2018年05月01日

●「なぜ2017年1月20日なのか」(EJ第4755号)

 今回のテーマは今回を含めあと2回で終りです。森友問題でも
加計問題でも目立つことがあります。それは、安倍首相自身を含
めて、官邸サイドが「明らかなるウソ」を平然とついていること
です。そのひとつが安倍首相の次の言葉です。
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 私が加計学園の意向を知ったのは、2017年1月20日の
 ことである。               ──安倍首相
          2017年7月24日/衆院予算委員会
─────────────────────────────
 この2017年1月20日というのは、国家戦略特区諮問会議
が開催された日であり、議長である安倍首相が、実施主体を加計
学園に認定した日です。2017年1月4日時点で、応募事業体
は加計学園のみであり、1月12日に今治市分科会は、内閣府・
文科省などが実施主体を加計学園に決定しています。その最終決
定が、1月20日に行われたのです。安倍首相は、その日に、は
じめて応募してきた事業主体が、加計学園であることを知ったと
いっているのです。
 「これは明らかなウソである」として、東京新聞記者の望月衣
塑子氏は、古賀茂明氏との共著で、その矛盾を次のように指摘し
ています。
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 矛盾といえば、安倍首相は2017年6月5日の参院決算委員
会で、加計学園の獣医学部設置の意向を知ったのは、愛媛県と今
治市が国家戦略特区に提案した「2015年6月4日だ」と答弁
していました。加計孝太郎理事長から「時代のニーズに合わせて
新しい学部や学科の新設に挑戦していきたいという趣旨の話は聞
いたことがある」とも述べていました(衆院予算委員会)。
 ところが7月24日の衆院予算委員会で、突然、加計の意向を
知ったのは学園が事業者に決まった「2017年1月20日だっ
た」と、答弁を変えたのです。
 実は、当初答弁のように、知ったのが2015年6月4日だと
すると、安倍首相にとって「不都合な真実」が明らかになるので
す。このとき、今治市が提案した資料には「加計学園」の文字は
ありません。あくまでも提案者は愛媛県と今治市で、事業者は後
に公募で決まる仕組みだったからです。この時点ですでに安倍首
相が「加計学園案件だ」と知っていたならば、「なぜ知っていた
のか?誰から聞いたのか?」ということが問題になります。
 文科省に働きかけたと名前の挙がっている萩生田光一官房副長
官(現自民党幹事長代行)は衆議院選落選中、加計学園が経営す
る千葉科学大の客員教授をつとめ、月10万円の給与を受けてい
たと報じられています。加計学園の件で前川さんに働きかけた木
曽功内閣官房参与(当時)は、その後、加計学園の理事に就任し
ています。──古賀茂明/望月衣塑子共著/KKベストセラーズ
         『THE独裁者/国難を呼ぶ男!安倍晋三』
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 実は、安倍首相は、加計学園が獣医学部を新設しようとしてい
るのを2015年6月4日どころか、2014年3月13日以前
に確実に知っていたと思われる証拠があります。
 2014年3月13日、加計孝太郎氏は、獣医学部新設に一貫
して反対していた日本獣医師会を訪問しています。応対したのは
獣医師会会長の蔵内勇夫氏と会の事務局を預かる北村直人顧問で
す。これに関して、古賀茂明氏と望月衣塑子氏の共著には、ジャ
ーナリスト森功氏の次のレポートの引用があります。
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 「あなたは安倍さんから『獣医師会に行け』と指示されてやっ
てきたんでしょ。ときの最高権力者がバックについている、すご
いよね」。蔵内たちが皮肉を言いながら突き放した。
 「誰がきたところで、申請は通りませんよ」。獣医師会の重鎮
に冷たくあしらわれてなお、当の加計本人は慌てる様子もなく、
自信満々だった。(中略)
 実はこのとき「首相が後ろ盾になっているので、獣医学部の新
設は大丈夫だ」と加計が胸を叩いたという話がある。実際、その
議事録が存在するという説がある。北村は次のような意味深長な
話をした。
 「議事録があったら、安倍政権がふっとんじゃうよ。だから私
は『ない』と答えるしかない。相手は自民党の党友でもある安倍
さんですからね。私は旧田中派の議員でしたから、口利きだって
駄目だとは言いません。「安倍さんでしょ?あなたの後ろにいる
のは」と尋ねたとき、加計さんなんとなく頷いたかな」。
 ──『文藝春秋』/2017年5月号「安倍首相『腹心の友』
の商魂/森功」  ──古賀茂明/望月衣塑子共著の前掲書より
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 今治市と愛媛県が政府に対し、構造改革特区を活用した獣医学
部新設を提案をしたのは2007年の福田内閣のときです。この
時点で既に加計学園を予定事業体として想定していたのですが、
このときは不可になっています。2008年になって、麻生内閣
でも同じ申請をしていますが、このときも不可です。
 2009年に自民党が下野し、民主党の鳩山政権においても、
今治市と愛媛県は同じ提案をしたところ、「実現に向けて検討」
することになっています。その後、民主党政権下では、勉強会な
どが行われたものの、結局認定に至らないで終っています。
 そして、安倍政権が発足して、2013年に国家戦略特区制度
を作り、これをベースとして今治市と愛媛県において、獣医学部
の新設を認めることにしたのです。もちろん、予定事業体は加計
学園であり、むしろ競合相手の京都産業大学をどのようにして外
すかに腐心したはずです。
 したがって、安倍首相が加計学園が今治市と愛媛県と連携して
獣医学部新設を推進していることを2017年1月20日になっ
てはじめて知ったというのは、大ウソということになります。
            ──[メディア規制の実態/079]

≪画像および関連情報≫
 ●安倍首相が「1月20日」にこだわる理由/「月刊日本」
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   2016年9月9日に行われた国家戦略特区諮問会議での
  安倍首相の発言との関係に注目する必要があります。この諮
  問会議では、民間議員を代表して八田達夫氏が「獣医学部の
  新設は、人畜共通の病気が問題になっていることから見て極
  めて重要ですが、岩盤が立ちはだかっています」と述べてい
  ます。これに対して、安倍首相はこの会議の最後に、「本日
  提案いただいた『残された岩盤規制』や特区での成果の『全
  国展開』についても、実現に向けた検討を、これまで以上に
  加速的・集中的にお願いしたい」と発言しました。
   これを受けて獣医学部の認可をテーマに開かれた9月16
  日の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)の冒頭で、内
  閣府地方創生推進事務局審議官である藤原豊氏が「先週金曜
  日に国家戦略特区の諮問会議が行われまして、まさに八田議
  員から民間議員ペーパーを御説明いただきましたが、その中
  で重点的に議論していく項目の1つとしてこの課題が挙がり
  総理からもそういった提案課題について検討を深めようとい
  うお話もいただいております」と発言しています。つまり、
  藤原氏は、獣医学部新設に関する議論が9月9日の諮問会議
  での安倍首相の指示によるものだということを明言している
  のです。そのため、安倍首相が、昨年9月9日の時点で加計
  学園の特区申請を認識していたとすれば、安倍首相の指示に
  よって加計学園に有利な展開になっていったことを事実上認
  めざるを得なくなるのです。   https://bit.ly/2vMVGx6
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望月衣塑子氏/東京新聞記者.jpg
望月衣塑子氏/東京新聞記者
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2018年05月02日

●「アベフレンズたちによる日本政治」(EJ第4756号)

 2014年5月24日のことです。加計学園が運営する千葉商
科大学の開学10周年の記念式典が開かれ、出席した安倍首相は
祝辞を述べています。現役の首相が私立大学の式典で祝辞を述べ
るのに違和感を覚える人も多いと思います。
 それだけではないのです。このときの来賓が凄い。岸田文雄外
相(当時)、遠藤利明元五輪相、林幹雄元経産大臣、安倍家ゴッ
ドマザーの安倍洋子氏、三井住友銀行副頭取(当時)の高橋精一
郎氏などが参列しており、下村博文文科相(当時)から祝辞が寄
せられるという豪華さです。「安倍フレンズ」をまとめると、次
のようになります。
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◎安倍「フレンズな」加計学園の面々
 安倍 晋三:総理大臣、加計学園元監事
 安倍 昭恵:総理大臣夫人、加計学園御影インターナショナル
       こども園名誉園長
 下村 博文:加計学園から200万円の政治献金を受けながら
       政治資金収支報告書に記載していなかった
 下村今日子:下村元文科相夫人、広島加計学園教育審議会委員
 木澤 克之:最高裁判事(安倍任命)加計学園元監事、加計孝
       太郎理事長と同じ立教大
 萩生田光一:幹事長代行、元官房副長官、加計学園千葉科学大
       客員教授
 木曽  功:内閣参与、加計学園千葉科学大学長
 井上 義行:元総理秘書官、加計学園千葉科学大客員教授
 江島  潔:自民党内閣第一部会長、元下関市長、加計学園倉
       敷芸術科学大元客員教授
 逢沢 一郎:衆院政倫審会長、加計学園国際交流局顧問、アイ
       サワ工業が獣医学部の工事受注
     ──古賀茂明/望月衣塑子共著/KKベストセラーズ
         『THE独裁者/国難を呼ぶ男!安倍晋三』
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 萩生田光一氏は、2009年の総選挙で落選したとき、加計学
園の運営する千葉科学大学危機管理学部で客員教授の職を用意さ
れ、月10万円を得ていたそうです。自民党が政権に復帰する3
年間はその職にあったのですが、それはあくまで表向きの話に過
ぎないのです。
 この千葉科学大学に務めていたある教員によると、この大学に
は「危機管理学部」という安倍枠があるそうです。その教員は安
倍首相の紹介でこの大学に務めたのですが、週3回、計6コマの
講義をすることになっていたものの、給与のことは何も話してく
れないので、安倍さんに聞いたそうです。そうしたら、安倍さん
は、自信たっぷりにこういったそうです。
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 僕が加計に頼んだのだから、僕のメンツを潰すようなことは
 しないよ。                ──安倍首相
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 その教員は4月の給与明細を見てびっくりしたそうです。月額
125万円です。賞与を含めると、年に1500万円を超えたの
です。これでわかるように、萩生田光一氏が彼のいうように、月
10万円ということはないはずです。これでは、アルバイト程度
の給料です。その10倍や20倍は支給されていた可能性は十分
あります。失職中にそれだけ優遇してもらえれば、理事長の加計
孝太郎氏を守ろうとするはずです。
 古賀茂明氏と望月衣塑子氏の共著は、森友学園問題と加計学園
問題の真実に肉薄しています。既にメディアも検察も真相は掴ん
でいると思います。しかし、メディアの報道は、まさに「隔靴掻
痒」であり、真実にたどりつかないでいます。メディアは、政府
に抑えられています。古賀茂明氏は次の指摘をしています。
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 政府がメディアを抑えた事実はまさに数字にも表れています。
メディア対策予算は野田政権のときには40億円ぐらいでした。
安倍政権では2013年度で43億円、2014年度は65億円
2015年虔になると83億円になつています。まだ増える傾向
にあります。安倍政権はイメージ戦略を非常に重視しているので
たとえば、官邸の機密費とか、自民党のいろいろな領収書なしで
使える予算とか、そういうものまで入れると、100億円を超え
るオーダーになつていても不思議ではありません。
         ──古賀茂明/望月衣塑子共著の前掲書より
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 1月5日から、安倍政権のメディア支配について、80回にわ
たって書いてきましたが、今回で終了します。最後に、森友学園
と加計学園について、それぞれ書かれている異色のブログをご紹
介します。なかなかの力作です。
 「森友学園」に関するブログです。EJでも参考にさせてもら
いましたが、これによると、主犯は麻生財務相になっています。
とても興味深いことが書かれています。必読です。
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 「森友学園」問題の本当のカラクリ。日本の政治もマスコミ
 も「麻生太郎」のために動かされている。
                 https://bit.ly/2HxkKhd
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 「加計学園」については、弁護士の郷原信郎氏のブログで見つ
けたものです。
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    Tomoaki Kitaguchi氏による「加計問題」の真相
              https://bit.ly/2wccdpK
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 18歳の青年が書いた「加計学園」の奇想天外の推理です。リ
アリティがあります。信ずるか信じないかはあなた次第です。
        ──[メディア規制の実態/最終回/080]

