2018年08月01日

●「ロボットにも『心』が生まれるか」(EJ第4818号)

 「機械の人間化」の話を続けます。先日、池袋のジュンク堂書
店で次の本を発見し、購入しました。ジュンク堂書店では、AI
コーナーが設けられており、そこで発見したのです。
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                 海猫沢めろん著
    『明日、機械がヒトになる/ルポ最新科学』
            講談社現代新書/2370
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 著者の海猫沢めろん氏は、40代前半のライターで、AIをは
じめ、最新のテクノロジー開発のキーマンを取材し、まとめた本
です。この手の本はたくさんありますが、この本は、単なる取材
本とは一味違うところがあり、とても参考になります。
 「機械の人間化」で一番問題になるのは、やはり「心」の問題
です。これについて、海猫沢めろん氏は、ロボット工学者の石黒
浩博士に次の質問をしています。
─────────────────────────────
──:先生は、ロボットにも「心」は生まれるという話をつねづ
  ねされています。ぼく、その心が、OSとハードウェアに分
  かれているのか、それとも、分かれていないのかが気になっ
  ているのです。
石黒:分かれていますね。ひとつにすることは、今の技術ではで
  きない。人間の心は分かれていないんですね。人間っていう
  のは脳のなかのソフトウェア的な情報処理が、時間が経つと
  ハードウェアの構造──というか、脳のシナプスに影響を与
  えて、長期的な記憶が生まれたり、脳の構造そのものを変え
  たりしているのです。
──:ハードウェアを発達させて、どうにかして、できないんで
  すか。
石黒:そこまでのデバイスはまだつくれないですね。今のIC技
  術を使っている限りは難しそうな気がします。全体がプログ
  ラマブルなハードウェアをつくることができるなら、かなり
  人間の脳に近い構造をもたせることができる可能性もあるん
  ですけど、そこまで行くかどうかはまだちょっと微妙で・・
              ──海猫沢めろん著の前掲書より
─────────────────────────────
 海猫沢めろん氏の「その心が、OSとハードウェアに分かれて
いるのか、それとも、分かれていないのかが気になっている」と
いう表現はきわめてユニークです。石黒博士によると、機械は分
かれているが、人間は一体化しているというのですが、心という
ものを抽象的ではなく、具体的に表現しています。
 人間はともすると「心」という言葉を口にします。悪いことを
すると「心を入れ替えろ」といったり、話し方に「心がこもって
いない」とかいいます。しかし、「心とは何か」と問われると、
何も答えられないのです。石黒博士は「心」について、次のよう
にいっています。
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 人に心はなく、人は互いに心を持っていると、信じているだ
 けである。     ────海猫沢めろん著の前掲書より
─────────────────────────────
 石黒博士の論法によると、相手に「心」があると人間が信じれ
ば、ロボットにも「心」は存在するといえます。このテーマは、
ややもすると哲学的になりますが、この石黒博士の意見は、西洋
ではデカルト以来、哲学者がずっと論じ続けている「私」の問題
でもあるわけです。要するに哲学の問題なのです。
 石黒博士は、仏教関係者からも、よく講演を依頼されるそうで
す。浄土真宗の研究部門に石黒ファンが多いようです。「人は互
いに心を持っていると、信じているだけである」という考え方は
仏教でも同じであり、最終的にはすべて無に帰するものと考えて
いるようです。仏教にも通じる問題なのです。
 演劇の世界でもロボットが取り入れられつつあります。多くの
人は、感情を持たないロボットに演劇の俳優が務まるのかと考え
ますが、演出家の平田オリザ氏は、石黒浩博士の協力を得て、既
に「ロボット演劇」を行っています。2013年には、国立劇場
で次の公演が行われています。
─────────────────────────────
 アンドロイド版『三人姉妹』
 原作:アントン・チェーホフ 作・演出:平田オリザ
 ロボット・アンドロイド開発:石黒 浩(大阪大学&ATR石
 黒浩特別研究室)
─────────────────────────────
 「ロボット演劇」といっても、出演者が全部ロボットではなく
人間との共演です。演劇の演出というものは、演出家にもよりま
すが、プログラミングとよく似たところがあります。平田オリザ
氏の演出について、海猫沢めろん氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 平田オリザさんは、舞台役者に対してすごく細かい指示をだし
ます。感情ではなく、どの台詞を何秒、どういう身休の状態で言
うか、そういうプログラミングめいた指示です。つまり、ロボッ
トに対する演出と、人間に対する演出がまったく同じなのです。
「10センチ前に」「1秒間を取って」という演出をロボットで
やると、そのままプログラムを書くだけになります。
 果してそんなものに人は感動するのか?結論からいうと「イエ
ス」です。これは一体なにをしているのでしょうか。
            ────海猫沢めろん著の前掲書より
─────────────────────────────
 演劇だけでなく人々は普通の生活で、ロボットと一緒に暮らす
ようになります。既にそれは始まっています。もしそれが人型ロ
ボットであると、家族と同じように感じてしまってもおかしくは
ないと思います。このように「機械の人間化」は急速に進んでい
るといえます。   ──[次世代テクノロジー論U/062]

≪画像および関連情報≫
 ●ロボットの動きが不自然に見える理由/平田オリザ氏
  ───────────────────────────
  平田オリザ氏:今日、何の話をしようかと思ったんですけど
  石黒浩先生が(今日の講演で)何の話をするかが、分からな
  かったので、僕決めてなくて。どんな意味があるのか、ある
  いは何をしているのかってことなんですね。僕はずっとこの
  15年くらい、石黒先生と全く関係ないところで認知心理の
  方たちと一緒に、演劇のリアルっていうものはどういうとこ
  ろから生まれてくるのかという研究をしていました。分かっ
  てきたことはいくつかあるんですけど、一番単純なところで
  は、どうも皆さんがあの俳優は上手いとか、あの俳優は下手
  だとか、あの俳優はリアルだ、あの俳優は、ちょっとリアル
  じゃないっていうふうに感じる大きな要素の一つに、無駄な
  動きが適度に入ってるかどうか(がある)んですね。最近は
  ずいぶん変わってきてると思うんですけど、例えば今までの
  ロボット工学って(ペンを突き出し)これをいかに上手く掴
  むかっていうことをずっと研究してきたわけですよね。産業
  用ロボットっていうのは、まさにきちんと掴むっていうのが
  大事なわけですけど。でも人間はこんなにガシッとは掴まな
  くて、なんかモノがあったりすると、大体ちょっと手前で止
  まって掴んだりとか、全体像を把握してから掴んだりとか、
  何かのためらいとか、すごく無駄な動きが入るんですね。認
  知心理ではこれを「マイクロスリップ」というんです。
                  https://bit.ly/2AeEoLR
  ───────────────────────────

演出家/平田オリザ氏.jpg
演出家/平田オリザ氏
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2018年08月02日

●「体に『機械』を埋め込んで機械化」(EJ第4819号)

 「機械の人間化」に続いて、「人間の機械化」について考えて
いきます。「人間の機械化」とは何でしょうか。
 人間というものは、何らかの機械のサポートを受けて生活をし
ています。視力が弱くなると、人は眼鏡をかけますし、心臓に疾
患のある人はペースメーカーを身体に埋め込んでいます。難聴の
人は、補聴器を使うか、蝸牛(内耳)を脳に移植して、人とのコ
ミュニケーションをとっています。
 眼鏡や補聴器は別として、機械で身体や能力を強化された人間
のことを「サイボーグ」と呼んでいます。しかし、機械がどんな
に進化したとしても、人間の脳を超えることは、たとえディープ
ラーニングがさらに発達しても、少なくとも現時点では非常に困
難であると考えます。したがって、「機械の人間化」は当分SF
の世界にとどまるものと思われます。
 しかし、機械──AIと考えてもいいと思いますが、人間の脳
と一体化することは十分あり得るし、そういう新しい人類が出現
することは、荒唐無稽ではないと考えます。レイ・カーツワイル
氏は、シンギュラリティ以後、そういう可能性があると考えてい
ることは確かです。
 人間の脳とコンピュータを接続する──実はこれは既に可能に
なっています。米国の国防高等研究計画局(DARPA)が、年
間2400万ドルを投じて、この研究を行っています。これにつ
いて、カーツワイル氏は自著で次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 デューク大学のミグル・ニコレリスらは、サルの脳にセンサー
を埋め込んで、思考だけでロボットを操作させている。実験の最
初の段階では、サルに、ジョイスティックを使ってスクリーンの
カーソルを操作することを教えた。次は、脳波計から信号パター
ンを収集し、ジョイスティックの物理的な動きではなく、脳波信
号の適切なパターンにカーソルが反応するようにした。サルはす
ぐ、ジョイスティックはもう役に立たず、考えるだけでカーソル
が操作できると学んだ。この「思考検出」システムは、次にはロ
ボットに取りつけられ、サルは、思考だけでロボットの動きを制
御するやり方を学習することができた。ロボットの動作から視覚
的なフィードバックを得て、思考によるロボット操作を、完壁に
マスターした。この研究は、身体が麻痺した人に四肢と環境を制
御できるような同様のシステムを提供することを目指している。
          ──レイ・カーツワイル著/NHK出版編
   『シンギュラリティは近い/人類が生命を超越するとき』
─────────────────────────────
 少し分かりにくいと思うので解説します。
 まず、サルにジョイスティックを操作させて、PCのディスプ
レィ上のカーソルを動作させたのです。カーツワイル氏は書いて
いませんが、そうすることによって、プラスティックの管が押し
出され、サルは水が飲める仕掛けになっていたのです。サルはそ
れをすぐ覚えて、水が飲みたくなると、ジョイステックでカーソ
ルを移動させ、水を飲んだのです。
 次の段階として、サルの脳波を脳波計を使って信号パターンを
収集し、それとディスプレィ上のカーソルが反応するようにした
のです。これは、サルの脳波とコンピュータがつながったことを
意味します。サルは、水を飲もうと思うと、脳波がコンピュータ
に送られ、カーソルがうごいて、水の管が押し出されてくるので
それで水を飲むようになります。当然、その後、サルはジョイス
テックを使わなくなくなるのです。
 この実験は人間に対しても行われ、身体がマヒした人が、考え
るだけで、PCなどを動かすことができるようになっています。
こんな話もあります。2014年にブラジルで行われたサッカー
W杯で、足を失った障害者が、特殊なスーツとこの技術による装
置を組み合わせ、サッカーボールを蹴ることに成功しています。
 これらの実験は2005年に放映された「NHKスペシャル」
で取り上げられています。
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              立花隆/最前線報告
       「サイボーク技術が人類を変える」
   NHKスペシャル https://bit.ly/2v27cSP
─────────────────────────────
 NHKは「NHKスペシャル」を公開してくれていませんが、
上記サイトでは、「サイボーグ・テクノロジー」として連続して
視聴することができます。非常に参考になる内容であり、時間の
あるときにご覧になることをお勧めします。
 なかでも注目すべきは、満足に歩行できないパーキンソン病の
患者が、脳に電極を入れる「脳深部電気刺激移植」の手術によっ
て、あっという間に手足の震えが止まり、数週間で普通の人と同
じように歩けるようになる映像は、パーキンソン病によって苦し
む人にとって貴重な情報になると思います。
 これらのサイボーグ研究の最前線は、義手や義足を脳波で動か
すという次の研究です。
─────────────────────────────
      ◎BMI/ Brain-machine Interface
       ブレイン・マシン・インタフェース
─────────────────────────────
 BMIというと、体重と身長の関係から算出されるヒトの体格
指数「ボディマス指数」(Body Mass Index) と間違えてしまい
ますが、サイボークの研究でのBMIです。
 このように、人間の体内に、いわゆる「機械」を埋め込むこと
によって機能の回復を図る技術は非常に進化しつつあります。こ
れはまさしく「人間の機械化」といえます。BMIが進化すると
脳さえ異常がなければ、手足が動かなくなっても、脳波によって
動かすことは可能になっています。しかし、それは医療の分野で
あれば、問題はないものの、それを超えると恐ろしいことになり
ます。       ──[次世代テクノロジー論U/063]

≪画像および関連情報≫
 ●「2030年代、サイボーグとなった人類は"神"に近づく」
  ───────────────────────────
   世界的な未来学者、発明家のレイ・カーツワイル氏の予想
  によれば、人間は脳をコンピュータに接続することによって
  さらに複雑な感情や特質を発達させるという。
   「人間は、もっとユーモラスで、魅力的に、そして愛情表
  現が豊かになるでしょう」。シリコンバレーにある教育機関
  「シンギュラリティ・ユニバーシテイ」(SU)で最近行わ
  れたディスカッションで、カーツワイル氏はこのように述べ
  た。彼はグーグルの技術責任者として人工知能(AI)の開
  発に参加しているが、この言葉は同社を代表して述べたもの
  ではない。
   カーツワイルの予想では、2030年代に人間の脳はクラ
  ウドに接続可能になり、メールや写真を直接、脳に送信した
  り、思考や記憶のバックアップを行ったりできるようになる
  という。これは脳内毛細血管を泳ぎまわるナノボット(DN
  A鎖からつくられる極小ロボット)によって可能になる、と
  カーツワイル氏は言う。非生物的な思考へと脳を拡張するこ
  とは、私たちの祖先が、道具を使用することを学習したのと
  同様に、人類の進化の次なるステップであると彼は捉えてい
  る。また、この拡張によって論理的知性だけでなく、感情的
  知性も高まるという。「人間は、脳モジュールの階層レベル
  を増やし、さらに深いレベルの感情表現を生み出すだろう」
  とカーツワイルは述べた。    https://bit.ly/2uXoTmr
  ───────────────────────────

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意識するだけで、カーソルが動く
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2018年08月03日

●「人体1・0から人体2・0が誕生」(EJ第4820号)

 「人間の機械化」について考えます。これまでの人体を「人体
1・0」とします。この人体は、さまざまな病気に襲われ、加齢
が進むにつれて人体は年々弱ってきます。バージョン1・0の人
体は、持続力が弱く、生きて行くために必要な資源を肉体内に多
くを蓄めておけないのです。そのため、生きるために、つねに呼
吸し、つねに食品を摂取する必要があります。
 バージョン1・0の人体は、血液中に蓄えられる酸素はわずか
数分しか持たず、グリコーゲンの形で蓄えられるエネルギーは、
せいぜい持って数日分です。しかし、シンギュラリティが近づき
それを超えると、テクノロジーの指数関数的発達によって、そう
いう人体の虚弱体質は大きく修復・改善され、病気にならない強
靭な人体に生まれ変わるといいます。これによって、人間はかな
り長期間、代謝資源がなくても、生きて行けるようになります。
 レイ・カーツワイル氏は、これを「人体2・0」と呼び、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 シンギュラリティが近づくにつれて、人間生活の本質について
考え直し、社会制度を再設計しなくてはならなくなるだろう。た
とえば、G(遺伝学)とN(ナノテクノロジー)とR(ロボット
工学)の革命が絡み合って進むことにより、バージョン1・0の
虚弱な人体は、はるかに丈夫で有能なバージョン2・0へと変化
するだろう。何10億ものナノボットが血流に乗って体内や脳内
をかけめぐるようになる。体内で、それらは病原体を破壊し、D
NAエラーを修復し、毒素を排除し、他にも健康増進につながる
多くの仕事をやってのける。その結果、われわれは老化すること
なく永遠に生きられるようになるはずだ。
 脳内では、広範囲に分散したナノボットが、生体ニューロンと
互いに作用し合うだろう。それは、あらゆる感覚を統合し、また
神経系をとおしてわれわれの感情も相互作用させ、完全没入型の
バーチャルリアリティ(VR)を作りあげる。さらに重要なのは
生物的思考とわれわれが作りだす非生物的知能がこのように密接
につながることによって、人間の知能が大いに拡大することだ。
          ──レイ・カーツワイル著/NHK出版編
   『シンギュラリティは近い/人類が生命を超越するとき』
─────────────────────────────
 人類の寿命は年々伸びています。シンギュラリティが近づくと
その伸長はさらに加速される。ナノテクノロジーの研究者である
ロバート・フレイタス氏によると、老化や病気のうち、医学的に
予防可能な症状の50%を予防できれば、平均寿命は150年を
超えるといっています。シンギュラリティになれば、その予測は
不可能であるとはいえず、十分達成する可能性はあります。考え
てみると、人類はこれまでさまざまなテクノロジーを開発して、
平均寿命を伸ばしてきた歴史があります。実際に平均寿命は次の
ように伸びてきています。
─────────────────────────────
 ◎平均寿命
  クロマニヨン人の時代      ・・・・・ 18歳
  古代エジプト          ・・・・・ 25歳
  1400年ヨーロッパ      ・・・・・ 30歳
  1800年ヨーロッパ/アメリカ ・・・・・ 37歳
  1900年アメリカ       ・・・・・ 48歳
  2002年アメリカ       ・・・・・ 78歳
           ──レイ・カーツワイル著の前掲書より
─────────────────────────────
 かぎを握るのは、ロバート・フレイタス氏の提示する「人工赤
血球」(レスピロサイト)の実現であるといいます。これが実現
すると、人は酸素なしで何時間も生きられるようになります。
 ロバート・フレイタス氏は、赤血球だけでなく、血小板や白血
球、すなわち血液を人工物に交換するナノテクノロジーを研究し
ています。「人工血小板」と「人工ナノマシン」による白血球の
代替も実現し、血液をすべて改変し、プログラミングできるよう
にすることも考えているといいます。
 そして、カーツワイル氏の人体改造研究は「心臓」にまで及ぶ
のです。心臓は、体の他の部分よりも早くだめになり、心不全を
起こしやすく、寿命を縮める重要要因のひとつです。これについ
て、カーツワイル氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 人工心臓への交換も実現し始めているが、もっと有効な方法は
心臓を完全に取り除くことだろう。フレイタスが設計したものの
ひとつに、自力運動性のナノボット血球がある。血液が自動的に
流れるのであれば、一点集中のポンプにひじょうに強い圧力が求
められるという技術上の問題は解消される。ナノボットを血液中
に出し入れする方法が完成されるにしたがい、やがてはナノポッ
トと血液をすっかり取り替えられるようになるだろう。フレイタ
スは500兆のナノボットからなる複雑なシステム「ヴァスキュ
ロイド」の設計についても発表したが、それは人間の全血流の代
わりになるもので、流動することなく必須の栄養や細胞を体の各
所に届けられる。   ──レイ・カーツワイル著の前掲書より
─────────────────────────────
 カーツワイル氏のいわんとすることは、酸素摂取効率が抜群に
高い人工赤血球が本当に開発されれば、そもそも心臓のような一
極集中型の臓器は必要ないというのです。いつ誤動作や緊急停止
するかわからない心臓ひとつに頼るより、血液を改革できれば、
そもそも循環させる必要もないから、皮膚呼吸で十分じゃないか
というわけです。
 しかし、ここまでやると、もはや人造人間です。このバージョ
ン2・0を人間と呼べるのかどうかという問題になります。結局
人間にとって最後に残るのは、脳だけということになりかねない
のです。これは、まさしく「人間の機械化」そのものです。
          ──[次世代テクノロジー論U/064]

≪画像および関連情報≫
 ●身体の中に病院を作る!?/「ナノマシン」が現実に
  ───────────────────────────
   80年代に長期的なヒットを飛ばしたRPG「サイバーパ
  ンク2020」や、最近だと「エクリプス・フェイズ」など
  など(日本で有名なのはガンダムだろう)で使われていた大
  量のナノマシンをあなたは覚えているだろうか。
   かつてゲームやアニメの中で活躍していたナノマシンは、
  それらを通じてナノマシンの危険性や可能性を我々に間接的
  に伝える役目を果たしていたが、今ではすっかり取り上げら
  れなくなり、まるで死語のような扱われ方をしている。
   しかし、最近また、注目を集め始めている「ナノテクノロ
  ジー」によって、目に見えない極小サイズのワイヤレスマシ
  ンが現実のものになったらどうだろう。SFの世界でしか起
  こりえなかったことが現実に起こるかもしれないとしたら?
   あのナノマシンが互いにコミュニケーションを取りあうこ
  とができたら、どんな使い方が考えられるだろうか。先日、
  まさにこの研究に取り組んでいる科学者たちがいることが明
  らかになった。彼らが研究しているのは人のDNAの100
  倍ちょっとの大きさで、血液の流れに乗ってデータを運ぶこ
  とができるナノサイズのデバイスである。ナノテクノロジー
  は、世界的に超高齢化社会を迎えつつある現在、医療への応
  用に大きな期待を寄せられている。この技術を活用すること
  で診断から治療まで、医者は患者の体のいたるところをリア
  ルタイムで解析できるようになる。現在の検査は放射線など
  体に有害となりうるものを使用しなければならないが、これ
  が人体に無害で賢い「ナノデバイス」に取って代われる日が
  来るかもしれないのだ。     https://bit.ly/2LvitVM
  ───────────────────────────

