
─────────────────────────────
 遠藤氏は、中国が10年計画で挑んでいるのは、ハイテク製品
のキー・パーツ(つまり、半導体)の70%を「メイド・イン・
チャイナ」にするというのです。中国は、既に米国が支配してい
る分野で米国に勝つのは容易ではないことはよく理解しており、
米国があまり力を入れていない分野を支配することを目指してい
ます。それが「宇宙」であり、それには半導体が不可欠です。
 中国は、2009年に「宇宙計画2050」を発布しましたが
米国は大きな反応を示していないのです。さらに中国は2016
年に「宇宙計画白書」を発表していますが、「2025」と歩調
を合わせて2022年までに中国独自の宇宙ステーションを正常
に稼働させようとしているのです。
 2014年4月に習近平国家主席は、中国人民解放軍の空軍に
対して、「空天一体化」を指示し、「強軍の夢」について語って
います。ちなみに「天」は中国語では「宇宙」、「空天」とは、
空軍と宇宙の一体化──つまり、宇宙軍を意味しています。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/003]

≪画像および関連情報≫
 ●「宇宙軍創設」トランプの真意は中国への宣戦布告
  ───────────────────────────
   トランプ米大統領が2018年6月、宇宙軍創設の指示を
  出した。マスコミはトランプの発言をとかくフェイクと見な
  したがる。そこで、この発言もトランプ一流の大ぼらかのよ
  うな報道ぶりだった。
   もっとも、マスコミの責任ばかりとは言えない。米国は、
  1980年代、当時のレーガン大統領がスターウォーズ計画
  を発表した。当時から人気のSF映画の題名そのままに、レ
  ーザー砲で旧ソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を破壊
  する画像がニュースなどで繰り返し流されたものだった。
   結局、米ソ冷戦の終結で、この計画も沙汰止(さたや)み
  になった。ただし、ここで開発された技術が現在のミサイル
  防衛に生かされているので、レーガンの大ぼらだったという
  のは言い過ぎであろう。
   とはいえ、発表当初から膨大な予算を必要とすることから
  実現を疑問視する声が絶えず、ICBMをレーザーで破壊す
  る画像が文字通り絵に描いた餅に終わったのは事実である。
   従ってトランプの宇宙軍創設も当初マスコミは大統領の大
  ぼらと見なしたわけだが、8月にペンス副大統領が具体的な
  計画を打ち出し、にわかに現実性を帯び始めた。なにしろペ
  ンスは誠実な人柄で知られ、マスコミからも評価が高いから
  だ。ペンスは「2020年までに宇宙軍を設置する」と述べ
  それまでの当面の措置として宇宙担当の国防次官補を新たに
  任命し、統合宇宙司令部、宇宙作戦部隊、宇宙開発局を設置
  すると発表した。        https://bit.ly/2SCDkWL
  ───────────────────────────

中国/「空天一体」.jpg
中国/「空天一体」
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2019年01月09日

●「なぜ中国に貿易戦争を仕掛けたか」(EJ第4923号)

 はじめに日高義樹氏の本を中心に中国の事情について書いてい
くことにします。私は、日高義樹氏の著作はほとんど持っており
読んでいますし、日高氏の主宰するテレビ番組も欠かさず、観て
いたほどの、いわゆる日高ファンです。当然のその主張は、EJ
にも反映されています。
 日高義樹氏が所属し首席研究員を務めるハドソン研究所という
のは、米国の保守派のシンクタンクで、1961年に未来学者の
ハーマン・カーン氏によって設立されています。財源は米政府の
委託に依存していますので、米政府寄りの姿勢が強く、米政府の
意向が反映されます。
 ハーマン・カーンは、1961年にランド研究所から独立して
「ハドソン研究所」を設立し、所長を務めています。1970年
には「超大国日本の挑戦」(邦訳:ダイヤモンド社刊)を著し、
「21世紀は日本の世紀である」と予測した人です。ちなみに、
よく似ている「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は、社会学者エ
ズラ・ヴォーゲルによる1979年の著書です。
 2018年10月4日、ペンス副大統領は中国に対して、まる
で宣戦布告するような激しい内容の演説を行いましたが、このハ
ドソン研究所での演説だったのです。
 日高義樹氏は、2016年の米大統領選挙において、既に7月
の時点でトランプ大統領の当選を予測しています。その分析力は
確かなものです。記者の質問に答えています。
─────────────────────────────
──大統領選が大詰めになってきましたが、なぜトランプがこん
なに支持されているのでしょう。
日高:頭が良いのと戦術に優れているのではないですか。今の段
階では(インタビューは7月28日)トランプが大統領になると
思います。今一番大きな問題は移民の問題。不法移民が1500
万人もいますが、これをどうするかということについて、意見は
分かれています。共和党の政治家の多くは、金持ちから支援を受
けていますが、彼らは安い移民労働力で儲けている。しかし、安
い賃金で働く移民がいると白人の給料が上がらない。それに多く
の白人たちがすごく腹を立てています。トランプは初めからその
人たちを取り込む戦略でした。この層である国民の20%がトラ
ンプについたのです。一方のヒラリーは人道的な解決法を模索し
ていますからね。この移民問題が今度の選挙で大きな要素を占め
ていると思います。         https://bit.ly/2FbaARO
─────────────────────────────
 「中国は米国の技術を盗んでいる」──これは米国による中国
に対する強い不満の表明です。トランプ政権になってから米国は
それを言葉を選ばずストレートで明言しています。
 ペンス副大統領は、昨年10月、ハドソン研究所での演説で、
次のように述べています。そこには、中国に対する強い怒りが込
められているように感じます。
─────────────────────────────
 過去17年間で、中国のGDPは9倍になり、世界第2の経済
大国になった。この成功の大部分がアメリカの中国投資によって
もたらされた。また、中国共産党は、ほんの数例を挙げるだけで
も、関税、割り当て、為替操作、強制的な技術移転、知的財産窃
盗、およびキャンディーのように与えられる工場への補助金を含
む自由かつ公平な貿易と矛盾する政策の武器を使用してきた。
 現在中国は、「中国製造2025」計画を通じて、ロボット工
学、バイオテクノロジー、人工知能など、世界で最先端の産業の
90%を管理することを目指している。  ──ペンス副大統領
                  https://bit.ly/2C1NGdc
─────────────────────────────
 「強制的技術移転」「知的財産窃盗」など、非常に強い言葉で
す。とくに「窃盗」という言葉などは、他国を侮辱することにな
るので、普通は使わないものです。そこまでいわれながら、中国
は米国に対して具体的な行動を起こしていないのです。「勝てな
い相手とは喧嘩しない」という姿勢です。
 そもそも中国を甘やかしたのは、クリントン、ブッシュ、オバ
マの24年間です。この3代の大統領は、ビジネス経験がほとん
どなく、多くの面においてそういうことに強い官僚の力に大きく
依存したのです。
 米国では「スイングドア」という言葉がよく使われます。日本
の「天下り」に該当する言葉ですが、日本の官僚は天下りすると
元の政治の世界には戻れませんが、米国では、ビジネスから政治
その逆の政治からビジネス、どちらからの出入りも自由なのであ
り、だからスイングトアといわれるのです。
 とくにひどかったのは、オバマ政権の8年間です。この大統領
は、完全に習近平主席に取り込まれ、米国から見ると、明らかに
不公平な米中関係ができてしまったのです。
 中国は民主主義国家ではなく、全体主義国家であり、経済の中
心は国営企業です。その国営企業に膨大な政治資金をふんだんに
導入し、安い製品を作らせ、世界中に輸出しています。これは、
明らかに経済的不正行為です。
 それに加えて、中国に進出してくる米国の企業に対して、中国
企業との合弁活動を強制しています。これは、法律でそのように
定められており、中国への進出企業は、技術を供与せざるを得な
い仕組みになっています。これが「強制的技術移転」です。
 それに加えて、中国は米国に多くの産業スパイを送り込み、先
端技術を盗もうとしています。その他、ハイテク技術を駆使して
技術を盗もうとしていのす。
 ところが、中国にとっては、想像だにしなかったトランプ政権
が誕生し、これまでの目論見が狂ってきています。現在、トラン
プ大統領の周りを固める側近スタッフは、すべてコテコテの対中
強硬派として知られる人たちです。その当然の帰結として、米中
貿易戦争がはじまったのです。この戦争で、米国は一歩も引くつ
もりはないのです。  ──[米中ロ覇権争いの行方/004]

≪画像および関連情報≫
 ●中国助ける時代「終わった」 融和路線転換
  ───────────────────────────
   ペンス米副大統領による中国政策に関する演説が米中関係
  に波紋を広げている。中国による知的財産権の侵害や軍事的
  拡張、米国の内政への干渉を公然と非難、両大国が覇権を争
  う対決の時代に入ったことを印象づけた。チャーチル英元首
  相がソ連を批判した「鉄のカーテン」演説に匹敵し、「新冷
  戦」の始まりを告げたとの見方も外交専門家に浸透しつつあ
  る。2018年10月4日、ペンス氏が保守系シンクタンク
  ハドソン研究所で披露した演説は経済問題に限らず、政治、
  軍事、人権問題まで多岐に及び、トランプ政権の対中政策を
  体系立てて示す包括的な内容となった。
   「北京は『改革開放』とリップサービスを続けるが、ケ小
  平氏の看板政策も今ではむなしく響く」経済的に豊かになれ
  ば国民は政治的な自由を求め、やがて中国にも民主主義が広
  がる――。米国の歴代政権はこうした立場から「関与(エン
  ゲージメント)政策」を推進し、2001年には中国の世界
  貿易機関(WTO)加盟も容認した。だが世界第2の経済大
  国となった後も、中国で政治的自由化が進む気配はない。
   むしろ習近平(シー・ジンピン)指導部の下で統制は強ま
  り、民主化の火は消えかけている。台湾の外交的孤立を図る
  など、自らの戦略的利益を追求する姿勢も強まる一方だ。ペ
  ンス氏は、米国が中国に手をさしのべてきた日々は「もう終
  わった」と断じた。    https://s.nikkei.com/2JvlvoG
  ───────────────────────────

中国を正面から批判するペンス米副大統領.jpg
中国を正面から批判するペンス米副大統領
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2019年01月10日

●「米国商務省が本気で調査している」(EJ第4924号)

 トランプ大統領は、何かにつけてツイートを発信しますが、そ
の内容には核心を衝く鋭いものもあります。例えば、WTOにつ
いての次のツイートです。
─────────────────────────────
 中国は、自由貿易体制を維持すると言っているが、WTOに発
展途上国と認定された立場を利用して、資本主義に反する経済活
動を行っている。国営企業を基盤にした中国の経済体制は、資本
主義の原則に違反している。    ──トランプ氏のツイート
                ──日高義樹著/徳間書店刊
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
─────────────────────────────
 トランプ米大統領は、中国が世界第2の経済大国でありながら
発展途上国と認定するWTOに強い不満を持っています。なぜな
ら、中国は、発展途上国という有利な立場で、貿易活動を行うこ
とができるので、不公平だというわけです。
 さらにトランプ大統領は、貿易上で紛争が発生したときに最終
的判断を下すWTOの上級委員会7人の委員のうち、任期切れの
香港やアフリカなどの中国寄りの3人の委員の再任に反対し、他
の委員の就任も認めないので、現在でも3人は空席のままになっ
ています。中国がアフリカをはじめとする資金援助国をそういう
委員につけるよう画策し、何でも自分たちの思う通りにことを進
めようとしており、フェアではないというわけです。
 実はトランプ大統領は一度口にしたこと(ツイッターを含む)
は、部下に命じてそれをトコトン徹底させるのです。意外にしつ
こい人なのです。大統領選挙のときから、いい続けている国境の
かべの問題で、現在も政府機関が閉鎖されていますが、トランプ
大統領は簡単には諦めないはずです。
 そういうわけで、部下の方は大変です。とくに商務省はフル回
転でいろいろな調査をやっています。トランプ政権になってから
商務省は、中国の自動車やコンピュータをはじめ、あらゆる製品
について、技術やパテントの盗用がないかどうか徹底的に調査し
ています。もし、米国の知的財産権を侵害したと認定されると、
その中国企業は米国への進出を禁止されます。米国の安全保障上
の立場を危険なものにしたと認定されるからです。
 それだけではないのです。その中国企業と取引のある他国の企
業(日本などの同盟国も含む)についても、犯罪行為に加担した
とみなされ、制裁を受けることになるからです。
 ある米商務省の関係者は、中国の新幹線のことを「まるで泥棒
が盗んだ物を詰め込んだ大きな箱」と表現し、次のように述べて
います。
─────────────────────────────
 中国の科学技術と能力はアメリカや西側諸国と比べると、その
差は考えられているよりも大きい。想像以上の落差に驚いたが、
とくに目を見張ったのが、多くの製品やシステムがアメリカや日
本、西ヨーロッパから盗んだ技術で作られていることだ。
 中国の新幹線を建物に例えれば、土台をすべて盗んできた技術
と材料で作り、その上にわずかながら持っている自分たちの技術
を加えて作られている。したがって中国の新幹線は、あらゆる部
門で世界の新幹線に比べて遅れている。とくに日本やヨーロッパ
に比べて、その遅れが著しい。  ──日高義樹著/徳間書店刊
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
─────────────────────────────
 こうした商務省の調査は、「国家緊急経済防衛対策」と「対米
投資監視委員会法」に基づいて行われたものですが、商務省以外
にも、FCC/フェデラル・コミュニケーションズ・コミッショ
ン(連邦通信委員会)も並行して、中国のアリババなどのテレコ
ミュニケーション企業の調査を実施しています。
 FCCは、米国国内の放送通信事業の規制監督を行っている政
治色の強い合衆国政府の独立機関です。ちなみに、日高義樹氏は
「テレコミュニケーション企業」と表現していますが、これは、
ICT企業のことであると思われます。
 日高氏は、今や、トランプ政権は、この問題を米国の安全保障
にかかわる重大問題であるとして、自著において、次のように述
べています。
─────────────────────────────
 これまでアメリカのテレコミュニケーション業界はオバマ前政
権の手厚い保護を受け、中国との関係を強め、安い中国製品を多
量に購入し、企業活動を拡大してきた。こうしたアメリカのテレ
コミュニケーション業界は当然のことながら、反トランプ勢力と
して、トランプ批判をアメリカ中に流し続けている。だがトラン
プ政権が次々に放つ厳しい規制措置によって、事態は急転換しつ
つある。アメリカ通商代表部は、2018年4月以来、中国のテ
レコミュニケーション企業の不法なオペレーションについて大が
かりな実態調査を行ってきた。その結果明らかになったのは中国
の巨大テレコミュニケーション企業アリババが、アメリカ国内で
アメリカ企業と同等の自由な活動を展開していること、そのいっ
ぽうで中国に進出しているアメリカのアマゾン・コムやマイクロ
ソフトが、中国政府から強い圧力を受け、中国企業とのベンチャ
ーを強要され、技術を奪われてきたことである。
                ──日高義樹著の前掲書より
─────────────────────────────
 これに関わる問題で現在苦境に陥っているのは、フェイスブッ
クです。フェイスブックは、中国のテレコミュニケーション企業
の華為技術(ファーウェイ)とユーザーの情報を共有していたこ
とが発覚しています。
 これはとんでもないことです。FBIによると、フェイスブッ
クは事実上中国の手先になって、米国の重要な情報を中国に流し
ているといわれても、言い訳ができない事態に陥っているといえ
ます。この問題については、下記「関連情報」参照していただき
たいと思います。   ──[米中ロ覇権争いの行方/005]

