2018年07月09日

●「新井教授の本へのネットでの反論」(EJ第4802号)

 新井紀子教授の著書『AIvs教科書が読めない子どもたち』
(東洋経済新報社)に対して、ネット上に多くの反論記事がアッ
プロードされています。売れているからです。そのなかで、ひと
きわ目を引くのは次のブログです。批評は5章に分かれているの
で、章ごとに参照できるようにしておきます。
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 東ロボくんは、なぜ失敗したのか『AIvs教科書が読めない
子どもたち』
 ◎批評1 ・・・ https://bit.ly/2KCkm2y
               東ロボくんはなぜ失敗したのか
 ◎批評2 ・・・ https://bit.ly/2tZaGVq
          文章を読めればAIに仕事を奪われない?
 ◎批評3 ・・・ https://bit.ly/2KE1IaC
         そもそもコンピュータが意味を理解するとは
 ◎批評4 ・・・ https://bit.ly/2J19Ko0
            コンピュータで文の意味を理解しよう
 ◎批評5 ・・・ https://bit.ly/2zh0w7A
 「太郎は花子が好きだ」をコンピュータに意味理解させました
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 このブログは、株式会社ロボマインド代表取締役、田方篤志氏
が書いており、大変内容があります。とくにAIや、ロボットに
対する記述は示唆に富む内容であり、多くのヒントが得られると
思います。そういうわけで、AIから少し離れるテーマもあると
思いますが、いくつか取り上げて、何回か、EJとして要約しま
す。詳細については、それぞれの章を参照してください。
 まず、『AIvs教科書が読めない子どもたち』に関して、冒
頭に次の記述があります。
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 現在、AI関連の書籍で、『AIvs教科書が読めない子ども
たち』という本が売れているようです。著者は、AIロボを東大
に合格させる「東ロボくん」というプロジェクトで有名な新井紀
子教授です。
 「東ロボくん」プロジェクトには、当初から興味があったので
さっそく読んでみたのですが、自然言語処理の浅い理解や、「知
能=偏差値」という思い込みなど、著者の主張には首をかしげざ
るを得ないことが多かったので、今回から何回かにわけて、本書
について解説していきます。
 AIが、大学の入試問題を解くとなると、数学や歴史の穴埋め
問題なら勝算はあると思いますが、一番苦戦するのは国語です。
なぜなら、現在の自然言語処理では、文章の意味を理解すること
ができないからです。
 英語の翻訳なら、意味を理解できなくとも、それらしい翻訳を
作り出すことは不可能ではありませんが、文章の意味理解そのも
のを問う国語の問題があるかぎり、東大合格など絶対に不可能な
のです。そのような一見、無謀なチャレンジですが、国の予算を
獲得し、税金を投入するのですから、何らかの秘策があるのだと
楽しみに読み始めました。
 ところが、そのような期待は見事に裏切られてしまいました。
(新井紀子教授は)「国語はどう考えても正攻法でなんとかでき
るとは思えません(P92)」と、堂々と宣言しているのです。
                    ──「批評1」より
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 新井教授は、『AIvs教科書が読めない子どもたち』のなか
で書いているのは、「東ロボくん」を東大に合格させようとする
プロジェクトを推進する過程で、AIにはできないことがたくさ
んあることがわかってきます。
 対話はしているが、その意味は理解されていないし、小論文テ
ストでも、それらしき文章は書くものの、よく理解して書いてい
るとは思えないレベルです。しかし、そのような言葉が理解でき
ないAIであるにもかかわらず、とくに読解力において、人間の
中高生がAIに劣る傾向があることに、新井教授は愕然とするの
です。そして、中高生の国語の読解力のレベルを検査するRST
(リーディング・スキル・テスト)を開発し、検査を行い、その
事実が裏付けられたことを公表する──これがここまでEJが述
べてきたことのすべてです。
 ここで新井教授の経歴について、知っておくべきことがありま
す。新井紀子氏は、一橋大学法学部の出身で、イリノイ大学数学
科の博士課程を修了した理学博士であり、数学者です。したがっ
て、AIの専門家でも、ロボットの専門家でもないのです。しか
し、AIには造詣が深く、現職は、国立情報学研究所の教授を務
めています。
 新井教授は、法学部出身であることを明らかにしたうえで、読
解力の向上は、なるべく若い段階(中高生)で向上させるべきで
あるとして、次のように述べています。
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 私はもともと法学部で、刑法の授業で、有名なえん罪事件の被
告となった女性のお話を伺ったことがあります。あまりに理路整
然としていたため、なぜこの人を警察は誤って逮捕したんだろう
と思いました。しかしのちに、法廷という言語と論理で説明する
以外に疑いを晴らすことのできない場で、彼女は変わっていった
のではないかと思うようになりました。
 人は変われます。だから簡単に諦めてはいけない。私がこれま
で指導してきた学生や、ともにプロジェクトを動かしてきた仲間
たちの中にも読解力を上げたり、論理的になれたり、変わること
ができた人たちがいます。でも大人が変わるには、時間などかな
りのコストがかかってしまう。偏った読み方を長年続けてしまっ
ているからです。だから早めに修正したほうがいいのです。
                  https://bit.ly/2IQsHtM
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          ──[次世代テクノロジー論U/046]

≪画像および関連情報≫
 ●感想文/『AIvs教科書が読めない子どもたち』
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   実を言えば、この本はあまり紹介するつもりはありません
  でした。話題の書であるためわざわざ取り上げるまでもなく
  著者本人による内容紹介も他の人による書評もあちこちで出
  ていますし、何より私は新井先生をシンギュラリティ懐疑論
  者のライバルだと思っているので(笑)とはいえ、一応私の
  「感想」を散漫にまとめておきたいと思います。詳細な内容
  紹介や書評は別の方に譲ります。
   前半部分は、コンピュータに東大入試問題を解かせる「東
  ロボくんプロジェクト」の報告をベースにして、現在のAI
  技術と機械学習に関する解説を行なっています。シンギュラ
  リティ懐疑論としての議論は簡潔かつ妥当で、説得力のある
  ものだと思います。たびたび出てくる『この「だから」は、
  論理的ではありませんが・・』という言葉には笑ってしまい
  ました。
   私が思うに、著者が断固たるシンギュラリティ懐疑論者と
  者となったのは、2016年の内閣府タスクフォース*1での
  齋藤元章氏との接触がきっかけではないかと思います。その
  点を考慮すると、本書の説明は、「現状の技術の延長線上に
  シンギュラリティはない」ことの説明になっていても、齋藤
  氏が唱えるシンギュラリティ説 (と、そのベースになったカ
  ーツワイル氏の説) を正面から捉えた反論にはなっていない
  と感じました。         https://bit.ly/2KQ8b1o
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答案に答えを書く「東ロボくん」.jpg
答案に答えを書く「東ロボくん」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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