2018年05月17日

●「AIとIAの違いについて考える」(EJ第4765号)

 現在でも「人間の『知能』は何か」については解明されていま
せん。したがって、それを人工的に作り出す「人工知能」の定義
が明確でないのは当然です。そこで、人工知能の第一線の研究者
である松尾豊東京大学大学院教授は、人工知能を次の2つに分け
て考えています。再現します。
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   1.人工知能は最先端の情報技術を指すものとする
   2.人工知能とは機械学習・深層学習のことである
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 1956年のダートマス会議から今年で62年になりますが、
ここ2〜3年前から急に人工知能(AI)が話題が中心になった
感があります。それは、60年以上の年月が経過して、大ざっぱ
にいえば、上記「1」が「2」に移行したからです。
 ダートマス会議から約15年が経過した1970年に後のイン
ターネットの原型になるアーパネットが開発されています。そし
て、1970年代に入って、小型コンピュータ「PC」の開発が
始まっています。ともにPCの開発を目指した次の有名2社の創
業も1970年代です。
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     ◎マイクロソフト創業 ・・ 1975年
                  ビル・ゲイツ
     ◎   アップル創業 ・・ 1976年
              スティーブ・ジョブス
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 この1970年代からいわゆるIT開発の時代が始まることに
なります。そして、1970年代から、人工知能の研究は、次の
2つの学派にわかれることになります。
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     1.AI/  Artificial Intelligence
             ジョン・マッカーシー
     2.IA/Intelligence Amplification
           ダクラス・エンゲルバート
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 コンピュータが出現して、「機械と人間の関係」をどうするか
が大きな問題になり、研究がはじまったのですが、それが、ユー
ザー・インターフェース、すなわち「UI」の研究です。中心人
物は、ジョン・マッカーシー氏とダクラス・エンゲルバート氏で
すが、2人のスタンスは、大きく異なっていたのです。
 ダートマス会議を開催し、人工知能(AI)の研究をスタート
させたジョン・マッカーシー氏は、コンピュータについて次のよ
うな考え方をもっていたのです。このコンピュータ観が、現在の
AIにつながってきます。
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 コンピュータは今後、急速に進化し、やがて人間に匹敵する。
あるいはそれを凌ぐような知的能力を持つようになる。いずれ人
間は、コンピュータに「あれしろ、これしろ」と命令するだけで
あとはコンピュータがまるで召使いかロボットのように人間の面
倒を見てくれる。         ──ジョン・マッカーシー
           ──小林雅一著『クラウドからAIへ/
  アップル、グーグル、フェイスブックの主戦場』/朝日新書
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 ジョン・マッカーシー氏は、ダートマス会議のときは同大学の
助教授であり、1958年にマサチューセッツ工科大学助教授に
なっています。そして、1962年にスタンフォード大学教授に
就任します。その道の大御所的存在の学者です。
 今になって考えると、マッカーシー教授の指摘は正しかったの
かなと考えますが、当時としては、まさに夢物語的話であったこ
とは確かです。
 これに対してダクラス・エンゲルバート氏は、マウスの開発者
として知られ、学者というよりは実業家です。彼は、コンピュー
タについて次のように考えており、マッカーシー氏よりは、はる
かに現実的な考え方をしていたのです。
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 機械が人間の面倒を見るというのは、現実離れしているし、本
末転倒している。人間にとってコンピュータのような機械は一種
のツールに過ぎない。ツールが進化することも重要だが、それと
同時に人間もツールの進歩に適応する。
               ──ダクラス・エンゲルバート
                ──小林雅一著の前掲書より
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 エンゲルバート氏は、カリフォルニア大学バークレー校大学院
の電気工学科に進学し、1955年に博士号を取得しています。
博士号取得後もバークレー校大学院に助教授として1年間留まっ
たものの、そこでは自身のビジョンを実現できないと感じて大学
を去り、発明家として実業の世界に進んでいます。
 当然のことながら、当時のコンピュータは専門家か研究者しか
使えず、使い勝手はよくなかったのです。しかし、エンゲルバー
ト氏は、近い将来コンピュータは小型化し、多くの人が誰でも使
えるようになると考えており、そのためには、その使い勝手を良
くする多くの発明が必要だと考えていたのです。
 「IA」という考え方は、人間の知的能力をコンピュータのよ
うなツールによって強化する「知的増強」を意味します。この考
え方に同調する人も多く、それが「IA派」という一派を構成し
たのです。
 その結果として、IA派は、1960年代から1980年代に
かけて、マウスやGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフ
ェイス)、マルチウインドウ、ハイパーテキストなど、便利なも
のを次々と開発し、コンピュータの使い易さの向上に貢献したの
です。それはまさしくIT技術の進化そのものです。
          ──[次世代テクノロジー論U/009]

≪画像および関連情報≫
 ●これからの、人と機械の新しいあり方――インタビュー
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   自動運転、ドローン、人工知能。人が「使う」ものだった
  機械(コンピュータ)が「賢く」なりつつある中、自律的な
  機械と人との新たな関係が議論されている。人と機械の関係
  を考える上で欠かせないのが、そのインターフェースだ。東
  京大学助教の鳴海拓志さんはバーチャルリアリティ(VR)
  や拡張現実感など、私たちが現実と感じているものを編集し
  新しい現実をつくる技術を研究する中で、人と機械の新しい
  関係をつくるためのインターフェースのあり方について提案
  している。
  ――鳴海さんは以前、「人はすでに機械に支配されていると
  も言える」とおっしゃっていました。例えば、メールの予測
  変換で、「お願いします」と書こうとしていたのが自動的に
  「お願いいたします」となることがありますが、これは気付
  かないうちに機械に支配されていると。
   ささいな文面の違いかも知れませんが、ニュアンスが大き
  く変わることもありえますよね。ある意味ではわれわれが使
  う言葉や思考が予測変換という機械の機能にコントロールさ
  れてしまっているわけです。でもそういうことに対して普段
  のわれわれは無自覚で、「ちょっと最初に使おうとした言葉
  と違うけれどいいかな」と、その瞬間その瞬間に受け入れて
  使っているし、最終的な文面は自分が決めたと思っている。
                  https://bit.ly/2ICCJCL
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ダグラス・エルゲルバート氏.jpg
ダグラス・エルゲルバート氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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