血中で活躍するナノマシン.jpg
血中で活躍するナノマシン
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2018年08月06日

●「シンギュラリティ/脳が拡大する」(EJ第4821号)

 7月30日から8月3日のEJで、レイ・カーツワイル氏の唱
える「シンギュラリティ」(2045年問題)に基づく未来予測
について書いてきましたが、彼の未来予測についてどのように受
け止められたでしょうか。
 普通は、これほど思い切った予測をすると、多くの学者から反
論の嵐を浴びるものですが、一部ではそういう動きもあるものの
彼の唱える「シンギュラリティ」は、ほぼ肯定的に受け止められ
ているといえます。
 なぜかというと、カーツワイル氏は「未来学者」として紹介さ
れていますが、2012年から現在AIに関しては最も先進的な
企業のグーグルに籍を置き、最先端のAIを研究しているため、
AIの先端技術に最も近い学者としての信用があるからです。
 しかし、カーツワイル氏について、既出の小林雅一氏は、再新
刊書で、次の評価をしています。
─────────────────────────────
 カーツワイル氏は若干奇矯な人物として知られているため、仮
に彼一人がこうした予想を口にするだけなら、それほど真剣に取
り上げられなかったかもしれない。が、実際には同氏のみならず
世界的に有名な物理学者のステイーヴン・ホーキング博士や宇宙
旅行ビジネスなどを開拓するスケールの大きな起業家イ一ロン・
マスク氏ら、各界の著名人も同様の警告を発している。このため
シンギュラリティに代表されるAI脅威論、つまり「超越的な進
化を遂げたAIが人類の生存を脅かす」との予想も、非常な関心
と危機感を煽っている。
 しかし、この点についても世界的な有名人に異を唱えるのは、
少々おこがましいが、ホーキング博士やマスク氏らはAIの専門
家ではない。つまり人工知能を実現するための具体的技術や、そ
の内部メカニズムについては、それほど詳しいと思えないのであ
る。それなのに、なぜAIが今後、発展していく方向性や、その
潜在的な危険性などを占うことができるのだろうか?
 むしろ彼らはある種の興味本位、あるいはセンセーショナルな
予想によって世間の関心を惹こうとする動機の方が強いのではな
かろうか。     ──小林雅一著/『AIが人間を殺す日/
          車、医療、兵器に組み込まれる人工知能』
                   集英社新書/0890
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 小林雅一氏は、「シンギュラリティに代表されるAI脅威論」
という表現を使い、カーツワイル氏があたかもAI脅威論の元凶
というような位置づけですが、私は少し意見が違います。ここま
での検討で既に述べているように、AI脅威論というのは、いわ
ゆる「機械の人間化」によって、人間の知能をはるかに上回る機
械(ロボット)が出現し、人類を征服するというものです。小林
氏自身、上記の新刊書で次のように述べています。
─────────────────────────────
 それ(カーツワイルのシンギュラリティ)によれば、2045
年頃には、コンピュータ・プロセッサの処理能力(人工知能のベ
ースとなる技術)が人間の知力を上回り、いずれは、AIが意識
や感情までも備えるようになる。そして遠い未来には、AIやロ
ボットが人類を支配し、その生存を脅かす恐れすらある、との見
方である。           ──小林雅一著の前掲書より
─────────────────────────────
 しかし、カーツワイル氏はそうはいっていないのです。彼の本
をていねいに読むと、AIは指数関数的に発達して、それが人間
の脳と一体化する「人間の機械化」が起こり、スーパー人間が出
現すると予測しています。もっとも、小林雅一氏もそのことは認
めていて、次の但し書きを入れています。
─────────────────────────────
 元々、カールワイル氏はそこまでは言わなかったが、やがて話
に尾ひれがついて、どんどん誇張されていった。
                ──小林雅一著の前掲書より
─────────────────────────────
 そうなんです。カーツワイル氏のシンギュラリティ論を聞いて
一部の学者たちが、AIを人間とは異なる生命体として認識し、
その超人的パワーを誇張した結果、人類征服などの脅威論が生ま
れたのです。
 この脅威論はあり得ないと考えます。しかし、発達したAIが
人間の脳と一体化し、脳が拡張することは、十分あり得ることで
す。脳が拡張すると、それまでは考えられなかったことが起きる
可能性があります。今から約200万年前に、人類の脳の拡大が
起きたといわれています。脳が拡大したことで、階層構造が増え
て、それが言語の誕生につながり、芸術や音楽がそれに続いたの
です。その脳の拡大がまた起きようとしているのです。それがシ
ンギュラリティです。カーツワイル氏は、そのときにはコンピュ
ータがナノマシン化し、脳にすら入るようになり、生物的な脳を
パワーアップするといっています。
─────────────────────────────
 「バージョン2・0」の人体のシナリオは、テクノロジーとま
すます緊密な関係になる傾向がこの先もずっと続くことを示して
いる。誕生した当初のコンピュータは、空調のきいた部屋で白衣
の専門家が管理する巨大な機械で、一般の人にとってはずいぶん
遠い存在だった。それが机上に置けるようになったかと思うと、
じきに腕で抱えて運べるようになり、今ではポケットに入ってい
る。遠からず、日常的に体や脳の内側に入ってくるだろう。20
30年代までには、人間は生物よりも非生物に近いものになる。
2040年代までに、非生物的知能はわれわれの生物的知能に比
べて数10億倍、有能になっているだろう。
          ──レイ・カーツワイル著/NHK出版編
   『シンギュラリティは近い/人類が生命を超越するとき』
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/065]

≪画像および関連情報≫
 ●AI脅威論の払拭を模索する研究者たち/ニュースイッチ
  ───────────────────────────
   人工知能(AI)研究者が社会の不安や懸念に応えようと
  模索している。産業技術総合研究所人工知能研究戦略部が今
  後の技術開発について「人間との協調」や「AIへの信頼」
  「構築のしやすさ」の三本柱を設定し、社会に受け入れられ
  るAI研究を探る。これらは内閣府の人工知能技術戦略会議
  がまとめる実行計画に採用される見込みだ。先に政府が示し
  た「統合イノベーション戦略」に大まかな方向性が盛り込ま
  れていた。多くのAI関連の戦略が策定されてきたが抽象的
  なものが多かった。基盤技術の具体的なテーマにまで踏み込
  んだ実行計画がまとまれば、社会の漠とした不安も払拭でき
  るかもしれない。
   「AIの本格的な社会実装に向けて問題点が整理されてき
  た」と産総研人工知能研究センターの辻井潤一センター長は
  三本柱を挙げた背景を説明する。現在の第三次AIブームが
  AIによる失業への不安や脅威論によって広がった側面もあ
  り、AI研究者は常に社会からの期待と懸念にさらされてき
  た。そのためAI判断の説明可能性や信頼性保証、プライバ
  シー保護など、社会受容性を広げる技術が活発に研究されて
  いる。そして日本のAI戦略に現場主義が採り入れられた。
  現場に信頼され、現場で構築しやすい技術が三本柱に掲げら
  れた。そもそもAI2強の米国と中国は、それぞれグーグル
  やアリババといった巨大プラットフォーマーを抱える。国家
  やプラットフォーマーが集める膨大なデータをAIに学習さ
  せて精度とサービスを磨く。対して日本は現場力を強みとす
  る方針だ。工場などの現場をIoTでスマート化し、良質な
  データを集めてAIの精度を高め現場力を向上させる。
                  https://bit.ly/2AmA8tC
  ───────────────────────────

シンギュラリティ/カーツワイル氏.jpg
シンギュラリティ/カーツワイル氏
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2018年08月07日

●「最新の人工知能を医療に応用する」(EJ第4822号)

 AI(人工知能)の活用というと、新聞などに載るのはほとん
ど医療以外のビジネスへの応用です。7月31日付けの日本経済
新聞でひろってみると、次の2つがあります。こういう「AI」
の記事が毎日のように新聞に掲載されています。
─────────────────────────────
       ◎公的年金の運用/AIで安全管理
       ◎     AIでブランド品鑑定
            ──2018年7月31日本経済新聞
─────────────────────────────
 しかし、AIを医療に応用するということがもう少しあっても
いいのではないかと思います。現代のAIなら、世界中で日々発
表され、蓄積されている医学論文を物凄いスピートで読破し、そ
れを前提として医師が知らなかった病名やその治療法を情報とし
て提示できるはずだからです。
 その先駆けになっているのが米IBMの「ワトソン」です。I
BMは、2014年にワトソン事業部を発足させ、当初10億ド
ル(約1000億円)の予算と1万人のスタッフを配置し、ワト
ソンの利用拡大に本格的に取り組んでいます。
 そのなかで、最も力を入れているのが「ワトソンヘルス」と呼
ばれる医療ビジネスです。これには、全スタッフの3分の2の人
材を当てていますが、次の3つのことに重点を絞っています。
─────────────────────────────
        1.      新薬の開発
        2.    がんの診断支援
        3.ゲノム解析アドバイザー
─────────────────────────────
 3の「ゲノム解析アドバイザー」というのは、患者のDNAな
どの遺伝情報を解析して、個々の患者に最適な治療法を提供する
新型医療のことです。
 2の「がんの診断支援」については、既に注目すべき成果が上
がっています。東京大学医科学研究所が2015年7月に、国内
の先陣を切ってワトソンを導入し、急性骨髄性白血病を患ってい
る60代女性の診断にワトソンを使っています。
 その結果について、2016年8月4日付、日本経済新聞は、
次のように報道しています。これは、国内初の成功例であり、注
目すべき事例です。
─────────────────────────────
 膨大な医学論文を学習した人工知能(AI)が、診断が難しい
60代の女性患者の白血病を10分ほどで見抜いて、東京大医科
学研究所に適切な治療法を助言、女性の回復に貢献していたこと
が、2016年8月4日、分かった。
 使われたのは米国のクイズ番組で人間のチャンピオンを破った
米IBMの「ワトソン」。東大は昨年からワトソンを使ったがん
診断の研究を始めており、東條有伸教授は「AIが患者の救命に
役立ったのは国内初ではないか」と話している。(中略)
 女性患者は昨年、血液がんの一種である「急性骨髄性白血病」
と診断されて医科研に入院。2種類の抗がん剤治療を半年続けた
が回復が遅く、敗血症などの危険も出た。そこでがんに関係する
女性の遺伝子情報をワトソンに入力すると、急性骨髄性白血病の
うち「二次性白血病」というタイプであるとの分析結果が出た。
 ワトソンは抗がん剤を別のものに変えるよう提案。女性は数ヶ
月で回復して退院し、現在は通院治療を続けているという。東大
とIBMは昨年から、がん研究に関連する約2千万件の論文をワ
トソンに学習させ、診断に役立てる臨床研究を行っている。
          ──2016年8月4日付、日本経済新聞
               https://s.nikkei.com/2M1rRg2
─────────────────────────────
 ここで、ワトソンに関して知っておくべきことがあります。そ
れは、ワトソンが現在AIの主流になりつつあるディープラーニ
ングによる診断システムではなく、高度に発達したルールベース
のAIであるということです。つまり、ワトソンは、医療エキス
パートシステムなのです。
 仮にあるがん患者に対する治療法に関して、医師の判断とワト
ソンの間で意見が割れたとします。具体的にいうと、ステージ2
の大腸がん患者に対し、医師は「化学療法が必要である」と判断
したが、ワトソンは「化学療法は効果がなく、様子をみるべき」
というように意見が割れたとしてます。
 この場合、ワトソンには「ワトソン・パス」と呼ばれる医師支
援機能が用意されています。ワトソン・パスとは、ワトソンがど
のようなエビデンス(科学的根拠)や推論に基づいて、結論を出
したかのプロセスを示す機能です。
 医師としては、ワトソンの推論プロセスが分かると、その結論
に従うか、やめるかの判断ができるので便利です。しかし、その
思考過程をディープラーニングで行うと、AIシステムがどのよ
うなプロセスを経て、その結論に至ったかを示すことが困難にな
ります。判断プロセスが高度化すればするほど、思考プロセスが
複雑過ぎて、ブラックボックス化してしまうのからです。
 この問題に関連して、小林雅一氏は、最近の米国のDARPA
の動きを次のように伝えています。
─────────────────────────────
 米国のDARPAでも「理由を説明できる人工知能」という研
究テーマを設けて、その開発に着手した。このプロジェクトでは
ディープラーニングによる機械学習の性能を最大限に高めると同
時に、その思考プロセスを(医師のような)人間が理解し、信頼
することができる「次世代のAI」開発を目指している。
          ──小林雅一著/『AIが人間を殺す日/
          車、医療、兵器に組み込まれる人工知能』
                   集英社新書/0890
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/066]

≪画像および関連情報≫
 ●バイアスのないアルゴリズムはつくれるか?
  ───────────────────────────
   人工知能(AI)は病院やヘルスケア団体に活用され始め
  ている。CTスキャンの解析から、どの患者が治療中に最も
  衰弱しやすいかを予測することまで、AI技術はあらゆるこ
  とに使われているのだ。
   アルゴリズムを走らせるための情報源は電子カルテだ。こ
  れらのアルゴリズムは、医師が腫瘍の変異具合をもとに最適
  ながん治療を選んだり、過去の患者のデータをもとに治療計
  画を立てたりするのを助けるために設計されている。
   しかし、アルゴリズムやロボットは、ヘルスケア領域にお
  ける倫理を学ぶことができるのだろうか?
   スタンフォード大学の医師グループは、AIを医療に使う
  ためには倫理面での課題があり、ヘルスケア分野のリーダー
  たちはAIを実装する前にそのことについてよく考えなけれ
  ばならないと主張する。
   「機械学習システムのメカニズムを理解しないままでいる
  こと、それをブラックボックスのままにしておくことで、倫
  理的な問題が発生することになるでしょう」。2018年3
  月中旬に発刊された 「New England Journal of Medicine」
  で、そう綴っている。彼らの懸念は、タイムリーなものだっ
  た。同じく3月中旬、こんなヘッドラインが飛び込んできた
  からだ。「医者と同じように前立腺がんの診断を行うスマー
  トソフトウェア」。       https://bit.ly/2AtZ7ve
  ───────────────────────────

IBM/ワトソン.jpg
IBM/ワトソン
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2018年08月08日

●「サイボーグ化が急速進行する人体」(EJ第4823号)

 8月1日から、京都大チームによって、iPS細胞を利用した
パーキンソン病の治療がスタートしています。その治験の内容は
次の通りです。
─────────────────────────────
 パーキンソン病は脳内で神経伝達物質ドーパミンを出す神経細
胞が減り、体のこわばりや手足の震えが起こる難病で、根本的な
治療法はない。治験は京大病院が京大iPS細胞研究所と連携し
て実施。計画では、京大が備蓄する、拒絶反応が起きにくい型の
他人のiPS細胞から作った神経細胞を脳内に移植し、ドーパミ
ンを出す神経細胞を補う。       ──産経フジWEST
                  https://bit.ly/2KePDUg
─────────────────────────────
 iPS細胞による再生医療は、一般的には、自分の身体の一部
から作ったiPS細胞で組織や臓器をつくり、それを移植するも
のですが、今回のパーキンソン病の治療では、他人のiPS細胞
から作った神経細胞を脳内に移植するので、当然のことながら、
拒絶反応が起きます。もし、これが成功すれば、世界初であり、
画期的なことであるといえます。
 このような再生医療の技術が進化すると、体内器官の交換は容
易にできるようになり、基本的には虚弱の人体「バージョン1・
0」は、さまざまなテクノロジーによって守られ、だんだん強靭
化して、「バージョン2・0」の人体になっていきます。これに
ついて、カーツワイル氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 人類はそのテクノロジーによってすでに本来の寿命を伸ばして
きた。この場合、テクノロジーとは、薬品、サプリメント、ほぼ
あらゆる体内器官の交換、その他人体へのさまざまな介入を意味
する。体の部分を交換する技術はすでに整っている。腰、ひざ、
肩、肘、手首、あご、歯、皮膚、動脈、静脈、心臓の弁、腕、腿
足、指、そして、つま先に至るまで。そして、さらに複雑な器官
(たとえば心臓)を取り替えるシステムも導入され始めている。
人間の体や脳が動く仕組みが明らかになるにしたがって、手持ち
のものよりはるかに優れた器官をじきに作りだせるようになるだ
ろう。それらは長持ちし、機能面でも優れており、弱ったり、病
気になったり、老化したりしない。
          ──レイ・カーツワイル著/NHK出版編
   『シンギュラリティは近い/人類が生命を超越するとき』
─────────────────────────────
 人体を構成するパーツは、このように、心臓ですら取り替える
ことが可能になりつつありますが、唯一交換できないのが「脳」
ということになります。
 しかし、脳に関してもさまざまな研究が進んでいるのです。M
ITとハーバードの研究員は、傷ついた網膜ニューロンと交換可
能な神経移植組織を開発しています。人間の脳と神経系のリバー
スエンジニアリングに基づく移植組織であり、パーキンソン病患
者の症状改善に大きな効果を上げることが期待されています。専
門的ですが、脳の視床後腹側核および視床下核と直接作用するこ
とで、パーキンソン病患者のもっとも深刻な症状を改善させよう
としているのです。
 このようにして、「バージョン1・0」の人体は、「バージョ
ン2・0」に移行していくのですが、それは、人間がサイボーグ
化することを意味します。いい替えると、それは人間の本来持っ
ている生物的機能のなかに、後から加えられた非生物的機能が増
えて行くことになります。
 もちろん脳がしっかりしていれば、脳に非生物的機能が加えら
れない限り、あくまで人体における生物的機能の優位は揺るぎま
せんが、脳にまで非生物的機能が入ってくると、人間は、自らの
本質について問い直す必要が出てきます。
 カーツワイル氏は、シンギュラリティが近付くにつれて、人体
は、脳を含めて再設計され、「バージョン3・0」に進化すると
して、次のように述べています。
─────────────────────────────
 人体は──2030年代から2040年代には──さらに根本
的なところから再設計されてバージョン3・0になっているとわ
たしは想像する。個々の下位組織を作り直すというよりも、われ
われ(思考と活動にまたがる生物的および非生物的部分)はバー
ジョン2・0での経験をもとにして人体そのものを刷新する機会
を得るだろう。バージョン1・0から2・0への移行のときと同
様に、3・0への移行もゆっくりと進み、その過程では多くのア
イデアが競合することになる。
 バージョン3・0の特性としてわたしが想像するのは、人体を
変化させる能力だ。VR環境ではいともたやすく実現できること
だが、われわれは現実世界でもそれを可能にする方法を身につけ
るだろう。具体的にはMNT(マイクロ・ナノテクノロジー)ベ
ースの構造を体内に組み入れることによって、身体的特徴を好き
なようにすぐ変えられるようになる。
           ──レイ・カーツワイル著の前掲書より
─────────────────────────────
 「バージョン3・0」の人体──これは、人間の機械化がさら
に進化した状態であるといえますが、3・0になると、「ヒュー
マン・オーグメンテーション」の動きが出てきます。
─────────────────────────────
      ◎ヒューマン・オーグメンテーション
              Human Augmentation
─────────────────────────────
 これは、人間と機械が一体化して、人間の能力を拡張させるテ
クノロジーのことで「人間拡張」といわれています。これは日本
においては、東京大学の暦本純一教授が提唱しているものです。
人間の機械化はどこまで進化するのでしょうか。
          ──[次世代テクノロジー論U/067]