≪画像および関連情報≫
 ●崖っぷちのフェイスブック/中国企業との情報共有で
  ───────────────────────────
  [ワシントン/6日/ロイターBREAKINGVIEWS]
   米フェイスブック(FB)は、中国に関する問題で政治的
  に最悪の過ちを犯した。FBは既にロシアの米大統領選干渉
  疑惑に絡んで議会から追及されている。
   しかし中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と
  利用者情報を共有していた事実を今まで隠していたことは、
  与野党双方の政治家を激高させるとみられ、同社の事業が制
  約を課される公算が大きい。
   FBに対する米政界の怒りは、過去1年で高まり続けてき
  た。ロシアがFBやグーグル、ツイッターといったソーシャ
  ルメディアを政治宣伝に利用していたとされる問題で、議会
  は公聴会を開いている。英データ分析会社ケンブリッジ・ア
  ナリティカがFBの利用者情報を不正入手した件では、FB
  のザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が4月に議会で
  証言した。
   しかしこれらの事案は党派性という要素が働いて状況を複
  雑化させた。ロシアの干渉はトランプ大統領陣営の追い風に
  なったとの見方があるためだ。こうした中でザッカーバーグ
  氏は不祥事に見舞われたトップとしては、ウェルズ・ファー
  ゴの元CEOのジョン・スタンプ氏よりも、かなりうまく事
  態を乗り切ってきた。      https://bit.ly/2QyZrf2
  ───────────────────────────

中国製新幹線「復興号」.jpg
中国製新幹線「復興号」
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2019年01月11日

●「選挙に使われていたFBデーター」(EJ第4925号)

 昨日のEJで、米中貿易戦争のさなかで、フェイスブックが苦
境に陥っていると書きました。フェイスブックは、GAFAの一
角を占める米国大企業の一つであり、なぜ、苦境なのかについて
ネットから情報を集めて書くことにします。
 米国のインターネット企業にとって、中国は実に魅力ある国で
あるといえます。それは何といっても約14億人という巨大な人
口を持つ国だからです。「多くの人とつながる」というのが、イ
ンターネット企業の目標であることを知るとき、中国ほどそれを
満たしてくれる市場はないのです。
 しかし、中国は民主主義国家ではなく、進出するにはさまざま
な情報統制を受け入れる必要があります。その結果、米国のイン
ターネット企業は、中国で一敗地に塗れているのです。作家で、
起業家のエミリー・パーカー氏は、ブログで次のように書き出し
ています。2016年10月19日の記事です。
─────────────────────────────
 米国のインターネット企業にとって、中国は事実上の敗北の地
だ。西洋のテック企業が中国の情報統制を緩めることを多くの人
が願った。だがそれらの企業は中国市民の発言の検閲に積極的に
参加した。ヤフーは民主化活動家に関する情報を中国当局に提供
し、活動家は投獄された。マイクロソフトはメディアの自由を求
める著名な活動家、マイケル・アンティのブログを閉鎖した。
 グーグルは中国で政治的にデリケートな検索結果を検閲した。
2006年、3社は米国議会小委員会委員長から、中国政府への
「嫌悪を催すような協力」について非難された。グーグルは中国
本土の自社検索エンジンを2010年に停止し、検閲とサイバー
セキュリティについて公式に抗議した。
 フェイスブックは、2009年から中国で規制されており、買
収した写真共有サービス、インスタグラムも2014年に規制さ
れた。かつてソーシャルネットワークの中国進出は破滅的である
か不可能だと考えられており、中国専門家の中には現在もそう信
じる人がいる。だが、フェイスブックの中国進出は今や有望に見
える。               https://bit.ly/2LWX054
─────────────────────────────
 フェイスブックが現在苦境に陥っているのは、2016年の2
つの選挙に深い関係があります。
─────────────────────────────
      1.EU離脱の可否を問う国民投票
           2016年06月23日
      2.2016年の米国の大統領選挙
           2016年11月08日
─────────────────────────────
 結論からいうと、この2つの選挙にフェイスブックは深く関与
している疑いがあるのです。もう少し正確にいうと、この2つの
選挙には、次の英国の企業が関わっています。
─────────────────────────────
  ケンブリッジ・アナリティカ/本社イギリス/ロンドン
                  Cambridge Analytica
                https://bit.ly/2C7li7R
─────────────────────────────
 ケンブリッジ・アナリティカは、一口でいうと、データマイニ
ング、データ分析を手法とする選挙コンサルティング会社です。
この企業の事務所は、英国と米国にありますが、米国の事務所に
は、ドナルド・トランプ大統領のかつての盟友スティーブン・バ
ノン氏が出入りしていたと言いわれます。役員会のメンバーでも
あったからです。
 それでは、このケンブリッジ・アナリティカとフェイスブック
は、どういう関係なのでしょうか。
 いうまでもなく、フェイスブックは、その分析すべきデータの
提供者です。これはとんでもないことです。多くの人は、フェイ
スブックのデータが流出し、マーク・ザッカーバークCEOが米
国議会に呼ばれて喚問されているということは知っているでしょ
うが、まさか2016年の2つの選挙に深く関わっていることを
知る人は少ないと思います。
 企業のデータ流出事件は、枚挙にいとまがないほど多発してい
ます。そのため、そういうことに不感症になっているユーザーは
少なくないと思います。しかし、フェイスブックのデーター流出
だけは絶対にあってはならないことだと思っています。実害があ
まりにも大きいからです。
 ちなみに私は、最初からフェイスブックをやっていませんし、
これからもやるつもりはありません。SNSでやっているのは、
ツイッターのみです。ツイッターは、2010年1月4日からば
じめており、毎日ツイートしています。ツイッターは匿名は許さ
れますが、私は実名でツイートしています。
 なぜ、フェイスブックのデータ流出が、問題なのかというと、
フェイスブックのアカウントを獲得するには、氏名、メールアド
レス、生年月日、顔写真などの多くの個人情報を登録する必要が
あるからです。公開範囲を設定した上で、電話番号や居住地も登
録している人は少なくありません。
 それは、絶対に情報が流出することはないという厳重なセキュ
リティへの信頼感があるからこそ、そうするのです。何しろフェ
イスブックは世界で16億5000万人のユーザーがいるし、日
本でも2500万人のアクティブユーザーがいるのです。私のよ
うに、ICT機器が使えるのにフェイスブックをやっていない人
を探すのが、困難なほどフェイスブックは普及しているのです。
 それでも人間のやることですから、データの流出事故は起きる
ものです。しかし、フェイスブックのデータ流出は、アクシデン
トて、起きたものではなく、フェイクブックが自ら流しているの
です。現実に米国と英国ではケンブリッジ・アナリティカによっ
て、選挙に利用されていたのです。事件の詳細は来週のEJでお
伝えします。     ──[米中ロ覇権争いの行方/006]

≪画像および関連情報≫
 ●「微博」など中国SNSから個人情報30億件流出
  ───────────────────────────
   「微博(ウェイボー)」など中国の主なSNS(会員制交
  流サイト)から、30億件もの個人情報が不正アクセスによ
  り盗まれたことが、このほど明らかになった。中国の店頭市
  場に上場するIT関連企業の実質的なトップが犯行を首謀し
  たとみられ、インターネット利用の広がる中国において「過
  去最大」の情報流出として衝撃を広げている。(フジサンケ
  イ・ビジネスアイ)
   報道によると、一連の不正アクセスは、中国のSNSユー
  ザーから自分のアカウントで身に覚えのない操作が繰り返さ
  れている、という通報が相次いだことで、浙江省のサイバー
  警察が捜査を進めて判明した。
   複数のIPアドレスを特定して調べた結果、インターネッ
  ト広告を手掛ける北京瑞智華勝科技公司など3社の介在が浮
  上。警察はこれまでに容疑者6人の身柄を拘束した。
   さらに、これら企業の実質的な経営権を持つ人物が、犯行
  を首謀していたとみて行方を追っている。不正アクセスによ
  り抜き取られた可能性のある個人情報が30億件に達したの
  は、中国のネット犯罪で「最大規模」という。被害を受けた
  のは、バイドゥ、テンセントなど、大手を含む中国のインタ
  ーネットサービス企業96社の利用者。電子商取引大手アリ
  ババのセキュリティー部門が警察の捜査に協力したという。
                  https://bit.ly/2QxPgXN
  ───────────────────────────

マーク・ザッカーバードCEO.jpg
マーク・ザッカーバードCEO
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2019年01月15日

●「フェイスブックへの重大なる疑惑」(EJ第4926号)

 先週金曜日のEJ第4925号で述べたように、ケンブリッジ
・アナリティカという英国の企業が、今後世の中を変革する可能
性のある2つの重要選挙(「EU離脱の可否を問う英国の国民投
票」と「2016年の米国の大統領選挙」)にフェイスブックの
データが不正に取得され、利用された疑惑が問題となり、フェイ
スブックが苦境に立っています。
 ケンブリッジ・アナリティカは、2018年5月2日、関連会
社とともに破産手続きを申請し、同日付ですべての業務を停止し
ています。なぜ、破産申請をしたのかについて、同社のウェブサ
イトは、次の趣旨の声明を出しています。
─────────────────────────────
 過去数ヶ月間にわたり、ケンブリッジ・アナリティカは多くの
根拠なき疑惑の的となってきた。そして、記録を訂正する努力に
もかかわらず、当社は業務について、合法のみならず政治領域、
商業領域どちらにおいても広く認められているインターネット広
告の規格に合っている商行為を中傷されてきた。
 ケンブリッジ・アナリティカは、従業員は倫理的、合法的に振
舞ってきたと揺るぎない自信を持っているが(中略)、メディア
報道の包囲攻撃は事実上全ての顧客と供給業者を離れさせた。
 その結果として、当社は事業運営の継続はもはや不可能だと判
断した。              https://bbc.in/2H9wpTw
─────────────────────────────
 ケンブリッジ・アナリティカは一体何をしたのでしようか。そ
れにフェイスブックはどのように関わったのでしょうか。
 既に述べているように、ケンブリッジ・アナリティカは、ネッ
ト上のデータを使って解析する選挙コンサルティング会社です。
2014年のことですが、フェイスブック上で、性格のタイプを
診断するアプリが開発され、ユーザーに提供されたのです。その
開発会社とケンブリッジ・アナリティカとの関係は、今のところ
わかっていません。
 このアプリは、ダウンロードして質問に答えると、その答えた
ユーザーだけでなく、その友達のデータまで収集してしまう設計
になっていたのです。元ケンブリッジ・アナリティカの社員から
の情報によると、約27万人がこのアプリを使ったことによって
米国に住む5000万人分のデータが、フェイスブック上の友達
ネットワークを通じて収集され、そのアプリの開発業者からケン
ブリッジ・アナリティカに売却されたというのです。
 問題は、このことがフェイスブックの規約に違反していないか
どうかです。
 アプリによって、フェイスブック内でデータが共有されるのは
規約で認められています。もともとフェイスブックは、閉じた情
報世界であり、その閉じた世界の中での情報の共有は違反ではな
いのです。
 しかし、それが外部に売却されたり、フェイスブックの外と共
有されることは違反になります。そういうことが発覚した場合は
収集したデータはすべて消去し、その証拠をフェイスブック社に
示すことが規約上決められています。
 この時点ではフェイスブック側に瑕疵はないようにみえます。
そもそもアプリというものは、情報の共有を求めてくるものが多
いのです。スマホにはGPSが付いているので、位置情報を持っ
ていますが、多くのアプリはその共有を求めてきます。アプリで
は、位置情報の共有がないと、本来の機能を発揮できないものが
あり、その場合、ユーザーは当然ですが、そのアプリをダウンロ
ードする以上、位置情報の共有を認めます。
 しかし、フェイスブックの場合、情報の共有の仕組みが複雑で
あり、自分ではそれとわからないまま、情報を勝手に共有されて
しまうケースが多いのです。
 今回のケースでは、外部のケンブリッジ・アナリティカにフェ
イスブックの膨大なデータが渡っています。ケンブリッジ・アナ
リティカは、データは使っていないし、収集したデータは、フェ
イスブック社の指示にしたがい、適切に消去していると主張して
いますが、その真偽は不明です。
 そもそもこの事件は、2017年5月18日に『タイム/TI
ME』誌が、2016年の米国大統領選挙におけるロシアの干渉
に関して、ケンブリッジ・アナリティカを調査しているという記
事を掲載したことによってはじまったのです。
 しかし、米国の政治学者の多くは、ケンブリッジ・アナリティ
カの「マイクロ・ターゲッティング」という手法に疑問を持って
います。これに関して、ウィキペディアは次のように述べていま
す。少し難解ですが、引用します。
─────────────────────────────
 アメリカの政治学者の多くは、ケンブリッジ・アナリティカが
「マイクロターゲッティング」と呼称する手法の投票者に対する
効果について、非常に懐疑的である。この手法「マイクロターゲ
ッティング」においては、特定のグループに分類された人々の行
動や興味・関心、意見等をデータ解析によって予見し、そこから
彼らにとって最も効果的な反応を引き出すメッセージが発信され
る。これに対して政治学者たちは、このようなデジタルデータへ
のアクセスによって得られる結果は、公表されている投票者のデ
ータから抽出される情報以上に有意味的なものではなく、また特
に投票者の意向が移り変わってゆく場合に、限定的な価値しか持
たないと反論する。従って、個人の類型を基にして政治的な価値
観を推測するのは困難であり、こういった個人の類型を基に投票
者に送信されるメッセージは、得てして標的を誤ることになりが
ちであるという。──ウィキペディア https://bit.ly/2C7li7R
─────────────────────────────
 このように見ると、フェイスブックは情報を窃取された被害者
のような立場であり、問題はないように見えます。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/007]