≪画像および関連情報≫
 ●政府広報費は民主党政権の2倍、メディア押さえ込む効果
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   都議選告示日(6月23日)から、朝日、読売、毎日はじ
  め全国の新聞70紙に、「弾道ミサイル落下時の行動につい
  て」と題する政府広告が掲載された。テレビでも、全国の民
  放43局で「弾道ミサイルが日本に落下する可能性がある場
  合」という同じ内容のテレビCMが同日から一斉に流されて
  いる。テレビCMは2017年7月6日まで2週間にわたっ
  て放映される予定で、新聞、インターネット広告と合わせて
  この政府広報に3億6000万円もの税金が使われている。
   折からの「男女共同参画週間」(6月23〜29日)の提
  供テレビ番組などを合わせると、都議選中に、政府から大メ
  ディアに流れ込んだカネは約4億円に達する。
   安倍晋三・首相は、政権を取り戻して以来、大新聞、民放
  キー局のトップや編集幹部と会食を重ねるなどメディア対策
  を重視してきた。とくに発足直後から政権に批判的だった朝
  日新聞が慰安婦報道と福島第一原発事故の「吉田調書」をめ
  ぐる2つの誤報問題を追及されて沈黙するようになると、読
  売、産経という親安倍メディアを政権の広報機関として利用
  し、大メディアをコントロール下に置くことに成功した。そ
  の裏では、政府広報のカネを、メディアを手なずける武器と
  して最大限効果的に利用してきたのだ。
                  https://bit.ly/2uuDbJr
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安倍首相のフレンズ
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2018年05月07日

●「AI(人工知能)で政治を変える」(EJ第4757号)

 2017年9月25日から年末の12月28日まで66回にわ
たって「次世代テクノロジー論」というテーマについて書いてい
ます。私が教育関連の顧問をしているIT企業に10月から内定
者が入ってくるので、最近のICT技術トレンドについて参考に
してもらおうと思って、このテーマに選んだのです。
 EJはこれまで多種多様のテーマを取り上げてきましたが、技
術的なもの、難しそうなものに関しては当然のことながら、あま
り評判は良くないのです。ところが、そういう技術的テーマにも
かかわらず、意外にも「次世代テクノロジー論」は、かなり好評
であり、継続を希望する方もおられるので、今日から続編として
次のテーマで書くことにします。
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  AI(人工知能)の衝撃!何を変えるか、何が変わるか
   ── AIが社会に与える影響について考える ──
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 4月29日のことです。千葉市で行われた「ニコニコ超会議」
の討論会で、自民党の小泉進次郎議員が、政治にもAIを持ち込
むべきであるとし、自らが命名したテクノロジー(科学技術)と
ポリティクス(政治)を融合した「ポリテック」を自民党内で積
極的に推進していくと語ったのです。
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  政治(Politics)+テクノロジ(Technology)=ポリテック
─────────────────────────────
 そのとき「ニコニコ超会議」では、小泉議員と気鋭のメディア
アーティスト落合陽一氏、夏野剛慶大特別招聘教授の3者間で討
論が行われたのですが、「ポリテック」という言葉はその討論の
なかで飛び出したのです。
 小泉議員は、農地に水路を引く工事を取り上げ、農地の形状な
どをAIで解析し、水路の引き方を決める米国の事例を紹介し、
地元などの要望で調整する日本に比べると、コストが100分の
1くらいで済むといっています。ポリテックによって、納税者の
負担は軽くなり、それは、財政の健全化にも貢献すると話してい
ます。しかし、「ポリテック」の反応は、自民党内では、あまり
芳しいものとはいえないのです。
 ところで、小泉進次郎議員とAIは、「意外な結びつき」のよ
うに思うかもしれませんが、そんなことはありません。小泉議員
は、政治家としては、おそらくAI研究の第一人者でしょう。小
泉議員は2013年9月30日に、内閣府大臣政務官兼復興大臣
政務官に就任していますが、そのとき「近未来技術検証特区」で
ドローンや自動運転、AIやロボットなどの社会への導入につい
て研究していたのです。
 AI関連の雑誌やムックを見ると、AIに関する座談会などで
よく小泉議員が発言しているのを発見することがあります。20
15年10月発行の日経BPムックにおいて、小泉議員がAI研
究の第一人者である東京大学大学院准教授の松尾豊氏と対談して
います。そこで、小泉氏は次のように述べています。ポリテック
の構想が既にここで語られています。
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 最近AI関連で関心を持った記事がある。日立製作所が論理的
な対話を可能とする人工知能の基礎技術を開発したというもの。
これは、難しい判断を迫られた質問をすると「賛成」「反対」の
立場から理由付きの回答を語ってくれる理論武装を助けるソフト
ウェアを開発しているというものだ。
 政治家のあり方をも変えると思った。議論の賛成と反対の論点
を、過去の大量のニュース記事や資料などを全部統合してすぐに
比較材料として出してくれる。政治家を支えていた秘書や官僚な
ど様々な情報を共有してくれる側のあり方が激変する可能性があ
る。例えば、ペッパーが論点を提示して見せてくれれば、感情的
な対立にならない熟議ができるのではないかと思う。AIが人と
人との理解を深めてくれる役割を果たしてくれるかもしれない。
   ──「この1冊でまるごとわかる!/人工知能ビジネス」
     日経BPムック/日経BP社/2015年10月発行
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 実際にAIの活用に関する実証実験は既に始まっています。経
産省では、2016年から2017年にかけて、AIで国会答弁
の下書きを作る実証実験を行っています。過去5年分の国会議事
録をAIに学習させ、参考になる過去の答弁を分析し、整理しま
す。国会答弁は法案作成などに比べて締め切りが短く、職員の負
担も集中しやすいので、経産省は実証実験の結果を踏まえて、将
来の実用化を模索しています。
 しかし、これまでのところ、実証実験はあまりうまくいってい
ないそうです。議員からは、事前に質問の通知があるので、その
質問に対して過去の類似質問を探し出し、類似質問への答弁を基
にした下書きを表示するという仕組みです。この実験は1800
万円の予算でコンサルタント会社に委託して実施したものです。
 実験でわかったことは、AIは元の質問の意図を正確に判断し
て読み取ることができず、見当外れの質問を選ぶケースが多発し
たことです。
 それでは、この実証実験は失敗だったかというと、そうとはい
えないと思います。現在のAIの高度なディープラーニング機能
による学習が進むと、やがては正確な答弁案を作ることは十分可
能であるといえます。そうなると、小泉議員がいう通り、答弁書
の案を作成する側の官僚の仕事は激変することになります。
 小泉議員のように、日本の政治家がAIなどの先端技術に関心
を持つことは大変意義のあることですが、それと合わせて、国会
の運営規則などの古い慣習などについて、改めるべきことが、た
くさんあるのです。その慣習を打破することは、意外に簡単なこ
とではなく、近代化の障壁として立ちはだかっているといっても
過言ではありません。これはついては、明日のEJで検討するこ
とにします。    ──[次世代テクノロジー論U/001]

≪画像および関連情報≫
 ●AIがもたらす政治変革への期待/松本徹三氏
  ───────────────────────────
   AIの本来の意味は「人間の頭脳の完全な代替」ですが、
  それが、一定の時間内に行う仕事量は半端ではなく、人間が
  寄ってたかってやる仕事量の数千倍、数万倍にも及ぶものを
  難なくいこなしてしまうでしょう。また、人間の頭脳の完全
  な代替ができるのなら、当然天才の仕事も代替できるという
  ことですから、数万人のアインシュタインを昼も夜も休みな
  く働かせるようなことも、可能になることを意味します。
   こうなると、進化したAIは次第に自らの弱点を見抜き、
  これを克服した「次世代のAI」を自ら創り出すことになり
  ます。コンピューターが自ら行う技術革新は、人間がやるも
  のと比べて、スピードが全く違います。一旦方向性が定まれ
  ば、思い悩むこともなく一途にやりますし、横の繋がりにも
  一切遺漏がないので、発展は幾何学級数的に拡大し、あれよ
  あれよと言う間に、全く想像もしなかった様な世界が実現す
  る可能性は大いにあるのです。
   この様なことが実現する「転換点」を英語では「シンギュ
  ラリティ(技術的特異点)」と呼んでおり、欧米のコンピュ
  ーター技術者の間では現在ごく普通の話題になっています。
  日本は例によって例の如しで、生真面目すぎる日本人の性格
  が災いしてか、「現状の改善」に焦点が絞られすぎ、「とん
  でもない様な可能性」に言及することを忌避する傾向が見ら
  れます。こうしているうちに、米国や中国、ロシアやイスラ
  エルなどに大きな差をつけられてしまうのではないかと心配
  です。             https://bit.ly/2HHf4Bm
  ───────────────────────────

小泉進次郎議員と松尾豊東大大学院准教授.jpg
小泉進次郎議員と松尾豊東大大学院准教授
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2018年05月08日

●「なぜ国会にPCが持ち込めないか」(EJ第4758号)

 はっきりしていることがあります。それは日本が「ICT後進
国」であることです。それは、国会において、現代社会では信じ
られないような古い慣習や規則が根強く残っており、それらを変
更しようとする動きがないことから、そういえると思います。
 自民党の小泉進次郎議員によると、国会会議場や国会内の諸会
議では、PCやスマホを持ち込めないそうです。確かにそういわ
れてみると、国会の会議場や各種委員会で、PCを広げている人
やスマホを見ている人はいないように感じます。
 調べてみると、現在の国会では、衆議院規則215条、参議院
規則211条というものがあり、PCやスマホなどの持ち込みが
事実上禁じられています。
─────────────────────────────
 議事中は参考のためにするものを除いては新聞紙及び書籍等を
閲読してはならない。──衆院規則216条/参院規則211条
─────────────────────────────
 この規則の意味は「議事に関係のある書類を除き、議事に関係
のない新聞、書籍等は閲読してはならない」ということになりま
す。要するに、会議中に関係のない新聞や書籍などを読んではな
らないといっているのです。その趣旨はよく理解できます。「会
議」に参加しているときは、それに集中せよという当たり前の常
識を述べているからです。
 問題は、ここでいう「新聞紙、書籍等」の概念のなかに、電子
文書が考慮されておらず、PCやスマホも見てはいけないことに
なっている点です。つまり、会議中に議事と関係のないスマホを
見たり、関係のないPCの画面を見ることは、やるべきことでは
ありませんが、これを禁ずることは、まるで学校の校則に等しく
国会議員に強いることではないと思います。
 しかし、議事に関係のあるウェブサイトを参照したり、議事を
PCやスマホでメモしたり、送られてきたメールを見るぐらいの
ことはしてもよいのではないかと思います。しかし、そういうこ
とは一切禁止されているのです。
 安倍政権の2014年4月25日の参院外交防衛委員会でのこ
とです。小松一郎内閣法制局長官(故人)が、スマホの画面を見
ながら答弁し、問題になったことがあります。おそらく答弁の要
点が、メモとして、スマホに電子文書として書き込まれていたも
のと思われます。
 ところがこれが大問題になったのです。民主党の斎藤嘉隆氏は
小松一郎長官の行為について、参院予算委員会で安倍首相に質問
したところ、安倍首相は次のように答弁しています。
─────────────────────────────
 携帯を持ち込んで、委員会と関係のない会話をしたり、メール
を見たりということは明らかに委員会の権威を汚すことであり、
やってはいけないということになっています。それに近い行為を
したということで注意を受けたことは、小松長官は反省しないと
いけない。
 しかし、小松長官は国会の答弁に関わることについて、一緒に
いた人の携帯のメールを紹介したという次第ですので、今後たと
えば、iPadなどを活用した方が、議論において活性化される
ことがあるかもしれないと申し上げた次第であります。
                       ──安倍首相
─────────────────────────────
 この安倍首相の答弁でわかることがあります。条文を読む限り
においては、議事に関係のある答弁をスマホに入れていただけの
ことであり、問題はないはずです。しかし、電子文書を文書とし
て認めていないため、これが問題になるのです。
 これに関して、東洋大学の山田肇教授は「ITを受け入れない
愚かな国会」というハフィントンポストのブログ(巻末の「画像
および関連情報」参照)で、次のように批判しています。
─────────────────────────────
 民間でIT機器を持ち込んで会議を進めるのは、それを利用し
て最新の情報を入手しながら議論しないと、間違った判断をする
恐れがあるからだ。事情は国会も同じはずだ。小松長官に謝罪さ
せるよりも、古色蒼然としたルールを改正し、審議にITを利用
するように、国会は動くべきである。 https://bit.ly/2HQzQue
                  ──東洋大学山田肇教授
─────────────────────────────
 今や民間企業では、会議でPCは不可欠のものになっており、
山田教授もいうように、必要に応じて関連ウェブサイトを参照し
たりすることは、当たり前になっています。G7やG20、国連
の会議などでは、ごく当たり前のようにPCが使われています。
 このような時代に合わない国会規則がいつ決まったのか調べて
みると、1995年〜1996年の両院の議院運営委員会におい
て定められています。衆議院の議場では、携帯電話やポケベルが
使用禁止。参議院ではそれに加えて、PC、ワープロ、ラジオ、
録音機などに類する機器の使用が禁止されています。ここでワー
プロというのは、ワープロ専用機のことです。
 1995年といえば、PCはほとんど普及しておらず、ネット
も使われていなかった時代です。もちろん、携帯電話も、まだな
かったのです。そんな時代にできた両院の国会規則を、なぜまだ
後生大事に守っているのでしょうか。
 安倍首相も「今後たとえばiPadなどを活用した方が、議論
において活性化されることがあるかもしれない」とまで発言して
いるのに、その後まったく動いていません。安倍一強といわれる
安倍政権というのは、そんなことすらできないのでしょうか。
 小泉進次郎議員もポリテックを主張する前に、この古色蒼然た
る国会規則を撤廃することの方が先ではないでしょうか。
 確かに、国会には古色蒼然たる議員がまだたくさんいます。も
ちろんPCは使えませんし、携帯電話すら持っていない人もいま
す。そういうエライ議員たちが反対するので、ICTが使えない
でいるのです。   ──[次世代テクノロジー論U/002]