≪画像および関連情報≫
 ●ヒトの能力はどこまで強化・拡張できるのか
  ───────────────────────────
   コンピュータや人工知能(AI)の発達によって、特定の仕
  事や処理では人間をはるかに超える知的能力を実現する機械
  が登場するようになった。今さら数値計算でコンピュータを
  圧倒できると思う人はいないだろうし、将棋や囲碁でもAI
  には勝てなくなってきている。そのため、こうした機械は、
  人間の知的能力を強化する道具として生活や仕事の中で欠か
  せない存在になっていることは確かだ。
   コンピュータやAIの発達に伴って、いずれは人間の仕事
  の全てが奪われ、ひいては人間が支配される側に回るという
  ディストピアの現出を心配する声は根強い。しかし、これは
  杞憂かもしれない。確かにコンピュータやAIは、処理の対
  象範囲やルールが定まった状況下では驚異的な能力を発揮す
  る。しかし、何が起きるか分からない状況下では、理性や道
  徳性、倫理性など人間固有の価値観に基づいて、一定レベル
  以上の答えを出す人間にはかなわない。人間とコンピュータ
  やAIの間には、知的能力の質に明らかな違いがあり、人間
  にしかできない仕事は必ず残るように思える。
   人間と機械を主従関係や対立構図でとらえるのではなく、
  両者の知的能力の特長を融合させて、より高度な仕事を、よ
  り効率的にこなす方法を模索する取り組みが活発に進められ
  るようになった。大半の知的作業において、最高レベルのパ
  フォーマンスを発揮したいと思うのなら、人間、もしくはコ
  ンピュータのどちらかに全面委託するのではなく、両者が協
  調して作業を進めた方がよほど効果的だ。
                  https://bit.ly/2vtQ87o
  ───────────────────────────

歴本純一東京大学教授.jpg
歴本純一東京大学教授
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2018年08月09日

●「『IoT』から『IoA』に拡張」(EJ第4824号)

 「人間の機械化」の話をさらに一歩先へ進めることにします。
8月6日付のEJ第4821号でご紹介したレイ・カーツワイル
氏の言葉を再現します。
─────────────────────────────
 誕生した当初のコンピュータは、空調のきいた部屋で白衣の専
門家が管理する巨大な機械で、一般の人にとってはずいぶん遠い
存在だった。それが机上に置けるようになったかと思うと、じき
に腕で抱えて運べるようになり、今ではポケットに入っている。
遠からず、日常的に体や脳の内側に入ってくるだろう。2030
年代までには、人間は生物よりも非生物に近いものになる。
          ──レイ・カーツワイル著/NHK出版編
   『シンギュラリティは近い/人類が生命を超越するとき』
─────────────────────────────
 これは、コンピュータが特別な部屋に設置された巨大な特殊な
機械から、机の上におけるデスクトップPCになり、さらに持ち
運べるノートPCに小型軽量化し、最近ではポケットに入るスマ
ホになっている経緯を示しています。
 実はこの小型化の流れは、テクノロジーの指数関数的進化に伴
い、急速に進み、やがてマイクロマシンになって、人間の体や脳
内にまで入ってくる──このようにカーツワイル氏はいっている
のです。これは、人間の脳とコンピュータが接続される可能性に
言及しています。これが実現すると、脳はインターネット上の膨
大な知識ベースを知識として保有することになります。
 これによって、人間にはできないが、コンピュータならできる
ことが人間にも容易にできるようになり、そこにスーパー人間が
誕生します。カーツワイル氏は、このスーパー人間は、脳とコン
ピュータという非生物が合体することになり、それは果して「生
物」といえるのかという根本的問題を問いかけているのです。
 もちろん、そんなことが実現するはずがないという人はたくさ
んいます。しかし、現在、この「人間拡張/ヒューマン・オーグ
メンテーション」が大真面目に研究され、実験されるようになっ
ています。その中心にいる学者の一人が、東京大学大学院教授の
暦本純一氏です。暦本教授は、次のことを提唱しています。
─────────────────────────────
          IoT → IoA
─────────────────────────────
 「IoA」とは、何でしょうか。
 2017年11月3日のことです。東京大学の暦本教授は、米
国サンフランシスコで開催された「ザ・ニューコンテキスト・カ
ンファレンス/2017」で次のテーマで講演を行っています。
─────────────────────────────
  「AI時代の人間拡張」/東京大学大学院暦本純一教授
    THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2017 SAN FRANCISCO
─────────────────────────────
 いわゆる機械による人間拡張──ここでいう「拡張」の意味を
今まではできなかったことができるようになるという意味の人間
の能力拡張を意味するとすれば、PCやスマホを持つことも能力
の拡張ということができます。
 しかし、ここで暦本教授が提唱していることは、そんなレベル
の能力の拡張ではなく、カーツワイル氏のいう「バージョン2・
0」の人体レベルの能力拡張なのです。暦本教授は講演で、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 オーグメンテーションは個人が対象とは限らない。自分以外の
他者とつなげることができるし、「他者」とはロボットであった
り、人間であったりする。つまり、さまざまなタイプの組み合わ
せによるコラボレーションができるのだ。(中略)こうしたこと
はIoA(Internet of Abilities) と呼ばれる。IoTの次に
やって来るフェーズである。IoTはモノのネットワークである
のに対し、IoAは「アビリティ(能力)のインターネット」で
ある。IoAによって、「能力」を結びつけたり、交換したりで
きるようになる。
 テクノロジーは、人と人とをつなげることもできる。人間の能
力を拡げる、非常に重要な方法である。「人間対人間ジャック・
イン」である。ある人の知覚を丸ごと他の人に移し替えることで
あり、新しいタイプのコミュニケーションや教育となりうる、非
常に大きな機会である。現代の技術ではまだできないが、視覚に
ついては可能である。例えば、スカイダイビングのような特別な
瞬間を交換するなどの場合である。  https://bit.ly/2Mi3fQp
─────────────────────────────
 暦本教授は「ジャック・イン・ドローン」というものを説明し
ています。ウェアラブル端末を装着している人に限りますが、人
についてドローンは飛行します。人間が動けば、ドローンも動き
ます。ドローンにはカメラが付いており、人間にはドローンから
の映像が見えます。これは、ドローンがなければ見えない映像で
あり、能力の拡張といえるというわけです。
 もし、ドローンが、人間の目が死角になる位置を自動的に判断
して移動するとすれば、自分の見えない場所の映像がつねに見え
ていることになり、視覚の拡張、すなわち、人間の能力の拡張が
行われることになります。これは、人間とドローンの基本的な接
続の形態であると暦本教授はいいます。
 人間がドローンに没入することもできます。ドローンと一体化
するといってもよいと思います。この場合、ドローンのカメラが
人間の目になるので、本来人間では見ることができない景色を見
ることができます。どらえもんの「竹コプター」のような感じを
味わうことができるわけです。その状況から脱却するには、「ジ
ャック・アウト・ドローン」をすればよいのです。
 暦本教授の「人間拡張」テクノロジーについては、もっと驚く
べきものがあります。明日のEJでも、暦本教授の「人間拡張」
について考えます。 ──[次世代テクノロジー論U/068]

≪画像および関連情報≫
 ●AIは人間の能力を拡張するもの/ダニエル・ラス所長
  ───────────────────────────
   人工知能に仕事が奪われることを恐れてばかりいると、人
  工知能との協調に秘められた大きなチャンスを見逃すことに
  なるかもしれない。私たちはロボットや人工知能(AI)が
  仕事を奪うと心配するのではなく、人間と機械が協力する新
  たな道を探るべきだとマサチューセッツ工科大学(MIT)
  コンピューター科学・人工知能研究室(CSAIL)のダニ
  エラ・ラス所長はいう。ラス所長は、「人間と機械は争うの
  ではなく、協力すべきだと思います」とMITテクノロジー
  レビュー主催の年次イベント「EmTech MIT 2017」 の基
  調講演で語った。
   これからの時代、テクノロジーが雇用にどう影響するかは
  経済学者、政策立案者、科学技術者にとって、大きな問題と
  なっている。ロボット工学とAIの研究で世界の先陣を切る
  CSAILは、来たる変化の波に大きな関心を寄せている。
  専門家の間では、自動化とAIがどの程度仕事に影響するか
  について、意見が異なる部分もある。また、新しいビジネス
  が作り出されることで、現在の仕事がどう埋め合わされるか
  についても意見が違う。2017年11月上旬、ラス所長と
  MITの研究者は「人工知能と仕事の未来」と題したイベン
  トを企画した。講演者の中には、これから直面するであろう
  大きな変化に差し迫った警告をする者もいた。
                  https://bit.ly/2OboBiY
  ───────────────────────────

暦本純一東大教授.jpg
暦本純一東大教授
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2018年08月10日

●「体外離脱アイデア/人間ウーバー」(EJ第4825号)

 暦本純一東京大学教授は、サンフランシスコでの講演で、次の
ように話しています。
─────────────────────────────
 テクノロジーは、人と人とをつなげることもできる。人間の能
力を拡げる、非常に重要な方法である。「人間対人間ジャックイ
ン」(Human-Human JackIn)である。ある人の知覚を丸ごと他の
人に移し替えることであり、新しいタイプのコミュニケーション
や教育となりうる、非常に大きな機会である。
              ──暦本純一東京大学大学院教授
                  https://bit.ly/2Mi3fQp
─────────────────────────────
 この発言で思い出されるのは、映画『マトリックス』における
カンフーの技術や、ヘリコプターの操縦技術を脳にダウンロード
して修得するシーンです。「そんなことできるはずがない」と思
いながらも、「できたらいいな」と思ったものです。しかし、テ
クノロジーの発達によって、それに近いことはできるようになっ
ています。少なくとも「不可能ではない」といえます。
 「幽体離脱」という言葉があります。「体外離脱」ともいいま
す。暦本教授は、子どものとき、川で溺れかけた経験があるそう
です。そのとき、溺れようとしている自分の姿を上の方から見て
いる自分を一瞬ですが、自覚したといいます。自分自身を肉体か
ら離れた場所から見ることは、人が亡くなる瞬間に起きるといわ
れています。
 暦本教授のいう「人間対人間ジャックイン」とは、自分の存在
を離れた場所に移すことを意味しています。もちろん、本当の意
味での「体外離脱」は無理ですが、具体的なアイデアをいくつか
講演で話しています。
 既出の大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩博士は、自分と
そっくりのロボット(アンドロイド)を作っています。石黒博士
は、講演を依頼され、出張することが困難なときは、ロボットを
派遣し、自分は離れた場所から、ロボットを通じて話をするので
す。これも一種の体外離脱といえます。
 TBSの日曜日の番組『サンデーモーニング』で、スポーツ解
説者の張本勲氏がバーチャル映像で出演するときがあります。本
人は別の場所にいて、番組にはバーチャル映像で出演します。も
ちろん問いかけに対しても対応できるので、番組に出演している
のとほとんど変わりません。これも体外離脱です。
 しかし、こういうやり方では、講演や会議やテレビ番組などに
出演する場合はいいですが、立食スタイルのパーティーなどに参
加することは困難です。会ってゆっくり話したい人が何人も出席
するパーティーに、離れた場所から出席し、パーティー会場を歩
きまわりながら、いろいろな人と話をする──これを可能にする
アイデアを暦本教授は提案しています。
 添付ファイルの張本氏の右のロボットをご覧ください。自分の
顔の映っているタブレット付きのロボットです。このロボットが
パーティー会場を歩きまわるのです。
 かなり、異様なスタイルですが、暦本教授によると、タブレッ
トに顔が映っていると、人はその顔に向って話しかけてくるとい
います。「いやぁ、○○さん、お久しぶりですね」と話しかけて
くる人は結構多いそうです。もちろん離れた場所にいる本人は、
相手の顔は、ディスプレイに映るので、返事を返するとごく普通
の会話が成立するといいます。ロボットは、離れた場所から遠隔
操作できるので、会場を移動して話しかけることが可能です。
 しかし、このスタイルのロボットにも問題があります。階段を
上下できなかったり、人にぶつかって倒れてしまうなどのトラブ
ルが起きます。そこで暦本教授が考えたのが「人間ウ―バー」と
いう奇抜なアイデアです。これについて、暦本教授は、次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 「人間-人間ジャックイン」(Human-Human JackIn) は、自分
の存在を離れた場所に移すことである。人の顔が画面に映し出さ
れるフェイス・ロボットを遠隔から操作するという方法もあるが
これはロボット自身が動く上で困難があった。階段を登れないと
か、ドアを自分で開けられないといったことだ。すると、学生の
一人が「クレイジー」なことを思いついた。「人間ウーバー」を
やろうというのだ。自分の顔を映し出すタブレットをマスクにし
て、代理の者の顔に装着するのだ。
 驚いたことに、装着しているのは別人だとわかっているはずな
のに、多くの人が画面の人物の存在を信じたのだ。人間の存在感
や相手に対する信頼感は、その人の顔の表情に依存していること
の現れであろう。このシステムは非常にシンプルだが、非常に効
果的に人間の能力をどこかへ移す便利な方法なのだ。このマスク
は3Dプリンターで作成すれば、よりリアルな感じになる。
                  https://bit.ly/2Mi3fQp
─────────────────────────────
 「人間ウ―バー」とは面白いアイデアです。他人の顔が映って
いるヘッドマスクをかぶって一定時間会場を歩きまわるアルバイ
トです。人間ですから、ロボットと違って、階段も上下できるし
自由に会場を歩き回ることができます。話す方もヘッドマスクの
なかに別の人がいることはわかっていても、違和感なくディスプ
レイの顔に話しかけるそうです。
 このように暦本教授の話は、「人間の機械化」について、示唆
に富むものです。暦本教授は、ほぼ同じ話を「東大テレビ」でも
しており、動画も見ることができます。時間は約45分です。
─────────────────────────────
 仮想現実と身体「Human Augmentation 人間拡張とその未来」
                ──暦本純一/情報学環教授
                  https://bit.ly/2vpgvfy
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/069]

≪画像および関連情報≫
 ●身体拡張という名のエンタテインメント/稲見昌彦氏
  ───────────────────────────
   私はいま、身体に関わるテクノロジーが新しい局面を迎え
  ていると感じています。最先端のテクノロジーが、人間の身
  体をメディア化しつつあるのです。従来の身体に関わるテク
  ノロジーは、主に身体の「補綴(ほてつ)」に用いられるこ
  とが多かった。つまり義手や義足、車椅子にしても、移動の
  不可能や困難など、障碍者の方々の身体におけるマイナス要
  素を補い、いわゆる健常者に近づけるためのものとして研究
  ・開発されてきました。マイナス要素をゼロにしようとする
  ときのアプローチは、例えば、義手や義足がわかりやすいの
  ですが、健常者という「ゼロの水準」へいかに近づけるかと
  いうものになりますし、最適なアプローチの数は限られてい
  ます。しかし最先端のテクノロジーは身体のマイナス要素を
  補綴しながら、健常者をも超えるプラス要素、ときに超人的
  ですらある能力に拡張することを可能にしているのです。マ
  イナス要素からプラス要素を生み出そうとするときのアプロ
  ーチは無限にあります。人によって拡張したい身体部位や、
  どのように拡張するかが異なるためです。例えば右足を失っ
  た人がより速く走ることのできる右足を獲得することや、手
  を失った人が、サイボーグのような見た目にも斬新な義手を
  獲得することはその一例です。それは、エンタテインメント
  作品をつくるときと同じアプローチといえるでしょう。
                  https://bit.ly/2niko1w
  ───────────────────────────

バーチャル出演と移動ロボット.jpg
バーチャル出演と移動ロボット
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2018年08月13日

●「シンギュラリティを巡る異論反論」(EJ第4826号)

 レイ・カーツワイル氏の「シンギュラリティ」の考え方につい
て、今年の3月に亡くなられたスティーヴン・ホーキング博士は
2014年2月に、BBCのインタビューに対して、次のように
述べています。
─────────────────────────────
 われわれがすでに手にしている原始的な人工知能は、極めて有
用であることが明らかになっている。だが、完全な人工知能の開
発は人類の終わりをもたらす可能性がある。
 ゆっくりとした生物学的な進化により制限されている人類は、
(人工知能と)競争することはできず、(人工知能に)取って代
わられるだろう。     ──スティーヴン・ホーキング博士
                  https://bit.ly/2OoMWlu
─────────────────────────────
 ホーキング博士は、AIを「原始的AI」と「完全なAI」に
分けており、現在の「原始的AI」は、やがて「完全なAI」に
進化し、人類を脅かす存在になると述べています。したがって、
これをもって、ホーキング博士が「シンギュラリティ」の主張を
受け入れているとはいえないものの、やがてAIがパワーアップ
して、人類にとって恐るべき存在になることは認めています。
 ここにきわめて興味ある動画あります。NHKEテレが、20
17年12月29日に放送したもので、EJがここまで書いてき
た内容に関係があります。時間は45分です。必視聴です。
─────────────────────────────
 超AI入門「人間ってナンだ?」特別編/「今そこにある未来
 /ヒト×AI=∞」     /解説/松尾豊東京大学准教授
        未来学者   ・・・ レイ・カーツワイル
        理論物理学者 ・・・ フリーマン・ダイソン
        言語哲学者  ・・・ ノーム・チョムスキー
        インタビュー ・・・ 吉成真由美
                  https://bit.ly/2M4wOc4
─────────────────────────────
 以下、3人の発言要旨をメモしておきます。そのうえで、動画
を見ていただくと、3人の主張がよくわかると思います。
 第1のメモは未来学者のレイ・カーツワイル氏の主張です。
─────────────────────────────
・計算によれば、2045年までにわれわれの知能は10億倍に
 なるはずだ。まさしくシンギュラー(飛躍的)な変化である。
・情報テクノロジーの処理速度の変化は予測可能である。その変
 化は「指数関数的」である。その結果、2045年には「シン
 ギュラリティ」に到達する。
・多くの学者は、テクノロジーの変化は「直線的」に生ずると考
 えている。1、2、3、4というように。しかし、指数関数的
 に変化は加速する。1、2、4、8というように。
・一見、たいして変わらないように見えるが、30段階では、直
 線的変化は30、指数関数的は10億。40段階なら1兆に達
 する。ゲノム解析PTでは、7年かけて1%を達成。直線的思
 考考では1%解析するのに7年かかったのなら、全部やるには
 700年かかる。しかし、指数関数的には終ったも同然。毎年
 2倍ずつ加速するので、7回で100%になる。実際に7年で
 終了している。
・コンピュータの大きさは、大型コンピュータの時代から10万
 分の1になっている。このままのスピードで行くと、25年が
 経過すると、コンピュータは10億倍速度が速くなり、大きさ
 はさらに10万分の1小さくなり、赤血球ぐらいになる。
・晩年に発症する病気には免疫系は役に立たない。進化は長寿を
 選択してこなかった。長寿である必要はなかったからだ。AI
 の重要な応用先は免疫の強化である。赤血球サイズの医療用ナ
 ノロボットが開発され、人間は病気と老化から解放される。
─────────────────────────────
 第2のメモは言語哲学者ノーム・チョムスキー氏の主張です。
─────────────────────────────
・カーツワイル氏の主張は、完全なるファンタジーである。信じ
 られる根拠は何もない。
・確かにロボットは発展している。それはいいことだ。低スキル
 の仕事をまかせられるからだ。そもそもなぜ、人間が退屈で、
 危険な仕事をしなければならないのか。人間はもっとクリエイ
 ティブで満足すべき仕事に就くべきだ。
・生産性の向上は、低スキルの仕事の減少と高スキルの仕事の増
 加によって達成される。
・AIが人間の知識を超えるという考え方は、今のところ夢に過
 ぎない。現在実現しているのは、膨大なデータを高速な計算に
 頼ったもので、それらは、人間がデザインし、作成したプログ
 ラムで動いているからである。
─────────────────────────────
 第3のメモは言語哲学者フリーマン・ダイソン氏の主張です。
─────────────────────────────
・サイエンスとは、本質的に予測できないものである。サイエン
 スにとって重要なのは発見であるが、発見はサプライズであり
 発見を予測することは、サイエンスのやり方ではない。
・インターネットは理解を超えた膨大な情報の集積である。しか
 し、インターネットの構造と目的をわれわれは見通すことはで
 きない。最終的には、全体が一つの生き物のように振る舞うス
 ーパーオーガニズム(超生命体)になることが考えられる。
・インターネットが自らの目的を見つける可能性は大きい。1つ
 のシステムとして、世界を支配するということもある。しかし
 それがいつ起きるかはわからない。
・既に人間ではなく、ソフトウエアがコントロールしている分野
 はたくさんあることを認識すべきである。
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/070]