≪画像および関連情報≫
 ●FBのデータ不正共有疑惑「8700万人に影響」
  ───────────────────────────
   フェイスブックは、2018年4月4日、最大でフェイス
  ブック利用者8700万分のデータが、選挙コンサルティン
  グ会社の英ケンブリッジ・アナリティカにより不適切に共有
  されただろうと発表した。それまで発表していた対象利用者
  数から大幅に増加した。
   同社はBBCに、データを不正に共有された利用者のうち
  約110万人は英国からアクセスしていたと答えた。情報が
  不正使用された利用者数はこれまで、一連の疑惑を告発した
  クリストファー・ワイリー氏が示した5000万人だと言わ
  れてきた。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経
  営責任者は「明らかに、もっと対策が必要だった。これから
  進めていく」と述べた。
   記者会見の中でザッカーバーグ氏は、フェイスブックは利
  用者に道具を提供しているのであって、使い方を決める主な
  責任は利用者自身にあると、以前は考えていたと話した。し
  かし、同氏は、そのような狭い考え方は「振り返ってみると
  間違いだった」と付け加えた。
   現時点で把握している内容を踏まえれば(中略)自分たち
  の責任についてもっと幅白い視点が必要だと、我々は理解し
  ていると思う」とザッカーバーグ氏は語った。「私たちは、
  ツールを構築しているだけではなく、人がそのツールをどう
  使い、その結果どうなるかついても、全面的な責任を取る必
  要がある」           https://bbc.in/2SRCNjN
  ───────────────────────────

フェイスブック(FB)に対する疑惑.jpg
フェイスブック(FB)に対する疑惑
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2019年01月16日

●「フェイスブックは今後どうなるか」(EJ第4927号)

 およそあらゆる企業にとって、フェイスブックのユーザーデー
タがいかに貴重なものであるかわかるでしょうか。
 それは、「友達」の質が他のSNSと違うからです。フェイス
ブックの場合、ユーザーAが、ユーザーBの「友達」になる場合
は、AはBに対して「友達リクエスト」を送って、Bの承認を得
る必要があります。つまり、リアルの世界と同じように、友達に
なる場合は、相手の承諾が必要なのです。
 LINEの場合は、アドレス帳に相互に携帯電話番号が登録さ
れていれば、自動的に「友だち」になりますし、ツイッターのフ
ォロワーは相手の承諾なしにフォロワーになれます。そして、い
つでもフォローを外すことができます。つまり、フェイスブック
の「友達」とは質が異なるのです。
 ビジネスで考えてみます。商品を売る企業の立場で考えてみま
す。Aというセールスパーソンが、Bに対して、商品かサービス
を売り込み、成功したとします。この場合、企業としてはBを中
心とする人間関係をたどって、さらに商品かサービスを拡大して
売り込んでいきたいと思うものです。
 そのさい、フェイスブックの「友達」の情報が分かると、それ
は有力な見込客になります。これが商品の売り込みではなく、選
挙の投票先ということになると、条件は営業とは異なると思いま
すが、それでも「友達」は支持を拡散できる有力な拠点的存在に
なるはずです。それほど、フェイスブックの「友達」は貴重な存
在なのです。
 さて、話をフェイスブックのデータ流出事件に戻します。結局
ケンブリッジ・アナリティカに流出したデータは、8700万人
にのぼったのです。しかもその大半は、明確な同意のない「ユー
ザーの『友達』のデータ」です。その結果、マーク・ザッカーバ
ークCEOは、米議会と欧州議会での証言を迫られる事態に発展
したのです。しかし、ザッカーバーグCEOは、議会で、データ
の共有は規約としてルール化されており、不正にデータを取得し
たケンブリッジ・アナリティカに対しては、そのデータの消去を
要請し、その証明も済んでいると証言しています。そしてその後
データーの共有はできないようにセキュリティを強化したと証言
しています。あくまでフェイスブックとしては、一応被害者の立
場をとっているのです。
 しかし、ことはそんなことでは終らなかったのです。フェイス
ブックのデータの扱い方に不適切なことが次々と明らかになった
からです。ザッカーバークCEOは、次のサイクルを何度か繰り
返しているのです。
─────────────────────────────
    疑惑発覚 → 議会釈明 → 対策強化約束
    ↑ ←―――――――――――――― ↓
─────────────────────────────
 ウォールストリート・ジャーナルによると、フェイスブックで
は「ホワイトリスト」と呼ばれる特定企業に対しては、ユーザー
データーの共有を認めています。このホワイトリストのなかには
カナダロイヤル銀行や日産自動車が含まれているといいます。
 極め付きは、2018年6月3日付のニューヨーク・タイムス
のスクープです。これによると、フェイスブックは、2007年
頃から、複数の端末メーカーと「パートナー契約」と称して、当
然のことのように、データの共有を平然と10年以上続けていた
のです。
 その端末メーカーは、実に60社にのぼるのです。アップル、
サムスン、ブラックベリー、マイクロソフト、アマゾンなどが含
まれます。それだけではないのです。この60社のなかには、中
国の次のメーカーも含まれていたのです。
─────────────────────────────
       1. ファーウェイ(華為技術)
       2.    レノボ(聯想集団)
       3.オッポ(広東欧伯移動通信)
       4.          TCL
─────────────────────────────
 フェイスブックをめぐり、これだけ多くの疑惑が生じているの
です。日本では「フェイスブックのデータ流出」のニュースは報
道されていますが、今回EJで取り上げたフェイスブックに関わ
る詳細な報道は一切ないのです。
 それでは、その渦中のフェイスブックは、現在、どういう状況
にあるのでしようか。これについては、次のサイトの記事の一部
をご紹介します。
─────────────────────────────
 このような一連の流れで、「フェイスブック」の株価は暴落し
わずか数日で8・4兆円の資産が吹き飛びました。ちなみにフェ
イスブック」は、有形資産をほとんど持っていない企業です。こ
の一連の報道のあと、もともと関係性が良くなかった米電気自動
車メーカーの「テスラ」と米宇宙ベンチャーの「スペースX」の
CEOイーロン・マスクが、「フェイスブック」の公式ページを
削除。ロイター通信によると、ドイツの金融の大手「コメルツ銀
行」なども「フェイスブック」への広告出稿を見合わせており、
企業や著名人の「フェイスブック離れ」が、急速に進みつつあり
ます。               https://bit.ly/2Ctkqef
─────────────────────────────
 もし、フェイスブックがやったことが本当であるとすると、こ
れは大変なことです。上記のサイトにあるように、大手の大企業
が、フェイスブック上の公式ページを閉鎖したり、広告を引き上
げたり、しはじめているからです。これは個人にも波及します。
 一番問題なのは、中国との関係です。フェイスブックは、中国
のいいなりになってもよいから、中国とはビジネスをやりたいと
考えています。しかし、米国が中国とは激しい貿易戦争をやって
いるときに、フェイスブックの行動が許されるでしょうか。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/008]

≪画像および関連情報≫
 ●今フェイスブックに何が起きているのか
  ───────────────────────────
   先週末(2018年3月)から、フェイスブックはかつて
  ない危機に瀕している。トランプ陣営に雇われたデータ分析
  ファームであるケンブリッジ・アナリティカが、ユーザーの
  承諾なしに数千万人の個人情報を不正利用していたと、報じ
  られたのだ。
   フェイスブックには、2010年から2015年にかけて
  サードパーティのアプリに、個人情報の詳細を集めることを
  許していた。悪用されることに気がついたフェイスブックは
  2015年に、(外部の)アクセスを一時停止し、プラット
  フォームをアップデートした。しかしケンブリッジ・アナリ
  ティカは既に何千万人ものデータを集めており、手遅れだっ
  た。2010年4月、フェイスブックは、ソーシャルグラフ
  (ネット上での人間の相関図)をサードパーティのアプリに
  公開した。ユーザーの「友達」の情報を含んだ莫大な量のデ
  ータを、取得理由を伝えることなく、要請できるようになっ
  た。これらのアプリはユーザーの公開プロフィール(名前、
  性別、場所、タイムゾーン、フェイスブックID)が含まれ
  た広範囲のデータセットを取得できた。それだけではなく、
  そのユーザーの友達の名前、経歴、誕生日、学歴、政治的見
  解や交際状況、宗教、メモ、オンライン表示などの情報もで
  ある。さらに許可が与えられると、デベロッパーには、ユー
  ザーの個人メッセージへもアクセスが拡大できた。
                  https://bzfd.it/2RuCsHm
  ───────────────────────────

李克強首相とザッカーバークCEO.jpg
李克強首相とザッカーバークCEO
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2019年01月17日

●「英国のEU離脱の選挙結果に異議」(EJ第4928号)

 2019年1月16日朝、衝撃的なニュースが飛び込んできま
した。英国政府がEUと協議のすえまとめた離脱案を受け入れる
ための承認採決が行われましたが、200票以上の大差で否決さ
れたのです。BBCのニュース記事を以下に示します。
─────────────────────────────
 英議会下院(定数650)は、15日夜、イギリスの欧州連合
(EU)離脱について英政府がEUとまとめた離脱条件の協定の
承認採決を行い、432(反対)対202(賛成)の大差でこれ
を否決した。
 230票差での政府案否決は、英現代政治史において、政府に
とって最悪。2年以上にわたりブレグジット(イギリスのEU離
脱)交渉を行い、協定を取りまとめてきたテリーザ・メイ首相に
とっては、大きな敗北となった。
 また、これを受けて最大野党・労働党は、政府に対する不信任
案を提出した。なお、本日午後7時(日本時間17日午前4時)
に投票が行われる予定で、採択されれば総選挙となる可能性があ
る。                https://bbc.in/2QR3HGz
─────────────────────────────
 実は、「EU残留か離脱か」を問う2016年6月23日の国
民投票の結果に影響を与えたのは、ケンブリッジ・アナリティカ
(以下、CA)の疑いが濃厚です。同社はフェイスブックのデー
タを不正に取得し、本当は「EU残留」であった民意を逆の「E
U離脱」に導いたのです。
 なぜ、そんなことがわかったのかというと、ケンブリッジ・ア
ナリティカでリサーチ担当として働いていたクリストファ・ワイ
リー氏が内部告発をしたからです。
 このワイリー氏の内部告発に基づいて、英オブザーバー紙およ
びガーディアン紙、英チャンネル4ニュース、米ニューヨークタ
イムズ紙などが調査報道を行っています。
 調査報道というのは、あるテーマ、事件に対し、警察・検察や
行政官庁、企業側からの情報によるリーク、広報、プレスリリー
スなどからだけの情報に頼らず、取材する側が主体性と継続性を
持って様々なソースから情報を積み上げていくことによって新事
実を突き止めていこうとするタイプの報道のことです。したがっ
て、その内容はかなり正しいといえます。
 実際にCAがどのようにして、選挙の投票先に影響を与えたか
については、詳細はわかっていませんが、フェイスプック上の詳
細な個人情報に対して心理的プロファイリングを行ってパターン
化し、それらのパターンごとに「カスタマイズされた情報」をフ
ェイスブックのタイムラインなどに流し、投票に何らかの影響を
与えようとしたと思われます。
 英国の国民投票については、CAと関係があるカナダのAIQ
という企業がかかわっており、「日経ビジネス」は、次のように
書いています。
─────────────────────────────
 英国のEU離脱を問う国民投票でも、CAとの関連があるとい
われるカナダの企業AIQによって行われたと指摘されているが
フェイスブックの情報がこちらでも流用されたのかは未だ不透明
だ。ただし、AIQは、離脱派陣営の団体「ボートリーブ」から
270万ポンド(約4億600万円)に及ぶ多額の報酬を得てお
り、これは「ボートリーブ」の支出の実に40%に上ると報じら
れた。デジタル戦略の効果を測ることは容易ではないが、「ボー
トリーブ」のキャンペーン担当者は離脱決定後、AIQなしには
「勝利は成し得なかった」と発言したと言われている。
 告発者のワイリー氏も特別委員会での証言で、このような「不
正な行為」がなければ、EU離脱決定に際し、異なる結果であっ
た可能性に言及した。ワイリー氏の証言によれば、EU離脱を問
う国民投票で、デジタル戦略によって有権者による実際の行動を
転換させることに成功した率はおよそ5〜7%であったという。
離脱を問う投票では、離脱支持が52%、残留48%と僅差だっ
たことを考えると、効果は否定できないのではないか。
                  https://bit.ly/2HrLrV9
─────────────────────────────
 ここでいうAIQという企業はどういう企業なのでしょうか。
ワイリー氏によると、AIQは、CAのフランチャイズ企業のよ
うなものではないかといっています。この企業は、法律を無視し
て、フェイスブックなどから不正に収集した情報を使用するのに
何の躊躇いもみせない企業であるというのです。
 どちらかというと、AIQは、ターゲットを狭く絞って、その
ターゲット層に響くメッセージを繰り返し送ったり、タイムライ
ンに表示させることで、意識的、無意識的に人々の思想や行動に
影響を与えるマーケティングキャンペーンを繰り広げるのです。
 そもそもフェイスブックの情報は、個人情報、発信する情報の
コンテンツ、受信する情報の種類や、「いいね!」をつけるコン
テンツなど、ユーザーの特性を把握できる内容を、豊富に持って
います。そのため、ターゲットを狭く絞りやすいのです。しかも
内容は正確で、写真まで付いています。したがって、フェイスブ
ック社としては、これらは絶対に流出させてはならない情報なの
です。ユーザーは、フェイスブックなら、セキュリティが万全で
あると信じているからこそ、正確な個人情報を託していますが、
フェイスブック社は、その信頼を裏切っています。
 とくに許せないのは、フェイスブックは、ユーザーの数を増や
すため、中国系4社を含む60社を超える端末企業と情報を共有
していることです。これでは、情報の流出に歯止めがかからなく
なり、信頼性を大きく損ねてしまいます。まして、そのデータが
世界を変える2つの選挙行動に影響を与えていることは、ほぼ確
実であるといえます。
 とくにフェイスブックのCEO、マークザッカーバーク氏は、
中国市場に大いなる関心を持っています。これについては、明日
のEJで述べます。  ──[米中ロ覇権争いの行方/009]

