2018年07月05日

●「日本語がきちんと読めない中高生」(EJ第4800号)

 昨日のEJを少し振り返ります。国立情報学研究所教授の新井
紀子氏は、6年間かけて、「AIロボットは東大に入れるか」の
テーマに取り組み、東大は無理という結論を出しています。新井
教授は、AIが言葉の意味を理解するのは困難であるという考え
方に立っています。したがって、巷でよくいわれる「人類はいず
れAIに征服される」というようなことは、まず起きないと主張
しています。
 しかし、それでもAIは偏差値57に達したのです。有名私大
に入れるレベルですが、AIは言葉の意味を理解して問題を解い
ているのではないのです。それでも「東ロボくん」に問題を与え
て小論文を書かせると、教科書とネットのウィキペディアなどを
参照し、それらから文を取り出して組み合わせ、最適化を施して
ちゃんと読める答えの文章を作成できるのです。
 しかし、新井教授が愕然としたのは、東ロボくんの小論文が学
生の文章よりもかなりマシであることに気付いたときです。人間
の学生が東ロボくんに負けている──文章の意味を理解できない
AIになぜ人間が負けるのかという疑問です。
 果して人間は、本当に文章を理解できているのか。そこで新井
教授は、「リーディング・スキル・テスト」(以下、RSTと略
記)を開発し、中高生にRSTを受検させたのです。RSTにつ
いて、新井教授は次のように述べています。
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 問題は6タイプあり、「それ」「これ」など指示詞、省略され
た主語や目的語が何を指しているか判断する「照応」、主語や目
的語がどれか判断する「係り受け」、論理と常識を用い、与えら
れた文から推論する「推論」、定義を読んで具体的にどのような
コトやモノがその例になりうるか見分ける「具体例同定」、2つ
の文が同義であるか判断する「同義文判定」、文章に対応する図
表を見分ける「イメージ同定」だ。中学・高校の教科書や辞書、
新聞に掲載された文から問題を作成している。つまり、これが読
めなければ、教科書も辞書も新聞も読めないことになる。
                  https://bit.ly/2KKtWQb
─────────────────────────────
 RSTの問題は、かなり精密に作成されています。RSTは、
ペーパーテストではなく、コンピュータで無作為に受検者に示さ
れます。受検者によって問題が異なるので、「項目反応理論/I
RT」で解析が行われています。「項目反応理論」についてウィ
キペディアの定義を示しておきます。TOEFLなどでも使用さ
れており、信頼度の高い理論です。
─────────────────────────────
 項目反応理論は、評価項目群への応答に基づいて、被験者の特
性(認識能力、物理的能力、技術、知識、態度、人格特徴等)や
評価項目の難易度・識別力を測定するための試験理論である。こ
の理論の主な特徴は、個人の能力値、項目の難易度といったパラ
メータを、評価項目への正誤のような離散的な結果から確率論的
に求めようとする点である。
     IRT:Item Response Theory; Item Latent Theory
                  https://bit.ly/1ZUtPOx
─────────────────────────────
 実際にはどのような問題が出題されたのでしょうか。
 このRSTに基づく問題を2つ示すので、やってみていただき
たいと思います。
─────────────────────────────
【問題@】/「係り受け」問題
 「アレックス/Alex」は、男性にも女性にも使われる名前で、
女性の名「アレクサンドラ/Alexandra」 の愛称であるが、男性
の「アレクサンダー/Alexander」 の愛称でもある。この文章に
おいて、以下の文中の空欄に当てはまる最も適当なものを選択肢
のうちから一つ選びなさい。
    Alexandra の愛称は( )である。
    @Alex  AAlexander  B男性  C女性

【問題A】/「同義文判定」の問題
 幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の
警備を命じた。
 上記の文が示す内容と、以下の文が表す内容は同じか。「同じ
である」「異なる」のうちから答えなさい。

 1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の
警備を命じられた。
                  https://bit.ly/2IS68F0
─────────────────────────────
 「問題@」の正解は@の「Alex」です。これについて、中学生
の正解率は37・9%、高校生は64・6%でした。何でもない
問題ですが、読み取れていないのです。とくに中学生はかなりひ
どい結果です。
 「問題A」の正解は「異なる」です。「問題@」よりもやさし
い問題です。これについて中学生の正解率は57・4%、高校生
は72・3%でした。これほど明確に違う日本文を読み取れない
中学生が42・6%、高校生でも27・7%もいるのです。
 それにしても「問題A」の中学生の正答率57・4%は低いの
一言に尽きます。サイコロを転がして正解を選ぶ確率が50%で
すから、57・4%は、それよりも少しマシといった程度でしか
ないのです。
 日本語の文章の読解力が学力の伸びの前提になっています。彼
らがこのまま大人になるので、書籍はもちろんのこと、新聞すら
読めない社会人が現在増えているのです。ちなみに、20代の日
本人の新聞の購読率は9%と10%を切っています。これでは、
AIを使いこなすことはできず、AIに使われてしまう運命にあ
ります。      ──[次世代テクノロジー論U/044]

≪画像および関連情報≫
 ●「教科書が読めない」子どもたち/教育現場の深刻な事情
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   子どもたちは想像以上に文章を理解できていない。「だが
  解決策はあるはずだ」。教育の現場では、対策が始まってい
  る。「うちの子、算数の計算問題はできるけど、文章題はだ
  めで」
   この傾向は、おそらく多くの親が実感しているのではない
  だろうか。しかし、なぜ文章題ができないのか。それを明ら
  かにしたのが、国立情報学研究所の新井紀子教授が開発した
  基礎的読解力判定のリーディングスキルテストだ。
   RSTは、生活体験や知識を動員して、文章の意味を理解
  する「推論」、文章と、図形やグラフを比べて一致している
  かどうか認識する「イメージ同定」、国語辞典的、あるいは
  数学的な定義と具体例を認識する「具定例同定」など、読解
  力を6分野に分け、その能力を問うものだ。
   このテストをいち早く取り入れたのが、戸田市(埼玉県)
  教育委員会だ。教育政策室指導主事の新井宏和さんは、その
  経緯を次のように語る。
   「全国学力・学習状況調査の活用問題が解けるような子ど
  もたちにしたかった。幸いにも新井教授と戸田市の戸ケ崎勤
  教育長が知り合いで、教育長がRSTに高い関心を示し協力
  して取り組むことになりました」。
   テストは2015年から段階的に実施され、17年は市内
  の全中学生と、小学6年生全員の4500人が参加した。問
  題は、国立情報学研究所特任研究員の菅原真悟さんの指導の
  もと、市内の小中学校の教員が作成した。
                  https://bit.ly/2KDrmLV
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RSTの作成者/新井紀子教授.jpg
RSTの作成者/新井紀子教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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