≪画像および関連情報≫
 ●ガナシア氏が語る「シンギュラリティ批判」
  ───────────────────────────
   名門パリ第6大学でAI(人工知能)研究チームを率いる
  哲学者、ジャン=ガブリエル・ガナシア氏が、このほど『そ
  ろそろ、人工知能の真実を話そう』(早川書房)の発刊を期
  に来日した。「AIが人類を超える」という、シンギュラリ
  ティについての考え方を批判するガナシア氏。フランスの人
  文科学の立場から、AIがどのように考察されているかにつ
  いて語ってもらった。
  ──この本では、レイ・カーツワイルなどが主張する「AI
  が人間の知能を追い越す」というシンギュラリティ(技術的
  特異点)について、その背景にある世界観を批判されていま
  す。レイ・カーツワイルのシンギュラリティという考え方は
  それまでにあった様々な理論を取り込んだだけで、独自の根
  拠があるわけではありません。またシンギュラリティの根拠
  とされるムーアの法則やプロセッサーの指数関数的な成長と
  いう仮説も、帰納的推論にすぎないものであり、科学的根拠
  とはいえないのです。言ってみればシンギュラリティは、科
  学というよりSF的な世界観です。1980年代にSF作家
  のヴァーナー・ヴィンジがこの言葉を普及させました。
                  https://bit.ly/2noHXWt
  ───────────────────────────

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3人の知の巨人
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2018年08月14日

●「インターネットブレインとは何か」(EJ第4827号)

 未来学者のレイ・カーツワイル氏、理論物理学者のフリーマン
・ダイソン氏、言語哲学者のノーム・チョムスキー氏の3人の対
話について、何を感じられたでしょうか。
 カーツワイル氏は、2030年には、仮想現実が脳の神経系の
なかで行われるため、現実と寸分違わない世界が脳内に実現する
ことが可能になるといいます。まるで映画『マトリックス』の世
界そのものです。
 約200万年前に、脳の拡大が起こり、それによって言語が生
まれ、芸術や音楽が誕生しています。これは、人間以外の他の動
物ではあり得ないことですが、現在、再びその脳の拡大が起きよ
うとしているとカーツワイル氏はいうのです。
 これに対して、ノーム・チョムスキー氏は、「何の根拠もない
ファンタジーに過ぎない」と切り捨て、フリーマン・ダイソン氏
も「そもそも科学は本質的に予想できないもの」と疑問を呈して
います。しかし、ダイソン氏はインターネットについては、最終
的には、全体がひとつの生き物のように振る舞うスーパーオーガ
ニズム(超生命体)になるかもしれないといっています。
 インターネットに関しては、カーツワイル氏も、脳の最上層を
インターネットに接続させることによって、人工的な脳として機
能させることができるといいます。これによって思考の拡大は無
限になり、2030年には、生物としての脳と人工的な脳が融合
すると予言しています。
 人間の脳をインターネットに接続する──カーツワイル氏の本
を読むと、これは十分可能なことのように思えてきます。「Io
T」は「モノ・インターネット」ですが、人間の脳が、その「モ
ノ」のひとつになり、「IoB」、すなわち「インタネット・オ
ブ・ブレイン」が実現するという考え方です。
 実は、この技術は既に一部実現しています。脳波をライブスト
リーミング可能な信号に転換し、インターネット上のポータルサ
イトを通じてアクセス可能にするというものです。
 この技術を開発したのは、南アフリカのウィットウォーターズ
ランド大学の研究チームで、この技術を利用するには「モバイル
脳波計(EEG)」を搭載したヘッドセットが必要になります。
このヘッドセットは脳波を信号として認識し、その信号は特化さ
れたコードの助けを借りて、小型コンピュータに送られ、解読さ
れるのです。
 この解読された信号が提供する情報は、ウェブサイト上で確認
できます。これにより、人間の脳内で何が起きているかを知るこ
とができます。しかし、情報の入力は一方向のみですが、双方向
でのやり取りもやがて可能になると思われます。
 人間の脳とインターネットの接続について、カーツワイル氏は
シリコンバレーのシンギュラリティ大学での講演で、次のように
述べています。
─────────────────────────────
 2030年代に人間の脳は、インターネットに接続可能になり
メールや写真を直接、脳に送信したり、思考や記憶のバックアッ
プを行ったりできるようになる。これは脳内毛細血管を泳ぎまわ
るナノボット(DNA鎖からつくられる極小ロボット)によって
可能になる。非生物的な思考へと脳を拡張することは、私たちの
祖先が道具を使用することを学習したのと同様に、人類の進化の
次なるステップである。また、この拡張によって論理的知性だけ
でなく、感情的知性も高まる。人間は、脳モジュールの階層レベ
ルを増やし、さらに深いレベルの感情表現を生み出すだろう。
                  ──レイ・カーツワイル
─────────────────────────────
 ところで、フリーマン・ダイソン氏のいう「全体がひとつの生
き物のように振る舞うスーパーオーガニズム(超生命体)」とは
何を意味しているのでしょうか。
 元電通のCMプランナーで、編集者の高橋幸治氏は、「生命と
してのインターネット/血肉化する情報世界」というレポートで
これについて次のように述べています。
─────────────────────────────
 考えてみれば、私たちの身体自体が脳を中央制御室とした精緻
を極めた情報処理システムとして機能しているわけだから、情報
の相互関係や情報の相互伝達を生命的なイメージに置き換えるの
はごく当たり前のことなのかもしれない。
 そして地球を皮膜のように覆う情報の網の目=インターネット
は人間の脳神経系としてイメージされる。そのイメージが来るべ
き第二四半世紀には、単なるメタファーの域を超えて、現実に私
たちの脳神経系と接続されていくだろう。(一部略)
 WWW=World Wide Web の「Web」は周知の通り「織物」であ
り「網」であると同時に「蜘蛛の巣」である。WWWはその名称
の中にすでに生命的なイメージを内包しており、宮沢賢治も「イ
ンドラの網」を「その繊維は蜘蛛のより細く、その組織は菌糸よ
り緻密」と描写している。蜘蛛や菌糸という生命的イメージ。私
たちはもうインターネットを人間の外部に施設された単なる情報
インフラとして客観的に対象化することなどできない。
                  https://bit.ly/2OswbWn
─────────────────────────────
 今やほとんどの人がスマホを持っています。もし、スマホをな
くすと、非常に困惑します。スマホ自体は代替できますが、イン
ターネットでのつながりやアドレス帳などの個人情報、メール、
写真など、まさに自分自身をいうものを失ってしまうのに等しい
からです。そのようなものが、かつてあったでしょうか。
 既にスマホには、指紋認証、音声認証など、個人と切っても切
り離せないほど、自分の一部化しています。シンギュラリティに
なると、スマホが赤血球のサイズになって、体内に入ってくると
カーツワイル氏はいっています。そうなると、人間はインターネ
ットと文字通り一体化することになります。
          ──[次世代テクノロジー論U/071]

≪画像および関連情報≫
 ●脳と脳をインターネットで接続しテレパシーをする実験
  ───────────────────────────
   米ハーバード大学の専門からを中心にスペインやフランス
  の専門家らも参加している研究グループが、インドとフラン
  スにいる者同士が、心で思ったことを言葉や文字、あるいは
  ジェスチャーなどを使わずに直接伝える実験に成功した。
   この実験で、どんなに離れた相手とでも、最新技術を利用
  すれば脳から脳への情報伝達が可能であることが示されたこ
  とになる。これは科学がテレパシーを実現しようとしている
  ということなのだろうか。
   この実験の論文を共同執筆した一人である理論物理学者の
  ジュリオ・ルッフィーニ氏は、自分たちは電磁波で脳と情報
  をやりとりする技術を使っており、決して魔法ではなく、テ
  レパシーの技術的な実現なのだ、と語っている。
   インド南部の都市ティルヴァナンタプラムの被験者がスペ
  イン語の「こんにちは(Hola)」やイタリア語の「こんにち
  わ」と「さよなら(いずれもCiao)」を思い浮かべると、そ
  の際の脳波が測定されて符号化されたデータに変換された。
  そのデータがインターネット経由でフランス北東部のストラ
  スブールに送信されると、符号化されたデータが復元され、
  被験者の頭に取り付けられた電極から微弱な電流として刺激
  が与えられ、脳に直接送信されたという。すると、受信した
  被験者は、目に微弱な光を感じた。つまり、周辺視野で点滅
  する光を見たということらしい。挨拶の声が聞こえたという
  被験者もいたという。      https://bit.ly/2KONrD0
  ───────────────────────────

脳と脳がインターネットに接続される.jpg
脳と脳がインターネットに接続される
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2018年08月15日

●「意識はどのようにして発生するか」(EJ第4828号)

 「人間には『心』はあるか」──AIとかロボットのことにつ
いて書いてある本にはよく出ているテーマです。この社会で生き
ていると、ことあるごとに「心」を口にする人に会うものです。
悪いことをすると「心を入れ替えろ」といわれるし、行動や言葉
に「心がこもっていない」といわれたりします。
 AIロボットが話題になっているせいで、「人間とは何か」と
か「人間とロボットはどう違うか」ということが議論になったり
しています。人間とは、「意識がある」、「考える」、「心があ
る」といわれたりしますが、そういう曖昧なものは定義にならな
いという人もいます。
 大阪大学大学院基礎工学特別教授の石黒浩氏は、「心」につい
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 人に心はなく、人は互いに心を持っていると信じているだけ
 である。         ──石黒浩大阪大学大学院教授
─────────────────────────────
 ジュリオ・トノーニという米国の神経科医で神経科学者がいま
す。トノーニ氏の研究対象は意識と睡眠です。トノーニ氏に次の
著書があります。「意識」が「心」とイコールかどうかは分かり
ませんが、参考になる本です。
─────────────────────────────
  ジュリオ・トノーニ/マルチェッロ・マッスイミーニ著
        『意識はいつ生まれるのか』/亜紀書房刊
─────────────────────────────
 脳科学にとって最大のナゾは「意識」だったといえます。万人
が誰でも持っているのに、その正体がわからない。そのナゾをト
ノーニ氏は解き明かしているのです。脳は意識を生み出すが、コ
ンピューターは意識を生み出せない。では両者の違いはどこにあ
るのかについても言及しています。この理論は「φ理論」といわ
れています。
 多くの書評がネット上に出ていますが、そのなかの一つが意識
とは何なのかについて、わかりやすく説明しています。
─────────────────────────────
 この理論によれば、「意識」は種々の情報(知覚、記憶、感情
行動等)を司る大脳皮質のそれぞれの部位の神経細胞が一定以上
の数になり、加えてそれらの間に単なる直接的・直線的な形を超
えた複雑な電気的・化学的接続数がある一定レベルを超えれば発
生するもの、とある。
 著者のトノーニ教授は意識の量をこの二つのパラメータの関数
として表す数式も導いており、その結果を深い睡眠時(=意識が
ない状態)の被験者や植物状態とみなされている被験者の脳に外
部から電磁的刺激を与え、それが脳の部位をどのように活性化さ
せるかをモニターすることによって検証を重ねてきている。
                  https://bit.ly/2B3c1k7
─────────────────────────────
 これによると、意識は神経細胞が一定以上の数に発展し、それ
らの接続が複雑に絡み合うようになったある時点で、突然に発生
するものということになります。したがって、ロボットにおいて
も人間の脳と同じような、そういう神経細胞──ディープラーニ
ングがさらに進化し、高度な神経細胞ができると、意識が発生す
る可能性があるということになります。
 これに関連するある思考実験があります。米国の哲学者である
ヒラリー・バトナム氏の著書に書かれている思考実験「水槽の中
の脳」です。図を添付ファイルにしているので、そちらも参照し
てください。1981年時点の思考実験の理論です。
─────────────────────────────
 科学者が、ある人から脳を取り出し、特殊な培養液で満たされ
た水槽に入れる。そして、その脳の神経細胞をコンピュータにつ
なぎ、電気刺激によって脳波を操作する。そうすることで、脳内
で通常の人と同じような意識が生じ、現実と変わらない仮想現実
が生みだされる。このように、私たちが存在すると思っている世
界も、コンピュータによる「シミュレーション」かもしれない。
                  https://bit.ly/2M95s4s
─────────────────────────────
 この状態で、脳内では意識が生じ、現実世界と変わらないVR
(仮想現実)の世界が生み出されるというのです。何者かが、人
間を乗っ取って、培養液に浸し、エネルギー源として利用する。
当の人間は、現実と全く変わらない仮想現実の世界で過ごしてい
る──まさに映画『マトリックス』の世界そのものです。これを
「シミュレーション仮説」といいます。
 実は、現実世界が何者かにコントロールされているのではない
かと考えていた人は昔からいたのです。その代表的な人物は、フ
ランスの哲学者ルネ・デカルトです。デカルトといえば、次の有
名な言葉があります。
─────────────────────────────
         われ思う。故にわれ在り
           ──ルネ・デカルト
─────────────────────────────
 実はこの言葉は「シミュレーション仮説」を意味しているとい
われています。デカルトはこういっているのです。
─────────────────────────────
 もし全知全能の悪魔が私を欺いているとしたら、本当は「1+
1=5」であるのに、「1+1」と私が思考するたびに、悪魔に
欺かれて「2」を導き出してしまっている可能性がある。つまり
われわれが現実だと思っているものは、全て悪魔に欺かれた結果
に過ぎず、“本当の現実”は全く別物であるかもしれない。
                    ──ルネ・デカルト
                  https://bit.ly/2M95s4s
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/072]

≪画像および関連情報≫
 ●人間の意識は異次元に存在している
  ───────────────────────────
   AI(人工知能)の驚異的な進歩の前に圧倒させられっぱ
  なしの人類だが、このままのペースで進化し続けるとなると
  いつかAIが“意識”を持つ日もやってくるのだろうか。し
  かし、最新の研究ではAIが、人間と同じような“意識”を
  持つことはないことを示唆している。なぜなら、“意識”や
  “心”は肉体に属するものではなく、別次元の存在であるか
  らだというのだが・・・。
   我々の五感はそれぞれの感覚器官を通じて物事を認識して
  いるが、それを最終的には渾然一体となった総合的な体験と
  して味わうことになる。例えばインドカレーを手づかみで食
  べている時には目も舌も鼻も指先もフルに使って料理を味わ
  い、場合によっては店内に流れるエスニックな楽曲に耳を傾
  けながら“食べる”という体験を得る。
   しかし、機械がこうした統合的な体験を味わおうとするの
  はなかなか大変なことであることがわかる。カメラで視覚情
  報を得て、マイクで音を拾い、各種センサーで認識した匂い
  や味や触感といったバラバラの情報を最後に何らかの処理で
  すべて組み合わせなければならないからだ。そしてそれぞれ
  の末端の回路は異なっているだけに、すべての知覚をぴった
  りと同期させるのもなかなか難しそうだ。
                  https://bit.ly/2P3gZQD
  ───────────────────────────

水槽の中の脳.jpg
水槽の中の脳
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2018年08月16日

●「AI搭載兵器が目下急増している」(EJ第4829号)

 8月4日のことです。ベネズエラのマドゥロ大統領を狙ったと
みられるドローンによる爆発事件が起きています。
─────────────────────────────
【サンパウロ=外山尚之】南米ベネズエラの首都カラカスで4日
マドゥロ大統領の演説中に爆発音があった。ベネズエラ政府はド
ローン(小型無人機)による攻撃を受けたとし、少なくとも7人
の兵士が負傷したと発表した。マドゥロ氏にけがはなかったとい
う。マドゥロ氏は5月に主要野党不在の大統領選で再選を果たし
事実上の独裁体制を敷いたばかりだった。
          ──2018年8月5日付、日本経済新聞
               https://s.nikkei.com/2w3N7eo
─────────────────────────────
 独裁者といわれるマドゥロ大統領のことですから、地上は厳重
な警備態勢を敷いていたと思われます。マドゥロ大統領の演説の
状況は、ちょうど、北朝鮮で、金正恩委員長が野外で演説するさ
いの大勢の人でびっしり埋まっている道路の状況と同じであり、
地上からのアプローチは不可能です。
 しかし、空からドローンで侵入されると防御不能です。今回の
場合は、爆弾を積んだドローンが空中で爆発しただけですが、既
に米軍では、機関銃や小型空対地ミサイルを搭載した軍用のマル
チコプター・ドローンが開発されているのです。もし、AI操縦
で、そういうドローンが複数機投入されていたら、大統領目がけ
て、ミサイルが飛んでくることになります。
 「AI操縦」とは何でしょうか。これについて既出の小林雅一
氏は、2016年に米国のDARPAにおいて、既にそういう実
験が行われているとし、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ドローンが離陸するには兵士が発進指示を出さねばならないが
一旦飛び立ってしまえば、あらかじめ指定された監視対象(テロ
リストや彼らが乗った車など)を見つける作業は、無人機自体の
判断で行うことができる。ドローンは自らに搭載されたビデオカ
メラで地上の様子を撮影し、そのライブ映像を、地上にいる兵士
(に扮した技術者)に送信する。ドローンには人物やその顔面を
認識する特殊なソフトウエアが搭載されている。あらかじめテロ
リストなど危険人物を登録したデータベースと、この人物・顔認
識ソフトの解析結果を照合することにより、ドローンは上空から
撮影したビデオに危険人物が写っているかどうかを判定する。
 たとえばテロリストを発見した際には、ビデオ撮影した映像上
で、その危険人物の周囲を赤色の矩形で囲む。逆に民間人や味方
兵士などの場合には、その周りを緑色の矩形で囲む。これによっ
て(もしも実戦下の場合には)兵士がすぐに、ビデオ映像に写っ
ている人物が敵か、そうでないかを見分けることができる。
          ──小林雅一著/『AIが人間を殺す日/
          車、医療、兵器に組み込まれる人工知能』
                   集英社新書/0890
─────────────────────────────
 あまり考えたくないことですが、AIはごく当たり前のように
軍事兵器に組み込まれつつあります。1977年に米海軍が開発
した次の「対艦ミサイル」があります。これは日本の海上自衛隊
も装備しています。
─────────────────────────────
               ハーブーン/Harpoon
     マクドネル・ダグラス社開発対艦ミサイル
─────────────────────────────
 「ハーブーン」は、ミサイルの頭部に小型のレーダーを備えて
いて、敵艦に近づいたところでそのレーダーを起動させ、その反
射源に向って突入する方式です。しかし、ミサイルがレーダーを
発射すると、敵艦から探知される可能性もあります。
 そこで米海軍と米空軍とDARPAはこの点を改良して、AI
内蔵の長射程対艦ミサイル「LRASM」を2017年に開発し
たのです。このミサイルは「F─35」から発射される空対艦ミ
サイルです。この「LRASM」は、自前のレーダーを内蔵して
おらず、ミサイルの方からはいっさい電波を出さないのです。
 「LRASM」は、「ESM」という電波方向探知機を使って
敵艦が対空警戒のため発しているレーダーを捉え、搭載AIが、
その電波の特性から敵艦の種類などを分析し、攻撃すべき対象を
決定し、近づきます。そして、赤外線ビデオ映像を頼りに、その
敵艦の急所を正確に把握して、ピンポイントで激突するのです。
 「LRASM」の内蔵メモリーには、軍艦の出す電波の周波数
の違いを網羅した電波特性カタログが収録されているので、艦種
や艦型を特定できます。駆逐艦と空母が並んでいるときは、空母
の方を選ぶことになっています。しかも、「LRASM」はステ
ルス外形ですから、敵艦が気がつくとすれば、おそらく突入の直
前であり、防御する時間はないはずです。
 ちなみに、「LRASM」の射程は370キロメートルもあり
ハーブーンの3倍です。なにしろ発射してしまえば、後はミサイ
ルが自律的に判断して敵艦に正確に突っ込むのですから、防御し
ようがないのです。
 日本の航空自衛隊は、対艦用としてこの「LRASM」と、対
地用として、次の2つのミサイルを米国から輸入することを既に
決めています。
─────────────────────────────
      対地用 ・・ 「JASSM−ER」
      対艦用 ・・    「LRASM」
─────────────────────────────
 対地用の「JASSM−ER」については、北朝鮮の弾道弾発
射車両を撃破するためであり、「LRASM」については、尖閣
海域に襲来する中国の空母を撃墜するための備えです。「JAS
SM−ER」にもAI機能が内蔵されています。
          ──[次世代テクノロジー論U/073]