≪画像および関連情報≫
 ●ITを受け入れない愚かな国会
  ───────────────────────────
   2014年3月25日の参院外交防衛委員会で、小松内閣
  法制局長官が携帯電話を見ながら答弁し、質疑が一時中断し
  たそうだ。時事通信によれば、法制次長に関する質問があっ
  たので、「今、質疑の中継を見ていた次長から、連絡があっ
  た」と長官が携帯画面を読み上げたという。この行為は、携
  帯電話を議場に持ち込んではならないという国会のルールに
  反し、長官は「大変重大な誤りだった」と陳謝させられたそ
  うだ。
   「馬鹿か」というのが僕の感想である。委員会の場にいな
  かった次長に関する質問に、短時間で答えようと努力した長
  官が、なぜ謝罪させられるのだろうか。参議院のネット中継
  アーカイブでは、該当部分は音声が消されており、確認する
  ことができなかった。これも理解できない。くだらないこと
  でもめていたと、国民に知らせたくなかったからなのか。
   民間では、パソコンや携帯を会議に持ち込むのは当たり前
  だ。国会ではパネルを掲げて質問するのが通例のようだが、
  なぜ、プロジェクタ−を用いてプレゼンテーションしないの
  か。動画も音声も再生できるから、より説得力を持って質疑
  ができるというのに。この件について国会議員に直接質問し
  たところ、1枚2万円でパネルの作成を請け負う業者がおり
  切り捨てるのがむずかしいからだと返事があったが、とても
  信じられない。国会では、こんな当たり前のIT利用もでき
  ないというのは、どうしてだろう。https://bit.ly/2rh6uim
  ───────────────────────────

東洋大学/山田肇教授.jpg
東洋大学/山田肇教授

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2018年05月09日

●「日本はAIで周回遅れをしている」(EJ第4759号)

 現代は変化の時代です。それも、あらゆるものに半端でない大
変化が起きる時代です。常識が変化し、常識でなくなる時代とも
いえます。「変化」といえば、英国の自然科学者、チャールズ・
ダーウィンは、次の有名な言葉を残しています。
─────────────────────────────
 最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びる
 のでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者
 だけである。        ──チャールズ・ダーウィン
─────────────────────────────
 唯一生き残ることが出来るのは変化できる者だけである──残
念ながら、現在の日本は、その変化に十分に対応できているとは
いえないのです。とくに先端技術のAI(人工知能)分野の競争
力は、米国や中国と比べると大きく見劣りします。
 権威ある米国人工知能学会への2017年の論文投稿数は、中
国が全体のシェアの31%、米国も30%を占めたのに対し、日
本のシェアはたったの4%であり、投資額についても大きく水を
あけられているのが現状です。
 2018年5月3日付の日本経済新聞は一面のトップ記事に次
のタイトルをつけています。
─────────────────────────────
   日本の研究開発見劣り/企業投資アジア・米急伸
     ── AI分野など競争力に懸念 ──
─────────────────────────────
 このような記事が出ると、日本はいかにも研究開発費を投入し
ていないと思われますが、総額でみると、日本は世界第3位なの
です。2015年の数字では日本全体の研究開発費は1800億
ドルで、米国の5000億ドル、中国の4100億ドルに次いで
世界第3位を占めています。しかも、GDP比では、3・6%で
米国の2・6%、中国の2・1%を抑えてトップであり、日本は
依然として「研究開発大国」の地位を堅持しています。
 それなら、何が問題かというと、研究開発の土台である基礎研
究に十分な資金が配分されていないことです。それと、選択と集
中が十分ではないことです。重要なものには他を削っても大量の
資金を投入する努力が足りないのです。
 2017年度の世界企業研究開発費の投入額ベスト10は次の
通りですが、10年前の2007年と比較すると、大きく様変わ
りしています。
─────────────────────────────
  1位:アマゾンドットコム(米)   226.2億ドル
  2位:アルファベット(米)     166.2億ドル
  3位:サムスン電子(韓)      131.8億ドル
  4位:インテル(米)        131.4億ドル
  5位:フォルクスワーゲン(独)   131.0億ドル
  6位:マイクロソフト(米)     122.9億ドル
  7位:アップル(米)        115.8億ドル
  8位:ロシュ(スイス)       105.5億ドル
  9位:ジョンソン&ジョンソン(米) 103.8億ドル
 10位:トヨタ(日)          95.8億ドル
            2018年5月3日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 ちなみに10年前の2007年のトップはGMです。3位にト
ヨタ、5位にフォードというように自動車が上位を占め、それに
次いでジョンソン&ジョンソンが2位、ファイザーが4位、ロシ
ュが7位と、医薬品が上位を独占していたのです。これに対して
ICT分野はマイクロソフトが6位に入っただけの劣勢です。
 しかし、2017年になると、1位から4位はICTが独占し
ています。自動車は5位にフォルクスワーゲン、10位にトヨタ
が辛うじて入るなど自動車が劣勢になり、医薬品も8位以下の下
位に押しやられています。
 トッブのアマゾンドットコムは、226億ドルと、10年前の
28倍であり、アマゾンのAIの開発要員は5000人の規模に
達しています。ちなみに、アルファベットというのは、グーグル
及びグループ企業の持ち株会社です。
 アジアでは、世界3位の韓国のサムソン電子と、ベスト10で
はないものの、中国の電子商取引のアリババ集団の伸びが目立っ
ています。アリババは、米国、中国、ロシアなど7ヶ所に配置し
た研究施設で、AIの研究開発を実施しています。今後3年間に
150億ドルの資金を投入すると発表しています。これに対して
同じアジアの日本は、世界100位までに入る日本企業は17社
10年前の24社から大きく減少しています。
 それにしても驚くべきは米国企業の強さです。10社中6社が
ベスト10に入っています。米国では約8年で企業が育つといわ
れています。とにかくスピードが早いのです。
 グーグルは、1996年に、同社の検索エンジンの原型になる
「バックラブ」が開発されてから8年後の2004年にナスダッ
クに上場しています。その2004年に創業したフェイスブック
は、8年後の2012年にやはりナスダックに上場しています。
 まだあります。2008年にはエアビーアンドビー、2009
年にはウ―バーが創業していますが、8年後の2017年〜18
年には、いずれも超大企業に成長しています。
 このペースでいくと、2017年から2018年に設立された
AIやVRのICT企業が8年後の2025年頃に大企業になる
可能性があります。これに対して日本は、トヨタ、パナソニック
ソニーと昔の名前ばかり。トヨタこそベスト10に入ったものの
パナソニックは10年前の15位から36位、ソニーは18位か
ら35位と半導体などの多額の経費のかかる事業から撤退してい
るし、東芝にいたっては半導体メモリー事業を売却しようとして
います。安倍首相はAIに力を入れるといいますが、日本政府の
AI投資額は20%以下、民間では10%以下です。
          ──[次世代テクノロジー論U/003]

≪画像および関連情報≫
 ●日本企業がAIで周回遅れになった理由/田原総一朗氏
  ───────────────────────────
   2017年6月2日の日本経済新聞朝刊1面に「世界の株
  時価総額最高」という記事が載った。投資マネーが株式市場
  に流れ込み、5月末の世界株の時価総額が76兆ドルとなり
  2年ぶりに最高を更新したという。
   牽引役はアップル、グーグルの親会社であるアルファベッ
  ト、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コムといった米国
  のIT企業だ。日経新聞もこの記事で指摘しているように、
  時価総額の上位には日本企業が全く見当たらない。1〜8位
  が米国企業で占められ、9位にテンセント、10位にアリバ
  バと中国企業がランクインした。
   日本勢は全く振るわない。10年前(2007年5月末)
  は、10位にトヨタ自動車が入っていたが、今回は38位ま
  で後退した。時価総額だけではない。今、最も投資を呼び込
  んでいるAI(人工知能)開発においても、日本勢は完全に
  出遅れてしまったと言っていい。
   なぜ、こんなことになったのか。
   今、僕はAIの取材を進めている。その中で、AI研究の
  第一人者である東京大学大学院工学系研究科の松尾豊特任准
  教授に話を聞く機会があり、「なぜ、日本はAI時代に出遅
  れてしまったのか」と尋ねた。彼の答えは以下のようなもの
  だった。            https://nkbp.jp/2JTJ35R
  ───────────────────────────

チャールズ・ダーウィン.jpg
チャールズ・ダーウィン
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2018年05月10日

●「BIとAIは大きな差が存在する」(EJ第4760号)

 今回のテーマのEJを書くに当たり、基礎的なリードの参考に
なる書籍をはじめに紹介しておきます。この本を読んで、今回の
テーマを決定めたからです。著者の雑賀美明氏は、AR×VRシ
リアルアントレプレナー/ARシステム株式会社代表取締役会長
兼CEOです。
─────────────────────────────
 「AI×VR/人工知能×仮想現実の衝撃/第4次産業革命
 からシンギュラリティまで」──雑賀美明著/マルジュ社刊
─────────────────────────────
 伊藤穣一氏という人がいます。日本のベンチャーキャピタリス
トで、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)教授、日本人初
のMITメディアラボの第4代所長です。MITメディアラボは
大学の建築・計画スクール内に設置された研究所です。70人の
運営管理スタッフと支援スタッフがいます。
 この伊藤穣一氏は、かねてから、世の中をインターネット以前
の世界とインターネット以後の世界に分けてものごとを考えるこ
とで知られています。
─────────────────────────────
 インターネット前の世界/ビフォー・インターネット BI
 インターネット後の世界/アフター・インターネット AI
─────────────────────────────
 伊藤穣一氏によると、「BI」の世界と「AI」の世界の差は
原始社会と文明社会の違いぐらいあるが、それに人工知能が加わ
ると、それ以上の社会変革が起きるといいます。それは2020
年頃にやってくるというのです。
─────────────────────────────
 「BI」において、世の中は比較的わかりやすかった。ものを
中心に考えることができたし、経済も比較的ゆっくりと動いてい
ました。しかし「AI」になると、途端にルールが複雑になりま
した。インターネットの登場によって大幅に通信コストが下がっ
たからです。通信のコストが下がると、流通やコミュニケーショ
ンのコストも下がります。それに、ムーアの法則(18ヶ月ごと
にコンピューターの速度が倍になり、コストは半分になる)が加
わって、イノヴェイションのコスト、つまりは“何かをやってみ
る”コストが大幅に下がりました。
 それによって、例えば、ウィキペディアや、リナックスといっ
たオープンソースやフリーソフトウェアが増え、グーグルのよう
な会社を、初期コストをかけずに立ち上げられるようになりまし
た。つまり従来であればお金と権力をもたなければ成し遂げられ
なかったことを、誰もができる時代になったのです。それが、複
雑性を生み出す大きな要因となりました。
                  https://bit.ly/2FIpI4P
─────────────────────────────
 2020年といえば東京オリンピックの年です。オリンピック
は社会を変革させます。1964年の東京オリンピックでは新幹
線が開通し、首都高が完成、ホテルニューオータニ、東京プリン
スホテルなどの近代的大型ホテルが開業し、東京は大変貌を遂げ
ています。
 それでは、2020年には何が変わるのでしょうか。
 現在では、AI(人工知能)という文字が氾濫していますが、
2020年頃には、言葉としてのAIは、ほとんど消滅してしま
うでしょう。あらゆるものにAIが使われることが当たり前にな
るからです。
 現在、既に変化は起きています。その変化は第4次産業革命と
いわれています。VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、スマー
トロボット、フィンテック、自動運転車、ドローン、オムニチャ
ネル、デジタルトランスフォーメーション、5G(第5世代移動
通信方式)、シェアリングエコノミー(共有経済)などの現在進
化中のテクノロジーのすべてにAI(人工知能)は入り込んでお
り、大きなイノベーションを起こしつつあります。
 AIをどう定義するかにもよるのですが、既にAIは、ごく身
近なモノに搭載されています。まず、誰でも持っているスマホに
AIは標準装備されています。アップルの「シリ」、アンドロイ
ドの「グーグル・アシスタント」などがそうです。ユーザーのな
かには、AIとは知らないで使っている人もいます。
 ネットの検索エンジンにもAIが搭載されています。そのこと
を意識してキーワードを入力すると、求めているサイトに正確に
誘導してくれます。検索すればするほどAIは、これまでのキー
ワードと、新しく入力されるキーワードを分析し、ユーザーが求
めるサイトを探し出してくれるのです。
 最新の家電製品にもAIは搭載されるようになっています。お
掃除ロボットの「ルンバ」や、炊飯器、洗濯機、冷蔵庫などにも
AIは搭載されつつあります。
 それから「AIスピーカー」があります。これはスマホに搭載
されているものの独立版であるといえます。つまり、対話型の音
声操作に対応したAIアシスタント機能を持つスピーカーのこと
です。内蔵されているマイクで音声を認識し、情報の検索や連携
家電の操作などを行います。
 それぞれ機能の差はあるものの、このようにAIは身近なあら
ゆるものに搭載されようとしています。これは、あらゆるものが
インターネットにつながる「モノインターネット」(IoT)に
密接に関係しているからです。
 しかも、それらのAIの機能は、年数が経つにつれて、どんど
ん高機能化するのです。なぜなら、現代のAIは、マシンが自動
的に学習し、自らその機能を高める「ディープラーニング」機能
を持っているからです。使うにつれて少しずつ利口になる特性を
持っているのです。
 しかし、AIが便利になればなるほど、悪用される恐れもある
のです。最もやっかいなのは、それが軍事に使われることです。
          ──[次世代テクノロジー論U/004]

