2018年08月17日

●「今後戦争はケンタウロス戦になる」(EJ第4830号)

 5月7日から73回にわたって、AI(人工知能)について書
いてきましたが、このテーマは今回で終了します。これまでAI
は2回のブームがあり、今回は3回目のブームにあたります。ど
うやら今回のブームは本物のようです。現在、世の中が、これに
よって音を立てて、変化していることが実感できるからです。
 その一環として、保険業界、とくに自動車保険業界で「テレマ
ティクス保険」というのが流行しつつあります。流行しつつある
というよりも、それが当たり前のことになりつつあります。
 テレマティクス保険は、自動車に設置したテレマティクスサー
ビスの端末機から、走行距離、運転速度、急発進・急ブレーキと
いった運転情報の実績を取得し、実績に応じた保険料を算定する
保険のことです。
 軍事評論家の兵頭二十八氏の本のコラムに、これに関して、次
の予測が出ていました。きわめて実現性の高い予測です。
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 航空機のブラックボックスと同じものがすべての自動車に搭載
される。オーナーが購入して以降のすべてのペダル、ハンドル、
レバーおよびスイッチの操作、車両の刻々の位置座標(したがっ
て移動速度も)、全周記録ビデオカメラの情報がストアされると
ともに、定期的にクラウドサーバーヘアッブロードされる。警察
は捜査のためにいつでもその記録にアクセスし、記録デバイスか
らデータをコピー抽出できる・・・     ──兵頭二十八著
     『AI/戦争論/進化する戦場で自衛隊は全滅する』
                        飛鳥新社刊
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 兵頭氏は「ブラックボックス」といっていますが、そういう通
信機器がすべての車に装備される日は案外近いと思います。つま
り、車の必須部品のひとつとして、テレマティクス端末が装備さ
れるようになるという意味です。その装置がないと、車としては
認められなくなるのです。
 警察のAIコンピュータは、走行中の車から送られてくるデー
タを解析すれば、それぞれの運転者がどのような運転をしている
かすべてわかるので、交通違反点数を算定し、違反を摘発でき、
免許更新のさいは、それまでの運転状況を調べたうえで更新を認
めるかどうかを判定できます。
 また、免許期間中であっても、あおり運転など、とくに危険な
運転を冒した運転者は、コンピュータがそれを知らせるデータを
出してくるので、運転者に警察署への出頭を命じ、当該車のドラ
イブレコーダーなどを調べたうえで、免許停止などの科料を課す
ることができます。
 このシステムが導入されると、交通警察官を大幅に減らすこと
ができ、運転者も安全運転を心掛けるようになるので、交通事故
は大幅に減らすことができます。それだけに、導入される可能性
は高いと考えます。
 ところで、今後AIはどこまで発展するのでしょうか。レイ・
カーツワイル氏の予言のようになるのでしょうか。
 とくに心配なのは、AIの軍事への応用です。それを読み解く
カギは、米国の軍事刷新にあります。米軍はこれまで2回の軍事
刷新を図っており、現在は第3回目の軍事刷新に取り組んでいま
す。小林雅一氏の本を参考にして、記述しています。
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    ◎第1次軍事刷新/1940年〜1950年
     ・核兵器の開発/核弾頭の増設配備の拡大
    ◎第2次軍事刷新/1970年〜1980年
     ・ミサイルなど各種兵器の小型・高精密化
    ◎第3次軍事刷新/2016年〜
     ・各種兵器へのAI(人工知能)搭載など
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 現在の軍事力のトップは何といっても米国です。ロシアは資金
がありませんし、中国も米国には遠く及ばないレベルです。しか
し、第2次軍事刷新時点のレベルでは、とくに中国が米国を追い
上げてきていることは確かです。つまり、米国の軍事的優位性が
磐石であるといえなくなってきたのです。
 そこで、米国は、2016年からの3年間で、約180億ドル
(約1兆8000億円〜2兆2000億円)をかけて、AIによ
る自律的兵器を中心とする軍事技術の刷新を行っています。つま
り、米国はAIを次世代兵器の要に据えようとしているのです。
これが米国による第3次軍事刷新の内容です。
 小林雅一氏によると、近未来の戦争は「ケンタウロス戦」にな
るといっています。ケンタウロスとは、ギリシャ神話に登場する
半人半馬の怪物です。これは、これからの戦争は、半分は人間、
半分はマシンが担うことを意味しています。そうです。AIを装
備した人間です。これがどんなに強力であるかについて、小林雅
一氏は次のように述べています。
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 ある2人の凡庸なチェス・プレイヤーが、3台のパソコンとそ
こに搭載されたチェス・プログラム(AIソフト)を駆使して、
チェスの世界チャンピオンに勝利を収めた。彼らはまた同じ手段
でチェスを指すスーパー・コンピュータにも勝つことができたと
いう。ここから読み取れることは、最強のチェス・プレイヤーと
は単なる人間(世界チャンピオン)でもAIマシン(人工知能を
搭載したスパコン)でもなく、「AIマシンを使いこなす人間」
であるということだ。これと同じことを米軍は近未来の戦場でや
ろうとしている。それがまさにケンタウロス戦なのだ。
          ──小林雅一著/『AIが人間を殺す日/
    車、医療、兵器に組み込まれる人工知能』/集英社新書
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 このテーマは今回が最終回です。長い間のご愛読を感謝いたし
ます。20日からは新しいテーマに挑みます。
      ──[次世代テクノロジー論U/最終回/074]

≪画像および関連情報≫
 ●人工知能は「第2の核兵器」になるかもしれない
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   急速に進化した人工知能(AI)の軍事利用が現実になろ
  うとしている。核よりも容易に拡散するかもしれないこうし
  た技術については、国際的に管理する仕組みが必要という提
  言もある。
   1899年、世界の列強はオランダのハーグで、航空機の
  軍事利用を禁止する条約を採択した。当時の新技術だった航
  空機の破壊力を恐れてのことだった。5年後にモラトリアム
  の期限が切れ、間もなく航空機は第一次世界大戦の大量殺戮
  を招いた。ワシントンにある無党派シンクタンク「新アメリ
  カ安全保障センター/CNAS」のフェロー、グレッグ・ア
  レンは「そのあまりの強力さがゆえに人々を魅了してしまう
  技術は確かに存在します」と話す。「人工知能(AI)もそ
  のような技術のひとつであり、世界中の軍隊が基本的には同
  じ結論に達しています」。
   アレンらは2017年7月、AIなどの最新技術が国家安
  全保障に及ぼす影響について、132ページにわたる報告書
  にまとめた。報告書はひとつの結論として、自律ロボットの
  ような技術が戦争や国際関係に及ぼす影響は、核兵器のそれ
  と同等だと述べている。     https://bit.ly/2gUW8yQ
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ケンタウロス.jpg
ケンタウロス
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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