2018年03月26日

●「安倍首相をめぐる3つの学校法人」(EJ第4730号)

 2018年2月16日のことです。前川喜平前文科省事務次官
は、名古屋市立八王子中学校で、総合学習の授業として講演し、
不登校の経験などに触れ、「自ら学ぶ力、考える力を身につけて
ほしい」と生徒に呼びかけています。なかなか内容のある講演で
あり、感銘を受けた生徒も多かったといわれます。
 このことを中日新聞で知った自民党文科部会の部会長を務める
赤池誠章参院議員と部会長代理の池田佳隆衆院議員が文科省に対
し、前川氏が招かれた経緯や講演内容などについて照会するよう
要求したのです。
 文科省はそれに従い、名古屋市の教育委員会に対し、15項目
に及ぶ質問書を送り、中学校に内容の確認を求めています。その
質問書のなかには、前川氏が法令違反を起こして辞任したこと、
出会い系バーの出入りが報道されていたことの記述もあったので
す。つまり、法令違反で辞職し、出会い系バーに出入りするよう
な人物に、公的教育機関での授業をさせる意図は何かを尋ねてい
るのです。文科省が主体的にする質問ではないといえます。
 これは、とんでもないことです。なぜなら、文科省が自民党の
国会議員から圧力をかけられ、学校の授業内容に介入したことに
なり、教育基本法第16条の「不当な支配」に該当する恐れがあ
るからです。教育基本法第16条は次の通りです。
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【教育基本法】
 第十六条 教育は、「不当な支配」に服することなく、この法
律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、
教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協
力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
          https://bit.ly/2Ge3Wu7 註:「」は筆者
─────────────────────────────
 文科省としては、自民党議員が中学校への照会を求めてきた時
点で、それは「不当な支配」に該当する恐れがあるので、できな
いとはっきりと拒否すべきだったのです。しかし、要求してきた
2議員は、自民党文科部会の部会長と部会長代理であり、拒否す
ると政策を遂行するさいの協力が得られなくなるということで断
り切れず、質問状を送ってしまったのです。つまり、文科省は権
力に屈したことになります。しかし、これに対する林文科相のコ
メントはピリッとしないものであり、完全に逃げています。これ
は安倍政権の支持率をさらに下げる要因になるはずです。
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 文科省としては、あくまで法令に基づいた行為であるが、確認
のさいには、表現を慎重に検討した方がいい。  ──林文科相
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 この出来事は、一見すると、現在大問題になっている森友問題
などとは、ぜんぜん関係のない出来事のようにみえますが、実は
そうではないのです。
 それは、赤池誠章参院議員がどういう人物かを知るとわかって
きます。赤池氏は自民党細田派、つまり安倍首相の派閥に属する
安倍チルドレンの一人であり、第2次安倍改造政権で文科省政務
官を務めています。
 赤池誠章議員は、16日のEJ第4729号で述べているよう
に、2005年に国会議員に初当選する前は、日本航空学園のグ
ループ校である日本航空総合専門学校で学校長を務めていたので
す。リテラによると、日本航空学園は次のような学校です。
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 日本航空学園では、毎日の朝礼時には「君が代」とともに日の
丸を掲揚、17時になると国旗降下をおこなうといい、梅沢理事
長は「この国旗掲揚と国旗降下のときは、学校中、教師も生徒も
直立不動の姿勢で国旗に敬礼します。教師が会議中であっても、
生徒がクラブ活動中であっても、そのときはいったん中断し、国
旗に敬意を表するのです」と胸を張っている。
                  https://bit.ly/2ILpTPB
─────────────────────────────
 さらに、日本航空学園の現理事長の梅沢重雄氏は、そのための
書籍まで上梓して「教育勅語」の重要性を説いている人物です。
森友学園の籠池理事長とそっくりです。
 しかも、現在、日本航空学園の一部は国有地であり、長年にわ
たって無断使用していたのです。これについては、16日のEJ
第4729号で詳しく述べていますが、結果として非常に格安で
国有地を手に入れています。これも不思議なほど森友学園のケー
スとそっくりです。
 ただ、森友学園の場合は、安倍首相の昭恵夫人が関与している
疑いがありますが、こちらの場合は、安倍首相親派の2人の国会
議員が関与しているのです。彼らにとって前川喜平前文科省事務
次官は「敵」なのです。それは、前川氏が、もうひとつの学校法
人である加計学園獣医学部新設の認可に関して、安倍政権を強く
批判する次の発言をしているからです。
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 あったもの(文書)をなかったことにはできない。公正公平
 であるべき行政のあり方が歪められた。
              ──前川喜平文科相前事務次官
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 しかも前川前事務次官は、辞任後、各方面から講演に呼ばれ、
安倍政権への批判ともとれる発言を繰り返しています。これは、
安倍首相親派にとって「絶対許せない」ことです。
 その前川氏がこともあろうに、公的教育機関の中学校で講演を
をしたと聞いたので、安倍親派で、しかも、自民党文科部会の部
会長である赤池誠章参院議員は、「まさか政治的なことを話した
のではないか」と反応したのです。常識的に考えても、中学生に
政治の話をするはずもなく、実際に話していないのですが、文科
省に質問したものと思われます。しかし、これはやってはならな
いことです。      ──[メディア規制の実態/054]

≪画像および関連情報≫
 ●文科省の介入以前に、前川氏の学校招聘はありだったのか
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   文科省の前事務次官にして“日本の貧困問題研究家”(た
  だし若い女子限定)でもある前川喜平氏に、名古屋の市立中
  学が講演依頼。その講演内容について文科省が名古屋市教育
  委員会に問い合せメールを送った件が、大きな話題になって
  いる。ネットでは意見も二分しているが、マスコミはだいた
  い批判的だ。その批判とは、「文科省が教育現場に介入する
  ことは許されない」というものだが、ここには「安倍政権が
  裏で動いているはずだ」という見方が透けて見える。そのあ
  たりのことは現時点ではよく分からない。しかし、起きたこ
  とについての論評や考察はできる。そこで今回は、文科省が
  教育現場に介入することの是非以前に、そもそも前川喜平氏
  を講演者として教育現場に招聘することの是非について考え
  てみる。
   まず文科省の件だが、前述のとおり、マスコミは概ね文科
  省の問い合わせに対して否定的だ。文科省が授業の内容を問
  い質すことは教育現場への介入であり、教育の独立性を脅か
  すもので許されないという主旨だが、僕はむしろ文科省が教
  育現場に介入できないことに衝撃を受けた。当たり前だが、
  文科省は教育行政のトップだ。そのトップ組織が教育現場の
  ヒアリングもできないようでは、それこそ教育現場は歪めら
  れる。実際、僕らの世代はその被害にあってきた。
                  https://bit.ly/2FWrlRw
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前川喜平文科省事務次官.jpg
前川 喜平文科省事務次官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | メディア規制の実態 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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