≪画像および関連情報≫
 ●「未来都市」2つのヴィジョン/伊藤穣一教授
  ───────────────────────────
   MITメディアラボの伊藤穰一は、「合成生物学」に注目
  し、これからの社会に、インターネットに匹敵するほどの大
  きなインパクトを生み出すだろうと話す。一方、タイ王国文
  化省のアピナン・ポーサヤーナンは、市民デモや洪水災害が
  発生する“カオス”な都市で、市民によるクリエイティヴィ
  ティが発展するプロセスに着目。10月に東京・虎ノ門ヒル
  ズで開催された「イノベーティブ・シティ・フォーラム/2
  014」の基調講演に登場したふたりは、まったく異なる視
  点から「都市の未来」を語る。(雑誌『WIRED』VOL
  ・14別冊より転載)
   インターネットがなかった時代(BI)からインターネッ
  ト以後の時代(AI)への変化の過程で、さまざまなことが
  複雑性を帯びていったと伊藤穰一は語る。
  「これまでの都市は、建築家が中心となって考えられてきま
  した。建築家というのは、どうしても建物を中心にものを考
  えてしまいます。しかしこれからの都市をつくっていくうえ
  では、デザインやエンジニアリングの観点だけではなく、例
  えば合成生物学の知見を用いることで、すでに備わってしま
  っている複雑性を理解し、それを都市や建築に組み込んでい
  くことが必要です。そしてそれを行うためには、ひとりの頭
  のなかにデザイナー、アーティスト、エンジニア、サイエン
  ティストという4つの役割が宿っていることが大切です。
                  https://bit.ly/2FIpI4P
  ───────────────────────────

伊藤穣一マサチューセッツ工科大学教授.jpg
伊藤穣一マサチューセッツ工科大学教授
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2018年05月11日

●「AIトロールによる世論分断工作」(EJ第4761号)

 2018年2月のことです。第一線のAIの専門家26人が、
英国オックスフォード大学でAIの危険度についてワークショッ
プを開き、その結果を元にして次の報告書を発表しています。そ
の報告書は、指定のURLから、英文ですが、全文をダウンロー
ドして、読むことができます。
─────────────────────────────
         報告書「悪意ある人工知能の利用」
   The Malicious Use of Artificial Intelligence
          https://maliciousaireport.com/
─────────────────────────────
 この報告書には、非営利研究機関「オープンAI」、デジタル
権利団体「電子フロンティア財団」、米国立安全保障シンクタン
ク「新アメリカ安全保障センター」が参加しています。この報告
書の提言の要旨は次の4つです。
─────────────────────────────
 1.政策決定と技術研究の担当者は、連携して悪意あるAI
   使用について理解し、備えなければならない。
 2.AIは諸刃の剣の技術で、研究者や技術者は悪用される
   可能性に十分に留意し、対応する必要がある。
 3.善悪両方に使える技術を長く扱ってきた分野、たとえば
   コンピュータセキュリティを学ぶべきである。
 4.AIの悪意ある使用リスクを軽減し、防止しようと取り
   組む利害関係者の範囲を積極的に拡大させる。
                  https://bbc.in/2EXkFkK
─────────────────────────────
 ロシアは、現在、ウクライナの問題で経済制裁を受けているこ
ともあって、経済的に困窮しています。ロシアのGDPの順位は
既に韓国に抜かれて第12位ですが、人口においてその6分の1
しかないオーストラリアにも、あと数年で抜かれるといわれてい
ます。それほどロシアは経済的には苦しい状態です。
 しかし、ロシアは依然として軍事強国です。しかし、これまで
の軍事スタイルを大きく変更し、AIを核心とするハイテク戦力
分野での存在感を世界的に高めているのです。
 つまり、北米の主要都市をいつでも焦土化できるのに十分な戦
略核軍備に資金を優先的に手当てしておくものの、これまでのよ
うに、最新鋭の戦闘機や水上艦艇で、米軍やNATO軍と戦うこ
とは密かに諦めています。その代り、その余力をデジタルハイテ
ク戦力分野に注力しているのです。
 SNSの世界に「ボット」といわれるものがあります。ボット
とは「ロボット」の短縮形ですが、その正体はネットの世界で動
作するプログラムです。ツイッターでツイートを発信すると、そ
れに対して自動的に返信をしたり、リツイートしたりして、ある
特定情報を拡散する働きを行うのです。
 しかし、最近はポットにAIが搭載され、高度で複雑な動きを
するようになっています。ロシアのAIボットについて、軍事評
論家の兵頭二十八氏は、自著で次のように解説しています。
─────────────────────────────
 ロシアの地下工作部隊は、米国内に無数の「ボット・アカウン
ト」(半自動文章作成AIが常駐している、じっさいには無人格
のプログ・アカウント)を開設していて、たまたま米国世論を二
分するような事件(たとえば白人警官による黒人容疑者の射殺や
それに反発した黒人たちの抗議騒動)が起これば、待ってました
と黒幕の指令一下、AIが爆発的なペースで各種SNSに煽り発
言を連投するようです。
 しかもポットが、相互にそれを引用・言及し合うので、あたか
も非常にたくさんの米国人が、それぞれに不寛容な立場を固守し
ていがみあっているかのように、ネット上の空気が染め上げられ
てしまう。リアルには存在していない「多数意見」が、いきなり
ネット空間に出現し、大勢の人がそれを読んで心理的に影響され
ることになるのです。      ──兵頭二十八著/飛鳥新社
     『AI/戦争論/進化する戦場で自衛隊は全滅する』
─────────────────────────────
 ロシアでは、ボットのことを「トロール」といい、世界各国、
とくに敵対している米国に対して、間断なくネット攻撃を仕掛け
ています。ターゲットとしては、米国の世論を分断させるテーマ
をターゲットにしているようです。
 たとえば、2018年2月14日に起きたフロリダ州バークラ
ンドにあるマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で起きた
銃撃事件の後、ツイッター上には「♯guncontrolnow (今すぐ銃
規制を)」というハッシュタグが作られ、そこには瞬く間に多数
のツイートで溢れ返ったのです。その数は尋常なものではなく、
銃規制に反対する米国民がこんなにもいるのかと感じさせるに十
分です。しかし、これは米国世論の分断を狙ったロシアのトロー
ル工作だったのです。
 4月13日の米英仏共同で行ったシリアの化学兵器関連施設へ
の空爆についてもマティス国防長官は次のように発言し、その次
の日に米国防総省は記者会見で次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
◎われわれは、数日中にアサド政権支持者による虚偽情報キャン
 ペーンが急増すると予測している。  ──マティス国防長官
◎この24時間の間に、ロシアのトロールが、2000%増加し
 ている。                 ──米国防総省
─────────────────────────────
 このようなことが頻発しているところから考えても、2016
年の米大統領選でも、ロシアは米国に執拗なサイバー攻撃を仕掛
けていると考えられ、大統領選の結果に影響を与えていることは
間違いないと思われます。
 これはロシアによる現代における新しい戦争のスタイルである
といえます。そして、それにはAIがサイバー攻撃に密接に絡ん
でいるのです。   ──[次世代テクノロジー論U/005]

≪画像および関連情報≫
 ●ロシアはは米大統領選にどう介入したのか
  ───────────────────────────
   フェイクニュース問題とは何だったのか――その核心部分
  の実相が少しずつ明らかになってきた。米大統領選へのロシ
  アの介入疑惑を調査中の特別検察官、ロバート・ムラー氏は
  2018年2月16日、その工作部隊とされてきた「インタ
  ーネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」を含む3
  社と、関連する13人のロシア人を起訴した。
   ソーシャルメディアを舞台としたフェイクニュース拡散の
  拠点とみられ、「トロール(荒らし)工場」と呼ばれてきた
  IRAと、その出資者である「プーチンの料理人」エフゲニ
  ー・プリゴジン氏が、米大統領選に何を仕掛けたのか――。
   ムラー氏の起訴状は、そんなフェイクニュース問題をめぐ
  る疑問の数々を解き明かす。その内容は、まるで「フェイク
  ニュースの教科書」のようだ。
   またロシアや米国のメディアも、改めて「トロール工場」
  の実態に迫っている。特にNBCはIRAによるフェイクア
  カウントによるツイートを独自にデータベース化。元データ
  を一般に公開しており、誰でもその足跡をたどることができ
  る。様々なアプローチの中から、フェイクニュースのメカニ
  ズムが、徐々に浮き彫りになってくる。今回の起訴の対象と
  なったのは、法人では、「インターネット・リサーチ・エー
  ジェンシー(IRA)」のほか「コンコルド・マネージメン
  ト・アンド・コンサルティング」、「コンコルド・ケータリ
  ング」の2社。         https://bit.ly/2wmAdf4
  ───────────────────────────

ロシアのトロールによる世論分断.jpg
ロシアのトロールによる世論分断
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2018年05月14日

●「ロシアのハイブリット戦とは何か」(EJ第4762号)

 ロシアは、現在、AIを使った「高度な情報戦」に力を入れて
います。経済制裁を受けて、経済不振に苦しむロシアでは、資源
の選択と集中により電子戦を高度化し、新しい時代の戦争に備え
て着々と成果を積み上げています。
 戦争では、軍を動かす作戦と並行し、通信インフラへの攻撃や
ハッキングに加えて、SNSを使うフェイク情報による世論の撹
乱や、プロパガンダによる宣伝戦などを展開します。これをロシ
アでは「ハイブリッド戦」と呼んでいます。
 このハイブリッド戦は、ウクライナへの侵攻を巡ってロシアと
対立している米オバマ前大統領やドイツのメルケル首相などへの
批判や、ウクライナの親欧米政権を貶める内容が中心でしたが、
国内選挙における反政権勢力に対しても使われています。今回の
プーチン大統領の4選でも、ロシア国内において、ハイブリッド
戦による世論操作がフルに行われたのです。
 ロシアのハイブリッド戦のシステムを支えているのは、次の3
つの要素です。
─────────────────────────────
   1.        フコンタクテ(Vkontakte)
   2.            ボット/トロール
   3.インターネット・リサーチ・エイジェンシー
─────────────────────────────
 第1は「フコンタクテ」です。
 「フコンタクテ(VK)」はロシア版のフェイスブックです。
このサイトには、現在、世界中の極右勢力が集まってきており、
ロシアのサイトでありながら、ドイツ国内のアクセスランキング
の8位に食い込むほどの人気です。
 これは、本家のフェイスブックで、ヘイトスピーチなどの差別
的な表現や活動を禁止しているので、そこを逃げ出して、自由に
発言できるフコンタクテで発言するようになっており、アクセス
ランキングを上げているのです。
 第2は「ボット/トロール」です。
 「ボット/トロール」は、フェイクニュースやリークを拡散さ
せる重要な手段です。トロールとは、ツイッターのツイートのよ
うなものです。多くのツイッターのアカウントから、人手によっ
てツイートされますが、そのうちの5%から15%は「ボット」
なのです。しかも、AIがコントロールしており、ツイートに返
信して対話したり、拡散を行います。例えば、次のような対話が
行われています。A、B、Cはボット(自動拡散プログラム)で
あり、ロシア工作部門の同一人物です。
─────────────────────────────
 A:こんな話がある。
 B:それは信じられない。ニセ情報ではないか。
 A:そんなことはない。間違いない情報だ。
 B:お前は騙されているだけだ。
 C:話に割り込んですまないけど、こんな情報があるよ。
   (そういって、Cはニュース記事をリンクする。Cは
   RT[リツィート]やブライトバートのフェイク記事
   だ。それを見てBがこう書き込む)
 B:なーんだ。証拠があるのか。それなら事実だ。
                  https://bit.ly/2IuLgHO
─────────────────────────────
 第3は「インターネット・リサーチ・エイジェンシー」です。
 トロール(ツイート)の発信には相当の人力が必要です。そう
いうトロールが発信されないと、ボットが機能しないからです。
そのため、作業員をリクルーティングし、その作業をさせる組織
があります。それが、「インターネット・リサーチ・エイジェン
シー」です。トロール部隊ともいわれています。
 日本経済新聞社が、サンクトペテルブルグにあるトロール部隊
の本拠を突きとめて記事にしています。2016年12月19日
の日本経済新聞電子版です。
─────────────────────────────
 午前9時前、サンクトペテルブルクの住宅街。まだ薄暗いなか
予備校生のようないでたちの若者らが、続々と4階建てのビルに
入って行く。看板には「ビジネスセンター」とだけ書かれ、窓の
カーテンはすべて閉めきられている。
 ビルに向かう若者に話しかけても誰も一切応えない。1階の受
付に立つ警備員2人に業種を尋ねてみた。答えは「革製品の会社
だ」。「そうは見えない」と返すと、「PR会社」に変わった。
「社長にインタビューがしたい」としつこく求めると、怒声が響
いた。「トップは大統領だ」。
 元従業員3人が証言する。ここは1日24時間365日、ネッ
トト上で情報工作をする「会社」だ。300〜400人の従業員
が業務ごとに部署に分かれ、メディアにコメントを投稿、フェイ
スブックなど交流サイト(SNS)には偽情報を拡散し、架空の
人物になりすましてブログも展開する。政治風刺画を手掛けるデ
ザイン部や映像制作部もあるという。(添付ファイル参照)
               https://s.nikkei.com/2ww3yUc
─────────────────────────────
 トロール部隊で働いたことのある元従業員によると、月給は4
万ルーブル(約7万6000円)で、特定のメディアサイトにコ
メントを書き込んだり、政治的なツイートを発信したりするのが
作業内容です。毎朝ターゲットが与えられ、30〜40のIDを
使い分け、1日200件程度のコメントの書き込みや、政治的な
内容のツイートを発信します。それらのツイートにAIにコント
ロールされているボットが絡んで拡散されるのです。
 会社の運営者の実態は謎に包まれています。給料日には、社員
は経理部の部屋の前に整列させられ、札束の詰まった紙袋から、
直接現金が支給されるそうです。そのさい、税金も年金などの社
会保障費などは一切天引きされることはないといいます。
          ──[次世代テクノロジー論U/006]