≪画像および関連情報≫
 ●AIは軍事利用されるのか?グーグルが出した宣言とは
  ───────────────────────────
   無人化した兵器は、自国の兵士を傷つけずに敵国を叩くこ
  とができることから、各国の軍が長年研究している。しかし
  これまでの無人兵器はリモートコントロールがベースになっ
  ているので、誰かが現地の様子をみながら操作する必要があ
  る。そのため、確かに兵士は遠隔から無人兵器を操作するこ
  とはできるが、完全に戦地から離れることはできない。
   では、無人兵器にAI(人工知能)を搭載したらどうなる
  か。「スイッチを押せば、あとは勝手に敵を倒してくれる」
  恐ろしい兵器になるだろう。そこでAI大国であり、軍事大
  国であるアメリカと中国の両国は、AI兵器の開発を進めて
  いる。嫌な話題だが、そもそもAIはその誕生当初から軍や
  兵器と深い関係にあった。戦争が科学を進歩させたことは悲
  しい事実ではあるが、AIもそのひとつということである。
   しかしいま、AIのトップランナー企業が「兵器用のAI
  は開発しない」と宣言するなど、AIの反軍事化の流れも生
  まれつつある。AIの究極の姿は、コンピュータが人間のよ
  うに思考することである。例えば、囲碁のトッププロを倒し
  たAI「アルファーゴ」は、囲碁のルールと戦術を理解し、
  対戦相手の何十手先も読むことができる。これは十分AIが
  「囲碁について思考した」といえそうだが、しかしアルファ
  ーゴは将棋では思考できないし、顔認証すらできない。つま
  りアルファーゴが人並みの思考をしたとは言い難い。では、
  「コンピュータが人間のように思考する」とはどのように定
  義されるのだろうか。      https://bit.ly/2nBq9r8
  ───────────────────────────

敵艦直撃寸前の「LRASM」.jpg
敵艦直撃寸前の「LRASM」
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2018年08月17日

●「今後戦争はケンタウロス戦になる」(EJ第4830号)

 5月7日から73回にわたって、AI(人工知能)について書
いてきましたが、このテーマは今回で終了します。これまでAI
は2回のブームがあり、今回は3回目のブームにあたります。ど
うやら今回のブームは本物のようです。現在、世の中が、これに
よって音を立てて、変化していることが実感できるからです。
 その一環として、保険業界、とくに自動車保険業界で「テレマ
ティクス保険」というのが流行しつつあります。流行しつつある
というよりも、それが当たり前のことになりつつあります。
 テレマティクス保険は、自動車に設置したテレマティクスサー
ビスの端末機から、走行距離、運転速度、急発進・急ブレーキと
いった運転情報の実績を取得し、実績に応じた保険料を算定する
保険のことです。
 軍事評論家の兵頭二十八氏の本のコラムに、これに関して、次
の予測が出ていました。きわめて実現性の高い予測です。
─────────────────────────────
 航空機のブラックボックスと同じものがすべての自動車に搭載
される。オーナーが購入して以降のすべてのペダル、ハンドル、
レバーおよびスイッチの操作、車両の刻々の位置座標(したがっ
て移動速度も)、全周記録ビデオカメラの情報がストアされると
ともに、定期的にクラウドサーバーヘアッブロードされる。警察
は捜査のためにいつでもその記録にアクセスし、記録デバイスか
らデータをコピー抽出できる・・・     ──兵頭二十八著
     『AI/戦争論/進化する戦場で自衛隊は全滅する』
                        飛鳥新社刊
─────────────────────────────
 兵頭氏は「ブラックボックス」といっていますが、そういう通
信機器がすべての車に装備される日は案外近いと思います。つま
り、車の必須部品のひとつとして、テレマティクス端末が装備さ
れるようになるという意味です。その装置がないと、車としては
認められなくなるのです。
 警察のAIコンピュータは、走行中の車から送られてくるデー
タを解析すれば、それぞれの運転者がどのような運転をしている
かすべてわかるので、交通違反点数を算定し、違反を摘発でき、
免許更新のさいは、それまでの運転状況を調べたうえで更新を認
めるかどうかを判定できます。
 また、免許期間中であっても、あおり運転など、とくに危険な
運転を冒した運転者は、コンピュータがそれを知らせるデータを
出してくるので、運転者に警察署への出頭を命じ、当該車のドラ
イブレコーダーなどを調べたうえで、免許停止などの科料を課す
ることができます。
 このシステムが導入されると、交通警察官を大幅に減らすこと
ができ、運転者も安全運転を心掛けるようになるので、交通事故
は大幅に減らすことができます。それだけに、導入される可能性
は高いと考えます。
 ところで、今後AIはどこまで発展するのでしょうか。レイ・
カーツワイル氏の予言のようになるのでしょうか。
 とくに心配なのは、AIの軍事への応用です。それを読み解く
カギは、米国の軍事刷新にあります。米軍はこれまで2回の軍事
刷新を図っており、現在は第3回目の軍事刷新に取り組んでいま
す。小林雅一氏の本を参考にして、記述しています。
─────────────────────────────
    ◎第1次軍事刷新/1940年〜1950年
     ・核兵器の開発/核弾頭の増設配備の拡大
    ◎第2次軍事刷新/1970年〜1980年
     ・ミサイルなど各種兵器の小型・高精密化
    ◎第3次軍事刷新/2016年〜
     ・各種兵器へのAI(人工知能)搭載など
─────────────────────────────
 現在の軍事力のトップは何といっても米国です。ロシアは資金
がありませんし、中国も米国には遠く及ばないレベルです。しか
し、第2次軍事刷新時点のレベルでは、とくに中国が米国を追い
上げてきていることは確かです。つまり、米国の軍事的優位性が
磐石であるといえなくなってきたのです。
 そこで、米国は、2016年からの3年間で、約180億ドル
(約1兆8000億円〜2兆2000億円)をかけて、AIによ
る自律的兵器を中心とする軍事技術の刷新を行っています。つま
り、米国はAIを次世代兵器の要に据えようとしているのです。
これが米国による第3次軍事刷新の内容です。
 小林雅一氏によると、近未来の戦争は「ケンタウロス戦」にな
るといっています。ケンタウロスとは、ギリシャ神話に登場する
半人半馬の怪物です。これは、これからの戦争は、半分は人間、
半分はマシンが担うことを意味しています。そうです。AIを装
備した人間です。これがどんなに強力であるかについて、小林雅
一氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 ある2人の凡庸なチェス・プレイヤーが、3台のパソコンとそ
こに搭載されたチェス・プログラム(AIソフト)を駆使して、
チェスの世界チャンピオンに勝利を収めた。彼らはまた同じ手段
でチェスを指すスーパー・コンピュータにも勝つことができたと
いう。ここから読み取れることは、最強のチェス・プレイヤーと
は単なる人間(世界チャンピオン)でもAIマシン(人工知能を
搭載したスパコン)でもなく、「AIマシンを使いこなす人間」
であるということだ。これと同じことを米軍は近未来の戦場でや
ろうとしている。それがまさにケンタウロス戦なのだ。
          ──小林雅一著/『AIが人間を殺す日/
    車、医療、兵器に組み込まれる人工知能』/集英社新書
─────────────────────────────
 このテーマは今回が最終回です。長い間のご愛読を感謝いたし
ます。20日からは新しいテーマに挑みます。
      ──[次世代テクノロジー論U/最終回/074]

≪画像および関連情報≫
 ●人工知能は「第2の核兵器」になるかもしれない
  ───────────────────────────
   急速に進化した人工知能(AI)の軍事利用が現実になろ
  うとしている。核よりも容易に拡散するかもしれないこうし
  た技術については、国際的に管理する仕組みが必要という提
  言もある。
   1899年、世界の列強はオランダのハーグで、航空機の
  軍事利用を禁止する条約を採択した。当時の新技術だった航
  空機の破壊力を恐れてのことだった。5年後にモラトリアム
  の期限が切れ、間もなく航空機は第一次世界大戦の大量殺戮
  を招いた。ワシントンにある無党派シンクタンク「新アメリ
  カ安全保障センター/CNAS」のフェロー、グレッグ・ア
  レンは「そのあまりの強力さがゆえに人々を魅了してしまう
  技術は確かに存在します」と話す。「人工知能(AI)もそ
  のような技術のひとつであり、世界中の軍隊が基本的には同
  じ結論に達しています」。
   アレンらは2017年7月、AIなどの最新技術が国家安
  全保障に及ぼす影響について、132ページにわたる報告書
  にまとめた。報告書はひとつの結論として、自律ロボットの
  ような技術が戦争や国際関係に及ぼす影響は、核兵器のそれ
  と同等だと述べている。     https://bit.ly/2gUW8yQ
  ───────────────────────────

ケンタウロス.jpg
ケンタウロス
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2018年08月20日

●「日航123便事故は終っていない」(EJ第4831号)

 今から33年前の1985年8月12日、日航ジャンボ機12
3便(ボーイング747登録機体番号JA8119)が、羽田空
港から大阪伊丹空港に向う途中、突発的な非常事態に陥り、群馬
県多野郡上野村の山中に墜落し、乗客乗員520人が亡くなると
いう痛ましい事故が起きています。「日航ジャンボ機123便御
巣鷹山墜落事故」です。今年は、亡くなった乗客乗員520人の
33回忌に当たる年です。
 古くからのEJの読者はご存知のことですが、EJでは既に2
回にわたって、この墜落事故をテーマとして取り上げています。
次の2回です。
─────────────────────────────
  第1回:1999年05月07日/EJ第0132号〜
      1999年05月25日/EJ第0144号
           「御巣鷹山/JAL123便遭難」
  第2回:2003年02月24日/EJ第1051号〜
      2003年04月04日/EJ第1079号
          「再現/御巣鷹山飛行機事故の真相」
─────────────────────────────
 EJは基本的には「メールマガジン」です。テーマを決めて複
数回連載する独特のスタイルのメールマガジンです。1998年
10月15日を第1号としてスタートし、20年かけて、本日の
EJ第4831号まで、営業日に毎日書いてきております。
 現在、EJは同じコンテンツを毎日ブログにアップロードして
いますが、それはブログ自体が登場した2005年以降のことで
あり、上記の2回のテーマはブログには掲載されておりません。
 そこで本日のEJ第4831号より、三度このテーマに挑戦し
その真相に迫ってみようと思います。なぜなら、新事実が続々と
出てきているからです。具体的には、新事実とは、元日本航空国
際線客室乗務員で、国内線時代には、事故機のクルーと同じグル
ープで乗務していた青山透子氏による次の3冊の著作です。
─────────────────────────────
                青山透子著/河出書房新社
 『日航123便/撃墜の新事実/目撃証言から真相に迫る』
          ──2017年10月11日/第10刷
                青山透子著/河出書房新社
  『日航123便墜落/疑惑のはじまり/天空の星たちへ』
              ──2018年5月30日初版
                青山透子著/河出書房新社
         『日航123便墜落/遺物は真相を語る』
              ──2018年7月30日初版
─────────────────────────────
 これらの青山氏の本は、とてもよく売れており、2017年発
売の最初の本は、実に10刷を数えています。大ベストセラーズ
です。墜落事故発生から33年も経っているのに、なぜ、これほ
ど、関心が高いのでしょうか。
 それは、日航機123便の墜落に自衛隊が深くかかわっている
とみられるからです。このことは、1999年にEJが指摘して
います。1999年5月7日のEJ第132号で、「御巣鷹山/
JAL123便遭難」を取り上げるとき、私は次のように書き始
めています。
─────────────────────────────
 今日から取り上げるテーマは、私自身がまだ半信半疑に思っ
 ているものです。何度かEJで取り上げようと思ったのです
 が、見送ってきたテーマです。テーマの内容は「御巣鷹山/
 JAL123便遭難」です。
    ──1999年05月07日/EJ第0132号より
─────────────────────────────
 私がこの墜落事故に関心を持ったのは、よく通っている池袋の
ジュンク堂(現・丸善ジュンク堂)で、次の本を発見し、購入し
て読んだからです。
─────────────────────────────
                   池田昌昭著/文芸社
  『JAL123便墜落事故真相解明/御巣鷹山ファイル』
             ──1998年01月25日初版
                   池田昌昭著/文芸社
『JAL123便は自衛隊が撃墜した/御巣鷹山ファイル2』
              ──1998年9月10日初版
                   池田昌昭著/文芸社
  『JAL123便空白の14時間/御巣鷹山ファイル3』
              ──1999年4月10日初版
─────────────────────────────
 青山透子氏の本もそうですが、池田昌昭氏の本も3冊続けて出
版されているということは本が売れている証拠です。多くの国民
が関心を持っているということです。これらの本のなかには多く
の新事実がありますが、国土交通省運輸安全委員会は、そんなこ
とは「陰謀論」であるとして、再調査に動こうとしなかったので
す。そして32年が経過し、またしても、基本的には池田昌昭氏
の主張に近い青山透子氏の本が出版されたのです。つまり、33
年経っても真相は何も解明されていないのです。
 明日のEJから、こつこつとEJスタイルで真相を究明してい
きたいと考えています。青山透子氏の本だけでも800ページ近
いですが、全ページ、しっかりと読み込んで原因を究明したいと
考えています。本には多くの人々の貴重な証言が掲載されている
からです。この墜落事故で亡くなった人々の33回忌の弔いのた
めにも。タイトルは次のようにします。
─────────────────────────────
  新事実を手がかりに三度探る日航機123便墜落の真相
  ──なぜいつまで経っても疑惑が消えないのか──
─────────────────────────────
         ──[日航機123便墜落の真相/001]

≪画像および関連情報≫
 ●青山透子氏の本の書評/読書日記
  ───────────────────────────
   他の本を探していて、ふと目について、思わず買ってしま
  った本。8月12日が近づいたある日、大型書店で別の本を
  探していて、偶然、本書に出会った。そうだ、もうすぐあの
  日がやってくる、と、本書を手に取った。帰りの電車の中で
  読みはじめ、帰ってからもベッドの中で読み続けた。いっき
  に読み終えた。
   あの日、大事故は、僕のすぐそばをかすめていった。あの
  日の夕方、成田からニューヨークに飛ぶはずだった飛行機が
  故障で飛ばず、旅行会社からはツアーが中止になる可能性が
  あると伝えられた。もし中止なら、その日の夕方の便で大阪
  に戻ることになっていた。午後遅く、翌日の便が確保できて
  1日遅れの出発になった。空港近くのホテルに泊まった。移
  動やツアーのメンバーとの食事でホテルに入るのが遅くなっ
  た。事故のニュースを見て、慌てて自宅に連絡すると「夕方
  の便で帰るかもしれないって言ってたから、あの飛行機に乗
  ってるかもって、みんなすごく心配した。なんでもっと早く
  連絡くれなかったのよ!とこっぴどく叱られた。ひょっとし
  たら、成田から羽田に移動して日航123便に乗っていたか
  もしれない。あの事故は、僕にとっても忘れられない大きな
  出来事になっている。      https://bit.ly/2L2gh36
  ───────────────────────────

日航123便と同型機/ボーイング747.jpg
日航123便と同型機/ボーイング747
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2018年08月21日

●「そのとき機内で何が起きていたか」(EJ第4832号)

 33年も前のことですから、JAL123便がどのようにして
事故発生に至ったのか忘れている人も多いと思うので、時系列的
にまとめておきます。これは、8月12日午後7時頃から、13
日過ぎまでに、メディアで伝えられた最初の情報です。
 1985年8月12日(日)の午後6時の羽田空港レポートを
見ると、好天・気温29度・南西の風8メートル、すべての離発
着機において、良好なコンディションと記録されています。この
時刻において、空港周辺に雷雲の発生や乱気流の発生は報告され
ておらず、天候による事故の予兆はまったくなかったのです。
─────────────────────────────
◎18時04分:JAL123便、18番スポットを離れる。
◎18時12分20秒:離陸。JAL123便は東京湾を横断し
 千葉県木更津の航空標識をチェック。右旋回し、機首を東南か
 ら南に向けて上昇を続け、館山にある航空標識手前で羽田と交
 信。「行ってまいります」と告げ、続けて、所沢の東京航空管
 制部の管理下に入る。機は同管制部と交信。
◎18時17分頃:「現在位置から、シーパーチへ直行したい」
 と要求。
◎18時19分頃:同管制部の許可を受ける。
◎18時24分頃:「ドーン」と大音響を発す。離陸から12分
 が経過したあたり、場所は大島と伊豆半島の中間、相模湾上で
 ある。
◎18時25分頃:大島の西20海里(約37キロ)を飛行中。
 24、000フィートから、22、000フィートに降下した
 い。大島へレーダー誘導を頼む。
◎ほぼ同時刻:「スコーク77」発信。
◎18時31分頃:東京管制部が、名古屋への着陸が可能か尋ね
 るが、羽田に帰りたいと答える。
◎18時41分頃:右側最後部ドア(R5)に異常あり、との連
 絡を日航オペレーションセンターに交信。
◎18時54分頃:「操縦不能」の通報。「自機の位置がわから
 ない」の問いに管制部は、羽田の西北83キロ、熊谷の西46
 キロと伝える。
◎18時55分頃:管制部より、羽田、横田とも緊急着陸の準備
 完了、いつでもアプローチを開始してよい、と伝えたが、応答
 なし。
◎18時56分頃:羽田、所沢両レーダーかに機影消える。
       ──角田四郎著『疑惑/JAL123便墜落事故
      /このままでは520柱は瞑れない』/早稲田出版
─────────────────────────────
 角田四郎氏は、フリーライターですが、山岳関係には詳しいも
のの、航空の専門家ではないのです。ただ、親友の恋人だった日
航のスチュワーデスがJAL123便の事故に遭遇し、亡くなっ
たことから、事故原因究明に8年かけて取り組み、前掲書をまと
めておられます。大変な労作です。
 専門用語について、説明が必要であると思います。「シーパー
チ」とは何でしょうか。
 「シーパーチ」とは「非義務・位置通過点」という意味です。
本来であれば、館山ポイントを通過することになっているが、そ
れをカットし、シーパーチに行くということはよくあることであ
り、その許可を求めたものです。これは、事故には何の関係もな
いことです。
 問題は「スコーク77」です。これは、緊急事態の発生を告げ
る信号です。これについて、角田四郎氏は次のように解説してい
ます。
─────────────────────────────
 「スコーク77」という聞きなれない言葉がある。緊急事態発
生を告げる「国際救難信号」で別名「7700」とも称されてい
る。つまり空のSOSである。これはあくまで「信号」で音声で
はない。この信号がオンにされると、周辺の全てのレーダー画面
に「E・M・G」この3文字が点滅する。あらかじめ情報入力し
てあるATCのレーダー画面には、それを発信した機名も同時に
表示される。つまり「E・M・G・JAL123」である。E・
M・Gはエマージェンシーの略号である。さらにATCではレー
ダーを監視する管制官のヘッドホンに「ピーッ」という警報音が
鳴る。このとき同一空域にある全ての航空機はATCの監督下に
置かれ、自由な航行は一切禁止されてしまう。それだけに、この
信号の使用は慎重の上にも慎重を期すことを求められている、重
大緊急事態を告げる信号である。 ──角田四郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 このように、航空機が「スコーク77(7700)」を発信す
るのはよくよくのことなのです。しかし、気味の悪いことがあり
ます。ちょうど、1年前の2017年8月12日のことですが、
羽田空港発/伊丹空港行きのANA37便が、離陸直後の相模湾
付近で「スコーク77」を発信したのです。さいわい、羽田空港
に緊急着陸できたのですが、日付といい、行き先といい、「スコ
ーク77」を発信した場所といい、JAL123便とそっくりで
す。しかし、これはあまり知られていない出来事です。
 なお、「スコーク77」は、「7700」といいますが、連番
の信号に次のものがあります。
─────────────────────────────
       7500 ・・・ ハイジャック
       7600 ・・・  通信機故障
       7700 ・・・ 緊急事態発生
─────────────────────────────
 問題は、JAL123便は、なぜ「スコーク77」を発信した
かです。そのとき、機内では一体何が起きていたのでしょうか。
手かがりは十分あります。なぜなら、JAL123便の事故には
奇跡的に4人の生存者がいたからです。
         ──[日航機123便墜落の真相/002]