≪画像および関連情報≫
 ●「フェイスブックは評判の危機」/疑惑渦中の学者語る
  ───────────────────────────
   フェイスブックのデータ流出疑惑をめぐり、疑惑のきっか
  けとなったアプリの開発者アレクサンダー・コーガン博士が
  2018年4月24日、英議会下院のデジタル・文化・メデ
  ィア・スポーツ(DCMS)委員会で証言した。同氏はフェ
  イスブックが全面的な「PR危機状態」(世間からの批判で
  評判が危機にあること)にあると語った。
   コーガン氏の発言は、同氏が英ケンブリッジ・アナリティ
  カ社によるデータ不正収集における自身の役割について下院
  議員の厳しい追及を受けてなされた。同氏はフェイスブック
  が、自社のデータが「数千におよぶ第三者によって利用され
  ていた」ことに全面的に気づいていたと述べた。
   同氏はケンブリッジ・アナリティカは同氏からデータを受
  け取っていなかったとするアレクサンダー・ニックス最高経
  営責任者(CEO=停職中)のこれまでの主張についても、
  「でっち上げだ」と批判した。後の釈明でケンブリッジ・ア
  ナリティカは、コーガン博士が設立した会社からデータの使
  用権を与えられたことを認めたものの、その情報が2016
  年の米大統領選で使われたことは否定した。コーガン博士が
  DCMS委員会で証言した後、ケンブリッジ・アナリティカ
  は記者会見を開き、同社の広報担当者クラレンス・ミッチェ
  ル氏は同社が、「(ジェイムズ・)ボンド映画の悪役ではな
  い」と語った。
   「データ分析は(広告配信などにおける)より正確な対象
  絞込みのために一般的に使われており、完全に合法だ。一部
  で描写されているような、ボンド映画に出てくるような洗脳
  ではない」           https://bbc.in/2CmvRnO
  ───────────────────────────

クリストファ・ワイリー氏.jpg
クリストファ・ワイリー氏
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2019年01月18日

●「ザッカーバーグは中国に異常接近」(EJ第4929号)

 ヤフーやグーグル、フェイスブックなどの米ネット企業にとっ
て、中国進出は大きな挑戦であったといえます。しかし、中国に
は厳しい規制と検閲があり、ユーザーが自由に発言できないなど
ネット企業にとって大きなカベがあるのです。
 フェイスブックのザッカーバークCEOも「世界中の人々をつ
なげたい」という目標を持つ以上、どんな困難なことがあっても
中国を無視できない」と語っています。ザッカーバークCEOに
ついて、エミリー・パーカー氏は次のように述べています。エミ
リー・パーカー氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル中国担
当で、米国務省のアドバイザーを務めています。
─────────────────────────────
 ザッカーバーグCEOは、明らかに中国を苦労する価値がある
ものと考えている。たとえそれがいくらかの「西洋的価値観」を
投げ捨てることを意味してもだ。ザッカーバーグCEOは、今年
(2016年)初めに北京を訪れ、劉雲山中国中央宣伝部部長と
会談し、大きな注目を集めた。
 中国の国営メディアはフェイスブック創業者が中国でインター
ネットを発展させ、政府と協力してよりよいサイバースペースづ
くりに取り組むと約束したと報じた。劉部長は「中国特有の」イ
ンターネット統治の概念を強調した。その意味するところは明ら
かだ。中国版フェイスブックは間違いなく検閲される。今年の訪
問(2016年)はちょっとした「続編」だった。2014年に
ザッカーバーグCEOは、中国サイバー管理局のルー・ウェイ局
長をフェイスブックのオフィスでもてなした。その時、ザッカー
バーグCEOのデスクの上には習近平国家主席の本がたまたま置
かれていた。            https://bit.ly/2LWX054
─────────────────────────────
 実は、米国のネット企業のなかでもフェイスブックは、中国の
指導部にとくに警戒されていたのです。なぜなら、中国では「ア
ラブの春」のことを「フェイスブック革命」と表現していたから
です。現在とはまるで逆の話ですが、中国政府は、米国のネット
企業は、米国政府による諜報活動のバックドアになっているので
はないかと警戒していたのです。
 実際にフェイスブックは、2009年から中国でアクセス規制
されていますし、同社が買収したインスタグラムも2014年に
規制されています。しかも、中国でもテンセント(微信)が20
11年に「ウィーチャット」というサービスをはじめており、ま
すます参入が厳しくなっているのです。
 それでもザッカーバーグCEOはあきらめていないのです。そ
こで彼は、できる限り中国の要人に会い、警戒を解こうとしたの
です。中国の指導者は、人間関係を重視することを知っており、
そのためにザッカーバークCEOは、劉雲山氏をはじめとする中
国の要人に会っているのです。
 それにもうひとつ、バッカーバーク氏には強みがあるのです。
彼は2012年に結婚しましたが、妻は華僑系のプリシラ・チャ
ンという中国人です。まさか、そのために中国人と結婚したので
はないとは思いますが、同業他社よりも有利なポジションにいる
ことは確かです。ザッカーバークCEOの考え方はこうです。
─────────────────────────────
 中国には、13億人という人口の数からみても、世界中の人を
繋げることを目標とするフェイスブックとしては無視できない存
在である。そのため、若干の「西洋的価値観」を捨て、多くの統
制や検閲を受け入れたとしても、参入すべき価値がある。そのた
めには、できる限り中国の要人との接触に努めるとともに、中国
内にフェースブックとしていろいろな拠点を設ける必要がある。
─────────────────────────────
 ザッカーバークCEOは、上記の考え方に基づいて、中国訪問
を繰り返していますが、依然として再参入は認められていない状
況です。とくにトランプ政権になってからは、米国の方が安全保
障上の観点から、中国系通信企業に規制を強化しているので、一
層困難になっています。
 ウォール・ストリート・ジャーナルは、2017年10月時点
のフェイスブックの中国との関わりについて、次のようにレポー
トをしています。
─────────────────────────────
 【北京】中国でフェイスブックへのアクセスが解禁されるのは
まだ先かもしれない。それでも同社のマーク・ザッカーバークC
EOは、訪中を繰り返している。
 ザッカーバーク氏は、2017年10月28日、顧問委員を務
める北京の精華大学の年次会合に出席するため、中国入りした。
 フェースブックは、9月、新設した中国の政府担当部門トップ
にビジネス向け交流サイト米リンクトインで、中国政府との折衝
を統括していたウィリアム・シュアイ氏を招き入れた。リンクト
インは、中国ユーザー向けコンテンツの検閲を受け入れ、現地企
業との合弁を立ち上げることを条件に中国参入を認められた。
 フェイスプックは今年に入り、仮想現実(VR)部門オキュラ
スの上海拠点に500万ドル(約5億6000万円)の追加融資
を実施している。
 サッカーバーク氏は30日、精華大学の会合で演説した習近平
国家主席とも短い時間ながら、顔を合わせた。今回の訪中で、中
国当局とフェイスブックに関する話し合いの場が設けられたかど
うかは明らかになっていない。
 ザッカーバーク氏はこれまで、中国がフェイスブックの未来に
とって重要な市場であると述べてきた。北京の調査会社マーブリ
ッジ・コンサルティングのマネジメントディレクター、マーク・
ナトキン氏は、精華大学で顧問委員を務めるのも(フェイスブッ
ク)が再参入を諦めていない証しかもしれないと述べている。
                https://on.wsj.com/2Cu4PuE
─────────────────────────────
           ──[米中ロ覇権争いの行方/010]

≪画像および関連情報≫
 ●「ザッカーバーク親中派戦略」は功を奏すか
  ───────────────────────────
   宣伝という意味では、中国で過ごした数日間は、フェイス
  ブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)
  にとって大成功だったと言えるだろう。
   ザッカーバーグの今回の訪中は、中国の国内メディアで大
  きく取り上げられ、中国のインターネットユーザーの注目を
  集めた。天安門広場でジョギングをしたというフェイスブッ
  クへの投稿は大きな反響を呼び、中国ネット通販最大手アリ
  ババ創業者の馬雲(ジャック・マー)との対談もメディアは
  こぞって報道した。2016年3月19日には、中国指導部
  の1人である共産党の劉雲山・党政治局常務委員とも会談し
  た。過去の訪中でもザッカーバーグは、習いたての中国語を
  披露したり、中国への熱い思いを語ったりしてこの国の人々
  に好印象を与えてきた。米国においてもザッカーバーグは習
  近平国家主席と会談したり、中国高官に習の著書を読んでい
  ると話したり、生まれたばかりの娘マックスに中国語の名前
  をつけたりした。今回を含む訪中で、ザッカーバーグが「中
  国人の間で知名度ナンバーワンの外国人実業家」という地位
  を固めたのは間違いない。だがこうした懐柔策により、中国
  政府にフェイスブックへのアクセス規制をやめさせ、約7億
  人のネットユーザーの取り込みを図るという最終目標が達成
  できるのかどうかはまったく分からない。
                  https://bit.ly/2CoTKLu
  ───────────────────────────

ザッカーバーク夫妻.jpg
ザッカーバーク夫妻
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2019年01月21日

●「トランプ政権を甘く見ていた中国」(EJ第4930号)

 1月11日から5回にわたって、フェイスブックのデータ流出
事件について書きましたが、これが本当であるとすると、その影
響は多岐にわたり、とんでもないことになります。
 フェイスブックを毎日使うアクティブ・ユーザー数は2018
年7月31日時点で、世界で14億7000万人、日本国内だけ
でも2800万人もいます。既に述べているように、フェイスブ
ックの登録には、氏名、性別、生年月日、メールアドレスが必要
であり、プロフィールには写真を設定する必要があります。プラ
イバシーの公開範囲を絞って、居住地や出身地などのさらに詳し
い情報を設定する人もおり、その流出はきわめて深刻です。
 ところがフェイスブックでは、ユーザーに断りなく、端末メー
カー60社以上とこれらのデータを共有しており、そのなかには
ファーウェイを含む4社の中国メーカーも含まれています。こん
なことは許されることではなく、フェイスブックの信用失墜につ
ながりかねない深刻な事態です。
 フェイスブックの情報漏洩の話はひとまず置き、トランプ氏が
大統領に就任にした2017年以降、米中間で起きたことについ
て、主として日高義樹氏の記述に沿ってみていくことにします。
 2017年4月7日、習近平国家主席が訪米し、米中首脳会談
が行われます。この首脳会談において、米中間の貿易不均衡の問
題が指摘され、その解消のための米中包括経済対話メカニズムの
立ち上げが合意されています。
 このとき、習近平国家主席は、米国の対中輸出を増やすための
100日計画の策定を約束しています。苦し紛れにその場をしの
ぎ、時間稼ぎをした印象です。果せるかなその100日後の20
17年7月に、米中の閣僚級による包括経済対話メカニズムの交
渉が行われましたが、何の進展も見ないまま頓挫しています。
 これを受けて、トランプ政権は、中国に対し、不公正な貿易慣
行がないか、スーパー301条に基づく調査を開始すると宣言し
調査をはじめます。2017年9月18日、ライトハイザー米通
商代表は、講演において、次のように述べています。
─────────────────────────────
 外国企業が中国に進出するさい、技術移転を強要し、その上で
不公正な補助金で輸出を促進する中国が、国際的な貿易体制の脅
威になっている。       ──ライトハイザー米通商代表
─────────────────────────────
 ここまでいわれても中国は、額面通りに受け取らず、次のよう
に反論しています。
─────────────────────────────
 それは、企業間の取引の話であり、中国政府による干渉など一
切あり得ない。            ──中国の高峰報道官
─────────────────────────────
 この時点でも、中国はまだトランプ政権を甘く見ており、楽観
視していたといえます。なぜなら、11月には、トランプ大統領
の訪中が決まっていたからです。
 11月9日、トランプ大統領は中国を訪問し、習近平国家主席
による最大級のもてなしを受けます。このとき行われた米中首脳
会談では、対中貿易赤字削減のため、総額2535億ドルの商談
が調印されていますが、そのほとんどは、覚書や協議書のたぐい
であったのです。このようなもので、騙されるようなトランプ大
統領ではないのです。
 年が明けて2018年になると、トランプ政権は、具体的に行
動を起こします。1月12日に中国が2017年の対米貿易額を
発表しますが、その対米貿易黒字額は、2758億1000万ド
ルという過去最高を更新したのです。
 これに対してトランプ政権は、1月22日に緊急輸入制限を発
動し、太陽光発電パネルに30%、洗濯機に20%以上の追加関
税を課すことを発表しています。太陽光パネルの国別シェアにつ
いては、1位がマレーシアで、2位が中国だったのです。これに
よって、関税引き上げによる貿易戦争がスタートしますが、標的
はまだ中国に向けられていないのです。
 そして、3月1日、トランプ政権は、通商拡大法232条に基
づいて、鉄鋼、アルミニウム製品に追加関税を実施すると発表し
ます。課税額は鉄鋼25%、アルミ10%。米国の安全保障を理
由にするものですが、日本を含め、ほとんどの国がターゲットに
なったのです。そして、3月23日、トランプ政権による鉄鋼、
アルミ製品への追加関税措置が発動されます。
 これに対して中国商務省は、128品目の米国製品に対し、約
30億ドルの追加関税をかける報復措置を発表し、この時点から
米中の貿易戦争の様相がはっきりとしてきたのです。
 実は、トランプ大統領は、この鉄鋼、アルミ製品の追加関税の
発表後、4人の経済政策担当の閣僚級のスタッフを北京に送って
います。ムニューチン財務長官、ロス商務長官、ライトハイザー
通商代表、ナバロ国家通商会議委員長の4人です。このときの様
子について、日高義樹氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 北京での会議では、トランプ政権の経済政策の責任者である4
人の意見がまったく合わず、大混乱になったという。ムニューチ
ン財務長官は、トランプ大統領の対中国強硬政策に反対し、政策
としては望ましいものではない、という姿勢を明確にした。いっ
ぽうでは、ライトハイザー通商代表が、トランプ大統領の決定が
手ぬるいと主張し、もっと厳しい制裁措置が必要であると主張し
た。(中略)政府を代表してワシントンからやってきたトランプ
政権の経済政策のトップが、意見が合わずして対立し、混乱して
いることを交渉の相手の前でひけらかしてしまったのである。
                      ──日高義樹著
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
                        徳間書店刊
─────────────────────────────
           ──[米中ロ覇権争いの行方/011]