≪画像および関連情報≫
 ●プーチン政権による「情報テロ」への警戒を強める欧米各国
  ───────────────────────────
   対外発信を強化するロシア国営メディアのプロパガンダ/
  宣伝活動に加え、ネット上の情報工作により各国の市民への
  影響力の拡大を図っているとみられている。
   米国の選挙・・・7割近くは電子投票でありますが、安倍
  首相ではありませんが、開票装置を操作して当選させようと
  していたクリントン氏が、ロシアのハッキングにより、クリ
  ントン氏を当選させる為の操作をでき無くしてしまったので
  す。この事実の公開って・・・難しいですよね。ロシアにサ
  イバー攻撃された一派がが国家ぐるみの違法・投票結果操作
  を行っているわけですから・・・ロシアに文句を言えた筋合
  いではないのです。
   スリがすった財布をすられて・・・警察に訴えるようなも
  のですから・・・。ロシアは関与を否認するが、ネット世論
  を操作する「トロール部隊」の拠点が少なくともサンクトペ
  テルブルクに1つあることが判明しているのです。
   ロシアがこの米国の金融ユダヤグループの瓦解をしり、攻
  撃を開始しているとも言えますが、日本は、この金融ユダヤ
  に牛耳られている国であり、来年は相当の混乱の渦に巻き込
  まれることとなるのは確実な情勢なのです。
                  https://bit.ly/2KcYeXL
  ───────────────────────────

サンクトペテルブルグのトロール部隊の拠点.jpg
サンクトペテルブルグのトロール部隊の拠点
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2018年05月15日

●「プーチン指揮するロシアの電子戦」(EJ第4763号)

 ロシアは、AIの技術を応用するSNS世論操作で次のことを
やってきています。
─────────────────────────────
   ◎2016〜2017年
    ・米大統領選挙への干渉
   ◎2017年3月
    ・アルメニア選挙への干渉
   ◎2017年4〜5月
    ・フランス大統領選挙への干渉
   ◎2017年9月
    ・ドイツ総選挙への干渉
   ◎2017年11月
    ・スペインカタルーニャ独立投票への干渉
                  https://bit.ly/2KcbaNF
─────────────────────────────
 このようなSNSを使ったハイブリッド戦は、2018年の米
英仏によるシリア攻撃の前にも行われています。4月11日のこ
とです。英国のメディア各社が次の報道を行ったのです。
─────────────────────────────
     メイ首相がシリア攻撃参加を検討している
              ──英国メディア各社
─────────────────────────────
 その報道の直後から、一斉にSNSを通じて反対運動が展開さ
れたのです。まず、「#NotInMyNameTheresaMay」というハッシュ
タグが作られ、反対ツイートが集まります。このハッシュタグは
短時間で9万2000回以上が引用され、9260万人の目にふ
れています。「ハッシュタグ」というのは、特定のテーマに絞っ
てツイートを集めるタグのことで、ツイッターユーザーが簡単に
作ることができます。
 反対活動の中心は、英国野党の労働党の支持者と見られますが
その主張の拡散にロシアが深く関与しているのです。その労働党
支持者は「軍事攻撃を支持するか?」のアンケートを行ったので
すが、84%が反対票を投じています。その投票数があまりにも
多いことから、ロシアによるの関与が疑われているのです。
 このケースにおいて、「軍事攻撃に参加すべきである」という
内容のツイートが発信されたとします。また、同趣旨の主張をす
るブログがあったとします。
 そうすると、これらのツイートやブログに対して、ロシアの工
作部隊の持つ複数アカウントから、人手に加えて、無数のボット
(半自動文章作成AI)が、それに対する反論を、リプライ(返
信)したり、ブログに反対のコメントを書き込んだりします。
 AIは爆発的なペースで、各種SNSに煽り発言を連続投稿し
ます。しかも、ボット同士が相互にそれを引用し合うので、あた
かも大勢の英国人が米仏と一緒にシリアを攻撃することを望んで
いないようにみえるのです。
 これらのロシアの工作隊のAIボットについて、兵頭二十八氏
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 まったく根も葉もないデマだと宣伝の効果は弱くなりますので
ロシアの工作班は、何かのささいな事実に接続させるようにして
巧みにルーモア(噂)と想像の枝葉を繁らせる。この作業は、し
かし、どうみてもAIまかせではなく、人間の心の機微が分かっ
ているオペレ一夕ーが演出台本に方向を与えていくようです。い
わばAIと人間のコラボですので「サイボーグ」とも呼ばれてい
ます。ツイッターで連日220ツイート以上を量産し続けるよう
なマネは生身の人間には無理でしょう。が、AIロボットならば
淡々とそれを遂行します。(中略)
 察するに、旧共産圏の対外宣伝工作用AI開発部隊は、国際的
な研究者としての名声などは捨てて、ソ連時代のKGBエリート
のように、志願して裏方へ回って国家を支えようとしているので
しょう。            ──兵頭二十八著/飛鳥新社
     『AI/戦争論/進化する戦場で自衛隊は全滅する』
─────────────────────────────
 英国で発生した元ロシア諜報員の毒殺未遂事件でも、ロシア側
によるトロール作戦が展開されています。英国当局はこれを「ロ
シアの犯行」と断定し、ロシアの諜報部員とみられる外交官を追
放しています。これに対してロシア側も報復として同数の外交官
を追放するという措置をとっています。こういう英国の対応に対
して、「これは英国の陰謀であり、ロシアの犯行ではない」とい
うフェイク情報が大量に拡散されています。
 ツイッターによるツイートの拡散は、フォロワーの数とその質
によって決まります。私は、2010年1月から9年5ヶ月にわ
たってツイッターを続けていますが、フォロワーは全ての人がそ
うではありませんが、基本的には私のツイートの内容に共感して
くれる人の集団が自然にでき上がっています。フォロワーの数が
多ければ多いほど、大勢の人にツイートが届くことになります。
 しかし、フォロワーは自分の力では増やせないのです。ツイー
トの発信、フォロー、リプライ、リツイートなどの、自分でやれ
ることの結果として、生み出されるものです。たとえAIでも今
のところはフォロワーは増やせないといえます。
 ロシアは大勢のフォロワーを持つツイッターのユーザーを多く
確保しています。BBCの調査によると、サラ・アブダラという
謎の女性のツイッターユーザーがいます。12万5000人以上
のフォロワーを持っており、そのフォローワーのなかには、さま
ざまなメディア記者が250人以上も含まれており、突出した影
響力を持っています。ツイートはほとんどがロシアとアサド政権
の擁護であり、おそらくロシアのトロール機関による架空人物と
思われます。ロシアは各国にこのようなツイッターユーザーを擁
しており、トロールの基地として、抜群の拡散力を誇っているの
です。       ──[次世代テクノロジー論U/007]

≪画像および関連情報≫
 ●記事作成ロボットが「フェイク世論」をでっち上げ
  ───────────────────────────
   世界各国で政治権力などに都合の良いネット投稿が自動投
  稿プログラムによって行われている実態が、英オックスフォ
  ード大インターネット研究所(OII)が行った調査で明ら
  かになった。「フェイクニュース」ならぬ「フェイク世論」
  である。ロボットが何食わぬ顔をして社会に溶け込むという
  のはSFでよくある設定だが、すでにネット社会ではそれが
  到来している。日本も無縁ではない。21世紀の新たな情報
  戦が始まっている。
   OIIは過去約2年にわたってロシア、米国、中国、台湾
  ドイツ、ブラジル、ウクライナ、ポーランド、カナダの9カ
  国でのSNS上における世論操作などのやりとりを分析。6
  月に発表した調査結果で、ロボット転じて「ボット」と呼ば
  れる記事作成プログラムが暗躍する実態を白日の下にさらし
  たのである。
   ロシア版では、デジタルプロパガンダはプーチン大統領の
  リーダーシップを国内の政治的挑戦者から守ることと、ロシ
  ア人の関心を西側への敵対心に向かせることに力が注がれて
  いたとしている。ボットに加えて、トロール(荒らし)と呼
  ばれるひたすら書き込みをする人間も使っているようだとい
  う。ボットがどの程度活躍しているかを定量化するため研究
  チームは、2014年2月から15年末までのツイッターへ
  のロシアの政治に関する投稿を調べた。ちょうど、14年2
  月にはロシアによるウクライナ領クリミアへの侵攻、いわゆ
  るクリミア危機があり、世論操作が活発化したとみられる時
  期である。分析対象は130万にのぼるアカウントから投稿
  された1400万件。      https://bit.ly/2Gb7Lw7
  ───────────────────────────

プーチン大統領による「ロシア電子戦」.jpg
プーチン大統領による「ロシア電子戦」
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2018年05月16日

●「人間の知能を定義することは困難」(EJ第4764)