≪画像および関連情報≫
 ●速すぎる「スコーク77」
  ───────────────────────────
   長い123便の情報を集めてきて、いまだに私の中で解消
  できていない疑問が大きく二つあります。ひとつは衝撃音が
  あったときに、キャビンではベルト着用のサインが点灯して
  いたのか?それとも点灯していなかったのか?そしてもうひ
  とつ最大の疑問は「スコーク77」発令のタイミングです。
   スコーク77は、航空機における最高度の国際救難信号で
  す。スコーク77を発した航空機には無線・航路・滑走路の
  全てにおいて優先権が与えられます。もちろん自衛隊・米軍
  においても同様で、最優先で救援のための手段が検討されま
  す。周囲の航空全てに影響のある、非常に重大なステータス
  と言えます。
   それゆえ、スコーク77は簡単に発令できるものではあり
  ません。発信には、手順とチェックリストが用意されていま
  す。伝聞になりますが、手順にしたがってチェックリストを
  消化した場合、通常でも2〜3分、どんなに急いでも1分は
  かかってしまうそうです。そこで、発表されている123便
  のボイスレコーダー記録を見てみましょう。機長によるスコ
  ーク77の発令が18時24分42秒、副操縦士による復唱
  が18時24分47秒となっています。衝撃音が18時24
  分35〜36秒とされてますから、衝撃音から機長による発
  令までが7秒、副操縦士の復唱までが11秒しかかかってい
  ないことになります。もちろんこの時点では、機体はほぼ操
  縦不能の状態に陥っているのですが、クルーたちはその事実
  をまだ知りません。知っているのは衝撃音とそれに伴うGの
  変化のみ、減圧の体感もありません。チェックリストを無視
  する理由は見つかりません。この状況を、いったいどう判断
  すればいいのでしょうか。    https://bit.ly/2PhvsZs
  ───────────────────────────

JAL123便と酷似しているANA37便.jpg
JAL123便と酷似しているANA37便
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2018年08月22日

●「ドドーンという衝撃音は何の音か」(EJ第4833号)

 JAL123便が羽田空港を離陸したのは18時12分のこと
ですが、それから12分後に機内には何らかの異常が発生してい
るのです。場所は、大島と伊豆半島の中間の相模湾上です。普通
飛行機はこの場所に来ると、徐々に水平飛行に移っており、それ
以前にシートベルトサインは「オフ」になっていたはずです。
 それを裏付けるのが、生存者の川上慶子さんの証言です。その
とき客室担当が、お子様向けの飛行機のおもちゃやぬいぐるみや
人形を配っており、川上さんはそれを受け取っていたからです。
時間は18時20分頃と推定されます。そのとき、シートベルト
は「オフ」になっていたはずです。また、その時間帯に通路から
窓の外を撮ったとみられる写真も遺されています。
 しかし、その数分後に、シートベルト「オン」の指示が出てい
るようなのです。青山氏の本に、その時間帯のボイスレコーダー
のやり取りが出ています。
─────────────────────────────
◎18時24分12秒:スチュワーデス「(・・・)たいとおっ
 しゃる方がいらっしゃるんですが、よろしいでしょうか。
◎18時24秒15秒:副操縦士「気を付けて」(極度の緊張状
 態を記録)
◎18時24秒16秒:航空機関士「じゃ気を付けて、お願いし
 ます」
◎18時24分17秒:副操縦士「手早く」
◎18時24分18秒:航空機関士「気を付けてください」
◎18時24分35秒:ドドーンという衝撃音。Eコンパートメ
 ントでは「パーン」という高めの音
               ──青山透子著/河出書房新社
  『日航123便/撃墜の新事実/目撃証言から真相に迫る』
─────────────────────────────
 スチュワーデスの「(・・・)」は容易に想像ができます。こ
のとき、シートベルト「オン」の指示が出ており、トイレに行こ
うとする乗客がいたので、キャプテンに客室からのインターホン
のコールで許可を求めたのです。「トイレに行きたいとおっしゃ
る方がいらっしゃるんですが・・」となります。
 しかし、異常なのは、それに対する副操縦士と航空機関士の対
応の方です。しかも、副操縦士の音声は極度の緊張状態にあった
というのです。そのとき、コックピット内では、何が起きていた
のでしょうか。
 問題は、18時24分35秒に起きた「ドドーンドン」あるい
は「パーン」という衝撃音です。これは、一体何の音だったので
しょうか。
 この衝撃音がどの程度のものであったかについて、JAL12
3便墜落事故での4人の生存者の一人である落合由美氏の発言を
青山透子氏は次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 機体の最後尾Eコンパートメント56Cに座っていた非番の客
室乗務員の落合由美AS(アシスタント・パーサー26歳/生存
者)は、かなり大きなバーンという高めの音を聞いたと証言して
いる。ピストルを撃ったように響く音だったという。自分の席の
後ろの天井あたり(機首に向かって左側後部側面上部、最後尾ト
イレ付近の壁上部)から聞こえたように思ったが、振動は感じず
揺れもなかったと記憶している。酸素マスクが自動的に落ち、録
音されたアナウンスが自動的に「ただ今緊急降下中」と流れたが
耳は多少詰まった感じで痛くなく、それほどの急降下は体に感じ
ていなかった。一瞬白い霧が発生したが、まもなく消えた。ハッ
トラックという頭上の荷物収納扉が開くこともなく、機体の揺れ
はほとんど感じなかったため、各スチュワーデスたちは持ち場の
お客様の様子を確認し、酸素マスクをつける手伝いをしながら、
通路を歩いていたことが遺族提供の写真からもわかる。
                ──青山透子著の前掲書より
─────────────────────────────
 1985年8月15日付、朝日新聞掲載の日航発表の「落合証
言」では次のようになっています。これは、救出20時間後に重
体の落合氏を見舞った日航重役2名が、面会談をメモしたものが
ベースになっています。
─────────────────────────────
 私は56Cの座席で雑誌を読んでいた。回りの状況はいつもと
変わりなかったが、(離陸から13分後の)午後6時25分ごろ
「パーン」という音が上の方でした。そして耳が痛くなった。ド
アが飛んだかどうかはわからない。
 床下やその他で、爆発音は聞えなかった。同時にキャビン(客
室)内が真っ白になり、キャビンクルーシート(客室乗務員用座
席)の下のベントホール(差圧調整口)が開く。床は持ちあがら
なかった。ラバトリー(便所)上部の天井もはずれた。同時に酸
素マスクがドロップ。プリレコーデット・アナウンス(あらかじ
め録音された緊急放送)が流れ出した。この時ベルトサインは消
えていなかったと思う。
       ──角田四郎著『疑惑/JAL123便墜落事故
      /このままでは520柱は瞑れない』/早稲田出版
─────────────────────────────
 落合由美氏は、骨盤骨折、左上腕と前腕骨折、全身擦傷の重傷
で、多野総合病院で手術しています。日航の幹部としては、自社
の社員であり、事故の内容を知るもっとも相応しい生存者です。
そのため、救出20時間後であるにもかかわらず、かなり強引に
面会してメモをとったのですが、それを一部の記者に知られ、日
航側がやむなく公表したものです。
 この報道によって、警察、事故調査委員会の事情聴取も拒めな
くなり、30分ずつの事情聴取を病院側は許しています。なお、
落合氏は後日もっと詳細なレポートを出していますが、それにつ
いては、後日ご紹介することにします。
         ──[日航機123便墜落の真相/003]

≪画像および関連情報≫
 ●日航123便はなぜ墜落したのか(森永卓郎)
  ───────────────────────────
   ニュース番組にかかわるようになって20年以上、私の心
  のなかには、もやもやした疑問がずっとつきまとってきた。
  それは日本航空123便の墜落原因だ。1985年8月12
  日、18時12分に、大阪に向けて羽田空港を飛び立った日
  航123便は同日18時56分に御巣鷹の尾根に墜落した。
  乗客乗員524人中、520人が死亡するという、一機では
  世界最大の航空機事故となった。
   事故の原因は、その後の運輸省の調査で、機体後部の圧力
  隔壁が破損し、そのときの圧力で尾翼の一部が吹き飛んで、
  油圧装置も破壊され、そのことで機体のコントロールが不可
  能になったことだとされた。機体は、過去に伊丹空港で尻も
  ち事故を起こしており、そのときに破損した圧力隔壁をボー
  イング社が修理した際、十分な強度を持たない方法で行った
  ため、それが破損につながったとされたのだ。いまでも、こ
  の公式見解は一切変更されていない。
   しかし、この事故原因に関しては、当初から様々な疑念が
  呈されてきた。例えば、圧力隔壁が破損すれば、急減圧で機
  内に濃い霧が発生する。それは、過去の機体破損の事故で共
  通して起きている。しかし、123便では、薄い霧は発生し
  ているものの、機内が見通せなくなるほどの霧は、発生して
  いないのだ。          https://bit.ly/2w2TvlU
  ───────────────────────────

酸素マスクの下りてきたJAL123便機内.jpg
酸素マスクの下りてきたJAL123便機内
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2018年08月23日

●「事故調の最終結論『隔壁破壊説』」(EJ第4834号)

 JAL123便機内での18時24分35秒の「ドドーン」と
いう衝撃音の正体は何なのでしょうか。
 その正体こそが問題なのです。JAL123便は、何かによっ
て尾翼が破壊させられたことが原因で、墜落することになったの
です。飛行機の尾翼には垂直尾翼と水平尾翼があります。そのう
ち、垂直尾翼が破壊されたのです。垂直尾翼が破壊されると、飛
行機はどうなるのでしょうか。
 これについて、あのハドソン川の奇跡を成し遂げた元USエア
ウェイズ機長、チェスリー・サレンバーガー氏は次のようにコメ
ントしています。元共同通信社記者、堀越豊裕氏による電話での
インタビューのさいの発言です。
─────────────────────────────
H:日航機事故は知っていたか。
S:もちろん知っていた。日本の運輸省航空事故調査委員会(事
  故調)の調査報告書が指摘した(修理ミスの)事実も把握し
  ている。
H:日航機は生還できたと思うか。
S:ノー。ひとたび垂直尾翼がなくなれば、飛行機は安定性を失
  う。尾翼を失い、油圧を失った機体の操縦は本当に難しい。
H:日航機は海への不時着を目指すべきだったか。
S:尾翼も油圧もない状態で、機長ら乗員が自分たちの不時着し
  たいと思った場所に向かえたかは疑問だ。われわれの場合、
  高度は低く、両エンジンの推進力が完全に消え、状況判断と
  決断のために残された時間もほとんどないという究極の状態
  だったが、それでも操縦機能は完全に残っていた。
           H=堀越豊裕氏/S=サレンバーガー氏
      ──堀越豊裕著『日航機123便墜落最後の証言』
                    平凡社新書/885
─────────────────────────────
 サレンバーガー元機長もいうように、飛行機は垂直尾翼を失っ
たら、終わりなのです。そうであるからこそ、垂直尾翼は頑丈に
作られており、ちょっとやそっとの衝撃では壊れないようにでき
ています。それを破壊したものとは何でしょうか。
 これには、内部説と外部説があります。内部で何かが爆発し、
それによって垂直尾翼が破壊されたか、飛行機の外部で、何らか
の飛行物体と衝突したかのいずれかです。
 当時の運輸省事故調査委員会(事故調)は、内部説の「隔壁破
壊説」をとっています。「隔壁破壊」とは何でしょうか。
 高々度を飛行する現代の航空機に不可欠なのは「与圧」です。
与圧とは、例えば、航空機の内部を一定の気圧に保つことをいい
ます。航空機の機内を地上と同じ一気圧にして上空を飛行するの
です。この状態は、上空の気圧に比べると、大きな圧力差が生ず
ることになります。
 地上で、風船のなかにいるようなもので、ちょっとでも穴が開
けば、なかの高圧空気は一気に外に流出します。すなわち、急減
圧が起こり、内外圧力差が一瞬で消滅するのです。これを「急減
圧」といいます。
 事故調は、何らかの原因でJAL123便の機内で急減圧が起
こり、その勢いで「後部隔壁」を壊し、垂直尾翼を破壊したと結
論づけているのです。1985年8月16日付けの東京新聞夕刊
は、次のように報道しています。
─────────────────────────────
 回収物の外板が内側から圧力を受けたように外側にめくれ上が
るようにわん曲している部分があった。このため調査関係者は客
室内の空気が、客室後部トイレ天井付近に生じた亀裂から、垂直
尾翼、テールコーン(胴体最後尾)などの非与圧部に爆発的に流
れ込み、垂直尾翼などが一瞬に膨張、圧力に耐え切れず風船が破
裂するように破壊されたとの見方を強めている。(中略)このた
め事故調査委員会など調査当局は、空気が流出したとみられる胴
体後部天井付近や後部隔壁などの破壊の跡を調べることにしてい
る。       ──1985年8月16日付、東京新聞夕刊
       ──角田四郎著『疑惑/JAL123便墜落事故
      /このままでは520柱は瞑れない』/早稲田出版
─────────────────────────────
 後日、事故調は、上記内容を事故原因として認め、「隔壁破壊
説」を公式に認めています。事故調の報告は、次のように3回に
わたって行われています。
─────────────────────────────
    ◎第1次中間報告書/1985年8月27日
    ◎第2次中間報告書/1985年9月14日
    ◎事故調最終報告書/1987年6月19日
─────────────────────────────
 実は、事故調の第1次中間報告書が出た10日後にニューヨー
ク・タイムズ紙が、同機がしりもち事故発生後に、ボーイング社
による修理ミスがあったという米国のNTSB(国家運輸安全委
員会)の見解を報道しています。それは、まるで日米で計算した
かのようなタイミングで行われているのです。これによって、日
本国内の報道は、墜落の原因は、一斉に修理ミスによる隔壁破壊
説に傾いていったのです。
 そして、1987年6月19日の事故調の最終報告書では、ボ
ーイング社が修理ミスが原因で、後部圧力隔壁に疲労亀裂が生じ
て破壊され、それに伴う急減圧が生じたことで、、垂直尾翼のな
かを突風が吹いて、尾翼を吹き飛ばしたことが墜落の原因である
と結論づけています。
 その後、多くの新事実が続々と出て、事故調に対して何回も再
調査の要請が出たにもかかわらず、事故調は一切動こうとせず、
33年後の現在に至っています。そのため、この事件は何回も何
回も蒸し返され、事故原因については、昨年以降青山透子氏の本
が出るなど、現在もくすぶり続けているのです。
         ──[日航機123便墜落の真相/004]

≪画像および関連情報≫
 ●事故調「圧力隔壁説」と食い違い(赤旗)/2000年
  ───────────────────────────
   15年前の1985年8月12日、群馬県・御巣鷹の尾根
  に墜落し、単独機としては史上最大の犠牲者520人を出し
  た日本航空123便(乗客・乗員524人)のボイスレコー
  ダー(操縦室音声記録=CVR)の記録を四日までに、本紙
  が入手しました。航空関係者らの協力で分析した結果、会話
  の内容は、運輸省航空事故調査委員会が作成した事故調査報
  告書と、事故原因の究明にかかわる重要部分で食い違いが判
  明。聞き違いと思われる個所とともに、まったく違う時間帯
  の会話を入れ替え、作為的としか考えられない部分があるな
  どの問題点が明らかになりました。
   123便のボイスレコーダーは、12日、午後6時24分
  12秒から始まり、同35秒ころ、「ド、ドーン、ドーン」
  という爆発音か破壊音があり、直後に機長が「なんか爆発し
  たぞ」「ギア(車輪)見て、ギア」と続いています。このあ
  と報告書では、不可解な解読として「エンジン?」や「オー
  ルエンジン」という機長や航空機関士の言葉が記録されてい
  ます。しかし、この不可解な言葉を本紙が入手したテープで
  複数のパイロットらが聞くと、いずれも「ボディギア(胴体
  側の車輪)」と聞こえました。事故機のボーイング747型
  機には4本の主車輪があり、左右の主翼にウイングギア、胴
  体部分に2本のボディギアがついていて油圧だけで収納され
  ます。             https://bit.ly/2MFQbHP
  ───────────────────────────

サレンバーガー元機長.jpg
サレンバーガー元機長
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2018年08月24日

●「事故直後から出た『隔壁破壊説』」(EJ第4835号)

 事故調査委員会(事故調)とは何でしょうか。
 日航機事故の発生当時は、当時の運輸省に「航空事故調査委員
会」と「鉄道事故調査委員会」という常設の委員会が置かれ、そ
のほかに海難審査庁の調査部門があったのです。2008年10
月から、これらの3つが統合され、独立行政委員会として「運輸
安全委員会」が設置されています。
 日航機事故発生当時の事故調のメンバーは次の通りです。当時
委員会は、委員長のほか委員4名、任期は3年であり、2期務め
ることが慣例となっていました。
 JAL123便事故の調査は、1987年6月に最終報告書を
出すまでは、次の2つの委員会で調査が行われていたのです。
─────────────────────────────
 ◎1985年09月以前の委員会のメンバー
   委員長:八田 桂三 東大名誉教授
    委員:榎木 善臣 元運輸省航空局審議官
    委員:糸永 吉運 元アジア航空顧問
    委員:小一 原正 元運輸省航空局参事官
    委員:幸尾 冶朗 東海大教授
 ◎1985年10月以降の委員会のメンバー
   委員長:武田  峻 元航空宇宙技術研究所所長
    委員:榎木 善臣 元運輸省航空局審議官
    委員:西村  淳 日本空港動力且謦役
    委員:幸尾 冶朗 東海大教授
    委員:東   昭 東京大教授
       ──角田四郎著『疑惑/JAL123便墜落事故
      /このままでは520柱は瞑れない』/早稲田出版
─────────────────────────────
 このJAL123便墜落事故が、33年経過後の現在でもその
原因がわからないでいるのは、生のボイスレコーダーのすべてが
公開されていないことにあります。そのすべてを握っていたのは
事故調のメンバーであり、現在この事故の関連書などで書かれて
いる音声記録は、あくまで一部であって、編集されている可能性
もあります。
 JAL123便のボイスレコーダーとフライトレコーダーは、
8月14日に発見ました。ボイスレコーダーの収録時間は30分
で、午後6時30分以降のコックピット内での会話、計器の警報
音、異常音などの各種録音が収録されているはずです。
 事故調によると、レコーダーの箱の外部の損傷がひどく、なか
のテープを取り出せない状況であり、テープを再生するのは、早
くても8月16日以降になるといっているのです。
 しかし、ボイスレコーダーの音声を誰も聞いていない16日の
時点で、メディアは一斉に「隔壁破壊説」が事故原因ではないか
と報道しています。16日付の毎日新聞の朝刊は、次のように報
道しています。
─────────────────────────────
 運輸省航空事故調査委員会と群馬県警捜査本部は15日、現場
検証で、尾翼下にあるアフターバルクヘッド(隔壁)が爆風をう
けたように破損していたことを確認した。このため、隔壁が客室
内の与圧された空気に耐えられず破壊したとの見方が有力となっ
てきた。隔壁が壊れると客室内の空気が爆発的に尾翼内に噴き上
げ、内部から垂直尾翼を分解させると専門家は指摘しており、救
出されたアシスタントパーサーの証言とも一致している。隔壁が
壊れたのは1978年の尻もち事故などで金属疲労、微細な亀裂
などの劣化が進んでいたことに起因するものともみられる。
           1985年8月16日付、毎日新聞朝刊
               ──青山透子著/河出書房新社
   『日航123便墜落/疑惑のはじまり/天空の星たちへ』
─────────────────────────────
 問題はたくさんあります。とにかく、あまりにもメディアの報
道が早過ぎることです。事故後2日か3日しか経っていないのに
どういう意図かわかりませんが、事故原因を「隔壁破壊説」に決
めていて、それを中心にストーリーを組み立てようとしているよ
うに感じるのです。
 それに、新聞では「内部から垂直尾翼を分解させた」という専
門家の意見は、生存者である落合発言と一致すると極め付けてい
ますが、どの時点のどのような落合発言であるかは、はっきりし
ないのです。落合発言は、公式には3回出されています。
 第1回の発言は、救出後、20時間後に日航の役員2人が落合
氏を見舞い、いくつかの質問をして、聞き出した情報を役員がメ
モしたものです。
 そのとき、病院としては面会謝絶としていたのに、日航の役員
2人に面会を許していることを知った某社の記者が病院側に抗議
し、事故調も面会できるなら事情聴取したいと要求してきたので
病院側は一定の条件を付けて、面会を許可したのです。
 一定の条件とは、8月16日午前中に30分ずつ、質問項目を
落合氏に見せ、それに答えてもらう形式で実施されたのです。こ
れが第2回目の発言とされるものです。しかし、この無理な事情
聴取によって落合氏は発熱が続いてしまったといいます。
 第3回目の発言は『新潮45』1986年1月号に掲載された
落合氏の記事です。これはかなり長文であり、詳細を極めていま
す。しかし、この記事を読むと、第1回と第2回の発言とは食い
違う部分もあり、これについては改めて検証します。
 上記の毎日新聞の記事は、8月16日付であり、2回目の落合
発言前の記事ということになります。日航の役員が落合氏から聞
き取って、後でメモした第1回の発言に基づいているものと考え
られます。しかしかなり無理な聞き取りであり、信憑性がどこま
であるかは疑問です。それにしても、16日の時点で早くも「隔
壁破壊説」が主たる事故原因として出てきているのは、極めて異
常なことであるといえます。
         ──[日航機123便墜落の真相/005]