≪画像および関連情報≫
 ●米中貿易戦争なら米国の圧勝、日本には漁夫の利
  ───────────────────────────
   米国の対中輸入額は、対中輸出額の約4倍あります。とい
  うことは、米国の対中輸入制限と中国の対米輸入関税が同時
  に課された場合、単純に考えて、中国の受ける打撃の方が4
  倍大きいということを意味しています。中国のGDPは米国
  よりも小さいので、打撃額のGDPで比べれば、その差は更
  に大きくなります。金額だけではありません。中国の対米輸
  出品が労働集約型製品で、米国の対中輸出品が技術集約型製
  品だ、という点も両者の打撃の大きさに影響します。
   まず、米国の中国からの輸入品について、考えてみましょ
  う。米国は、別の国から輸入することもできますし、米国内
  でも生産することができます。現在米国が中国から輸入して
  いるのは、「安いから」という理由だけなので、関税がかか
  れば対中輸入は激減し、他国からの輸入と国内生産が増える
  でしょう。国内生産が増える分は、米国内の雇用を増やしま
  す。「米国の人件費は高いので、中国から輸入されている物
  を米国内で作るはずがない」、と考える人もいるでしょうが
  途上国で労働集約的に作るか米国内で機械を使って作るかの
  比較なので、中国と米国の生産コストの差は賃金格差ほど大
  きくはないのです。一方で、米国の対中輸入関税が中国に与
  える打撃は大きなものとなります。労働集約型製品の輸出が
  大きく落ち込むと、中国人労働者が大量に失業することにな
  るからです。          https://bit.ly/2QXFC17
  ───────────────────────────

ライトハイザー通商代表.jpg
ライトハイザー通商代表
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2019年01月22日

●「歴代大統領とは異なるトランプ流」(EJ第4931号)

 米国による鉄鋼、アルミ製品の追加関税の実施という厳しい通
商上の措置の発表直後に、経済政策担当の閣僚ら4人が相手国で
ある中国に赴いて、その旨を伝える──これは外交上のマナーで
す。問題は、中国で使者である4人の意見が合わず対立し、混乱
したのですから、驚いたのは中国側です。「トランプ政権は分裂
している」と習近平国家主席が考えても不思議はないのです。
 これについて、日高義樹氏は、トランプ大統領に近いといわれ
る経済専門家の意見として、次のように述べています。
─────────────────────────────
 「トランプ政権では大統領がすべてを決める。したがって、対
立しようが、混乱が起きようが、周りで騒いでも意味がない。政
治的に無意味だといえる」 実際にトランプ大統領は、重大な決
定をあっという間に行っている。(何をやったのか)
 政府から25パーセント以上の資金援助を受けている中国の国
営企業をアメリカから締め出すこと、アメリカ企業の中国への進
出を制限すること、WTOの重要な組織を事実上崩壊させてしま
うことなど、すべて強力な政治力がなければ出来ない措置を、瞬
く間に実現してしまった。習近平政権からすると信じられない出
来事が起きてしまったのである。       ──日高義樹著
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
                        徳間書店刊
─────────────────────────────
 ムニューチン財務長官は最初から中国寄りの人物であり、本人
もそれを隠そうとしないし、意見の違う人を外す傾向の強いトラ
ンプ大統領としては珍しく、気にしていないように見えます。
 ムニューチン財務長官は、宣誓式においては、具体的な構想を
述べていないのですが、宣誓式に立ち会ったトランプ大統領は、
次のように発言しています。
─────────────────────────────
   不当に利益を得る者から、米製造業の雇用を守る。
                 ──トランプ大統領
─────────────────────────────
 ここで、「不当に利益を得る者」とは、明らかに中国を指して
います。トランプ大統領は、就任のときから中国に対して強い問
題意識を持っていたのです。それにもかかわらず、中国寄りと知
りながら、ムニューチン氏を財務長官に任命しています。
 ムニューチン財務長官は、現在でも中国との貿易戦争をやめる
べきだと主張しています。
─────────────────────────────
【ワシントン/17日/ロイター】ムニューシン米財務長官が中
国の輸入品に課されている関税の一部または全部を撤廃すること
を提案した。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)
が17日、内部事情に詳しい関係者の話として報じた。
 報道によると、財務長官は1月30〜31日に予定されている
米中通商協議において、関税引き下げを提案する考えを示したが
ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、この考えに反
対。またトランプ大統領にはまだ提案されていないという。
 財務省報道官は報道を否定したが、米中通商問題解決への期待
から米株式市場は上昇した。財務省報道官は「ムニューシン長官
もライトハイザー代表も、関税やその他の件に関する中国との交
渉について誰にもいっさい提言を行っていない」とし、「中国と
の交渉は継続中で、完了には程遠い」と語った。
                  https://bit.ly/2sAN3kX
─────────────────────────────
 米国の大統領選挙の場合、選挙に関わるあらゆること──資金
集めから、テレビによる宣伝・広報、作戦計画、イベントの開催
投票日に有権者を投票に駆り出すことにいたるまで、多くの機関
や組織や企業が関わっています。
 そして大統領が首尾よく当選すると、ホワイトハウスのスタッ
フには、選挙戦に参加した組織からの関係者が送り込まれ、大統
領の政治を仕切ることになります。それは、政権としてどのよう
な政策を行うかにまでに及びます。大統領は、そういうスタッフ
が作り上げた政治的提案、政策のなかから、何をやるかを決定す
るのです。問題は、そういうホワイトハウスに入ってくるスタッ
フは、多くの場合、企業や団体の利害を持ち込んでくる場合が多
いのです。そうすると、どうしても政治に「色」がついてしまう
ことになります。
 しかし、トランプ大統領の場合、そういう今までの慣習という
か、やり方を踏襲せず、自分がやりたいようにホワイトハウスを
仕切ったのです。日高義樹氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 トランプ大統領はそうした(ホワイトハウスの)仕組みを一切
受け付けず、すべての政策を自らが決め、実施を要求する。この
ためにホワイトハウスが混乱し、閣僚やスタッフが相次いでやめ
るという事態になった。アメリカのマスコミはそうした事態を見
て、トランプのホワイトハウスが大混乱していると伝えている。
 しかしながら大統領がすべての決定を行うことが、トランプ政
権の強さ、ホワイトハウスの強さで、アメリカ経済を短期間のあ
いだに拡大させた原動力となっているのである。アメリカのマス
コミが「ホワイトハウスの混乱」、と伝えている状況は、トラン
プのホワイトハウスの強さの象徴なのである。
                ──日高義樹著の前掲書より
─────────────────────────────
 「何でも自分で決める」──これがトランプ大統領のスタンス
です。しかし、これは大変よいことである反面、米国の大統領と
もなると、独断は大きなリスクがはらんでいます。
 第2回の米朝首脳会談が2月末に行われることに決まりました
が、これに関してトランプ大統領が「北朝鮮攻撃」の計画を密か
に練っているのではないかという奇怪な情報が出ています。明日
のEJで取り上げます。──[米中ロ覇権争いの行方/012]

≪画像および関連情報≫
 ●2回目の米朝首脳会談、トランプは何をたくらむのか?
  ───────────────────────────
   金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の側近の1
  人である金英哲(キム・ヨンチョル)同党副委員長は、昨年
  6月1日にホワイトハウスを訪問し、ドナルド・トランプ米
  大統領に金委員長の親書を手渡しました。その後、2週間足
  らずで1回目の米朝首脳会談が開催されました。
   ただ、今回は事情がまったく異なります。金英哲氏が1月
  18日にワシントンを訪問し、トランプ大統領と会談を行い
  ましたが、開催時期は2月末になりました。同大統領にとっ
  て、2回目の米朝首脳会談の緊急性が本当に高ければ、1月
  末ないし2月上旬になったかもしれません。
   いまトランプ大統領の最優先課題は、2016年米大統領
  選挙における「公約の中の公約」である米国とメキシコとの
  「国境の壁」建設と、連邦政府機関の一部閉鎖の再開である
  ことは間違いありません。米メディアによれば連邦政府機関
  の一部閉鎖により、約42万人の政府職員が無給で仕事を続
  けており、約35万人が自宅待機を余儀なくされています。
   これらの内政問題の目処が立ってから、2回目の米朝首脳
  会談に取り組もうとするトランプ大統領の思惑が透けて見え
  ます。つまり、「国境の壁」建設予算及び政府機関の一部閉
  鎖の問題が、首脳会談の日程に影響を及ぼした可能性が高い
  といえます。          https://bit.ly/2RTRDct
  ───────────────────────────

ムニューチン米財務長官.jpg
ムニューチン米財務長官
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2019年01月23日

●「北朝鮮攻撃の可能性は増している」(EJ第4932号)

 具体的な非核化に踏み出すことなく、トランプ米大統領への親
書攻勢によって、2回目の米朝首脳会談を勝ち取った金正恩委員
長ですが、その一方で、ネット上に次のようなレポートが登場し
ています。
─────────────────────────────
                  2019年1月21日
 「トランプはいま、北朝鮮攻撃の計画を密かに練っているか
 もしれない」         ジャーナリスト/山田敏弘
                 https://bit.ly/2W8gI2j
─────────────────────────────
 問題は、なぜこの時期にこのようなタイトルの記事が出るのか
です。米国は、米韓合同軍事演習すら中断して、北朝鮮の非核化
を促しているときです。それがなぜ「北朝鮮攻撃の計画」なので
しょうか。
 詳細については、上記の原文を読んでいただくとして、ここに
きて、なぜ、北朝鮮攻撃なのか、レポートに沿って要約解説する
ことにします。
 多くの人がそう思っているように、トランプ大統領も北朝鮮が
本当に核兵器を手放すとは思っていないはずです。なぜなら、金
正恩委員長は、核兵器こそ体制維持のための唯一の保険であると
考えているからです。現に数次にわたる核実験とミサイルの発射
実験をやったからこそ、トランプ大統領とのシンガポールでの首
脳会談が実現したと考えているはずです。
 ところで、2018年末に、トランプ政権から、次の2人の大
物が去っています。
─────────────────────────────
      1.ジョン・ケリー大統領首席補佐官
      2. ジェームス・マティス国防長官
─────────────────────────────
 ジョン・ケリー大統領首席補佐官は、大統領の身内が幅を利か
して混乱していた政権内部に秩序をもたらす役割として登用され
きちんと仕事をしていています。さらに、トランプ大統領が国際
秩序やルールを考慮しない、思い付きの政策を実行しようとする
のを、何度も、オーバーにいえば、身体をはってとめてきている
のです。しかし、そのため、後から政権入りしたジョン・ボルト
ン大統領補佐官(安全保障担当)とぶつかることが多くなってい
たのです。
 結局、11月の中間選挙で野党・民主党が躍進し、議会がねじ
れ状態になったことで、ケリー補佐官は退任を決意します。自分
いなくても、議会がトランプ大統領の暴走を止めてくれると考え
たからです。
 ジェームス・マティス国防長官は、ケリー首席補佐官と連携し
て、トランプ大統領の暴走をとめてきています。マティス国防長
官について、山田敏弘氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 マティスは、軍の政策と歴史にも精通し、人望が厚い国防長官
だった。トランプ政権がカオス状態にあるなかで、マティスは政
権内に安定をもたらしていると評されていた。またダン・コーツ
元国家情報長官によれば、国外においても「マティスのリーダー
シップは、同盟国と敵国から尊敬されていた」という。
 マティスは、北朝鮮攻撃については慎重であり、トランプに攻
撃を思いとどまらせてきた。マティスが退任したことで、ある国
防省の元幹部は米メディアに「クレイジーなトランプがいても、
マティスが国防省を仕切っていたから夜はゆっくり眠れたのに・
・・」と語っていたが、今後、彼らは夜も眠れなくなるかもしれ
ない。実は、マティスがいたことで安心していたのは政府関係者
だけではない。メディアも然り。マティスには、国防長官になる
前に、とある詐欺企業の活動に関与していたというスキャンダル
があったのだが、メディアではあまりこの詐欺企業への関与を深
く追及しないふしもあった。     https://bit.ly/2DqLOuT
─────────────────────────────
 これまでトランプ大統領は、マティス国防長官に何の相談もせ
ず、米韓合同軍事演習を中止すると発表したり、いきなり宇宙軍
の創設を宣言したり、シリアからの米軍の撤退を発表したりと、
やりたい放題。国の安全保障に関するこれだけのことを相談なし
にやられたら、マティス国防長官としても堪忍袋の緒が切れたの
でしょう。しかし、マティス国防長官は、辞任の発表とその理由
について記者会見を開いています。
 これがトランプ大統領の怒りを買い、マティス氏自身が辞任時
期を3月末としているのに、無理やり後任を任命して、2018
年末に辞任させています。よほどハラが立ったのでしょう。
 第2回の米朝首脳会談が行われ、北朝鮮が具体的な非核化に言
及せず、経済制裁の解除を求めた場合、ボルトン安全保障担当大
統領補佐官は黙っていないでしょう。今やトランプ大統領の周り
にいるのは、強硬派ばかりです。そういう意味で、前回とは異な
ります。山田敏弘氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 ケリーが去り、マティスがいなくなり、さらに、議会はねじれ
状態。トランプが、早朝に大好きな米FOXニュースを見て「や
れやれ、やはり金正恩に思い知らせるしかないか」なんて思いつ
くようなことがあった時に、誰がトランプに「ノー」と言えるの
だろうか。
 昨年、米国務省の関係者から聞いた話では、「米国務省の担当
者たちは水面下でいかにトランプを(北朝鮮と)戦争させないか
と必死になって動いてきた」という。北朝鮮攻撃に慎重だったマ
ティス国防長官などと同様に、国務省はトランプに軍事攻撃とい
う決断をさせないように働きかけてきたという。そうした目に見
えない抑止力も奪われつつある。   https://bit.ly/2R1PjLV
─────────────────────────────
           ──[米中ロ覇権争いの行方/013]