 AI(人工知能)というと、最先端の技術のように感じますが
その概念は昔からあります。AI(Artificial Intelligence)
という言葉そのものは、1956年の夏からあります。そのとき
後世「ダートマス会議」と呼ばれるようになる有名な会議におい
てこの言葉が使われているのです。
 1956年という年について考えてみる必要があります。コン
ピュータが開発されたのは1945年頃のことであり、その10
年後といえば、コンピュータの高性能化が急速に進んで、「コン
ピュータから何でもできる」と多くの人に思われつつあったとき
です。そういうときにダートマス会議は開かれています。この会
議は、ダートマス大学で行われたのでそう呼ばれています。
 この会議の主催者は、米国の著名なコンピュータ科学者のジョ
ン・マッカーシーという人物です。彼は、この会議の開催資金を
政府から調達するために、会議の内容にいささかオーバーな売り
込み文句として「人工知能」という言葉を使ったのです。そのせ
いか、この会議には錚々たる科学者が一堂に会したのです。
─────────────────────────────
        ジョン・マッカーシー
        クロード・シャノン
        マービン・ミンスキー
        アレン・ニューウェル
        ハーバート・サイモンなど
─────────────────────────────
 彼らのそれ以後の研究をフォローすると、それぞれAIの発展
に大きく貢献した人たちばかりです。簡単に紹介すると、クロー
ド・シャノン氏といえば、「クロード・シャノンなかりせば、コ
ンピュータは高級電子ソロバンで終っていた」といわれる情報理
論の創始者であり、ニューラル・ネットワークの批判的研究で知
られるマービン・ミンスキー氏、初歩的な数学の定理を証明する
プログラムなどの初期のAI研究に大きな足跡を残しているアレ
ン・ニューウェル氏、そして、ハーバート・サイモン氏は、経済
学から社会学、認知科学からコンピュータ科学まで、万能の天才
といわれた科学者です。
 このように、まさに錚々たる科学者が集まったわけですが、そ
の当時の科学者たちの人工知能の認識は次のようなものに過ぎな
かったのです。
─────────────────────────────
  AIとは人間の知的活動をシミュレートする技術である
─────────────────────────────
 このようにAIは定義が曖昧です。AIの性能が強化されるに
つれて、定義が広がる傾向もあります。このAIの定義について
日本のAI研究の第1人者である松尾豊東京大学大学院准教授は
「人工知能の定義が難しいのはこの言葉が複数の側面を持つから
である」とし、その側面として次の3つを上げています。
─────────────────────────────
    1.最先端の情報技術という意味合いでの側面
    2.知能の定義が人によって異なるという側面
    3.AIの定義の範囲が非常に広いという側面
─────────────────────────────
 第1は「最先端の情報技術という意味合いでの側面」です。
 AI(人工知能)は、情報技術のなかでも「最先端の技術」を
指すという側面があります。最先端の技術には何かしら謎めいた
部分があるものですが、そういう謎的なものが残っている間は
人工知能と呼ばれるのです。
 日本でPCが普及した当時、かな漢字変換やOCRまでも人工
知能と呼ばれた時期があります。もっと技術的な面では、プログ
ラムを機械コードに変換するコンパイラも人工知能と呼ばれてい
たのです。それが当たり前になると、そう呼ばれなくなります。
 第2は「知能の定義が人によって異なるという側面」です。
 「人間の知能とは何か」──これは難しい設問です。そのため
人間の知能の解明は、必ずしも進んでいるとはいえない状況があ
ります。そうであるとすると、知能というものを人工的に実現す
る人工知能の定義も曖昧なものにならざるを得ないのです。
 したがって、何が人間の知能を本質的に構成するかについては
研究者によって考え方がそれぞれ異なるのです。何が知能である
か、何が人工知能でないかを定義できないのです。
 第3は「AIの定義の範囲が非常に広いという側面」です。
 人工知能の共通の定義を仮に決めたとしても、どうしてもその
範囲が広いものにならざるを得ないため、その概念は曖昧なもの
にあります。
 スチュワード・ラッセルの有名なAIの教科書によると、人工
知能について次の定義があります。
─────────────────────────────
 人工知能は外界の状況に応じて適切に振る舞いを変えるもの
 である。          ──スチュワード・ラッセル
─────────────────────────────
 しかし、松尾准教授は、極端の例と断りながらも、これでは、
サーモスタットも人工知能になると述べています。サーモスタッ
トも外界の温度に応じて振る舞いを変えるからです。人工知能の
概念の範囲が広いと、こういうことが起こるのです。
 このように何が人工知能であり、何が人工知能でないかを定め
るのは極めて困難なことです。しかし、定義を曖昧にしたままで
は、それが何かを極めることは困難です。そこで、松尾准教授は
人工知能について議論するには、次の2つについて行うのが適切
でないかと述べています。
─────────────────────────────
   1.人工知能は最先端の情報技術を指すものとする
   2.人工知能とは機械学習・深層学習のことである
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/008]

≪画像および関連情報≫
 ●人工知能とは何か/東京大学/堀 浩一氏
  ───────────────────────────
   「人工知能とは何か」という人工知能研究者にとっては答
  えるのが容易でない質問に対して、これまでに4人の先生方
  が回答を試みられてきた。筆者が付け加えるべきことはもう
  あまり残っていない。しかし、4人の先生方のおっしゃると
  おりと言って済ませてしまったのでは面白くない。人工知能
  とは何かという問いに対する答がひとつに決まっていないか
  らこそ、人工知能研究は面白い。その面白さを伝えるために
  も、無理にでも、これまでの4人の先生方との違いを強調し
  て回答を作ってみることにしよう。
  ◎中島の答:人工的に作られた、知能をもつ実体。あるいは
   それをつくろうとすることによって知能全体を研究する分
   野である。
  ◎西田の答:「知能をもつメカ」ないしは「心をもつメカ」
   である。
  ◎溝口の答:人工的につくった知的な振舞いをするもの(シ
   ステム)である。
  ◎長尾の答:人間の頭脳活動を極限までシミュレートするシ
   ステムである。
  ◎ 堀の答:人工的に作る新しい知能の世界である。
   「人工知能とは何か」という問いに対して「人工の知能で
  ある」と答えたのでは、何も答えたことにはならないであろ
  うが、5人の回答を見ると、中島、西田、堀の3名の回答の
  中に、「知能」という語がそのまま残っている。知能とは何
  かについて一言では言えないので、そのまま残して、あとで
  議論するという回答の構造になっている。筆者もその構造を
  採用させていただき、少しずつ順番に論じていくことにした
  い。              https://bit.ly/2IinriS
  ───────────────────────────

東京大学大学院/松尾豊准教授.jpg
東京大学大学院/松尾豊准教授
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2018年05月17日

●「AIとIAの違いについて考える」(EJ第4765号)

 現在でも「人間の『知能』は何か」については解明されていま
せん。したがって、それを人工的に作り出す「人工知能」の定義
が明確でないのは当然です。そこで、人工知能の第一線の研究者
である松尾豊東京大学大学院教授は、人工知能を次の2つに分け
て考えています。再現します。
─────────────────────────────
   1.人工知能は最先端の情報技術を指すものとする
   2.人工知能とは機械学習・深層学習のことである
─────────────────────────────
 1956年のダートマス会議から今年で62年になりますが、
ここ2〜3年前から急に人工知能(AI)が話題が中心になった
感があります。それは、60年以上の年月が経過して、大ざっぱ
にいえば、上記「1」が「2」に移行したからです。
 ダートマス会議から約15年が経過した1970年に後のイン
ターネットの原型になるアーパネットが開発されています。そし
て、1970年代に入って、小型コンピュータ「PC」の開発が
始まっています。ともにPCの開発を目指した次の有名2社の創
業も1970年代です。
─────────────────────────────
     ◎マイクロソフト創業 ・・ 1975年
                  ビル・ゲイツ
     ◎   アップル創業 ・・ 1976年
              スティーブ・ジョブス
─────────────────────────────
 この1970年代からいわゆるIT開発の時代が始まることに
なります。そして、1970年代から、人工知能の研究は、次の
2つの学派にわかれることになります。
─────────────────────────────
     1.AI/  Artificial Intelligence
             ジョン・マッカーシー
     2.IA/Intelligence Amplification
           ダクラス・エンゲルバート
─────────────────────────────
 コンピュータが出現して、「機械と人間の関係」をどうするか
が大きな問題になり、研究がはじまったのですが、それが、ユー
ザー・インターフェース、すなわち「UI」の研究です。中心人
物は、ジョン・マッカーシー氏とダクラス・エンゲルバート氏で
すが、2人のスタンスは、大きく異なっていたのです。
 ダートマス会議を開催し、人工知能(AI)の研究をスタート
させたジョン・マッカーシー氏は、コンピュータについて次のよ
うな考え方をもっていたのです。このコンピュータ観が、現在の
AIにつながってきます。
─────────────────────────────
 コンピュータは今後、急速に進化し、やがて人間に匹敵する。
あるいはそれを凌ぐような知的能力を持つようになる。いずれ人
間は、コンピュータに「あれしろ、これしろ」と命令するだけで
あとはコンピュータがまるで召使いかロボットのように人間の面
倒を見てくれる。         ──ジョン・マッカーシー
           ──小林雅一著『クラウドからAIへ/
  アップル、グーグル、フェイスブックの主戦場』/朝日新書
─────────────────────────────
 ジョン・マッカーシー氏は、ダートマス会議のときは同大学の
助教授であり、1958年にマサチューセッツ工科大学助教授に
なっています。そして、1962年にスタンフォード大学教授に
就任します。その道の大御所的存在の学者です。
 今になって考えると、マッカーシー教授の指摘は正しかったの
かなと考えますが、当時としては、まさに夢物語的話であったこ
とは確かです。
 これに対してダクラス・エンゲルバート氏は、マウスの開発者
として知られ、学者というよりは実業家です。彼は、コンピュー
タについて次のように考えており、マッカーシー氏よりは、はる
かに現実的な考え方をしていたのです。
─────────────────────────────
 機械が人間の面倒を見るというのは、現実離れしているし、本
末転倒している。人間にとってコンピュータのような機械は一種
のツールに過ぎない。ツールが進化することも重要だが、それと
同時に人間もツールの進歩に適応する。
               ──ダクラス・エンゲルバート
                ──小林雅一著の前掲書より
─────────────────────────────
 エンゲルバート氏は、カリフォルニア大学バークレー校大学院
の電気工学科に進学し、1955年に博士号を取得しています。
博士号取得後もバークレー校大学院に助教授として1年間留まっ
たものの、そこでは自身のビジョンを実現できないと感じて大学
を去り、発明家として実業の世界に進んでいます。
 当然のことながら、当時のコンピュータは専門家か研究者しか
使えず、使い勝手はよくなかったのです。しかし、エンゲルバー
ト氏は、近い将来コンピュータは小型化し、多くの人が誰でも使
えるようになると考えており、そのためには、その使い勝手を良
くする多くの発明が必要だと考えていたのです。
 「IA」という考え方は、人間の知的能力をコンピュータのよ
うなツールによって強化する「知的増強」を意味します。この考
え方に同調する人も多く、それが「IA派」という一派を構成し
たのです。
 その結果として、IA派は、1960年代から1980年代に
かけて、マウスやGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフ
ェイス)、マルチウインドウ、ハイパーテキストなど、便利なも
のを次々と開発し、コンピュータの使い易さの向上に貢献したの
です。それはまさしくIT技術の進化そのものです。
          ──[次世代テクノロジー論U/009]

≪画像および関連情報≫
 ●これからの、人と機械の新しいあり方――インタビュー
  ───────────────────────────
   自動運転、ドローン、人工知能。人が「使う」ものだった
  機械(コンピュータ)が「賢く」なりつつある中、自律的な
  機械と人との新たな関係が議論されている。人と機械の関係
  を考える上で欠かせないのが、そのインターフェースだ。東
  京大学助教の鳴海拓志さんはバーチャルリアリティ(VR)
  や拡張現実感など、私たちが現実と感じているものを編集し
  新しい現実をつくる技術を研究する中で、人と機械の新しい
  関係をつくるためのインターフェースのあり方について提案
  している。
  ――鳴海さんは以前、「人はすでに機械に支配されていると
  も言える」とおっしゃっていました。例えば、メールの予測
  変換で、「お願いします」と書こうとしていたのが自動的に
  「お願いいたします」となることがありますが、これは気付
  かないうちに機械に支配されていると。
   ささいな文面の違いかも知れませんが、ニュアンスが大き
  く変わることもありえますよね。ある意味ではわれわれが使
  う言葉や思考が予測変換という機械の機能にコントロールさ
  れてしまっているわけです。でもそういうことに対して普段
  のわれわれは無自覚で、「ちょっと最初に使おうとした言葉
  と違うけれどいいかな」と、その瞬間その瞬間に受け入れて
  使っているし、最終的な文面は自分が決めたと思っている。
                  https://bit.ly/2ICCJCL
  ───────────────────────────

ダグラス・エルゲルバート氏.jpg
ダグラス・エルゲルバート氏
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2018年05月18日

●「インターネットのあやまれる俗説」(EJ第4766号)