≪画像および関連情報≫
 ●御巣鷹の屋根へのレクイエム
  ───────────────────────────
   報告書で「どーん」と書かれた爆発音みたいな音は、オリ
  ジナルに近いと、フジテレビが主張するボイスレコーダをコ
  ピーしたテープを最新技術で分析すると3つだった!
   3つの破壊音を分析すると、まず一番目の音で圧力隔壁が
  壊れ、2番目に垂直尾翼が吹き飛び、3番目の音でAPU部
  が脱落したそうな!コクピットの音を録音したボイスレコー
  ダーに記録された一番目の破壊音には0・135秒の遅れが
  あり、操縦席のマイクに機体を伝わったのと機内の空気から
  伝わった同じ音が記録された事になってましたが、コクピッ
  トの扉はそんなに薄かったとでも!しかもジャンボ機のコク
  ピットは2階です!
   音の遅れを計算すると、中間には圧力隔壁があるんだそう
  な!あの報道での計算通りなら圧力隔壁の後ろです!機体の
  金属部の伝播から位置を導き出したとされてましたが・・・
  あれじゃ第一の破壊音を無理やり圧力隔壁にするだけの「最
  初に結論ありき」ジャン!(大苦笑)
   私の推論、最初にAPUの損傷がこの報道特番で覆された
  訳ですが、残念ながらこの説には到底納得出来ませんね!逆
  にますますドラマ化された映像を見て、最初の衝撃音が「A
  PU」だったという思いが強くなっています!最初にAPU
  が飛び散ると、次には支えを失った重い劣化ウランを操舵部
  に使う垂直尾翼が圧力隔壁で跳ね返された衝撃波で簡単に崩
  落します!圧力隔壁はいきなり高高度の低圧に直接触れるの
  で、落合さんが言ってるように、「パーン」と小さい亀裂が
  入ったと考えるべきではないのでしょうか?
                  https://bit.ly/2LkYzI0
  ───────────────────────────

飛行機の後部隔壁.jpg
飛行機の後部隔壁
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2018年08月27日

●「なぜ、原因は圧力隔壁破壊なのか」(EJ第4836号)

 高々度を飛行する航空機には、人のいる区域には、地上と同じ
1気圧の「与圧」が必要です。これを「与圧区域」といいます。
しかし、人が立ち入らない区域まで与圧する必要はなく、その区
域を「非与圧区域」といっています。
 その与圧区域と非与圧区域を隔てる機体設備を「圧力隔壁」と
いい、航空機の前後に設けられています。圧力隔壁は、圧力に耐
えうる頑丈さが求められますが、その外側に位置する非与圧区域
は、与圧に耐える強度を持たせる必要はないので、これによって
飛行機全体の軽量化を図ることができます。
 しかし、圧力隔壁が破れたさいに、与圧に耐えられない部分が
破壊する恐れがあるので、隔壁のうしろの構造に圧力を逃すため
の安全弁などを設ける必要があります。第1次中間報告の事故調
の見解は、何らかの原因で機内に急減圧が起こり、それによって
後部圧力隔壁が吹き飛び、垂直尾翼を壊したというものです。
 航空機の尾翼部分の構造図を添付ファイルにしてあります。後
部圧力隔壁の位置を確認してください。隔壁の上部には垂直尾翼
があり、確かに何らかの事情で機内の与圧区域に急減圧が起こり
その勢いで後部圧力隔壁が破壊された場合、それが垂直尾翼に重
大な影響を与えることは十分あり得ることです。
 しかし、その急減圧がなぜ起きたのかが、明確になっていない
のです。これについて角田四郎氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 客室内の与圧空気が機体のどこから流出し、減圧が起こったの
か、まだ判っていない。それどころか生存者の証言から急減圧は
なかったとする意見や、ごく小さな減圧と見る専門家も多い。仮
に事故調のいうとおり、たいへんな急減圧があったとしても、そ
れが機の操縦性を奪った事故の主因であるとなぜわかるのか。な
にか他に原因があり、その結果として急減圧に至った可能性を全
くさぐろうとしないのはなぜなのか。ともあれ、この段階で事故
調査委貞会の原因究明は、隔壁説一本に早くも絞られていく。し
かも、それに見合った発見や発表がなぜかその後矢継早に登場す
るのである。 ──角田四郎著『疑惑/JAL123便墜落事故
      /このままでは520柱は瞑れない』/早稲田出版
─────────────────────────────
 なぜ、事故調が圧力隔壁破壊説にこだわったのか──その一つ
の根拠とされるものに、JAL123便に就航したJA8119
号機の「前科」があります。それは1978年に起きています。
 1978年6月のことです。JA8119号機は、大阪国際空
港(伊丹市)に着陸するさい、仰角を大きく取り過ぎて、機体後
部を滑走路にぶつけるという事故を起こしています。明らかな操
縦ミスです。これは「しりもち事故」といわれています。
 これによって、JA8119号機は、機体後部下方を著しく損
傷し、内部の圧力隔壁の取り付けフレームなどにゆがみが生じ、
隔壁の下部が変形してしまったのです。これについては、米ボー
イング社の専門スタッフを米国から招いて、隔壁下部の取り替え
修理などを行い、運輸省の検査をパスして再び就航していたので
す。御巣鷹山の墜落事故はその7年後に起きています。
 このしりもち事故のことは、JAL123便がダッチロールし
ている時点で、既にテレビで何回も報道されており、私の記憶に
も残っています。事故調も早くから、しりもち事故で飛行機の後
部を損傷したことと、後部圧力隔壁破壊は関係があると考えてい
たことは確かです。しかし、墜落の2週間後の8月27日に行わ
れた事故調の第1回の中間報告では、後部圧力隔壁破壊がこの事
故の主因であることを公表しています。
 実はこのとき、米運輸安全委員会(NTSB)の幹部、ロン・
シュリード氏をチーフとする調査チームと、ボーイング社の調査
チームが日本にきていたのですが、日本の事故調との間がうまく
いっていなかったといわれています。このことは、元共同通信記
者の堀越豊裕氏の本に次のように出ています。
─────────────────────────────
 事故調は、どかどか乗り込んできた米国の調査チームを快く感
じていなかった。自分たちで調査をやり遂げたいという思いが強
かったのだろう。八田らは戦前、米国に勝つための航空機開発に
明け暮れ、敗戦後はしばらく一切の航空機研究の機会を米国に奪
われた。刑事捜査の対象になり得るボーイングはもとより、NT
SBについても現地入りに慎重な姿勢を崩さなかった。
      ──堀越豊裕著『日航機123便墜落最後の証言』
                    平凡社新書/885
─────────────────────────────
 堀越氏の本によると、JAL123便墜落事故が起きたとき、
米国はテロを疑い、事故調査官のジョージ・サイドレン氏を日本
に派遣したのです。しかし、テロではないことはすぐわかったの
ですが、このサイドレン事故調査官が大変横柄で、日本の事故調
とぶつかったのです。このサイドレン氏について、ロン・シュリ
ード氏は「日本人といまだに第2次世界大戦を戦っているように
見えた。困った男だった」といっています。それに事故調は、独
自に日本に乗り込んできたボーイング社の調査チームともうまく
いっていなかったといいます。
 しかし、シュリード氏の働きによって、米NTSB調査チーム
は、ボーイング社の調査チームと一緒に御巣鷹山の現場に入るこ
ができています。8月22日と24日のことです。その御巣鷹山
の現場での調査によって、シュリード氏は圧力隔壁にボーイング
社の修理ミスを発見し、そのことを日本の事故調で現場キャップ
を務める調査官の藤原洋氏に伝えています。つまり、この墜落事
故は、しりもち事故を起こしたJA8119号機を修理したさい
の修理ミスが原因であることを告げていたのです。
 しかし、この報告は、事故調の第1次中間報告では、無視され
ています。不可解なのは、なぜ、ボーイング社は、自らが不利に
なる修理ミスをあわただしく認めたのでしょうか。きわめて不自
然です。     ──[日航機123便墜落の真相/006]

≪画像および関連情報≫
 ●日航ジャンボ機墜落事故30年目の真相/2015年
  ───────────────────────────
   何気なくTVを見ていたら、日航ジャンボ機墜落事故30
  年の真相という番組がやっていた。ずいぶん昔の事で、うろ
  覚えだが、事故直後は、触れられていなかった事もあり、あ
  らためて見て、そうだったのかと知った事もありました。
   私だけの認識かもしれないが、事故直後ほかにも生存者が
  いた事などは当時あまり大きく報道されていなかったような
  気がする。それ以上に驚いたのは隔壁の継ぎ板の件である。
  当時、事故原因は隔壁の金属疲労といっていたような気がす
  るが、修理ミスと言うのは知らなかった。
   当時すでにわかっていたことなのだろうが、私が気づかな
  かっただけかもしれないが、修理ミスと言うのは、あまり大
  きく報道されていなかったような気がする。隔壁の修理指示
  書には継ぎ板は1枚もので書かれいたにもかかわらず、実際
  は継ぎ板は2枚に分かれて取り付けられており、継ぎ板とし
  ての役目を果たしておらず、強度不足になっていたことで、
  応力が集中して破壊に至った、と事故の真相を報じていた。
   しかし修理を担当した米国のボーイング社は、事故後1か
  月足らずでミスを認めたが誰が何故ミスを犯したかは明かさ
  なかった。修理の実態に呆れながらも、外務省を通して群馬
  県警がボーイング社に乗り込み捜査に乗り出したが、門前払
  いで捜査にはならなかったらしい。報道では初めて、この修
  理を担当した一人と連絡が取れインタビューをしていたが、
  その修理担当は修理ミスではない、継ぎ板は最初から2枚に
  分かれていた、通常の事だと訳されていた。
                  https://bit.ly/2OY5MAb
  ───────────────────────────

航空機尾翼部分名称.jpg
航空機尾翼部分名称
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2018年08月28日

●「減圧の突風で垂直尾翼は壊れない」(EJ第4837号)

 ボーイング社は、自社にとって不利になる「隔壁の修理ミス」
の情報をなぜ進んで日本の事故調に通告したのでしょうか。
 それは、JAL123便の墜落事故が、当時世界中で使われて
いた人気機種ボーイング747特有の欠陥によるものではなく、
7年前にしりもち事故を起こした特定の機種の事故であることを
世界に発信したかったからです。
 しかし、事故調は、1985年8月27日の第1次中間報告で
は、そのことに言及しなかったのです。この修理ミスについて、
NTSB調査官のシュリード氏から説明を受けた事故調調査官の
藤原洋氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 たぶん修理ミスだろうとわかっていても、最終報告書でないと
書くわけにはいかない。「修理ミスがあった」なんてあの段階の
中間報告では書けない。中間報告はあくまで疲労亀裂がこうこう
あったという事実関係を書くしかない。それを読んで類推しても
らうしかない。              ──藤原洋調査官
      ──堀越豊裕著『日航機123便墜落最後の証言』
                    平凡社新書/885
─────────────────────────────
 事故調が修理ミスを取り上げないので、シュリード氏は、NT
SBのバーネット委員長に相談したところ、「ニューヨークタイ
ムズにリークしたらどうか。ただし、NTSBからの情報である
ことは伏せるよういってくれ」と命令されたといいます。そこで
シュリード氏は、ニューヨーク・タイムズの知り合いの記者に電
話し、1985年9月6日付のニューヨーク・タイムズ紙に次の
タイトルの記事が掲載されたのです。
─────────────────────────────
  日本の航空事故で手掛かり発見/7年前の事故が原因か
  ──1985年9月6日付、ニューヨーク・タイムズ紙
─────────────────────────────
 JAL123便の墜落としりもち事故とその修理ミスを関連付
ける記事です。日本の各紙は、あわてて翌日の夕刊一面で報道し
ています。以後の事故調の報告は、この修理ミスをベースとする
「圧力隔壁破壊説」一色になっていくのです。
 事故調の見解は、何らかの原因でJAL123便客室内に急減
圧が起き、客室内の与圧された空気が一気に吹き出し、後部圧力
隔壁を破壊するとともに、垂直尾翼も吹き飛ばしたという内部説
に立脚しています。
 そうであるとすると、頑丈な圧力隔壁を破壊し、垂直尾翼まで
吹き飛ばすようなもの凄いパワーの風が客室内を吹き抜けたこと
になります。立っている人が何人も吹き飛ばされるような突風で
すから、荷物なども一緒に吹き飛んだと思います。しかし、もっ
とも後部圧力隔壁の近くの「56C」の席に座っていた生存者の
落合由美氏の証言では、そんな突風など吹いていないのです。落
合氏の証言を再現します。
─────────────────────────────
 (「パーン」という)ピストルを撃ったように響く音だったと
思う。自分の席の後ろの天井あたり(機首に向かって左側後部側
面上部、最後尾トイレ付近の壁上部)から聞こえたように思った
が、振動は感じず、揺れもなかったと記憶している。酸素マスク
が自動的に落ち、録音されたアナウンスが自動的に「ただ今緊急
降下中」と流れたが、耳は多少詰まった感じで痛くなく、それほ
どの急降下は体に感じていなかった。一瞬白い霧が発生したが、
まもなく消えた。ハットラックという頭上の荷物収納扉が開くこ
ともなく、機体の揺れはほとんど感じなかったため、各スチュワ
ーデスたちは持ち場のお客様の様子を確認し、酸素マスクをつけ
る手伝いをしながら、通路を歩いていたことが遺族提供の写真か
らもわかる。         ──青山透子著/河出書房新社
  『日航123便/撃墜の新事実/目撃証言から真相に迫る』
─────────────────────────────
 この落合証言によると、何かが壊れて軽い減圧はあったものの
「振動は感じず、揺れもなかった」とし、「頭上の荷物収納扉が
開くこともなく、機体の揺れはほとんど感じなかった」といって
います。少なくとも後部圧力隔壁を吹き飛ばすような凄い突風が
客室内を吹き抜けたという状況は、落合証言からは感じとること
はできないのです。
 航空機客室内で何かが原因で急減圧が起こり、それによる突風
が起きたとしても、それが垂直尾翼を破壊する力などないと明言
する学者の証言が当時の週刊誌に載っています。次の2人の学者
のコメントです。
─────────────────────────────
◎東京大学工学部・航空構造力学/小林繁夫教授
 隔壁から噴き出た空気が垂直尾翼を壊すことなど力学的に絶対
ありえない。内と外の圧力差はせいぜい0・4気圧ぐらいだから
てっぺん(垂直尾翼)のプラスチック製おおいを飛ばすぐらいの
力しかない。(中略)隔壁が全部そっくり破壊されたのなら別だ
が、現場でみつかった隔壁の写真を見る限りかなり小規模な破壊
しか起きていないようだ。生存者も、吸い出されるような強い風
を感じていないことからすると、空気はかなりゆっくりした速度
で外へ抜けていったのではないか。
        ──『サンデー毎日』/1985年9月8日号
◎東京大学工学部・航空工学佐藤淳教授
 (前略)果してこの程度の気圧差と直進するはずの空気の流れ
を考えると、風圧が垂直尾翼を吹き飛ばしたり、また、バーンと
いう音が出るのかどうか、はなはだ疑問である。
       ──『週刊サンケイ』/1985年9月19日号
       ──角田四郎著『疑惑/JAL123便墜落事故
      /このままでは520柱は瞑れない』/早稲田出版
─────────────────────────────
         ──[日航機123便墜落の真相/007]

≪画像および関連情報≫
 ●急減圧は事故調によって創作されたもの
  ───────────────────────────
   事故調は、JA8119号機の事故原因を、後部圧力隔壁
  が損壊し、引き続いて尾部胴体・垂直尾翼・操縦系統に損壊
  が生じたため、と「圧力隔壁主犯説」を採っている。しかし
  この「圧力隔壁主犯説」は事故調のオリジナル・シナリオで
  はなく、この事故を圧力隔壁の修理ミスによる特異な事例と
  して処理することを狙ったアメリカの原案によるものであっ
  た。その辺の事情について、日本経済新聞は、事故発生1年
  後の86年8月25日の朝刊で「後部圧力隔壁の破壊に続い
  て起きた垂直尾翼などの空中分解の全容が24日、明らかに
  なった。米側がコンピューター解析をもとにまとめ、事故調
  に提出したものである」と伝えている。
   事故調は、この「圧力隔壁主犯説」を採用したために、必
  然的に起きる急減圧をデッチアゲなければならなくなった。
  本章では、報告書がいうように圧力隔壁が損壊し、急減圧が
  発生した場合、当然、操縦室と客室において起こる現象と、
  相模湾の上で事故が発生したとき、実際に事故機の機内で起
  こっていたことがらを比較し、本当にJA8119号機に急
  減圧が発生していたのか、否かを、事故調査報告書をはじめ
  公表された資料をもとに検証する。報告書は、修理ミス部を
  起点として圧力隔壁が損壊したことがこの事故の発端である
  としている。          https://bit.ly/2P4YDxP
  ───────────────────────────

後部圧力隔壁の修理ミスの部分.jpg
後部圧力隔壁の修理ミスの部分
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2018年08月29日

●「R5ドア崩壊説はなぜ消滅したか」(EJ第4838号)