≪画像および関連情報≫
 ●2回目の米朝首脳会談/開催しなければならない事情
  ───────────────────────────
   1月20日、2月下旬の米朝首脳会談に向けた実務協議が
  ストックホルム近郊で始まった。北朝鮮の具体的な非核化措
  置や北がアメリカに求める見返りも議題になっている可能性
  があり、日本や韓国の当局者も現地に入って米朝との接触を
  試みている。
  飯田)スウェーデンのストックホルムの近郊で始まった実務
  協議ですが、20日から始まって22日にかけて行われる予
  定です。日本からも金杉アジア大洋州局長が現地に入ってい
  るということです。
  須田)2回目の米朝首脳会談ということもあって、どうやっ
  て目に見える形で結果を出すのか。1回目を受けて米朝が水
  面下で協議を進めて来たけれど、何の結果も出ていませんよ
  ね。とは言え、アメリカにとってもトランプ政権が3年目を
  迎えているにも関わらず、内政はともかく外交の分野ではほ
  とんど実績が残せていないという状況を受けて、唯一成果ら
  しい成果が米朝首脳会談くらいなのですよ。ただこれは非核
  化という結果を出さなければなりません。そのなかでトラン
  プ大統領としても、そこへすがらざるを得なかったのかなと
  思います。北朝鮮側の事情ですが、かつての金正日体制の頃
  の北朝鮮といまの金正恩体制は全く似て非なるものだという
  ことを、大前提としてご理解頂きたいのです。
                  https://bit.ly/2T5RX55
  ───────────────────────────

第1回米朝首脳会談/シンガポール.jpg
第1回米朝首脳会談/シンガポール
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2019年01月24日

●「中国経済の真相について検証する」(EJ第4933号)

 2019年1月22日付の日本経済新聞は、その第一面トップ
に次の記事を掲載しています。
─────────────────────────────
◎中国経済の減速鮮明/18年成長率28年ぶり低水準
 【北京=原田逸策】中国経済の減速が鮮明だ。2018年の実
質成長率は6・6%と28年ぶりの低水準で18年10月〜12
月期は6・4%に落ちた。7〜9月期比での低下幅は0・1ポイ
ントに過ぎないが、消費などの主要指標は米中貿易戦争の影響が
本格化した秋以降に急変している。
         ──2019年1月22日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 中国の実質成長率には不思議なことがたくさんあります。最近
はほとんど6%成長で、6%前半か後半かで、コンマひとつ上下
するだけで大騒ぎになります。いつも6%の世界での上下です。
 6%といえば高い成長率です。ちなみに天安門事件直後の19
90年が3・9%成長で、2018年度が6・6%というならよ
くわかりますが、このところ、6%台の成長率がほとんどです。
なぜ、6%台なのでしょうか。
 それは、習近平主席が、国民に対して「2020年までに国民
の収入を2倍にする」という約束をしているからです。2010
年対比で2倍にするというのです。そうすると、10年間、毎年
7%成長しないと、実現できないのです。
 しかし、中国の経済はかなり深刻であり、7%成長は維持でき
ない。といって、7%から遠く離れることもできないので、実際
は6%以下であっても、6%以下にはできないのです。
 中国の経済成長率に対して疑問を持ち、『中国GDPの大嘘』
(講談社)という著書もある高橋洋一氏は、中国のGDP成長率
の「微動状態」について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 世界との輸出入取引が大きい中国経済が、世界経済の大きな変
動と無縁のはずはないのに、このような小刻みな動きをみると、
統計改竄と推定せざるを得ない。中国GDPの変動が小さいこと
は、GDP成長率の「変動係数」を各国と比較してみればよくわ
かる。変動係数とは、ばらつきを表す標準偏差を平均値で除して
比較可能にした統計量である。
 2000年以降のGDP成長率について、統計が取れる180
ヶ国の変動係数を見ると、中国は0・21と小さい方から7番目
だ。そのあたりにはベトナムやラオスなどの独裁社会主義国が多
い。ちなみに日本は2・00で156位だ。
 なお、先進国のGDP成長率の変動係数はどうだろうか。平均
が小さく、変動係数が2桁になったものを異常値として除いた堅
めの平均で1・26である。これをみると、中国GDP成長率は
異常に変動しないことがわかるだろう。    ──高橋洋一氏
                  https://bit.ly/2CI4uVg
─────────────────────────────
 現在、日本では、「毎月勤労統計」の不正調査が問題になって
いますが、統計というものは実態をできるだけ正確に表すもので
なければならないのです。この不正によって、「毎月勤労統計」
をもとに給付水準が決まる雇用保険や労災保険に、大きな影響が
出てしまっているのです。
 高橋洋一氏によると、中国の統計システムは、社会主義国家の
「先輩」である旧ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)に学んで
いるといいます。それは、国家目標との関連で、統計に改ざんに
改ざんを繰り返した揚句「ソ連崩壊」をもたらした統計手法であ
り、中国はそれを教わっているといいます。
 中国、すなわち、中華人民共和国は1949年に誕生しました
が、それと同時に経済的な大改革を実行に移しています。そのと
き司令塔になって指導に当ったのはソ連大使館です。ソ連から、
1万人を超える顧問団が北京にやってきて、4万人のロシア語を
マスターした中国人と一緒に、中国の産業育成に取り組んだので
す。そのときの目標は次の通りです。
─────────────────────────────
 中国経済は、10年以内にイギリスを追い越し、15年以内
 にアメリカに追いつく。       ──中国の国家目標
─────────────────────────────
 このとき、ソ連から密かに持ち込まれたものが「ソ連式統計シ
ステム」です。国家目標が達成できなかったときにどのように統
計を操作するかの手法です。高橋洋一氏は、中国は、このソ連の
統計システムを使っているのではないかというのです。この統計
システムは非常に巧妙に作られていて、米国のノーベル経済学賞
受賞経済学者であるポール・サミュエルソン教授は、ソ連のデタ
ラメの経済統計値を信じて、「ソ連は成長している」といってし
まったという話は有名です。
 ソ連が崩壊してはじめてわかったことは、1928年から19
85年までの国民所得の伸びはソ連の公式統計によると90倍、
平均成長率は8・3%ということでしたが、実際にはその倍率は
6・5倍、平均成長率は3・3%でしかなかったのです。
 それなら、現在の中国の統計数値は、本当のところどうなので
しょうか。これについて高橋洋一氏は、中国の数字のデタラメさ
について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国の成長率が誇張されていることは誰もが知っている。社会
主義の中国では、国家が発表する統計は国有企業の「成績表」と
いう意味がある。そして、その統計を作っているのは、「中国統
計局」という国家の一部局である。言ってしまえば、自分で受け
たテストの採点を自分でしているようなものなので、信頼性はど
こにも担保されていない。          ──高橋洋一氏
                  https://bit.ly/2sKa5Wt
─────────────────────────────
           ──[米中ロ覇権争いの行方/014]

≪画像および関連情報≫
 ●世界景気をけん引した中国経済に陰り!/田中徹郎氏
  ───────────────────────────
   ここのところ中国経済の成長性に陰りが見え始めました。
  振り返りますと、中国の全盛期はリーマン・ショックから昨
  年あたりまでではなかったでしょうか。
   金融ショックで先進国の経済が危機に陥る一方、元気のよ
  かった中国は4兆元にもおよぶ経済対策を実施し、世界の救
  世主ともてはやされました。「世界を救った中国」という称
  賛と、4兆元効果による経済的実利・・・。2009年から
  昨年あたりまでの中国は、順風満帆だったといえるのではな
  いでしょうか。一時は近々中国が世界の覇権を握るという見
  方もあったものです。
   自信過剰になってしまうのは当然かもしれませんね、なに
  しろアヘン戦争以来イギリスやフランス、ドイツ、日本など
  にやられっぱなしで、その間、悔しい思いをし続けてきたわ
  けですから。150年という年月にも及ぶ我慢のあと、やっ
  と訪れた反転攻勢のチャンスです。
   仲裁裁判所の判決を「紙くずだ」と切り捨てる。国家の元
  首が軍事目的ではないと言いながら、着々と人工島を軍事拠
  点化する。小国に多額の貸付を行い、返済不能に陥るや、港
  を租借する。海外の企業が中国に進出する際、技術の移転を
  強要する。著作権の侵害を厳しく取り締まるといいながら野
  放しにする・・・。このように中国がここ数年とってきた行
  動は、私たちから見れば粗暴にも見えますが、逆に言えば、
  彼らはそれほどまで自信を深めていたということではないで
  しょうか。           https://bit.ly/2sFvC2y
  ───────────────────────────

経済学者/高橋洋一氏.jpg
経済学者/高橋洋一氏
  
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2019年01月25日

●「米中貿易戦争で落ち込む中国経済」(EJ第4934豪)

 米国から貿易戦争を仕掛けられて、中国人民中央銀行と国家財
政当局が衝突し、習近平政権は、収拾のつかない政策的な混乱に
陥っているといわれます。
 中国の経済政策の中心は、対米貿易の拡大です。そのため、財
政当局としては、人民元を引き下げ、金融を緩和して輸出を一層
拡大させようとします。
 これによって、中国税関総署が昨年12月8日に発表した貿易
統計によると、11月の対米貿易黒字は、前年同月比27・6%
増の355億ドル(約4兆円)で、単月の黒字額で過去最高を更
新しています。このように、中国にとって対米貿易の拡大は、ド
ル箱そのものだったのです。
 しかし、それが米国による関税引き上げによって、米国からの
資金源がまったく閉ざされてしまったのですから、中国の財政当
局としては混乱するのは当然です。米国のトランプ政権としては
中国の経済成長にブレーキをかけることによって、結果としてそ
の危険な覇権主義を抑えることになると判断し、貿易戦争を仕掛
けたのです。
 中国の政策当局者は、表面上は平静を装って次のように述べて
いますが、内心は相当焦っていたのです。
─────────────────────────────
 中国経済の伸びは現在年間GDPで6・7パーセントである。
アメリカとの貿易がうまくいかなくなったとしても、0・3パー
セントほど伸び率が減ることになるが、中国経済が大きな打撃を
受けることはない。          ──中国の政策当局者
                ──日高義樹著/徳間書店刊
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
─────────────────────────────
 米国の中国に対する2018年の貿易戦争は、追加関税措置が
開始される7月以前から始まっていたのです。そして7月6日、
米国は、中国から輸入される818品目に対して340億ドル規
模の追加関税を発表し、中国側も同規模の報復関税を発動して本
格的な貿易戦争が始まったのです。結局、米中の貿易戦争は1年
続いているのです。これによる中国経済の減速が明らかになりつ
つありますが、その減速スピートが予想以上のものであることが
わかってきています。その予想を上回る減速について、ジャーナ
リストの山田順氏は、次のように書いています。
─────────────────────────────
 中国汽車工業協会が3019年1月14日に発表した2018
年度の新車販売台数では、28年ぶりに前年比でマイナスに転じ
ました。2017年比2・8%減で、約2800万台。数字的に
は大したことがないように思えますが、消費の落ち込みが原因で
すから、その影響ははかりしれません。
 この中国の消費市場の落ち込みをさらに裏付けたのが、17日
に日本電産が発表した19年3月期の業績予想の下方修正です。
日本電産の永守重信会長はこう言いました。「昨年11、12月
は経験したことがない落ち込み。46年間経営しているが、こん
なに落ちたのは初めてだ」
 この発言で、日本の産業界に衝撃が走りました。日本電産は中
国で自動車や白物家電向けのモーターを提供しています。その生
産が30〜40%も落ち込み、工場は在庫の山になったというの
です。日本電産と同じく下方修正を発表したのが安川電機で、こ
ちらはスマホ向け製造装置の生産が大きく落ち込んだのが原因で
す。「世界の工場」とされてきた中国ですが、消費の落ち込みと
ともに、工場の稼働率が落ち、大不況に見舞われていると言って
いいのです。            https://bit.ly/2FJike7
─────────────────────────────
 日本電産の永守重信会長は「炭鉱のカナリア」の異名を持つ人
です。危険を察知すると、素早く知らせてくれます。その永守会
長が中国経済の落ち込みは予想以上で、「リーマン級もある」と
予測しています。
 現在トランプ政権は、メキシコ国境の壁の問題で民主党と対立
していますが、こと中国に関しては、民主党も一枚岩であるとい
われています。ジャーナリストの山田順氏によると、民主党のナ
ンシー・ペロシ下院議長は筋金入りの「中国嫌い」で知られてお
り、ブッシュ政権時代に「北京五輪をボイコットせよ」と主張し
たくらいです。したがって、中国叩きなら議会は問題なく、一致
団結できるのです。
 つまり、中国が約40年にわたって経済の拡大を続けてこられ
たのは、米国経済のおかげなのです。米国としても中国が経済発
展すれば、民主国家になると予測して支援してきたのですが、経
済力を利用して覇権を求めるようになったので、その経済力その
ものを弱体化させようとして貿易戦争を起こしたといえます。
 中国の経済は明らかにバブルであるといえます。この状態でも
し米国からの資金が入ってこなくなると、バブルは崩壊すること
になります。しかし、中国は社会主義国ですから、かつてのソ連
がそうであったように、民主国家ではできない、いろいろな方策
を講ずることができますが、崩壊は時間の問題です。
 現在の中国の経済の現況について、日高義樹氏は、次のように
述べています。
─────────────────────────────
 中国経済がバブルであるという事実は、40兆ドル以上の莫大
な借金を抱え込んでいることに示されている。この40兆ドルと
いうのは、中国のGDPのおよそ4倍にあたる。
 中国の人々は、いわば借金の二日酔いの中で暮らしているよう
なものだ。銀行は政府の命じるまま、担保なしで貸し出しを続け
ている。いっぽう政府は、土地不動産の価格崩れを防ぐために、
一般の人々の土地や住宅の売買を禁止している。
                ──日高義樹著の前掲書より
─────────────────────────────
           ──[米中ロ覇権争いの行方/015]

