2018年05月07日

●「AI(人工知能)で政治を変える」(EJ第4757号)

 2017年9月25日から年末の12月28日まで66回にわ
たって「次世代テクノロジー論」というテーマについて書いてい
ます。私が教育関連の顧問をしているIT企業に10月から内定
者が入ってくるので、最近のICT技術トレンドについて参考に
してもらおうと思って、このテーマに選んだのです。
 EJはこれまで多種多様のテーマを取り上げてきましたが、技
術的なもの、難しそうなものに関しては当然のことながら、あま
り評判は良くないのです。ところが、そういう技術的テーマにも
かかわらず、意外にも「次世代テクノロジー論」は、かなり好評
であり、継続を希望する方もおられるので、今日から続編として
次のテーマで書くことにします。
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  AI(人工知能)の衝撃!何を変えるか、何が変わるか
   ── AIが社会に与える影響について考える ──
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 4月29日のことです。千葉市で行われた「ニコニコ超会議」
の討論会で、自民党の小泉進次郎議員が、政治にもAIを持ち込
むべきであるとし、自らが命名したテクノロジー(科学技術)と
ポリティクス(政治)を融合した「ポリテック」を自民党内で積
極的に推進していくと語ったのです。
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  政治(Politics)+テクノロジ(Technology)=ポリテック
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 そのとき「ニコニコ超会議」では、小泉議員と気鋭のメディア
アーティスト落合陽一氏、夏野剛慶大特別招聘教授の3者間で討
論が行われたのですが、「ポリテック」という言葉はその討論の
なかで飛び出したのです。
 小泉議員は、農地に水路を引く工事を取り上げ、農地の形状な
どをAIで解析し、水路の引き方を決める米国の事例を紹介し、
地元などの要望で調整する日本に比べると、コストが100分の
1くらいで済むといっています。ポリテックによって、納税者の
負担は軽くなり、それは、財政の健全化にも貢献すると話してい
ます。しかし、「ポリテック」の反応は、自民党内では、あまり
芳しいものとはいえないのです。
 ところで、小泉進次郎議員とAIは、「意外な結びつき」のよ
うに思うかもしれませんが、そんなことはありません。小泉議員
は、政治家としては、おそらくAI研究の第一人者でしょう。小
泉議員は2013年9月30日に、内閣府大臣政務官兼復興大臣
政務官に就任していますが、そのとき「近未来技術検証特区」で
ドローンや自動運転、AIやロボットなどの社会への導入につい
て研究していたのです。
 AI関連の雑誌やムックを見ると、AIに関する座談会などで
よく小泉議員が発言しているのを発見することがあります。20
15年10月発行の日経BPムックにおいて、小泉議員がAI研
究の第一人者である東京大学大学院准教授の松尾豊氏と対談して
います。そこで、小泉氏は次のように述べています。ポリテック
の構想が既にここで語られています。
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 最近AI関連で関心を持った記事がある。日立製作所が論理的
な対話を可能とする人工知能の基礎技術を開発したというもの。
これは、難しい判断を迫られた質問をすると「賛成」「反対」の
立場から理由付きの回答を語ってくれる理論武装を助けるソフト
ウェアを開発しているというものだ。
 政治家のあり方をも変えると思った。議論の賛成と反対の論点
を、過去の大量のニュース記事や資料などを全部統合してすぐに
比較材料として出してくれる。政治家を支えていた秘書や官僚な
ど様々な情報を共有してくれる側のあり方が激変する可能性があ
る。例えば、ペッパーが論点を提示して見せてくれれば、感情的
な対立にならない熟議ができるのではないかと思う。AIが人と
人との理解を深めてくれる役割を果たしてくれるかもしれない。
   ──「この1冊でまるごとわかる!/人工知能ビジネス」
     日経BPムック/日経BP社/2015年10月発行
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 実際にAIの活用に関する実証実験は既に始まっています。経
産省では、2016年から2017年にかけて、AIで国会答弁
の下書きを作る実証実験を行っています。過去5年分の国会議事
録をAIに学習させ、参考になる過去の答弁を分析し、整理しま
す。国会答弁は法案作成などに比べて締め切りが短く、職員の負
担も集中しやすいので、経産省は実証実験の結果を踏まえて、将
来の実用化を模索しています。
 しかし、これまでのところ、実証実験はあまりうまくいってい
ないそうです。議員からは、事前に質問の通知があるので、その
質問に対して過去の類似質問を探し出し、類似質問への答弁を基
にした下書きを表示するという仕組みです。この実験は1800
万円の予算でコンサルタント会社に委託して実施したものです。
 実験でわかったことは、AIは元の質問の意図を正確に判断し
て読み取ることができず、見当外れの質問を選ぶケースが多発し
たことです。
 それでは、この実証実験は失敗だったかというと、そうとはい
えないと思います。現在のAIの高度なディープラーニング機能
による学習が進むと、やがては正確な答弁案を作ることは十分可
能であるといえます。そうなると、小泉議員がいう通り、答弁書
の案を作成する側の官僚の仕事は激変することになります。
 小泉議員のように、日本の政治家がAIなどの先端技術に関心
を持つことは大変意義のあることですが、それと合わせて、国会
の運営規則などの古い慣習などについて、改めるべきことが、た
くさんあるのです。その慣習を打破することは、意外に簡単なこ
とではなく、近代化の障壁として立ちはだかっているといっても
過言ではありません。これはついては、明日のEJで検討するこ
とにします。    ──[次世代テクノロジー論U/001]

≪画像および関連情報≫
 ●AIがもたらす政治変革への期待/松本徹三氏
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   AIの本来の意味は「人間の頭脳の完全な代替」ですが、
  それが、一定の時間内に行う仕事量は半端ではなく、人間が
  寄ってたかってやる仕事量の数千倍、数万倍にも及ぶものを
  難なくいこなしてしまうでしょう。また、人間の頭脳の完全
  な代替ができるのなら、当然天才の仕事も代替できるという
  ことですから、数万人のアインシュタインを昼も夜も休みな
  く働かせるようなことも、可能になることを意味します。
   こうなると、進化したAIは次第に自らの弱点を見抜き、
  これを克服した「次世代のAI」を自ら創り出すことになり
  ます。コンピューターが自ら行う技術革新は、人間がやるも
  のと比べて、スピードが全く違います。一旦方向性が定まれ
  ば、思い悩むこともなく一途にやりますし、横の繋がりにも
  一切遺漏がないので、発展は幾何学級数的に拡大し、あれよ
  あれよと言う間に、全く想像もしなかった様な世界が実現す
  る可能性は大いにあるのです。
   この様なことが実現する「転換点」を英語では「シンギュ
  ラリティ(技術的特異点)」と呼んでおり、欧米のコンピュ
  ーター技術者の間では現在ごく普通の話題になっています。
  日本は例によって例の如しで、生真面目すぎる日本人の性格
  が災いしてか、「現状の改善」に焦点が絞られすぎ、「とん
  でもない様な可能性」に言及することを忌避する傾向が見ら
  れます。こうしているうちに、米国や中国、ロシアやイスラ
  エルなどに大きな差をつけられてしまうのではないかと心配
  です。             https://bit.ly/2HHf4Bm
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小泉進次郎議員と松尾豊東大大学院准教授.jpg
小泉進次郎議員と松尾豊東大大学院准教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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