 JAL123便の機内では、それほどひどいものではないもの
の、急減圧が起きたことは確かです。問題は、その急減圧の原因
が何かです。これに関して、「R5ドア説」というものがありま
す。それは、8月27日に発表されたボイスレコーダー筆記録の
なかにみられます。客室内のスチュワーデスかパーサーと航空機
関士との対話です。
─────────────────────────────
◎18時33分12秒
 チャイム(インターフォンの呼び出し)
 スチュワーデス:アール・・・(聞き取り不能)
 航空機関士:アールファイブ(R5)の窓ですか。はい了解し
 ました。わかりました。
◎18時34分06秒
 副操縦士:カンパニーでお願いします。
 航空機関士:はい、了解しました。
◎18時35分34秒
 航空機関士:ええとですね。いま、あのー。アールファイブの
 ドアがあのー。ブロークンしました。えー
◎18時35分53秒
 カンパニー:キャプテンのインテンションとしては、リターン
 ・トゥー・東京でしょうか?
 航空機関士:はい、なんですか?
 カンパニー:羽田に戻ってこれますか。
 航空機関士:えーっと。ちょっと待って下さい。今エマージェ
 ンシー・ディセント(緊急降下)してますので・・・
◎18時36分04秒
 航空機関士:もう少ししたら再びコンタクトします。このまま
 モニター(監視)しておいてください。
       ──角田四郎著『疑惑/JAL123便墜落事故
      /このままでは520柱は瞑れない』/早稲田出版
─────────────────────────────
 ボイスレコーダーは、コックピット内の機長、副操縦士、航空
機関士同士の会話やその他の音、客室乗務員からのインターフォ
ンでの連絡などを30分間録音します。上記の対話は、客室乗務
員が、アールファイブの窓かドアについて、航空機関士に情報を
伝えています。なお、客室乗務員は次の順番で昇進します。
─────────────────────────────
   スチュワーデス → アシスタント・パーサー →
   チーフ・パーサー
─────────────────────────────
 ボーイング747において当時の日本航空では、2階席を含め
客席内を6区画に分け、さらに左右にそれぞれ客室乗務員を配置
してサービスを行っています。「R5」というのは1階席の一番
後ろの区域の右側をあらわしています。JAL123便の客室乗
務員の配置図を添付ファイルにしています。
 上記の対話は、R5担当のスチュワーデス(大野美紀子氏が担
当)が、自分の持ち場のR5の「窓」の異常を発見し、インター
フォンでコックピットの航空機関士に連絡を入れたのではないか
と思われます。
 しかし、コックピットでは、例の「ドドーン」の衝撃音が起き
た直後であり、混乱しており、よく聞き取れなかったようです。
そのためか、航空機関士は「R5の『ドア』がブロークンして」
と機長に伝えています。「窓」と「ドア」を間違えています。そ
して、対話に入っていませんが、降下とコックピッドでの酸素マ
スクの使用を提言しています。
 この対話から推測されることは、R5の「窓」が何らかの原因
で壊れ、それによって客室内の急減圧が起きたのではないかと思
われます。
 その後の副操縦士の「カンパニーでお願いします」は、日航社
内の無線交信とつないでくれという意味です。したがって、18
時35分34秒以降の対話は日航の社内無線とのやりとりです。
この部分は、後日日航側から提供されてわかったのです。ここで
も「アールファイブの『ドア』が・・・」になっています。
 この「R5ドア破壊」について、角田四郎氏は次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 日航が事故機との交信で伝えた「R5ドア、ブロークン」で、
当初事故原因がこのR5ドア(最後部右側ドア)にあると思われ
たが、墜落現場からR5ドアが無キズ(窓ガラスは破損)で発見
され、落合証言でR5ドアには触れられていない(R5の異常が
あれば落合さんも気付くはず)ことに加え、13、14日には相
模湾から垂直尾翼の一部や胴体最後部の補助動力装置(APU)
の一部が回収されたことでR5ドアの原因説は否定された。
                ──角田四郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 しかし、実際にはドアではなく、ドアの「窓」だった場合は、
落合氏が気づかなかった可能性があります。実際にドアには異常
がなく、窓は壊れていたのです。墜落の衝撃で壊れたと思われま
すが、落ちる前から壊れていたとも考えられるからです。窓の破
壊であれば、それによるある程度の急減圧は起きるし、そのレベ
ルは生存者の証言とも一致します。また、それにより、酸素マス
クも下がってきているのです。
 それでも、「R5ドアの『窓』の破壊」が、なぜ、取り上げら
れなかったかについては、内部説を主張するには、ドアならとも
かく窓の破壊では、垂直尾翼の破壊の説明ができなくなるからで
はないかと考えられます。何か内部説にとって都合の悪い情報は
意図的に外されている操作がそこに感じられます。実は生存者の
落合証言についても何らかの操作が加えられているフシが多々あ
るのです。落合氏がいってもいないことが早い段階で流布されて
いるのです。   ──[日航機123便墜落の真相/008]

≪画像および関連情報≫
 ●明石家さんまが日航機墜落事故を免れた訳
  ───────────────────────────
   1985年(昭和60年)8月12日月曜日18時56分
  東京(羽田)発大阪(伊丹)行JAL定期123便ボーイン
  グ747SR−46が群馬県多野郡上野村の高天原山の尾根
  に墜落した単独機では世界最大の飛行機事故。
   当時生まれてない方でも、テレビなどでこの事故のことを
  知ってる方は多いと思います。この事故では乗員乗客524
  名が搭乗していたが墜落によりその内の520名が犠牲とな
  りました。
   犠牲者の中には歌手の坂本九さん、阪神タイガース球団社
  長中埜肇さん、元宝塚歌劇団の北原瑤子さん、ハウス食品社
  長の浦上郁夫さん、コピーライターの藤島克彦さんら数名の
  著名人や、甲子園球場で行われていた夏の高校野球を見に、
  1人で搭乗していた小学生なども含まれていました。
   そんな事故ですが実はこの事故の起きた便にさんまさんも
  搭乗する予定だったんです。当時さんまさんは人気生ラジオ
  番組「MBSヤングタウン」にレギュラー出演しており大阪
  へ生放送に行く際は以前から日本航空JAL123便を使用
  しておりました。そして、その事故当日もその123便を使
  用する予定だったそうです。が、大阪への移動の前に収録し
  ていた「オレたちひょうきん族」が予定よりも早く終了した
  ため123便をキャンセルして、ひとつ前のANA35便で
  大阪に向かったと言われています。そして、あの事故が起き
  ました。            https://bit.ly/2BNiDmR
  ───────────────────────────


 ●図出所/──青山透子著/河出書房新社/『日航123便/
  撃墜の新事実/目撃証言から真相に迫る』

JAL123便客室乗務員配置図.jpg
JAL123便客室乗務員配置図
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2018年08月30日

●「墜落事故直後日航は何を求めたか」(EJ第4839号)

 JAL123便が御巣鷹山に墜落したのは1985年8月12
日のことです。18時56分30秒、羽田、所沢両レーダーから
機影が消えています。しかし、墜落現場の特定は、翌13日の5
時37分、実に10時間30分を要しています。これは、きわめ
て異例なことです。そんなに時間がかかるはずがないからです。
 JAL123便の機影が消えるまでは、レーダーは同機の位置
を把握していたはずです。しかも、同機の多くの目撃情報が、N
HKをはじめとするテレビ局などに寄せられていたのです。しか
も、特定すべき対象は、乗客乗員が500人以上乗っている大型
のジャンボ・ジェット機です。夜とはいえ、その墜落場所の特定
に、なぜ、10時間30分もの時間がかかったのでしょうか。
 生存者が発見されたのは、13日午前10時54分です。11
時30分、フジテレビが、現場から生存者救出の生中継を開始し
ています。そして、14時8分に落合由美氏と吉崎博子氏、14
時12分に吉崎美紀子氏、川上慶子氏の4人は、多野総合病院に
収容され、治療を受けています。
 実は、墜落直後から、日航の調査団とみられる集団が素早く動
き出しているのです。角田四郎氏によると、墜落現場では、警察
が現場検証に入る前に、多くの遺体がころがっている凄惨を極め
る現場に入り、何かを探しているらしく、写真を撮ったりしてい
たといいます。もちろん、許可を得てやっているのでしょうが、
一体何を探していたのでしょうか。
─────────────────────────────
 2015年8月14日、現場からのテレビ中継を見ていた私を
日航がまた驚かせたのである。墜落現場に日航の白いつなぎ服が
うようようごめいている。後の新聞で見ると遺体捜索中の自衛隊
員や機動隊員とは全く異なる行動である。機体の写真を撮ったり
のぞき込んだり。つまり機体の調査を目的に入山しているのであ
る。この時点で彼らの行動に疑問を語るコメントはマスコミには
なかったが、私は腑に落ちない思いがしてならなかった。事故が
日航の不備で起ったか否かはまだわからない。わからないのであ
るから、その可能性もある。にもかかわらず、日航は警察が現場
検証をする前に現場で何かしているなんて・・。それに私はやや
感情的にもなってこう考えていた。「日航という会社は、自分達
が死に追いやった(不可抗力であっても)乗客の屍の前であんな
ことをやるんだ」と。私のイメージの中にあった「大会社日航」
「一流企業日航」、そして「世界に名だたる日航」が、このとき
音をたてて崩れ始めるのを感じていた。
       ──角田四郎著『疑惑/JAL123便墜落事故
      /このままでは520柱は瞑れない』/早稲田出版
─────────────────────────────
 そして、生存者4人が多野総合病院に入院してから、20時間
後の15日、午前10時頃、日本航空の役員2人が、落合由美氏
を見舞っています。そのとき、落合氏は、当時まだ日航のアシス
タント・パーサーを務めており、たまたま非番中にJAL123
便に乗っていたのです。しかし、この見舞いもきわめて不自然な
のです。見舞ったという役員は次の2名です。
─────────────────────────────
           松尾 芳郎氏
           真弓 義康氏
─────────────────────────────
 この2人の役員についての情報はありませんが、松尾芳郎氏に
ついては、その後、日本航空取締役から、日本の航空機用内装品
メーカー「ジャムコ」の社長を務めていることから、技術系の役
員であることは間違いないと思われます。真弓義康氏の情報はあ
りませんが、この人も機体のことに詳しい技術系役員でしょう。
もちろん、落合氏にとっては一度も会ったことがない役員である
と思います。
 病院側としては「面会謝絶」を掲げており、家族との面会も許
していない時点です。当時病院には安否を求める家族が2000
人も詰めかけており、ごった返していたのです。そのなかでの見
舞いです。しかし、見舞いというのであれば、上司か同僚がくる
のがスジではないでしょうか。これら2人の役員は、落合氏の上
司でもなければ、職務上も何も関係のない役員であり、落合氏を
見舞うのにはまるでふさわしく人たちです。おそらく会社の都合
で、墜落の状況について、少しでも早く落合氏から、重要な情報
を聞き出したかったものと思われます。病院も日航の役員という
ことで、秘密裡に面会を許したのでしょう。
 しかもお粗末なことに、この秘密の面会がバレてしまい、日航
はメディアに対して、落合証言の一部を公開せざるを得なくなり
ます。これが8月22日のEJ第4833号でご紹介した落合証
言です。しかし、この証言について、落合氏は後日その内容を明
確に否定しています。
 日航は、無理を重ねて落合氏に会い、事故調の頭越しに「リン
ク破壊説」という名の仮説を公表します。事故の当事者が墜落の
原因を事故調とは別に公表するのは、事故調に対して失礼であり
考えられないことです。「リンク破壊説」について、角田氏は次
のように述べています。
─────────────────────────────
 日航が可能性として出した「リンク説」は、修理、点検のミス
でないことを印象づけるために流した根拠のない説として一蹴さ
れてしまった。しかし、日航はこの説を落合証言中にある「トイ
レの上の天井に穴」が開いたことと、相模湾から発見された垂直
尾翼の一部などから垂直尾翼の倒壊を知り、その双方を証明しう
る可能性の一つとして、リンク、つまり、垂直尾翼と機体胴体部
の結合金具の破壊説を唱えたのである。この結合金具も無キズで
発見され、リンク説も消滅したのである。
                ──角田四郎著の前掲書より
─────────────────────────────
         ──[日航機123便墜落の真相/009]

≪画像および関連情報≫
 ●日航機墜落事故は今のハイテク機でも起こる/杉江弘氏
  ───────────────────────────
   一般的にアメリカ人のパイロットは世界で起きた大事故に
  関心を寄せ、自分ならどうやって生還を果たすのかを考える
  習慣がある。それは子どものときから、何か問題が起こると
  親が「あなたならどうするの?」と必ず聞くような文化の上
  に成り立っているからなのかもしれない。
   一方、日本では何か事故や事件が起きても、犯人を探し出
  して罰を科すことで終わりにするという文化があり、再発防
  止ということは苦手だ。
   論理的に原因が解明されなければ、再発防止策は打ち出せ
  ないというのは一理あろう。しかし、過去に起きた航空事故
  では原因が特定できなかったり、ブラックボックスを回収で
  きても政治的な要因で公表されず、うやむやにされた事例も
  少なくない。それでも、専門家による分析によって、再発防
  止につながる教訓を見いだすことは不可能ではない。
   近年では「フライトレーダー24」というサイトを見れば
  ブラックボックスの回収以前でも、あるいはそれが発見でき
  なくても、飛行状態のかなりの部分が解析できて、再発防止
  の上での教訓を得ることもできるようになった。日航機事故
  の原因は、圧力隔壁の破損による減圧によって起きた垂直尾
  翼と油圧ラインの損傷だとする航空事故調査委員会の見解や
  機体固有のトラブル、あるいは都市伝説となった自衛隊や米
  軍による撃墜説などいろいろいわれてきた。では、真相はど
  こにあるのか。         https://bit.ly/2MTCp4u
  ───────────────────────────

JAL123便墜落事故/救出される生存者.jpg
JAL123便墜落事故/救出される生存者
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2018年08月31日

●「墜落直後の日航の不可解な諸行動」(EJ第4840号)

 JAL123便が飛行トラブルに陥っているという最初の情報
を知ったとき、おそらく日本航空の幹部は真っ青になったと思い
ます。何しろ、この飛行機には乗客乗員が524人も乗っており
もし墜落すれば、まず、生存者は望めず、全員死亡という最悪の
事態になると、日本航空として経営上深刻な状況に陥ってしまう
からです。
 まして、日航としての安全対策にミスがあったとすれば、大変
なことになります。したがって、どこよりも早く情報を入手し、
事故調に調査の主導権をとられないようにすることが必要になり
ます。その結果、日航は次の2つの仮説をあえて主張し、事故調
の調査をリードしようとしたのです。
─────────────────────────────
          1.R5ドア破損説
          2. リンク破損説
─────────────────────────────
 「R5ドア破損説」は、日航がカンパニー(日航社内の無線通
信)で入手した情報であり、日航が主導権が取れる情報です。何
らかの原因で、R5ドアが破損し、機内に急減圧が起き、突風が
吹いて、後部圧力隔壁が破壊されたのではないかという説です。
 この場合、R5ドアは落合氏の座っていた「56C」の座席に
近いので、落合氏がR5ドアの破損に気がついていたかどうかを
確認する必要があります。
 「リンク破損説」のリンクとは、垂直尾翼の取り付け金具のこ
とです。この金具が衝撃によって引きちぎれ、垂直尾翼が破壊さ
れたのではないかという考え方です。これも「56C」の席に近
いので、これについても落合氏に確認する必要があります。
 2人の日航の役員が、手術をしてから20時間しか経っていな
い15日午前中に、強引に落合由美氏の病室(そのときは集中治
療室)を訪れたのは、この2つの仮説に深く関係する事実を落合
由美氏に確認したかったのです。
 しかし、落合氏は十分回復しておらず、推測ですが、肝心なこ
とはほとんど聞き出せなかったのではないかと思います。しかし
落合証言は公表されています。これは,落合氏に面会した日航の
2人の役員のメモに基づく証言──第1回の落合証言ということ
になります。これは、8月22日のEJ第4833号でご紹介し
ていますが、以下に再現します。
─────────────────────────────
 私は56Cの座席で雑誌を読んでいた。回りの状況はいつもと
変わりなかったが、(離陸から13分後の)午後6時25分ごろ
「パーン」という音が上の方でした。そして耳が痛くなった。ド
アが飛んだかどうかはわからない。
 床下やその他で、爆発音は聞えなかった。同時にキャビン(客
室)内が真っ白になり、キャビンクルーシート(客室乗務員用座
席)の下のベントホール(差圧調整口)が開く。床は持ちあがら
なかった。ラバトリー(便所)上部の天井もはずれた。同時に酸
素マスクがドロップ。プリレコーデット・アナウンス(あらかじ
め録音された緊急放送)が流れ出した。この時ベルトサインは消
えていなかったと思う。
       ──角田四郎著『疑惑/JAL123便墜落事故
      /このままでは520柱は瞑れない』/早稲田出版
─────────────────────────────
 この第1回の落合証言には、日航の仮説に都合の良いウソが混
じっています。まず、いえることは、証言が手術から20時間後
で集中治療室に入っている病人とは思えないほど、理路整然とし
ていることです。これは落合氏を見舞った役員が書いたものと考
えざるを得ないのです。
 日航が確認したかった「R5ドアの破損」については、落合氏
から、何の言及もなく、それに御巣鷹山の墜落現場から発見され
たR5ドアは、ガラスは割れていたものの、R5ドア自体には異
常がなかったことから、「R5ドアの破損」の仮説は完全に消え
ています。
 証言のなかに、「ラバトリー(便所)上部の天井もはずれた」
という表現があります。このラバトリーは落合氏の席に近く、本
当であれば、ラバトリーの天井に穴が空いたことを意味すること
になります。それなら急減圧は起こり、「リンク破損説」を立証
する証拠になるといえます。
 しかし、これについては落合氏は、後にこの証言自体を全否定
しています。角田史郎氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 後に私が取材した日航のパイロットの一人は、「アレは、まっ
たくの捏造です。日航の誰がやったかも判っています。私は記事
が出た後で落合さんに聞いてみましたが、『私はあんなこと言っ
たおぼえはないわよ』と言っています」と話してくれた。
                ──角田四郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 とくに「同時にキャビン(客室)内が真っ白になり、キャビン
クルーシート(客室乗務員用座席)の下のベントホール(差圧調
整口)が開く」の部分は、まったくの捏造であるというのです。
「キャビンクルーシート(客室乗務員用座席)の下のベントホー
ル」は、アシスタント・パーサーである落合氏は教育されておら
ず、知るはずがないのです。それにキャビンクルーシートは、落
合氏の席からは離れているし、ましてその下のベントホールがみ
えるはずがないのです。
 しかし、リンク破壊説は、ラバトリーの天井には穴が開いてい
ないという時点で否定されています。それに加えて、相模湾から
上がった垂直尾翼の一部を見ても、リンクは引きちぎれておらず
仮説として成立しないのです。実際に、その後日航側は何の発言
もしなくなりましたが、これは運輸大臣から、緘口令を敷かれた
と、当時の渡辺広報部部長はいっています。
         ──[日航機123便墜落の真相/010]

≪画像および関連情報≫
 ●御巣鷹山JAL123便の真実
  ───────────────────────────
   ここへ来て御巣鷹山JAL機墜落に関して情報がどっと流
  れ出てきています。このような国家機密の重大事案であって
  も、政権交代による権力の移行につれ、前自民党政権の最大
  の闇として、暴かれ出されて来ています。
   圧力隔壁の破損により尾翼が吹き飛び、ダッチロールしな
  がら迷走して墜落したとされているJAL機のフライトレコ
  ーダーによる交信記録を聞いてください。ただ、当然これは
  政府により捏造されていますから、真実は隠匿され録音から
  消され政府に都合よく作り変えられています。ただ、当時の
  パイロット達の悲痛な叫びが聞き取れ、思わず目頭が熱くな
  り、彼らの無念と絶望の真実を少しでも後世に伝えて行かな
  ければと思っています。この映像による交信記録によれば、
  ほぼマスコミ報道されている通りの状況推移であった事がわ
  かります。しかし多くの不自然な部分や謎の部分が判明して
  きています。
   落合由美さんは日本航空の客室乗務員。当日は非番で12
  3便に乗り合せていました。尾翼が吹き飛んだと時のパーン
  という高い乾いた大きな音は、落合さんの証言の通りですが
  実は、この音の6分前から123便の操縦席では、追尾して
  くる何者かを確認して逃れようと行動を始めているのです。
  ボイスレコーダーなどの分析記録によると、操縦クルーや乗
  客の一部がその謎の飛行物体を目撃しているようなのです。
  事故調査委員会はそういう事実も知ったうえで、あくまで圧
  力隔壁破損が垂直尾翼破壊の原因であることで、決定してし
  まっています。         https://bit.ly/2BPVAI7
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JAL123便の失われた垂直尾翼.jpg
JAL123便の失われた垂直尾翼
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 日航機123便墜落の真相 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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