≪画像および関連情報≫
 ●米中貿易戦争/いま中国で起きている「ヤバすぎる現実」
  ───────────────────────────
   米トランプ政権が、中国製品に関税をかけたり、中国から
  の投資に規制をかけようとしたりと、「なりふり構わぬ」格
  好で、中国を潰しにかかっています。
   なぜトランプ政権が、このような行為に及ぶのかと言えば
  それは「未来の中国年表」を見ると一目瞭然です。「未来の
  中国年表」とは、「人口はウソをつかない」をモットーに、
  人口動態から中国の行く末を予測したものです。現在の米中
  両大国の人口を比較すると、中国は、アメリカの約4・2倍
  の人口を擁しています。経済規模(GDP)については20
  17年の時点で、63・2%まで追い上げています。このペ
  ースで行くと、2023年から2027年の間に、中国はア
  メリカを抜いて、世界ナンバー1の経済大国となるのです。
   先端技術分野に関しては、アメリカにとってさらに深刻で
  す。国連の世界知的所有権機関(WIPO)によれば、各国
  の先端技術の指標となる国際特許出願件数(2017年)は
  1位がアメリカで5万6624件ですが、2位は中国で4万
  8882件と肉薄しています。
   しかも、企業別に見ると、1位が中国のファーウェイ(華
  為)で4024件、2位も中国のZTEで2965件。3位
  にようやくアメリカのインテルが来て2637件となってい
  ます。トランプ政権がファーウェイとZTEの2社を目の敵
  にしているのも、アメリカの焦燥感の表れなのです。
                  https://bit.ly/2wjm67H
  ───────────────────────────

日高義樹氏.jpg
日高義樹氏
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2019年01月28日

●「米国はなぜ貿易戦争を仕掛けたか」(EJ第4935号)

 トランプ大統領は、毀誉褒貶相半ばする人物です。よくいう人
もいれば、悪くいう人もいます。単純な人間という人もいます。
たとえば、米中貿易戦争では、米国が中国との貿易でこうむって
いる赤字はけしからんとして「特別関税」をかける──ずい分乱
暴な措置のように見えます。企業家は赤字が嫌いなので、貿易赤
字に過剰に反応しているという人もいます。
 しかし、トランプ大統領の対中国政策はなかなかスジが通って
います。日高義樹氏は、特別関税に関して、海兵隊出身のある財
界人の次の言葉を紹介しています。
─────────────────────────────
 特別関税をかけるというトランプ大統領の真意は、中国が不正
な貿易で貯め込んでいる資金を使って、人権を無視した全体主義
的な侵略政策を、近隣の国々に及ぼすのを阻止することだ。トラ
ンプ大統領はアメリカに対する輸出で稼いだ資金を、不法な目的
のために使っている中国に、心底ハラを立てている。
                ──日高義樹著/徳間書店刊
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
─────────────────────────────
 2018年にそれははじまったのです。2018年のはじめに
米国防総省とCIAは、トランプ大統領に「中国製造2015」
に関する報告を行っています。中国が2015年までに、あらゆ
る先端技術で米国に追い付くという計画です。
 中国が米国との貿易で得ている貿易黒字は年間およそ5000
億ドルです。トランプ大統領は、この5000億ドルが、全体主
義的な非人道的な侵略政策を推し進めるために使われているとみ
ています。
 それに加えて、2018年4月の全国人民代表大会における習
近平主席による次の演説です。この大会は、李克強首相を始めと
する国家機関指導者や閣僚たちがこぞって「習近平『新時代』」
と叫ぶ異様な雰囲気に包まれていたといいます。
─────────────────────────────
 中国の社会主義は「新時代」に入った。今世紀半ばまでに、中
国は、米国と肩を並べる「社会主義近代化強国」を建設する。
                    ──習近平国家主席
                  https://bit.ly/2R9TpBF
─────────────────────────────
 「中国製造2025」と習近平主席のこの演説によって、トラ
ンプ大統領の怒りは頂点に達し、米中貿易戦争は開始されたので
す。トランプ大統領の対中国戦略は、特別関税だけが目立って見
えますが、基本的には次の2つの柱があるのです。
─────────────────────────────
◎国家戦略第1:
 中国経済の基本になっている、国営企業のアメリカ進出を禁止
することだった。2018年6月26日、トランプ大統領は国家
緊急経済防衛政策を発動し、中国政府が25%以上の資金を出し
ている中国の国営企業のアメリカ進出を禁止した。
◎国家戦略第2:
 中国の国営企業だけでなく、中国の民間企業が、アメリカに投
資するさい、これまでは商務省や国務省の認可だけでよかったも
のを、新しくCIAなどの審査を必要とする仕組みに変えること
だった。            ──日高義樹著の前掲書より
─────────────────────────────
 上記国家戦略に基づき、トランプ政権は、「対米投資監視委員
会」を設置しています。この委員会には、商務省、国務省、CI
Aが担当します。CIAが加わっているのは、安全保障上の観点
からの監視が必要であると考えているからです。
 また、米国の企業が中国で投資するさいにも、この監視委員会
の審査が必要になったのです。これまで、米国の企業が中国に進
出すると、必ず中国企業との合弁のかたちで共同経営の仕組みを
とらされ、先端技術の無料での提供を余儀なくさせられてきたか
らです。
 このように、トランプ政権は基本的に必要な手を打ったうえで
2018年7月6日、午前0時1分(米国東部時間)、対中制裁
関税を発動したのです。これに対して習近平主席が率いる中国は
居丈高に戦う姿勢を示したのです。
 このとき、習近平主席は、全国人民代表大会において、中国の
憲法第79条「国家主席の任期は二期、10年を超えてはならな
い」という規定を削除させ、事実上の「終身主席」の地位を手に
入れて4ヶ月しか経っておらず、米国に対して弱気の姿勢を見せ
るわけにはいかなかったのです。そこで、同日午後0時5分(北
京時間)中国商務部の報道官は次の談話を発表しています。
─────────────────────────────
 アメリカはWTOの規則に違反し、今日までの経済史上最大規
模の貿易戦争を発動した。この種の追加関税行為は典型的な貿易
覇権主義であり、まさに全世界の産業と価値のチェーンの安全を
著しく脅かすものである。また、世界経済の復興の足踏みを阻害
するものであり、世界の市場に動揺を引き起こすものであり、世
界のさらに多くの無辜の多国籍企業と一般企業、消費者に波及す
るものであり、アメリカの企業と国民の助けにならないばかりか
彼らの利益をも損なうものだ。中国側は、先制攻撃はしないとし
た。だが国家の核心的利益と国民の利益を断固として守るため、
必要な反撃に出ざるを得ない。        ──近藤大介著
    『習近平と米中衝突/「中華帝国」2021年の野望』
                   NHK出版新書568
─────────────────────────────
 このとき習近平国家主席は、いささか気分が高揚しており、米
国何するものぞと考えていたようです。中国人民日報社が発行す
る国際紙『環境時報』では、「ワシントンの貿易覇権主義は必ず
敗れる」と題する勇ましい記事を掲載しています。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/016]

≪画像および関連情報≫
 ●米中貿易戦争/いま中国で起きている「ヤバすぎる現実」
  ───────────────────────────
   米トランプ政権が、中国製品に関税をかけたり、中国から
  の投資に規制をかけようとしたりと、「なりふり構わぬ」格
  好で、中国を潰しにかかっています。なぜトランプ政権が、
  このような行為に及ぶのかと言えば、それは「未来の中国年
  表」を見ると一目瞭然です。「未来の中国年表」とは、「人
  口はウソをつかない」をモットーに、人口動態から中国の行
  く末を予測したものです。
   現在の米中両大国の人口を比較すると、中国は、アメリカ
  の約4・2倍の人口を擁しています。経済規模(GDP)に
  ついては、2017年の時点で、63・2%まで追い上げて
  います。このペースで行くと、2023年から2027年の
  間に、中国はアメリカを抜いて、世界ナンバー1の経済大国
  となるのです。
   先端技術分野に関しては、アメリカにとってさらに深刻で
  す。国連の世界知的所有権機関(WIPO)によれば、各国
  の先端技術の指標となる国際特許出願件数(2017年)は
  1位がアメリカで5万6624件ですが、2位は中国で4万
  8882件と肉薄しています。しかも企業別に見ると、1位
  が中国のファーウェイで、4024件、2位も中国のZTE
  で2965件。3位にようやくアメリカのインテルが来て、
  2637件となっています。トランプ政権がファーウェイと
  ZTEの2社を目の敵にしているのも、アメリカの焦燥感の
  表れなのです。         https://bit.ly/2wjm67H
  ───────────────────────────

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トランプ米大統領

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2019年01月29日

●「世界第2位経済大国の正体に迫る」(EJ第4936号)

 米国のトランプ政権から貿易戦争を仕掛けられて、それを習近
平政権の中国が昂然と受けて立ったのは明らかに失敗です。なぜ
なら、中国経済の実態が米国に対する輸出に過度に依存している
経済であるからです。これについて、日高義樹氏は、次のように
述べています。
─────────────────────────────
 中国経済は、アメリカに対する輸出に一方的に依存している。
2017年、中国製品の世界に対する全輸出の実に3分の2以上
88パーセントがアメリカ向けであった。中国は、2017年、
アメリカから2758億ドル、概算すると30兆円以上の貿易黒
字を手にした。そういったアメリカに対して貿易戦争を続けられ
るはずがない。中国がアメリカから買っている食料や石油はいわ
ば戦略的物資である。中国としては国家の存立のために買わざる
をえない必需品であり、貿易戦争の対象にはなり得ない。
                ──日高義樹著/徳間書店刊
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
─────────────────────────────
 中国は、米国に次ぐ世界第2位の経済大国です。それでいて発
展途上国でもあるのです。この現状認識を中国の習近平国家主席
は持っていないと日高義樹氏はいいます。つまり、現状認識に欠
けているのです。習近平国家主席は、よく米国との「2大大国時
代」を口にしますが、そのこと自体が認識の欠如です。
 なぜ、中国は発展途上国なのかというと、それはたくさん上げ
ることができます。国内のインフラストラクチャーは整備されて
おらず、国民生活の格差は拡大する一方です。当然そこに湧き上
がってくる国民の不満や反感を習近平主席は、独裁体制を基盤に
力で押し潰しているのです。
 それに経済大国といっても、それはGDPが米国に次いで第2
位だからであり、肝心の経済の実体には大きな問題がいくつもあ
るのです。とくに1人当たりの国民所得でいうと、中国は、20
15年は72位、7990ドルに過ぎないのです。以下に、20
15年度のG7の順位を示します。世界第3位の経済大国である
日本は、G7中第6位、世界順位第24位と低迷しています。
─────────────────────────────
     ◎G7における一人当たりGDP/2015
        順位      国名    米ドル
        5位    アメリカ  55805
       13位    イギリス  43771
       16位     カナダ  43332
       18位     ドイツ  40997
       20位    フランス  37675
       24位      日本  32486
       25位    イタリア  29867
       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       72位      中国   7990
              https://bit.ly/2sLvX3S
─────────────────────────────
 今回の米中貿易戦争で、中国の失うものはあまりにも大きいと
いえます。その失うもののなかでも大きいのは、中国は米国が主
張する不正な経済活動で米国から得ている年間5000億ドルの
資金(貿易黒字)が今後得られなくなることです。しかし、中国
は米国との交渉において、米国との貿易収支の幅をどれだけ狭め
ればよいかを考えているレベルであり、中国の指導者が事態の深
刻さに気が付いていないフシがあります。このことについて、日
高義樹氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 習近平と中国政府の致命的な失敗は、新しい事態が生じた際の
プランB、つまり対応策を考えていなかったことである。経済拡
大に邁進するだけで、経済拡大の停止という状況が起きた場合の
プランBを考えておかなかった。私のハドソン研究所の友人はこ
う言っている。
 「中国政府はアメリカから際限なくドルが入ってこなくなった
場合、国民をどう納得させるか、まったく考えていなかった」
 習近平が、国民の不満を押さえつけて納得させる手段は、独裁
体制と言論弾圧を強化すること、侵略的な対外政策で、国民の目
を外にそらすことであった。だがそうした手段を取り続けるため
にも、アメリカからの湯水の如き貿易黒字という収入が必要なの
である。            ──日高義樹著/徳間書店刊
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
─────────────────────────────
 どうして中国はこの深刻な事態に気が付かないのでしょうか。
それは、現トランプ大統領の前の3人の米国の大統領──クリン
トン、ブッシュ、オバマの3人の大統領の判断の誤りにあったと
いえます。
 その判断ミスとは、中国経済は巨大であり、米国経済や世界経
済が発展するために必要不可欠なものであるが、もし崩壊すると
その影響は計り知れないほど大きくなり、米国経済を直撃すると
考えて、中国の不正な経済活動に目をつぶったことです。それに
中国が経済的に発展すれば、政治体制が変わり、やがて民主主義
国家に変貌すると予測したことです。
 ここでいう不正な経済活動とは、「米国経済の高価な首飾り」
といわれる先端技術やパテントを、スパイ活動やサイバー技術を
悪用して盗み、それを国営企業に与えて大量な製品を作り、それ
を当の米国に売るということを指しています。
 トランプ大統領が決断した今回の貿易戦争は、そういう不正な
行為を絶対に許さないという意思のあらわれです。これについて
日高義樹氏は、興味ある言葉で表現しています。「少数の人間を
長いあいだだますこと、大勢の人間を短い間だますことはできる
が、大勢の人間を長いあいだだますことは出来ない」と。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/017]

≪画像および関連情報≫
 ●中国・国有企業「3兆円不正」の証拠を公開!
  ───────────────────────────
   2017年7月14日と15日、北京で全国金融活動会議
  が開かれた。共産党大会直前に、主な幹部が全員出席して行
  われた5年に一度の金融分野での重要会議だ。
   習近平主席が長い演説を行った初日の会議終了後に、異変
  は起こった。中国共産党序列14位の孫政才・重慶市党委書
  記(53歳)が突然、身柄を拘束されたのである。現役の中
  央政治局委員(トップ25)であり、今秋の第19回共産党
  大会で習近平主席の後継者になるとも目されていた幹部が、
  引っ捕らえられたことで金融問題の会議どころではなくなっ
  てしまった。ある北京の経済官僚が明かす。
   「党中央(習主席)に逆らうと、恐ろしい報復が待ってい
  る」ことを見せつけたのだ。先日も共産党の学習会の席で、
  習主席の最大の経済ブレーンである劉鶴・中央財経指導小グ
  ループ主任の最新の訓示が配られ、そこにはこう書かれてい
  た。「中国に純粋な経済学などない。あるのは政治経済学の
  みだ。習近平総書記を核心とする党中央が指導する経済学に
  従うことこそが、国務院(中央官庁)と国有企業に課せられ
  た重大な使命である」
   昨年11月には、「お上ではなく市場を見て仕事しろ」と
  常々言っていた楼継偉財政部長(財務相)が突然、閑職に追
  いやられた。国有企業の経営者たちは、党中央に従わないと
  たちまち「腐敗分子」のレッテルを貼られて逮捕される。つ
  いこの間も国有企業18社が、見せしめに遭ったばかりだ」
                  https://bit.ly/2SeWUvr
  ───────────────────────────