 昨日のEJで、「IA」の旗手として、ダグラス・エンゲルバ
ート博士のことを取り上げましたが、彼が後にインターネットの
原型といわれる「アーパネット/ARPANET」の研究員の一
人であったことを知る人は少ないと思います。
 私は、AI(人工知能)がここにきて一挙に実用化したウラに
は、世界レベルのインターネットの普及があると考えています。
具体的にいえば、25年間に10億サイトを超える膨大なウェブ
サイトが創出され、それがAIの知識ベースとして、その進化に
大いに寄与しているからです。
 ところで「インターネットは軍事目的のネットワークである」
ということがよくいわれます。かなりの有識者でも、テレビなど
で、当たり前のように、そのように発言することを聞いたことが
あります。EJでも「インターネットの歴史」を156回連載し
たことがありますが、私の調べた限りでは、インターネットは軍
事目的で開発されたネットワークではないことは確かです。
 この軍事目的論は『TIME』誌/1994年7月25日号に
起因します。そこにはこう記述されています。
─────────────────────────────
 インターネットは国防総省の分散型コンピュータネツトワーク
ARPAネットから育ったものであり、もともと核攻撃による中
央情報施設壊滅を避けるために構想されたものである。
        ――1994年7月25日付の『TIME』誌
─────────────────────────────
 これに対する反論の最新のものとしては、村井純慶応義塾大学
環境情報学部教授が、2014年10月に上梓された次の著書に
その記述があります。
─────────────────────────────
 インターネットの誤った俗説のひとつは、ARPANETは軍
事用に開発され、それが民間に転用されたというものだ。これは
ARPANETが研究資金を出していたことから憶測された誤解
である。パケット交換方式でデジタル情報を伝播する技術は、障
害に強いネットワークの基礎になるので、そういう意味では軍の
目的にもかなっているのだが、ARPAのファンドの基本方針は
軍事目的に直結している研究をやれと言わないことだ。
    ──村井純著『インターネットの基礎』/角川学芸出版
─────────────────────────────
 村井純教授は、婉曲な表現ながら、インターネットが軍事目的
であるというのは誤った俗説であると否定しています。そもそも
ARPANETは、カルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCL
A)、カルフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)、ユタ
州立大学、スタンフォード研究所の4つのコンピュータを相互接
続したネットワークであり、それが改良されつつ全米に拡大し、
インターネットになったのです。ちなみに、ARPANETは、
次の頭文字をとったものです。
─────────────────────────────
    ARPANET
    Advanced Research Projects Agency NETwork
─────────────────────────────
 ARPANETが軍事目的でないとすると、何を目的としたも
のかというと、そのヒントがエンゲルバート博士の次の発言にあ
ります。これは『月刊アスキー』が実施したエンゲルバート博士
とのロングインタビュー記事の一部で、非常に貴重なものです。
博士の追悼特集としてネット上に公開されています。
 この記事を読むと、ARPANETが「ネットワークの上に全
ユーザーの知識が集結したコミュニティ作り」を目的としたもの
であることがよくわかります。少し長いですが、貴重な発言なの
で、ご紹介することにします。
─────────────────────────────
 「相互接続すれば、君のコンピュータにぼくの得になりそうな
リソースはあるのかい?」当時、こんな会話がよく聞かれた。す
るともう1人が「なんだ、俺の報告書を読んでいないのか?」と
返すのだ。
 彼らは皆、立派な研究員だが、人の報告書なんて読んではいな
い。だがそう言われて探っていくうちに、相手も優秀だと気付き
「報告書のコピーを送ってくれ」という話になる。
 そのうち何人かの研究員が先の2人にこう言い出した。「ネッ
トワーク化すればコンピュータ上にどういったリソース(情報)
があるか分かるのか?」
 そもそも、コンピュータの相互接続は、プログラムなどのコン
ピュータリソースを共有するためのものだと考えられていたから
2人はそんな需要があるとは予想しておらず困惑していた。だが
それこそ、私にとってはチャンスだった。当時、私は、コンピュ
ータを使った知識のマネージメントを研究している唯一の研究員
だったからね。
 私はネットワークの上に全ユーザーの知識が集結したコミュニ
ティを作り出そうと提案した。「どんなリソースがあって、それ
をどう使ったらいいかといった情報を交換できる場をネットワー
ク上に作ろうじゃないか」という誘いに、皆、一同に賛成した。
 まあ、もっとも後になって、研究員であるはずの彼らが日頃の
研究に加えて、この情報センターというコミュニティの運営まで
しなければならなくなったことに気付き、憤慨するんだが・・。
とにかくこうして私は、ネットワークを使った知の共有という考
えの実践を始めた。
 今では、何百万というコンピュータがつながっているインター
ネットだが、この提案のおかげで、私のコンピュータはインター
ネットにつながった2つ目のノードとなった。言い換えれば私の
コンピュータの接続で、初めてインターネットワークが登場した
ともいえるわけなんだ。       https://bit.ly/2jWPtpD
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/010]

≪画像および関連情報≫
 ●ARPANETの設計目的についての誤解/ウィキペディア
  ───────────────────────────
   ARPANETは核攻撃にも耐えるよう設計されたネット
  ワークだ、という言い伝えが広まっている。その方式が19
  60年代前半にアメリカ空軍のシンクタンクであるランド研
  究所のポール・バランによって提唱された核攻撃下でも生き
  残れるコミュニケーション方式であるという点を持ち上げて
  冷戦構造全体の中で技術としての「インターネット」を議論
  するべきなのか、それともロバーツの言うとおりパケット通
  信はバランの研究とは全く関係の無いイギリス国立物理学研
  究所のドナルド・デービスの研究成果を反映したもので「イ
  ンターネット」の誕生は新しいコミュニケーションツールと
  しての側面から評価してよいという議論までかなりの幅が見
  られる。インターネット協会は、ARPANETを生み出し
  た技術的アイデアの融合について次のように記している。
   ARPANETが核戦争に耐えられるネットワーク構築と
  何らかの関係があると主張する間違った噂が始まったのは、
  ランド研究所の研究からである。ランド研究所では核戦争を
  考慮した秘密音声通信を研究していたが、ARPANETは
  それとは全く無関係である。しかし後のインターネットワー
  キング作業の展開においては、ネットワークの大きな部分が
  失われてもインターネットワークが機能し続けるなど、その
  頑健性と生存可能性を強調したことがあるのも事実である。
                  https://bit.ly/2rIgt0A
  ───────────────────────────

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エンゲルバート博士とのロングインタビュー
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2018年05月21日

●「エンゲルバートの衝撃なプレゼン」(EJ第4767号)

 ダグラス・エンゲルバート博士については、もうひとつ述べて
おきたいことがあります。それは、1968年12月に行われた
「エンゲルバートのプレゼンテーション」についてです。私がこ
のことを知ったのは、IIJ(インターネットイニシアチブ)の
会長兼CEO、鈴木幸一氏の著書を読んでのことです。
 1969年1月元旦のことです。当時22歳の鈴木幸一氏は、
米誌『ローリング・ストーン』を読んでいたそうです。同誌は、
音楽や政治および大衆文化を扱う隔週発行のマガジンです。
 たまたまその号は、同誌としては珍しく、コンピュータ関連の
記事がいくつか掲載されており、そのなかに「センセーショナル
な試み」というタイトルの記事があったのです。鈴木氏は、気に
なってその記事を読んでみたといいます。そうしたら、次の衝撃
的なフレーズを目にしたのです。
─────────────────────────────
        コンピュータはメディアである
─────────────────────────────
 1969年(昭和44年)といえば、大型コンピュータの全盛
時代です。当時のコンピュータは「計算機」そのものであり、コ
ンピュータは大企業のコンピュータ室に格納されている巨大なマ
シンというぐらいの認識しかなかったのです。ちなみに1969
年1月といえば、ソ連の有人宇宙船「ソユーズ」4号と5号が史
上初の有人宇宙ドッキングに成功したというというのが大ニュー
スになっていたのです。
 鈴木幸一氏は、「コンピュータはメディアである」という記事
について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 その記事は、コンピュータが自ら通信機能をもつという、まっ
たく新しいコンピュータの概念を提示していた。それまでは、コ
ンピュータは「電子計算機」としてただ情報を演算処理するだけ
の機械であり、通信といえば、交換機という専用機で音声を運ぶ
電話のことを指していた。
 両者の融合を可能にした技術基盤が、コンピュータ・サイエン
スである。コンピュータ上で、情報処理と通信が一体として動く
ようになることで、コンピュータと通信が別個のものであった時
代には想定もできない変化が訪れるはずだ。両者の技術体系が異
なるままでは、そのアジャストはそう簡単ではない。その意味で
コンピュータと通信を融合させるこの試みは、いま振り返っても
センセーショナルなものであったことは間違いない。
                      ──鈴木幸一著
           『日本インターネット書記』/講談社刊
─────────────────────────────
 この「情報処理と通信が一体として動くメディアとしてのコン
ピュータ」の記事の元になったのは、1968年12月に行われ
たダグラス・エンゲルバート氏のプレゼンテーションです。この
とき、エンゲルバート氏は、先週のEJで述べたように、ARP
ANETの研究員の一人であり、このプレゼンテーションの次の
年の10月にARPANET、後のインターネットの原型になる
ネットワークが開通することになるのです。
 そのプレゼンテーションは、当時のコンピュータではけっして
できないことが将来実現すると主張しています。しかし、現代の
われわれから見ると、毎日ごく当たり前のようにやっていること
ばかりです。当時の鈴木幸一氏が目を見張ったのは当然です。
─────────────────────────────
 コンピュータの画面の前に座った人間が、画面上の複数のグラ
フィカルな「ウィンドウ」を見比べながら、マウスやキーボード
を使って文章をリアルタイムに編集する。そして、作成した文書
を遠隔地のコンピュータに送る。いまではごく当たり前の操作方
法だが、そのルーツはこのときのプレゼンにある。エンゲルバー
トのプレゼンが、その後のコンピュータ開発に与えた影響ほ計り
知れない。現代を生きる私たちにとってなじみ深い「パソコン」
も、エンゲルバートなくしては考えられない。彼のコンセプトは
「パソコンの父」と称されるコンピュータ科学者のアラン・ケイ
をはじめ、個性的で奔放な日々を送っていた若いエンジニアたち
に受け継がれ、その後、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ
とマイクロソフト創業者のビル・ゲイツが、パソコンを製品化し
世に送り出した。初期のパソコンは、キーボードすらついていな
い代物だったが、エンゲルバートのプレゼンが、パソコンを生ん
だひとつのきっかけとなったのである。
                ──鈴木幸一著の前掲書より
─────────────────────────────
 このエンゲルバート氏のプレゼンの話は、当時定職に就いてい
なかった鈴木幸一氏に大きなショックを与えます。何よりもセン
セーショナルだったのは、遠隔地にいる人間同士がコンピュータ
を介してコミュニケーションをとるというアイデアです。これが
実現すれば、まさしく「コンピュータはメディアである」といえ
ます。この新鮮な驚きがなかったら、現在のIIJという企業は
誕生することはなかったと思います。
 コンピュータを相互接続させるとどんなことが起きるのか、当
時はまったく認識されていなかったのです。そもそも異なる設計
によって製作されたコンピュータ同士を相互接続させてデータを
送ることは当時相当の難問だったのです。
 議論が重ねられた結果、この難問は、仕様が同一の「IMP/
インプ」という名前のコンピュータを導入することによって解決
します。IMPは現在のルータの役割を果たすコンピュータであ
り、次の言葉の頭文字をとったものです。
─────────────────────────────
       IMP
       Interface Message Processor
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/011]

≪画像および関連情報≫
 ●「クリック猿とマウス」/桂英史氏
  ───────────────────────────
   ねずみ(マウス)という動物の存在感は、なかなか不思議
  である。キッチンなど日常生活の周辺に出没すると、大騒ぎ
  になる。無理もない。都市生活においては、不衛生のシンボ
  ルとして知られる動物だからだ。その出没を目撃すると、人
  はブルーになる。ねずみそのものが気持ちわるいこと以上に
  自分の生活空間が不衛生であるとの烙印が突きつけられた気
  分になってしまうからだ。したがって、ゴキブリ以上の大敵
  として駆除の対象になる。繁殖力が抜群で、ウイルスのキャ
  リアとしても、申し分ない。ただ、この繁殖力はうまく利用
  されていて、動物実験では長く主役の座を占めている。
   この都市生活者の敵も、いったん「手のひらサイズ」のシ
  ンボルとなってしまうと、なぜか人々の寵愛を一身に集める
  存在となる。ミッキーマウスがその典型である。このミッキ
  ーマウスとともに、20世紀はもうひとつマウスのシンボル
  を登場させた。それがマウスというコンピュータの入力デバ
  イス(装置)である。
   マウスがこの世に登場したのは、1968年のこと。およ
  そ35年も前のことである。サンフランシスコで開かれた秋
  期合同コンピュータ会議で、NLSと呼ばれる対話式のコン
  ピュータが公開された。公開したのは、ダグラス・エンゲル
  バートという、国防省高等研究計画局出身の電子工学の研究
  者である。           https://bit.ly/2KzBbXf
  ───────────────────────────

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エンゲルバートのプレゼン
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2018年05月22日

●「マッカーシーは何をやった人物か」(EJ第4768号)

