2018年03月06日

●「外国人記者の記事にも目を光らす」(EJ第4717号)

 ドイツの有力紙に「フランクフルター・アルゲマイネ」という
新聞があります。その新聞社の東京特派員だったカルステン・ゲ
ルミス記者が、日本外国特派員協会(FCCJ)の機関紙に、あ
る記事を寄稿したのです。その内容は、自分が東京で記者在任中
に日本政府から受けた「屈辱的攻撃」についてです。FCCJの
機関紙は「Number 1 Shinbum」といい、大変有名です。
 これについて、元ニューヨーク・タイムズ東京支局長マーティ
ン・ファクラー氏は、次のように述べています。
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 15年4月まで、同紙の東京特派員を務めていたゲルミス記者
は、14年8月に「安倍政権の歴史修正主義が中韓のつながりを
強め、逆に日本を孤立化させる」といった主旨の記事を書いた。
すると、在フランクフルト総領事がアルゲマイネ紙本社に抗議に
訪れたというのだ。
 総領事はゲルミス記者の記事を中国が反日プロパガンダに利用
しており、「オカネが絡んでいるのではと疑ってしまう」。「中
国に渡航ビザを許可してもらうためでは」と文字どおり侮辱的な
発言をしたそうだ。ゲルミス記者はそうした発言を、寄稿した記
事の中ですべて否定し、外務省への怒りをあらわにした。外務省
はなぜアルゲマイネ紙と衝突するようなやり方をしたのだろう。
同紙はドイツにおける保守系の新聞で常日頃、落ち着いた論調を
紙面で展開している。何か極端な主張をして、日本政府を攻撃す
るようなメディアではない。  ──マーティン・ファクラー著
      『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』/双葉社刊
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 海外メディアは、日本のイメージを世界に伝える貴重な存在の
はずです。そういうメディアに対して、なぜ安倍政権は、記事内
容が気に入らないと、わざわざその記者の所属する新聞社の本社
に領事館の職員を訪問させ、抗議し、威嚇するような態度をする
のでしょうか。韓国がやっているように、もう少し海外メディア
に、戦略的に対応できないものでしょうか。
 「報道ステーション」を降板させられたあの古賀茂明氏は、日
本外国特派員協会から要請され、記者会見を行っています。日本
の大手メディアで、この古賀事件を取り上げるところが皆無のな
かで、FCCJは記者会見を申し入れてきたのです。このときの
FCCJの記者会見の印象について、古賀茂明氏は、次のように
語っています。
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 海外のメディアは、会場入りしたときから、私を非常に温かい
雰囲気で迎えてくれた。そうして私の講演に真剣に耳を傾け、メ
モを取る姿を見ていると、単に面白い話を聞きたいということで
はなく、まじめな記事を書こうという熱意が伝わってきた。
 驚いたのは、特派員たちの理解度の高さだ。もちろん、ゴシッ
プ的な質問は皆無。「報道の危機」という問題の本質をついた問
いが相次いだ。しかも、質問した全員が私の行動を称賛し、私以
上に日本のマスメディアの問題点を鋭く指摘した。私にとっては
久しぶりにまともな世界に身を置いて、自分自身が解放されるよ
うな感覚に包まれた。
       ──古賀茂明著/講談社刊/『日本中枢の狂謀』
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 2015年5月3日、「世界報道自由デー」と名付けられたこ
の日に、古賀茂明氏はFCCJから、報道の自由を促進する運動
に取り組んだ個人に対して贈られる「報道の自由の友賞」を授与
されています。
 受賞理由としては「表現の自由を抑圧しようとする政府に対す
る批判と、東京電力の問題を含む日本の政治や産業界に関する鋭
い評論活動に対して」とあります。FCCJは、古賀氏のジャー
ナリストとしての活動を精査し、著書も読むなどして、受賞を決
めているのです。
 ところで、ニューク・タイムズのマーティン・ファクラー氏が
東京支局長として赴任したのは2009年2月のことであり、そ
の直後の3月3日、当時の小沢一郎民主党代表の第一秘書である
大久保隆規氏が東京地検特捜部に逮捕される陸山会事件が起きる
のです。自民党一党支配の日本の政治が最も混乱し、動揺してい
た頃のことです。そして、同じ年の2009年9月に、自民党か
ら民主党への政権交代が起こり、自民党が下野して、鳩山内閣が
誕生します。そのとき、政権のメディアに対する姿勢が一変した
のです。ファクラー氏は、当時の鳩山政権のメディアへの対応を
次のように評価しています。
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 海外メディア記者として一番取材がしやすかったのは、民主党
政権時代だ。岡田克也氏が外務大臣になったときなど、外務省の
記者会見を真っ先に記者クラブ以外のメディアにも開放してくれ
た。雑誌やネットメディア、フリージャーナリスト、私のような
海外メディアの記者などから質問が出たとき、岡田大臣は真剣に
答えようとしてくれた。あのような記者会見のスタィルは、日本
の歴史を通じて極めて稀だ。東日本大震災が起きると、極端な情
報統制を行った民主党政権だが、以前に関して言えば、国民の知
る権利について最も真剣に向かい合っていたと断言できる。
         ──マーティン・ファクラー著の前掲書より
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 今や民主党政権というと、ボロクソのようにいわれますが、少
なくとも、メディア対応に関してはきちんと公約を守り、理想的
であったといえます。そのとき、国民は政治が何をしようとして
いるかが、自民党時代より、かなりよく見えたはずです。
 しかし、ファクラー氏も指摘しているように、菅政権になって
東日本大震災が起きると、突然隠蔽体質に逆戻りし、それが民主
党政権のイメージを著しく悪化させたのです。4つに分割された
民主党を引き継ぐ政党は、現在でも、その負の遺産を引きずって
います。        ──[メディア規制の実態/041]

≪画像および関連情報≫
 ●会見要請を辞退された外国特派員協会が安倍政権に困惑
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   外国プレスが所属する日本外国特派員協会(FCCJ)が
  安倍政権に“困惑”している。FCCJは、参議院選挙前に
  6人の自民党幹部へ会見を要請したが、すべて「多忙」を理
  由に辞退された。14年の衆院選時も同様に自民党から会見
  を辞退されたという。「70年の実績があるFCCJ史上は
  じめての事態が続いている」とピーター・ランガン会長は訴
  える。以前の自民党では外相、防衛相などの会見は恒例とさ
  れ、第2次安倍内閣発足時には、菅義偉官房長官を含む閣僚
  が会見に応じたこともあった。しかし、最近は、FCCJの
  要請は繰り返し拒否されているという。なぜなのか?
   FCCJ報道企画委員会共同委員長で、ブルームバーグ・
  ニュースエディターのアンディ・シャープさんは、臆測は避
  けたいがと前置きした上で、「14年、拉致問題担当相だっ
  た山谷えり子議員の会見が一因ではないか」と話す。当時、
  山谷議員の質疑応答の際、外国人特派員らから、本来の目的
  である拉致問題よりも、在日特権を許さない市民の会(在特
  会)との関係について質問が集中したという。意表を突かれ
  質問された山谷議員はしどろもどろの回答に終始。FCCJ
  会員の外国人特派員がこう主張する。「協会主催の会見は、
  まとまりが悪い、フリーランスの出席も多いため、やりにく
  いという声がそれ以降、自民党議員から聞こえるようになっ
  た」。              http://bit.ly/2oMwSyO
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マーティン・ファクラー氏.jpg
マーティン・ファクラー氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | メディア規制の実態 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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