習近平国家主席.jpg

習近平国家主席
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2019年01月30日

●「『奉陪到底』を貫く中国の対抗策」(EJ第4937号)

 米中貿易戦争が本格的に始まったのは、2018年7月からで
すが、その前哨戦は3月から始まっています。3月22日、午後
12時45分から13分間にわたって行われたトランプ大統領の
演説では、600億ドル(約6兆3000億円)もの中国製品に
高関税をかける制裁措置を行うというものだったのです。
 これを中国はどのように受け止めたのでしょうか。ここからは
中国サイドの視点に立って、トランプ政権のアクションをみてい
くことにします。著名な中国ウオッチャーの1人である近藤大介
氏の次の新刊書をベースにご紹介します。近藤大介氏は2009
年から2012年まで、講談社北京副社長を務めています。
─────────────────────────────
                      近藤大介著
  「習近平と米中衝突/『中華帝国』2021年の野望」
                 NHK出版新書568
─────────────────────────────
 この時点では、中国は余裕綽々であったのです。このトランプ
演説について、精華大学中米関係研究センターの周世検研究員は
次のように批判しています。
─────────────────────────────
 まずトランプのネーミングが正しくない。何が「中国による経
済的侵略」だ。貿易というのは、損するけれどもやるなどという
商人はいない。年間5200億ドルの商品が中国からアメリカへ
流れているのは、中国が強制的にアメリカに押しつけているもの
ではなく、アメリカの商人がわざわざ中国までやって来て買って
いくのだ。かつ、貿易の3分の2は日用品であり、アメリカ人の
生活に足りないものを中国が補っているにすぎない。それを「経
済的侵略」などと言うのは、「胡説人道」(デタラメ)だ。
 トランプが見ているのは、中国との貿易ではなく、11月の中
間選挙だ。「オレはアメリカ人の利益を守るためなら、何でもや
る」とアピールしたいのだ。トランプは中間選挙で負けたらレイ
ムダックになり、2年後の再選は難しくなる。それでアメリカの
ためではなく、ただ私利私欲のために今回の暴挙を犯したのだ。
                ──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
 この時点でのこの主張は比較的真っ当なもので、日本のメディ
アでも同じような論調だったのです。このとき世界は、まだトラ
ンプ大統領を色眼鏡で見ており、特別関税なんか暴挙であって、
このまま貿易戦争が続けば、米国が敗者になるという見方が支配
的であったのです。
 ちょうどこのとき、ノーベル経済学賞受賞の経済学者、スティ
グリッツ教授が北京に滞在中であり、記者にコメントを求められ
次のように答えています。この映像が中国では、繰り返し、テレ
ビで流されたのです。
─────────────────────────────
 わが国が起こした不安と混乱について、世界に対してお詫び
 する。        ──ジョセフ・スティグリッツ教授
               ──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
 さらに、トランプ大統領の演説に対し、中国の崔天凱駐米大使
は、次の緊急声明を出しています。駐米大使がこういう声明を出
すのは、異例なことです。
─────────────────────────────
 われわれは、アメリカとの貿易戦争は戦いたくない。だが、貿
易戦争を恐れるものでもない。もしわが国に何者かが貿易戦争を
仕掛けてきたなら、必ずや戦う。「奉陪到底、看誰真正堅持到最
後」                  ──崔天凱駐米大使
                ──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
 声明の最後の「奉陪到底、看誰真正堅持到最後」とはどういう
意味でしょうか。
 これは「最後まで付き合ってやる。どちらが本当に最後まで持
ちこたえられるか見てみようではないか」という意味です。実は
1996年5月、米国が中国に報復関税をかけるといったときに
当時外交部報道官だった崔天凱氏は「平等協商解決」としかいえ
なかったのです。これは「平等に協議して解決しよう」という意
味になります。つまり、20年経って、米中の実力が大きく変化
したことのあらわれといえます。
 しかし、ここで注意すべきことがあります。それは米国が「不
正な経済行為」といっていることです。中国ウォッチャーの本か
らは、当然ではありますが、そういう言葉は一切出てこないので
す。ですから、一見中国のいっていることが正しく聞こえてしま
うところもあります。
 習近平主席の考えている経済政策というのは、国の支配下にあ
る国営企業を使って、政府の資金で安い製品を作り、輸出競争力
をつけ、世界中にばらまくというものです。これは、社会主義国
や全体主義国だからできることであって、トランプ大統領は「こ
れではフェアではない」といっているのです。
 つまり、トランプ大統領は、国際社会において大国として振る
舞うのであれば、中国の今の政治体制を改革すべきであると暗に
求めているのです。少なくともそのことに中国の首脳たちは気が
付いていないと思います。この時点で中国は、貿易戦争はトラン
プ大統領が中間選挙目当てのパフォーマンスと捉えていたフシが
ありますが、それは大きな間違いであることがやがてわかること
になります。
 中国も米国と本気でやり合うのは本意ではなかったのです。し
かし、3月16日に米国が「台湾旅行法」に署名したことによっ
て、「奉陪到底」を決めたのです。台湾問題は中国最大の核心的
利益であり、米台間の高位級の交流を促すこの法案は、中国とし
ては絶対に受け入れられないものだからです。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/018]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の済学者「勝ち目なく壊滅的」
  ───────────────────────────
   米中両国の事務レベル貿易協議が22日から米国で開かれ
  る予定だが、双方の主張は依然として隔たりが大きく、摩擦
  解消につながるかは不透明だ。今春に始まった米中貿易戦争
  は、すでに中国経済にダメージを与え始めた。「中国に勝ち
  目はなく、はやく失敗を認めて、事態を収束すべきだ」との
  厳しい見方も中国国内でくすぶっている。
   2期目の習近平政権が発足した直後の3月23日、中国商
  務省は米国による鉄鋼・アルミ製品への追加関税措置への報
  復として、128品目の米国製品に対し追加関税を課すと発
  表。問題がエスカレートした。
   中国の官製メディアは「われわれはいかなる戦争も恐れて
  いない」と強気な姿勢を崩していない。ただ、対米輸出に依
  存している中国経済が米国と全面対決することは「無謀な戦
  い」とみる投資家も少なくなく、中国の金融マーケットは敏
  感に反応した。
   株式市場では3300ポイント前後だった上海総合指数が
  3月末から下落し、8月中旬には2600ポイントと約20
  %も下げた。人民元の為替相場も対ドルで10%近く急落し
  た。中国は近年、経済成長率が前年比6〜7%で推移してい
  る。為替相場が下落すれば、輸入コストが大幅アップするな
  ど、成長率を押し下げる要因になる。「中華民族の偉大なる
  復興」とのスローガンを掲げ、経済規模で米国を追い越すこ
  とを夢みる習政権にとって、打撃は大きい。
                  https://bit.ly/2HxfaM9
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スティグリッツ教授.jpg
スティグリッツ教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 米中ロ覇権争いの行方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月31日

●「トランプ米大統領を甘く見た中国」(EJ第4938号)

 2018年になってトランプ米大統領から貿易戦争を仕掛けら
れたとき、中国は妙な高揚感を持っていたといいます。そのため
中国としては、次の3原則でこれに臨むと宣言しています。
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   1.たとえ相手がアメリカであっても何も恐れない
   2.米国のWTO違反に対する正義の防衛戦である
   3.全面戦争ではなく、貿易に限った局地戦である
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 この強気の対応のウラには、中国はトランプ大統領を一段低く
見下していたフシがあります。『習近平と米中衝突』の著者であ
る近藤大介氏は、米国を担当する中国の外交関係者の言葉として
中国の本音を次のように紹介しています。
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 われわれが得ている情報によれば、トランプ大統領は、物事を
一人で決める傾向がある。トランプには団体という概念がない。
優秀なシンクタンクも活用しなければ周囲に専門家も置かない。
商人の手法そのもので、まず相手に大きく吹っかけてから、徐々
に値切っていくだけだ。
 トランプ政権はまた中国を深く研究しているように思えない。
それに対し、中国はアメリカを長期にわたって十分研究している
から、半分の力でアメリカに勝てるだろう。(中略)
 これが、ヒラリー・クリントン大統領だったら、大変なことに
なっていただろう。トランプは単純な商人だから、「商談」にな
る。最後はトランプが、前線に立つライトハイザーUSTR(米
通商代表部)代表をクビにして、幕引きを図るのではないか。
             近藤大介著/NHK出版新書568
    「習近平と米中衝突/『中華帝国』2021年の野望」
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 中国としては、米国に対して「2つのことを聞いてやったでは
ないか」という思いがあります。2つのことの1つは、「北朝鮮
を何とかしてくれ」といってきたことです。これに対し中国は、
国連制裁を守るだけでなく、厳しい独自制裁を北朝鮮に課して、
中国としては米国の要請に応えたつもりなのです。
 2つは、「貿易不均衡を何とかしてくれ」と要求してきたこと
です。これに対しては、2017年11月のトランプ大統領の訪
中のさい、十二分におもてなしをしたうえで、2535億ドル分
米製品を購入して応えている。習近平主席としては、米国の要求
は、これで終わりと考えていたのです。
 実際に、この米中貿易問題の担当者である劉鶴副首相は、その
とき、次のように主張しています。
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 昨年(2017年)11月にわれわれはアメリカから2535
億ドル分も購入した。あと何を買って欲しいというのか。両国の
貿易格差が縮まらないのは、中国がアメリカの先端技術を高く買
うと言っているのに、アメリカが許可しないからではないか。
                      ──劉鶴副首相
                  近藤大介著の前掲書より
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 これはかなり思い上がった考え方です。それは、中国政府がト
ランプ大統領を「商人」と見下し、甘く見ていた結果であるとい
えます。習近平主席は、中国をロシアが「プーチンのロシア」と
いわれているように「習近平の中国」と呼ばれるようにしたいと
考えているのです。そのため、国家主席の任期10年の規定を廃
止し、生きている限り国家主席を続けられる「永代資格」が必要
であると考えたのです。そんなとき、米国から貿易戦争を仕掛け
られたので、中国全体に妙な高揚感、「米国なにするものぞ」と
いう思いが高まっていたのです。
 しかし、人民解放軍は、米国の出方に不気味さを感じ取ってい
ました。2018年3月23日、トランプ大統領がホワイトハウ
スで対中貿易戦争の宣戦布告をしたほぼ同時刻に、米軍は「航行
の自由作戦」を敢行し、南シナ海南沙諸島の美済島の12海里内
にミサイル駆逐艦「マスティン」を進入させてきたからです。
 ある重大な発表をしたりするさいに、それに関連する重大な行
動を同時並行に起こさせるのは、トランプ大統領の常套手段であ
るといえます。2018年にアルゼンチンのブエノスアイレスで
の米中首脳会談の開催とほぼ同時刻に、カナダでファーウェイの
副会長を逮捕していたこともトランプ流です。
 同じことが昨日30日にも起きています。この日、ワシントン
で米中貿易戦争の閣僚級協議が開始されたのですが、その1日前
に、ファーウェイ孟副会長を起訴し、同副会長を逮捕しているカ
ナダ当局に対し、その身柄の引き渡しを求めたのです。米国は、
閣僚級協議とは一切関係ないといっていますが、協議の内容は知
的所有権に関するものであり、関係は大ありです。これがまさに
トランプ流といってよいと思います。
 「マスティン」の南シナ海南沙諸島進入に関して中国国防部は
任国強報道官によるメッセージを発表して、米国を非難していま
す。その要旨は次の通りです。
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 中国海軍は、570艦艇と514艦艇(共にミサイル・フリゲ
ート艦)を即刻、出動させ、「マスティン」に警告を発した。中
国は、南シナ海において、争いようのない主権を有していて、ア
メリカの行為は中国の主権と安全を厳重に損なうものだ。かつ海
空で思いがけない事件を引き起こすことになる。アメリカ軍の挑
発行為は、中国軍の国防建設をさらに強化するものにしかならな
い。              ──近藤大介著の前掲書より
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 このようなことから、中国の人民解放軍は、これら一連のトラ
ンプ政権の中国への圧力は、周到に計画されたものではないかと
考えはじめたのです。しかし、中国上層部の高揚感は続いていた
のです。       ──[米中ロ覇権争いの行方/019]

≪画像および関連情報≫
 ●中国が南シナ海で「戦争のリハーサル」
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   中国空軍は2018年3月25日、SNSアカウントでの
  報道官声明を通じ、南シナ海で実戦訓練を行うと同時に、台
  湾北部の宮古海峡で偵察行動訓練を行ったと発表した。中国
  空軍の申進科報道官は、一連の訓練を「戦争準備のための演
  習」だと語っている。行われた時期は明らかにされていない
  が、23日の米海軍の「航行の自由作戦」など、西側諸国の
  軍事行動を意識しているのは明らかだ。中国側が「戦争」と
  いう言葉を明言したこともあり、主要海外メディアは一連の
  訓練や南シナ海情勢に警戒感を強めている。
   申報道官の声明によれば、南シナ海での“威力偵察作戦”
  には、最新鋭のH−6K戦略爆撃機、Su−35戦闘機も参
  加。中国のH−6K爆撃機は、アメリカ、ロシア以外の国で
  唯一長距離空対地ミサイル発射能力を持つ。APは、南シナ
  海からであれば「遠くオーストラリアまで射程に収める」と
  H−6Kが実戦訓練に参加したことの危険性を指摘する。
   沖縄本島と宮古島の間にある宮古海峡でもH−6KとSu
  30戦闘機による戦闘訓練が行われた模様だ。日本の防衛省
  は、23日に中国の爆撃機・戦闘機8機が宮古海峡を通過し
  たことを確認。航空自衛隊の戦闘機がスクランブル発進して
  いる。宮古海峡は日本にとって戦略的に重要であるばかりで
  はなく、台湾有事の際にも地政学的な鍵となるエリアだ。
                  https://bit.ly/2DHrLIJ
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米ミサイル駆逐艦「マスティン」
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