 「IA派」のダグラス・エンゲルバートと「AI派」のジョン
・マッカーシー──このうち、ジョン・マッカーシー氏とはどう
いう人物なのでしょうか。
 マッカーシー氏は、どういうきっかけで「人工知能/AI」を
提唱することになったかについて知る必要があります。
 ジョン・マッカーシー氏は、プリンストン大学で数学科博士課
程を受けていますが、先輩にあたるダートマス大学のジョン・ジ
ョージ・ケメニー数学科教授から、ダートマス大学の助教授とし
て招聘されたのです。1955年2月のことです。
 マッカーシー氏は、ダートマス大学に移ると、大学院時代の同
僚のマービン・ミンスキー氏とベル研究所のクロード・シャノン
氏と一緒に、「認知能力を持つ機械」について、共同で研究をは
じめたのです。それが1956年の「ダートマス会議」の開催に
つながることになります。
 このダートマス会議に関連して、マッカーシー氏は大きな仕事
を2つ成し遂げています。
─────────────────────────────
      1.TSSを提唱し、実現させている
      2.AI言語といわれるLISP開発
─────────────────────────────
 1は「TSSを提唱し、実現させている」ことです。
 1940年代後半にコンピュータが開発され、1950年代に
入るとその性能は飛躍的に向上していたのですが、何しろ当時の
コンピュータは高価であり、数も少ないので、研究者が満足に使
える状況になかったのです。ちなみに、当時積極的にコンピュー
タを使おうとしていたのは、マッカーシー氏のような大学院生が
多かったといえます。
 当時ダートマス大学では、1954年に開発されたIBM70
4を他の大学と共同で使っていたのですが、マシンを直接使うこ
とはできず、プログラムを打ち込んだパンチカードをコンピュー
タ管理者に渡して、その結果を受け取るというスタイルでしか利
用できなかったのです。この場合、もし一ヶ所でもパンチミスを
すると、半日は潰れてしまうのです。
 共同で利用するというのは、MIT(マサチューセッツ工科大
学)が8時間、IBM事業所が8時間、それからダートマス大学
を含む東海岸の大学が合同で8時間というように、使用できる時
間は限られていたのです。
 そこでマッカーシー氏が考えたのが対話型コンピューティング
「TSS/タイムシェアリング」の導入です。
─────────────────────────────
 ◎タイムシェアリングシステム/Time Sharing System
 1台のコンピュータ(のCPU)をユーザ単位に時分割で共有
(タイムシェア)し、複数のユーザで、同時にコンピュータを利
用するシステムである。         ──ウィキペディア
                  https://bit.ly/2JpuiYc
─────────────────────────────
 TSSのシステムを簡単にいうと、一台のホストコンピュータ
が多くの端末(ターミナル)に接続されており、端末ごとにホス
トに仕事の命令が出され、それに対してホストが処理をして返す
という人間とコンピュータの対話です。ホストは一台しかありま
せんが、その処理は高速であり、利用者はあたかもホストを自分
一人で使っているような気分になれるのです。
 ちなみにTSSの提唱者はマッカーシー氏だけでなく、複数い
ます。ASCIIコードの開発者として知られるボム・バーマー
氏や、英国のコンピュータ科学者クリストファー・ストレイチ氏
も、1959年にタイムシェアリングシステムの特許を取得して
います。それぞれが相談したわけではなく、同時にこのアイデア
を思いついたのです。
 2は「AI言語といわれるLISP開発」です。
 「LISP」は、ジョン・マッカーシー氏がマサチューセッツ
工科大学(MIT)に移ってから開発した言語です。AIに向い
たコンピュータ言語といわれています。その開発には、コンピュ
ータを長時間使う必要があります。しかし、上記のようにダート
マス大学では、IBM、MITとIBM704を共同使用してい
たのですが、IBMとMITは8時間使えるのに対し、ダートマ
ス大学の場合は、他の東海岸の大学と合わせて8時間であり、長
時間は使えなかったのです。そこで、MITに移った方が、コン
ピュータが長く使えると考えたマッカーシー氏は、MITに移り
MITの助教授に就任し、LISPを開発します。LISPは、
フォートランに次ぐ歴史の古い言語です。
 これについては、2005年9月14日のEJで取り上げてい
るので、そこから引用します。
─────────────────────────────
 マッカーシーは考えたのです。ダートマス大学にいたのでは、
8時間をさらに他の大学と分け合うことになり、いつ順番が回っ
てくるかわかったものではない――そのためにはMITの教員に
なるのが一番良いと考えたのです。
 それからもうひとつ、IBMの連中と仲良くなる必要があると
考えたのです。そういうわけで、たまたまIBMの技術者がダー
トマス大学を訪問したときに、マッカーシーは食事と酒をおごっ
て饗応したのです。まさに目的のためには手段を選ばずです。
 その効果はすぐにあらわれたのです。IBMからIBMポーキ
プシー事業所に招待されたからです。マッカーシーはそこでコン
ピュータのプログラミングを身につけてしまいます。
 1958年に彼はこのアイデアを実行に移し、MITの助教授
になるのです。そして、同年中にLISP言語を開発し、「記号
表現の機能関数と機械によるその計算T」という論文を発表しま
す。                https://bit.ly/2IytPD5
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/012]

≪画像および関連情報≫
 ●人工知能で大活躍!今熱い「LISP」の成り立ちとこれから
  ───────────────────────────
   LISPという言語をご存知でしょうか。
   「カッコ。とにかくカッコ」「独自路線」「古い」「とに
  かくカッコ」などの印象が一般的でしょうか。あまりメジャ
  ーな言語ではないというのが、正直な位置づけでしょう。本
  エントリでは近年の人工知能の発達に伴ってLISPが見直
  されていることから、LISPのこれまでの歴史を振り返り
  今後の動向を占ってみることにしましょう。
   LISPは、1958年に開発された、現在広く使われて
  いるプログラミング言語の中で最も古いものの1つです。開
  発者のジョン・マッカシーは、実は「人工知能」という言葉
  の提唱者でもあります。このような出自から、LISPは人
  工知能プログラムに多く使われました。人工知能ブームにも
  乗ったこともあり、急速に普及していくことになります。
   しかし長く使われる言語の常として、多くの方言が生み出
  されてしまいました。方言が多いというのは、ある面では困
  った状況です。多数の言語仕様と処理系が生み出されるため
  汎用性が失われ、中長期的に見ると効率が悪くなるのです。
  このような状況の中、LISPにも標準化が必要になりまし
  た。標準化の効果はJavaの成功を見ると分かりやすいと
  思います。Javaは、言語仕様から処理系、果てはライブ
  ラリまで標準化することで、一度書いたプログラムがどこで
  でも動作する、という究極の汎用化を、実現しようとしまし
  た。そしてある程度これは実現され、現在では世界で最も広
  く使われているプログラム言語の1つとなりました。
                  https://bit.ly/2IukVub
  ───────────────────────────

TSS/タイムシェアリングシステム.jpg
TSS/タイムシェアリングシステム
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2018年05月23日

●「スプートニクショックとARPA」(EJ第4769号)


 インターネットの原型であるARPANETを開発した「AR
PA」とはどういう機関であるかを知る必要があります。それは
「スプートニク・ショック」に深く関係するのです。
 1957年にソ連は史上初の人工衛星「スプートニク」の打ち
上げに成功しています。1957年10月4日のことです。ソ連
はその1ヶ月後の11月3日にスプートニク2号の打ち上げにも
成功しています。2号は、生物を乗せることを想定して、気密室
を作っているので、1号に比べて6倍の508キログラムの重量
になっていたにもかかわらず成功しています。
 1958年2月3日のスプートニク3号は、失敗したものの、
1960年5月15日のスプートニク4号は成功、1960年8
月19日のスプートニク5号には、犬2頭、ネズミ40匹、ラッ
ト2匹、その他いろいろな植物も積んで、打ち上げに成功。翌日
に回収され、動物たちは無事に地球に帰還したのです。このよう
に、1957年から1960年にかけて、ソ連は次々とスプート
ニクを連続して打ち上げ、宇宙開発の成果を強調したのです。
 当然のことですが、これは米国にとって大ショックであり、そ
れは「スプートニク・ショック」といわれます。とくに軍事関係
者にとって衝撃的な出来事だったのです。当時のアイゼンハワー
大統領は、ニール・マケルロイ国防長官に命じて、国防総省内に
軍事研究を統括する機関を設置するよう指示します。
 しかし、これに軍は反発します。兵器開発の主導権を奪われる
のではないかと危惧したからです。核兵器の開発を進めていた原
子力委員会も核兵器は外すよう政府に申し入れます。多くの議論
があって、最終的に基礎研究を行う機関として、1958年にそ
の機関は国防総省内に設置されます。それがARPAです。当初
ARPAは、宇宙開発を手掛けるつもりだったといわれています
が、同年10月に国際宇宙局が設置され、その目論見は崩れ去っ
たのです。
 しかし、その結果、ARPAで開発されたのがARPANET
であり、それが後にインターネットに発展するのです。1972
年になって、ARPAは「DARPA(米国国防総省高等研究計
画局)」に改称されます。
 このように、1957年から1972年の15年間は、米国は
ソ連に対抗するため、膨大な軍事予算を使いまくったのです。と
にかく「ソ連に負けるな!」ということで、米国中が燃えていた
時期といえます。そのなかで、マッカーシー氏らのAIの研究に
も潤沢な予算が投入されたのです。
 スプートニク・ショックを受けた米国は、1958年にNAS
A(アメリカ航空宇宙局)を設立し、マーキュリー計画がスター
トします。この計画は、1958年から1963年にかけて実施
された有人宇宙飛行計画のことです。
 1961年1月20日、ジョン・F・ケネディ氏が大統領に就
任します。ケネディ大統領は、1000基のミニットマン・ミサ
イルをはじめ、当時ソ連が保有していたミサイルの数を上回る大
陸間弾道ミサイルを配備すると宣言しています。
 そして、1961年5月25日、ケネディ大統領は、上下両院
合同議会で、アポロ計画について演説し、10年以内(1971
年)に人間を月に着陸させ、安全に地球に帰還させることを宣言
する有名な演説を行います。以下はその演説の一部です。
─────────────────────────────
 私は、今後10年以内に人間を月に着陸させ、安全に地球に帰
還させるという目標達成にわが国民が取り組むべきと確信してい
ます。この期間の、この宇宙プロジェクト以上により強い印象を
人類に残すものは存在せず、長きにわたる宇宙探査史において、
より重要となるものも存在しないことでしょう。そして、このプ
ロジェクト以上に完遂に困難を伴い、費用を要するものもないで
しょう。         ──ジョン・F・ケネディ米大統領
                  https://bit.ly/2IACvIR
─────────────────────────────
 そして米国は目標の1971年以前の1969年7月16日、
アポロ11号が月面に着陸し、無事に地球に帰還させることに成
功します。これで米国は宇宙の覇者の地位を獲得したのです。
 話をAIに戻します。ジョン・マッカーシー氏は、ダートマス
会議以後の1963年、スタンフォード人工知能研究所(SAI
L)を設立し、そこに多くの若い研究者を集めて、次の目標を掲
げたのです。これも10年以内の目標です。
─────────────────────────────
     10年以内に実戦的なAI技術を作り上げる
                   ──SAIL
─────────────────────────────
 米国が総力でソ連と対抗していた1960年代、科学者にとっ
ては絶好の環境だったといえます。なぜなら、国防総省はAIの
基礎研究に大量の資金を拠出したからです。しかも、具体的な目
標や期限を課さなかったので、自由研究として何でもやれたので
す。これについてAIに詳しいKDDI総研リサーチ・フェロー
の小林雅一氏は、自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 彼ら初期の研究者たちは、誰もが一様に楽観的でした。たとえ
ば、マッカーシー氏は国防総省の研究機関であるDARPA(国
防高等研究計画局)に出した提案書の中で、「考える機械は、今
から約10年で完成できるはずだ」と予想しました。ミンスキー
氏も「今から10年もあれば、AIを構成する実質的な問題は解
決されるだろう」と述べました。サイモン氏に至っては「今から
20年以内に、人間がやれることは、すべて機械がやれるように
なるだろう」と公言するほどでした。     ──小林雅一著
 『クラウドからAIへ/アップル、グーグル、フェイスブック
                の次なる主戦場』/朝日新書
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/013]

≪画像および関連情報≫
 ●世界を動かす軍事科学機関DARPA
  ───────────────────────────
   1962年10月16日、ソ連が密かに核ミサイルをキュ
  ーバに設置していることを発見したアメリカ大統領ケネディ
  は、ソ連首相フルシチョフにミサイルの撤去を迫り、拒否さ
  れた。この日からフルシチョフがミサイル撤去の決断を下す
  までの13日間ほどに、人類が核兵器による全面戦争に近づ
  いたことはない。キューバ危機で核ミサイルが攻撃に用いら
  れることはなかったが、実はこの危機の最中に核ミサイルは
  4発も爆発していた。その事実が、世間に知られることがな
  かったのは、この爆発が宇宙空間で行われていたからだ。
   4発中2発はアメリカによって、残りの2発はソ連によっ
  て行われた実験だった。わざわざ宇宙空間で核爆発させたの
  は、クリストフィロス効果を研究するため。1957年にソ
  連が打ち上げた人工衛星によるスプートニク・ショック以来
  アメリカはソ連のICBM(大陸間弾道ミサイル)から自国
  を守る方法を探し続けていた。そして、無名の科学者である
  ニコラス・クリストフィロスが考案した「大気圏のすぐ上の
  地球の磁場にある高エネルギー電子をとらえ、それによって
  生成されるアストロドームのような防御シールド」を作ると
  いうアイディアに行き着いた。クリストフィロス効果とは、
  電離層での数千発にも及ぶ核兵器の炸裂によるベータ粒子を
  地球の磁場に注入し、そこを通過しようとする物体に障害を
  引き起こすというものだった。  https://bit.ly/2ICECjt
  ───────────────────────────

ジョン・マッカーシー.jpg
ジョン・マッカーシー
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