2018年08月16日

●「AI搭載兵器が目下急増している」(EJ第4829号)

 8月4日のことです。ベネズエラのマドゥロ大統領を狙ったと
みられるドローンによる爆発事件が起きています。
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【サンパウロ=外山尚之】南米ベネズエラの首都カラカスで4日
マドゥロ大統領の演説中に爆発音があった。ベネズエラ政府はド
ローン(小型無人機)による攻撃を受けたとし、少なくとも7人
の兵士が負傷したと発表した。マドゥロ氏にけがはなかったとい
う。マドゥロ氏は5月に主要野党不在の大統領選で再選を果たし
事実上の独裁体制を敷いたばかりだった。
          ──2018年8月5日付、日本経済新聞
               https://s.nikkei.com/2w3N7eo
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 独裁者といわれるマドゥロ大統領のことですから、地上は厳重
な警備態勢を敷いていたと思われます。マドゥロ大統領の演説の
状況は、ちょうど、北朝鮮で、金正恩委員長が野外で演説するさ
いの大勢の人でびっしり埋まっている道路の状況と同じであり、
地上からのアプローチは不可能です。
 しかし、空からドローンで侵入されると防御不能です。今回の
場合は、爆弾を積んだドローンが空中で爆発しただけですが、既
に米軍では、機関銃や小型空対地ミサイルを搭載した軍用のマル
チコプター・ドローンが開発されているのです。もし、AI操縦
で、そういうドローンが複数機投入されていたら、大統領目がけ
て、ミサイルが飛んでくることになります。
 「AI操縦」とは何でしょうか。これについて既出の小林雅一
氏は、2016年に米国のDARPAにおいて、既にそういう実
験が行われているとし、次のように述べています。
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 ドローンが離陸するには兵士が発進指示を出さねばならないが
一旦飛び立ってしまえば、あらかじめ指定された監視対象(テロ
リストや彼らが乗った車など)を見つける作業は、無人機自体の
判断で行うことができる。ドローンは自らに搭載されたビデオカ
メラで地上の様子を撮影し、そのライブ映像を、地上にいる兵士
(に扮した技術者)に送信する。ドローンには人物やその顔面を
認識する特殊なソフトウエアが搭載されている。あらかじめテロ
リストなど危険人物を登録したデータベースと、この人物・顔認
識ソフトの解析結果を照合することにより、ドローンは上空から
撮影したビデオに危険人物が写っているかどうかを判定する。
 たとえばテロリストを発見した際には、ビデオ撮影した映像上
で、その危険人物の周囲を赤色の矩形で囲む。逆に民間人や味方
兵士などの場合には、その周りを緑色の矩形で囲む。これによっ
て(もしも実戦下の場合には)兵士がすぐに、ビデオ映像に写っ
ている人物が敵か、そうでないかを見分けることができる。
          ──小林雅一著/『AIが人間を殺す日/
          車、医療、兵器に組み込まれる人工知能』
                   集英社新書/0890
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 あまり考えたくないことですが、AIはごく当たり前のように
軍事兵器に組み込まれつつあります。1977年に米海軍が開発
した次の「対艦ミサイル」があります。これは日本の海上自衛隊
も装備しています。
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               ハーブーン/Harpoon
     マクドネル・ダグラス社開発対艦ミサイル
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 「ハーブーン」は、ミサイルの頭部に小型のレーダーを備えて
いて、敵艦に近づいたところでそのレーダーを起動させ、その反
射源に向って突入する方式です。しかし、ミサイルがレーダーを
発射すると、敵艦から探知される可能性もあります。
 そこで米海軍と米空軍とDARPAはこの点を改良して、AI
内蔵の長射程対艦ミサイル「LRASM」を2017年に開発し
たのです。このミサイルは「F─35」から発射される空対艦ミ
サイルです。この「LRASM」は、自前のレーダーを内蔵して
おらず、ミサイルの方からはいっさい電波を出さないのです。
 「LRASM」は、「ESM」という電波方向探知機を使って
敵艦が対空警戒のため発しているレーダーを捉え、搭載AIが、
その電波の特性から敵艦の種類などを分析し、攻撃すべき対象を
決定し、近づきます。そして、赤外線ビデオ映像を頼りに、その
敵艦の急所を正確に把握して、ピンポイントで激突するのです。
 「LRASM」の内蔵メモリーには、軍艦の出す電波の周波数
の違いを網羅した電波特性カタログが収録されているので、艦種
や艦型を特定できます。駆逐艦と空母が並んでいるときは、空母
の方を選ぶことになっています。しかも、「LRASM」はステ
ルス外形ですから、敵艦が気がつくとすれば、おそらく突入の直
前であり、防御する時間はないはずです。
 ちなみに、「LRASM」の射程は370キロメートルもあり
ハーブーンの3倍です。なにしろ発射してしまえば、後はミサイ
ルが自律的に判断して敵艦に正確に突っ込むのですから、防御し
ようがないのです。
 日本の航空自衛隊は、対艦用としてこの「LRASM」と、対
地用として、次の2つのミサイルを米国から輸入することを既に
決めています。
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      対地用 ・・ 「JASSM−ER」
      対艦用 ・・    「LRASM」
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 対地用の「JASSM−ER」については、北朝鮮の弾道弾発
射車両を撃破するためであり、「LRASM」については、尖閣
海域に襲来する中国の空母を撃墜するための備えです。「JAS
SM−ER」にもAI機能が内蔵されています。
          ──[次世代テクノロジー論U/073]

≪画像および関連情報≫
 ●AIは軍事利用されるのか?グーグルが出した宣言とは
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   無人化した兵器は、自国の兵士を傷つけずに敵国を叩くこ
  とができることから、各国の軍が長年研究している。しかし
  これまでの無人兵器はリモートコントロールがベースになっ
  ているので、誰かが現地の様子をみながら操作する必要があ
  る。そのため、確かに兵士は遠隔から無人兵器を操作するこ
  とはできるが、完全に戦地から離れることはできない。
   では、無人兵器にAI(人工知能)を搭載したらどうなる
  か。「スイッチを押せば、あとは勝手に敵を倒してくれる」
  恐ろしい兵器になるだろう。そこでAI大国であり、軍事大
  国であるアメリカと中国の両国は、AI兵器の開発を進めて
  いる。嫌な話題だが、そもそもAIはその誕生当初から軍や
  兵器と深い関係にあった。戦争が科学を進歩させたことは悲
  しい事実ではあるが、AIもそのひとつということである。
   しかしいま、AIのトップランナー企業が「兵器用のAI
  は開発しない」と宣言するなど、AIの反軍事化の流れも生
  まれつつある。AIの究極の姿は、コンピュータが人間のよ
  うに思考することである。例えば、囲碁のトッププロを倒し
  たAI「アルファーゴ」は、囲碁のルールと戦術を理解し、
  対戦相手の何十手先も読むことができる。これは十分AIが
  「囲碁について思考した」といえそうだが、しかしアルファ
  ーゴは将棋では思考できないし、顔認証すらできない。つま
  りアルファーゴが人並みの思考をしたとは言い難い。では、
  「コンピュータが人間のように思考する」とはどのように定
  義されるのだろうか。      https://bit.ly/2nBq9r8
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敵艦直撃寸前の「LRASM」.jpg
敵艦直撃寸前の「LRASM」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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